見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
その後問答無用で捕縛しても良かったが、今回はあくまで俺のお客様と言うことで我が家へ招きクッキーと紅茶を出す。
無論スカリエッティはプレシアさんによって腰を縄でぐるぐる巻きにされて、我が家の柱に繋がれたため逃げる事はできなくなっている。
「……クッキーなんて初めて食べたが、これは美味だ。それに紅茶もこんなに香りのいいものを飲んだ事はない」
「レオってなんでも出来ちゃうからねー。流石自慢の婚約者ですよ」
「そうか。羨ましいな」
「「ウチの娘はやらないからな(ね)!?」」
アリシアちゃんとチンクの会話に、親バカであるプレシアさんとスカリエッティことスカさんが俺に詰め寄って来た。
「いりません」
「「なんだと(なんですって)!? ウチの娘に魅力がないと!?」」
「息ぴったりだなアンタら!? もう結婚しちまえよ!!」
違法研究者だし親バカだしでお似合いじゃねえか。なんて言ったら俺はプレシアさんに消し炭にされるんだろうな。
まだ消し炭にはなりたく無いから黙っておこう。
「それで、今回はどんなご用で? まさかお茶しに来たわけでも無いんでしょ?」
俺が本題を切り出すと、スカさんはグイッと紅茶を飲み干して芝居がかった動作をする。
紅茶お代わり入れとくなー。
「今日私が君の下へお邪魔したのは他でもない。……君のそのデバイスによる知識と才能を買って我が研究を手伝って欲しいんだ!!」
「ヘッドハンティングはお断りだよ。……と言いたいところだけど、一応詳しく聞いておこうか? 何を手伝って欲しいんだ?」
「無論戦闘機人についてだ」
「ジェイル・スカリエッティ、逮捕するわ」
「ちょっと待って!! せめて私の話を最後まで聞いてくれないだろうか!?」
問答無用で取り押さえようとするプレシアさん。
戦闘機人なんて言われたら誰でもそう言う反応するよな。でもスカさんは以前ギンガちゃんとスバルちゃんを捕まえようとしたクソ野郎よりも話は通じそうだし、プレシアさんみたいに何か目的があるのかもしれないし最後まで話を聞くとしよう。
「君はデバイスマイスターだが魔工学系に非常に強いと見た! 故に君に戦闘機人の義体となる腕や足なんかを作って欲しいんだ。私がやってもいいんだが娘は最高の身体で生み出してやりたいからね」
「まぁ神経関係の医療知識の勉強をして、遺伝子なんかを生体部品に培養すれば義手とか義足とか作れるだろうけど……どんな義体なの? 戦闘機人の子が成長するとともに人間のように大きくなる代物?」
「いいや。兵器としての義体さ」
「…………」
俺は無言で美味しそうにクッキーを頬張っていたチンクの方を向く。
お茶の途中に水を刺すが許してくれな。
「チンクも兵器として生み出されたの?」
「そうだな。私の場合だと身体能力の他に金属を爆発物に変える能力を持って生まれた。だからドクターやスポンサーからは敵組織の殲滅などのオーダーを受けるな。だが辛くはないぞ。頑張ったらドクターがご褒美に姉妹には内緒でファミレスに連れて行ってくれるからな。デザートにパフェなんかも注文してくれるんだ」
チンクは胸を張ってそんな事を言って来た。
その光景を見たフェイトちゃんはチンクを哀れそうな目で見る。フェイトちゃんもかつては犯罪の片棒を担いでいた身。羽鳥さんが手を回してくれたおかげで管理局に保護という形になったから前科は付かなかったものの、彼女の境遇に思うところがあるのだろう。
怖がりなフェイトちゃんは頬をペチンと叩くとキッとスカさんを睨みつけて弾劾する。
「あ、あなたは娘をなんだと思ってるんですか!?」
「娘は娘さ。私だってスポンサーの命令で仕方なくチンクを派遣してるだけで、命令がないなら娘の成長を間近で見ていたいのさ。……もちろん君の成長もね」
「ひぃ!?」
スカさん、いい加減学習しようよ。いくらフェイトちゃんを狙っていたとしても、彼女ら姉妹には親がいるんだぜ?
