見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「せっかくの花見やし、王様ゲームでもやろうや?」
「いや花見と王様ゲームの接点ってなによ?」
はやての突拍子のない提案にツッコむアリサちゃん。
学校が終わった後にすぐさま一度家に帰宅して、私服に着替えて桜の咲いている公園で花見をしているわけだが、やめてくれよこのタイミングで王様ゲームなんて。
花見のときは桜を肴に酒飲むのが俺の楽しみなんだからさぁ。……まぁ今飲んでるのはジュースだけど。(お酒は二十歳になってから)
「いや〜ただ桜を見ながらご飯を食べるって言うのも味気ないやん? だからちょっとしたスパイスをと思ったんやけどな」
「今はやてちゃんが花見そのものを全否定したの」
「あ、ヤマト。そこの三ツ矢サイダーのペットボトルとって」
「おう。ほら注いでやるよ」
「サンクス……おっととと」
ヤマトめ、コップから溢れるレベルで注ぐとは分かってるじゃないか。
溢れて手を濡らさない様に慎重にかつ急いでコップの淵に口をつけて一気にグイッと。……っかー! たまらん!!
本当は酒が良かったけど!!
「ほら見なさいよ。レオとヤマトは普通に花見を満喫してるわよ」
「それにフェイトちゃんとアリシアちゃんも初めての花見で桜に見惚れちゃってるよ〜」
「グヌヌ……意外と強敵揃いやなぁ」
「ねぇれお君、おーさまゲームって何?」
リンディさんお手製の唐揚げを頬張りながらひなちゃんが俺に尋ねてきた。
「割り箸とかに番号と王の文字もしくは王と分かる印とかを書いて、それを見えない様にしてそれぞれ取るんだよ」
「番号と王様の割り箸で役割があるの? あ、おにぎりもう一個いただきま〜す」
「はーい。どんどん食べて頂戴。ほらほらフェイトさんもアリシアさんも桜もいいけど、食べて食べて」
「「はーい」」
ひなちゃんがおにぎりを口いっぱいに頬張り、ハムスターの様な顔になっているのに笑いを堪えながら続ける。
「それで王様の割り箸を引いた人は番号を指定して何でもいいから命令をする。そしてその番号を引いた人が命令を実行するってわけ。……このブリの照り焼き最高ですね。レシピとか欲しいです」
「それはプレシアが作ったのよ」
「あら、レオ君に褒められるだなんて嬉しいわ。これアリシアとフェイトも好きって言ってくれたの。今度教えてあげるわね」
「あざます。……分かった?」
ひなちゃんが口に入っていた物を飲み込んで、オレンジジュースで一気に胃まで流し込み、プハーっと言うと一言。
「面白そうだけど、花見のときじゃないとダメなの?」
「ぐふぅ!?」
普通ははやての企みなどに面白そうと、嬉々として突っ込んでいくひなちゃんであるが、流石に花見中に王様ゲームはKYだった様だ。
諦めろ車椅子レーサー。王様ゲームはまた今度だ。貴様も花見を楽しめ。
「ぐす……ええもんええもん。どうせ私は空気読めませんよー」
「はやてちゃん泣いちゃったの」
「やりたかったんだろうね。王様ゲーム……」
「放っておいても数分で回復するわよ。私達はお花見を楽しみましょ」
すっかり意気消沈して羽鳥さんお手製のサンドウィッチを黙々と食べるはやてちゃんをなのはちゃんとすずかちゃんが心配そうに見つめていたが、やがて彼女のことは放っておく事にしたのか、さりげなくヤマトの隣を取ったアリサちゃんの元へ行ってしまった。
俺がその様子を見つめていると、フェイトちゃんが俺の近くに置いてある弁当袋をジッと見つめていた事に気がつく。
「どしたん?」
「ねぇレオ、その袋に入ってるのは何?」
「ああ、昨日の夕飯の残りなんだけどさ。何か持ってきた方がいいかなと思って何となく詰めて来てしまったけど、流石に昨日の余り物出すのも悪いかなあって思ってね。気にせんでいいよ」
「え、レオの手料理? 見せて見せて。て言うか食べさせて〜!」
アリシアちゃんが弁当袋を強奪してそれからタッパーを取り出して開けてしまった。
タッパーに入ってたのは昨日何となくで作った白身魚と春野菜のテリーヌ。
「うわぁ、何これきれーい」
「あらほんと、これこそレシピが知りたいわ〜」
「ソースも入ってるかけて食べて。……正直子供が食べさせる物じゃ無いけど」
「お、テリーヌか〜。ビールのつまみに合いそうだ」
あ、士郎さんもやって来た。昼間っから飲んで……それで午後の仕事は出来るんですか? ……え、今日午後からは休み取ってる? あ、そう。
来る前にキチンと切り分けてるし、ゼラチン多めに使ってるから形崩れはしない……と思いたい。
考えてみればそもそもテリーヌなんざ弁当に入れる物じゃ無いんだよ。俺のバカ!!
俺が後悔していると、早速テリーヌを口に含んだ皆々様。
「お、大人の味だ……」
「でも美味しいよ?」
「テラウマ。相変わらずレオの料理は美味い!!」
「素材の味をここまで引き立たせるとは……ごめんレオ君、後でこれのレシピ教えて」
いつの間にか復帰していたはやてからは絶賛ですか。それは良かったです。
「これは美味いな。ビールが進むし俺は好きだよ」
「もうあなたったら、私の料理とどっちが美味しいの?」
「そりゃもちろん桃子さんの料理だよ〜」
目の前で惚気るな。ほら近くにいる恭也さんと、この二次創作初登場のなのはちゃんのお姉さんの美由希だって呆れた様な表情してるぞ?
「もう父さんったら、比べるもんじゃ無いよー。ごめんねレオ君、ウチの酔っ払いが」
「いえいえ。次の鍛錬でぶっ飛ばすんで大丈夫です」
「お、おっきく出たねぇ。頑張って!」
……まぁ俺の場合剣道はなのはちゃんと五分五分位だから、なのはちゃんに安定して勝てる様になるところから始めなければ。
今の高町道場の強さって士郎さん>恭也さん>美由希さん=ヤマト>アリサちゃん>=なのはちゃん=俺だからそう考えると俺はまだまだ雑魚なんだよなぁ。
「……まぁ今は剣道の事は考えなくていいや」
お花見楽しも(現実逃避)
その後お腹いっぱいお弁当をいただき、のんびり桜を眺める。
俺の横にひなちゃんがやって来た。
「お隣いい?」
「どうぞ」
「お邪魔しまーす」
ひなちゃんが俺の隣に座り、桜を眺め始めた。
「平和だねぇ」
「そうだねぇ」
「この平和が続くといいねぇ」
「フラグを建てたから多分無理だと思う。ひなちゃんのおバカ」
「ふぇ!? ご、ごめんなさい……。あとフラグってなあに?」