見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
スカさん共々逮捕したはずのチンクがやって来ました。
玄関で話すのもなんなので、我が家にあげてやる。
「スカさんと脱獄したんでしょ? また来たら捕まると思うけど」
「その心配はないさ。ドクターに一つオーダーを受けて私は敢えて脱獄しなかったから、きちんと裁きを受けた後に正規の手続きを経てここに来てるんだ。個人的に君に用事もあるしな」
そう言えばクロノ君はスカさんが脱獄したとしか言ってなかったな。
スカさんが脱出したからチンクも一緒に逃げたと思ってたけど別にそんな事は無かったってか。
おおスカさん、娘を置いて逃げるとは情けない。
と言うか管理局も管理局でせめて監視係とか付けろよ。……え? ここで暴れてもどうせ取り押さえられる人が沢山いるから問題ないって言われた?
ガバガバセキュリティにも程があるだろ仕事しろよ管理局。
「それでスカさんのオーダーって?」
「ああ。それは……あ、すまないが、その前に私個人の用事を済まさせてくれ」
チンクは思い出したかのようにそう言うと一つの紙袋を俺に差し出して来る。
中を見ると俺が貸してやった女物の服でキチンとクリーニングされていた。
「借りたまま連れて行かれてしまったからな」
「どうせ着ない物だから返さなくて良かったのに……」
『なーに言っちゃってんですか。家から出ない日なんかに着て鏡の前でポーズ取ってるくせに』
「アスカてめぇ」
ちゃうねん。似合いすぎるし動きやすいから部屋着として愛用してるだけやねん。
てかなんでバラされたくないことバラすかなウチのデバイスは。マジでバラしてやろうかこいつ?
「貸してくれてありがとうな」
「……どういたしまして」
そしてアスカの発言を追及したりしないチンクさんマジ天使。どこぞのバーニングなお嬢様とは大違いだよ。
まぁ何はともあれチンクの用事は借りパクして行った服の返還だけだったようだ。なら話を戻してスカさんのオーダーについて聞かせてもらおう。
「それでスカさんのオーダーって?」
「レオの助手になって、研究のあれやこれやを盗んで来いと言われてな」
「堂々と産業スパイします宣言された俺はどうすれば良いのだろう?」
と言うか正直者のチンクを産業スパイに寄越すなんて明らかなる人選ミスやろスカさん?
有無を言わさずにクロノ君を呼んでチンクを回収してもらってもいいが、一応詳しく話を聞いてみると、別に俺の研究成果を盗んでスカさんが発表しようとしているのではなく、戦闘機人以外にいいアイデアが思い浮かばないため、何かアイデアが欲しいだけなのだと言う。
「と言うわけで私を助手として雇ってくれないだろうか?」
「審査を行なった結果、残念ながら採用を見送らせていただくことになりました。今後の貴殿のご健闘をお祈り申し上げます」
「そんな……。結果を残せずドクターの下へ帰る事はできない。別にレオの家に居座ろうと思ってはいないんだ。ゲンヤ・ナカジマと言う人が私の身元引受人になってくれたから管理局で働きながら任務のない時にお邪魔するだけだ。研究を盗む分助手としてしっかりと手伝うからここは一つ私を助ける為だと思って……」
知り合いが身元引受人になっていた件について。
ふーん。常に我が家に居座ると言うわけでないなら、別に盗まれないように気を引き締め続ける必要は無いだろうし、なんなら行き詰まってしまった研究なんかが結構あるからそれをチンクに渡せばスカさんが完成させてくれるかもしれない。
それにパワードシステムやフルダイブシステムとか俺にとって重要度の高い研究は手伝わさなければ盗まれる事は無さそうだしな……。
……そう考えたら別に悪い話ではないか?
「……来るときは前日に一本連絡くれるならいいよ」
「助かる。ならば私はレオの助手兼一番弟子という事だな」
「一番弟子? それは違うな」
ピーンポーン
直後我が家のインターフォンが鳴った。
今日は予定が合う日で来るって連絡を受けてたけど、今からだなんて本当にナイスタイミングだな。
チンクにリビングで待ってるように告げて、お客様を家に上げる。
「こちらにいるすずかちゃんが一番弟子で、その隣のはやてが二番弟子。残念ながらチンクは三番弟子や」
「なんと、既に姉弟子がいらっしゃったか」
「えーと……レオ君のお友達?」
「いきなり姉弟子と言われた私らはどうすれば良いんやろ?」
二人に紅茶を入れてやった後に改めて二人にチンクを紹介する事にした。
「こちら助手を志願してきたチンクさん。別の研究所から派遣されて来た産業スパイらしい」
「チンクだ。レオの研究内容を盗むようにドクターにオーダーを受けて来た。よろしく頼む、姉弟子殿」
「月村すずかです。えっと……一応立場的には姉弟子ではあるけど、序列なんてないから仲良くしてくれると嬉しいかな?」
「八神はやて言います。……それにしても自分から産業スパイだってぶっちゃけるなんて、随分と正直者なスパイさんやねぇ」
すずかちゃんとはやてに彼女が産業スパイであると事前にぶっちゃけて、警戒させようと思ったのだが、二人にとってはチンクの清々しいまでに正直者な所に好感が持てたようで、あっさり仲良くなってしまった。
「それじゃあ早速始める?」
「そうだね。チンクちゃんもいるし、基礎の復習も兼ねて1から教えて?」
「了解」
「二人は姉弟子……て事はこれからデバイス工学の講義の時間なんだな」
「そう言うことや。助手をやるならしっかり基礎を学ばないとあかんで?」
「ああ。指導鞭撻のほどよろしく申し上げる」
「はいはーい。それじゃ授業を始めます」
〜三時間後〜
「?????」
流石に初心者にはデバイス工学は難しすぎたらしく、目をグルグル回して混乱してしまっていた。
「懐かしいなぁ。私も初めはわけが分からなくて混乱したもんや。思えば私も遠くまで来たなぁ……」
「その点すずかちゃんは混乱もせず一度教えただけで、あっさりと自分のものにしたけどねぇ」
「すずかは優秀なんだな……」
「いやぁ。私は携帯電話とか時計とかを弄ってて、工学の知識があったから分かっただけだよぉ」
謙虚なところも素晴らしい。
だがまぁチンクも筋は悪くない。この分なら週一で来たとしても半年もあれば助手として活躍してくれるだろうな。
「とりまこれで今日の授業はおしまいね。これからどうする? 休憩してから帰るならお菓子でも用意するけど」
「ううん。私はこれからお姉ちゃんと用事があるから」
「私はこれから特売やから、シグナムたちと合流や」
「あ、今日特売だった。なら解散だな」
「そうか。なら今日のところは私も失礼しよう」
その後チンクをハラオウン家に送ってから、俺もスーパーへ足を運びはやてや羽鳥さんと激戦を繰り広げるのだった。
チンクがレオの助手になった。週一でレオの家に来るようになった。