「アウトよ。ほら神妙にお縄につきなさい。チンクはうちで責任を持って育てるから大丈夫よ」
「あぁ、待ってくれプレシア女史! あ、か、関節はダメ! 関節はらめぇ!!」
「プレシアさんがスカさんをフルボッコにしてる間暇だなぁ。あ、ミゼットさんがこの間ミッドの高級店のプリン送ってくれたんだけど食べる?」
「え、いいの?」
「食べる食べる!!」
「ご馳走になる」
冷蔵庫からプリンとスプーンを持って来てみんなに渡す。
「プレシアさんはここおいておきますね」
「ありがとうね」
「グフッ……れ、レオ君私にもくれないかな?」
「悪い。このプリンは5人分しか無いんだよ」
「そうか、なら仕方ない。フェイト君、パパに一口くれないかい?」
「ひ!?」
懲りずにフェイトちゃんにセクハラを続けるスカさん。
だがその直後アリシアちゃんが立ち上がる。
「こらー! さっきから私の妹にちょっかいかけて!! フェイトはあなたの娘じゃ無いよ!! 私の可愛い妹でママともう一人の娘だよ!!」
「お、お姉ちゃん……」
「ならアリシア君が一口くれても良いんだよ。なんて言ったってアリシア君も私の娘のようなものなのだからね!」
「え!? 私もターゲットに入ってた!!」
スカさんの持論では娘であるフェイトちゃんの姉ならば彼女もまた自身の娘らしい。
ほんと気色悪いな。なんだか若干龍帝院と同じような匂いが……ごめん。あのクズ殿堂入りと比べたらスカさん可哀想だわ。
「さっきからなに言ってるのよこの変態!!」
そう言ったプレシアさんは右足をスカさんの足と足の間に入れて思いっきり……。
「ふんっ!」
「おごぉおおおお!?」
「プレシアさん……なんて恐ろしい事を!!」
「いつもリュウヤにやってたレオが言う?」
その後プレシアがスカさんをボコボコにし終わって落ち着いたのを確認してから話を戻す。
「てか娘が欲しいなら兵器じゃなくて良いじゃん。兵器としてこの世に生み出すって事は目的があるんだろ? 兵器としての戦闘機人を沢山生み出して最終的に何がしたいの?」
「世界征服さ。私にだって自己顕示欲があるのだが、犯罪者の身では私の功績なんて誰も評価してくれない!! プロジェクトFの基礎理論を立てたのは私なのに、プレシア女史に奪われてしまったようにね」
「確立させたのは私よ。基礎理論を組み立てるだけ組み立てて、飽きて投げ出したやつがよく言うわ」
プレシアさんの的確なツッコミを完全無視したスカさんは、まるで悪の科学者のように振る舞いながら続ける。
「ならば次元世界全てを我が手中に納めてみせるのさ! 誰も成し得なかった偉業を達成したその時、私の名を管理世界全ての人間が知る事になる!! 最高だとは思わないかい!? さぁレオ君、ともに新たな世界の夜明けを見に行こうじゃ無いか!!」
ほお、彼の欲望は承認欲求。それに性格からして気になった事はとことん追求する気質でもある。かなりタチの悪い研究者だな。
ならば同じ研究者である俺は彼に冷水をぶっかけてやる義務があるだろう。
「世界征服したあとどうやって世界を管理するの? 新しい体制とかは決めてる? 世界を手中に納めたら、その世界の人達を生活させるために色々しないといけないけど何か考えはあるの?」
「……世界征服した後のことを考えてなかった」
直後スカさんは両腕と両膝を地面につけて項垂れた。
そんな事だろうと思ったよ。
「ねぇチンク。よくこの人についていけるね」
「こんな人でも私達からしたら良い父上なんだ。……まぁ、たまに家出しようかなって考える時があるけど」
ほらチンクからの評価も微妙じゃないか。
「と言うかそもそも世界征服自体が気に入らない。なんて言うか……うん。ありきたりすぎる」
「なんだってぇえええええ!? だ、だったらレオ君が私のような境遇に置かれたらどうするというんだい!?」
「管理世界の仕組みを根本から覆せるほどの発明をする。確立させたのが次元犯罪者だとしても無視できないほどの素晴らしい発明をね」
「な!? だがたとえ完成させたとしても誰が作ったなど隠蔽されるだろう!?」
「管理局が隠蔽出来ないように、管理世界の住民大勢がいる中で開発したものの紹介でもすれば良いと思う」
「……っ!!」
直後スカさんは完全に崩れ落ちた。おーい生きてるかー?
俺がスカさんをさすったり頭を叩いたりして反応を確かめていると、プレシアさんがクスクスと笑い始めた。
急にどうしたんすか。
「なんと言うか……レオ君らしい答えね」
「うん。母さんのいう通りだ。レオらしい」
「それでこそレオって感じだよねぇ」
「なるほど……これが出来る科学者と言うものか」
「照れますな〜」
「くく、ふふふふ……」
突如笑い出したスカさん。一体どうしたと言うのだろうか。
「私は寝ぼけていた。そうか、そうだよ! 別に誰にも見向きされないから世界征服するんじゃなくて、いやでも見なければならない物を作れば良いんだ!! やはり天才児である君の下に来たのは正解だったようだ。ハーッハッハッハ!! こうしちゃいられない! 私は失礼す「行かせると思って?」え?」
「レオ君と話も終わったしもう良いわよね? 広次元犯罪者ジェイル・スカリエッティ、管理局法違反その他もろもろの疑いで逮捕させてもらうわ」
「ちょっと待ちたまえプレシア女史? ここは頑張れと送り出す所では無いかな?」
「知らないわよ。ほらとっとと行くわよ」
「チンク! 出番だ、助けておくれ!!」
「無理だドクター。流石にここで暴れたらレオが迷惑だろうし、たとえ外で抵抗したとしても私一人でレオとフェイト、アリシアの3人と戦うのは荷が重い。何も考えずに来たツケが回ったんだ、潔く罪を償おう」
「流石チンクは分かってるわね。いい執務官を紹介してあげるわ。それじゃあレオ君、お邪魔したわね」
「はーい」
この後スカさんとチンクはプレシアさんの手で逮捕されたのだった。
だが数日後クロノ君にスカさんが脱獄したと言う報告を受け、あの人は転んでもタダでは起きないなぁと感じたのだった。
そしてスカさんが脱獄してからさらに数日後。
ピーンポーン
「はーい」
「やぁ、また来てしまった」
今度はチンクが一人で我が家に来たのだった。
この世界のスカさんはなのセントみたいな性格になっております。