見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
俺とチンクが兄妹となった翌日。
丁度チンクも休みだったので彼女に許可をもらいスカさんと通信をする事にした。
スカリエッティ研究所専用端末であるピアノっぽい操作盤を慣れた手つきで叩くチンク。しばらくするとモニターにスカさんが映し出された。
『やぁやぁパパだよ〜。おやレオ君も一緒か、久しぶりだ我が息子よ!』
「アンタみたいな変態な親はお断りだよ。道徳を学んで出直して来な」
『がーん!!』
やたら大袈裟に落ち込んだ素振りを見せるスカさん。
今の発言からチンクと俺の関係が分かっててスパイに寄越しやがったな? それにどうせ理由なんて面白そうだからとかこんな感じだろう。
ぶっ飛ばしてやろうかこのマッドサイエンティストめ。
「ドクター、改めて聞かせて欲しい。私は兄上の母君のクローン。間違いないな?」
『ククク、そうさ! その通りだとも! チンク。君の遺伝子はそこにいるレオ君の母親、レーヴェ・ベルフェリアの物だ!!』
ベルフェリアって車のヴェルファイアをもじったのか?
適当にそれっぽく直せばいいってもんじゃ無いんだよ。分かってるのか作者ァ!!
『だがいくら顔が似てると言っても、こうもあっさり気づく物なのか……一体どうやって見破ったんだい?』
「私はなんとなく分かったぞ。だからドクターに話をしたかったのだが、いかんせんタイミングが見つからなくてな……」
「俺はこれで気づいた」
俺はそう言って魔王の心臓を取り出す。
スカさんはそれを見ると数秒の間硬直して、「あらぁああ!?」と言いながら椅子ごと背面に倒れる。
『いったぁああああああ!!!! 頭がぁああああああああああ!!??』
『あ、ドクター! だから机に足を乗せてはいけませんと言ったじゃ無いですか!!』
頭を押さえながらゴロゴロ転がるスカさんをエプロンをつけたスカさんと同じくらいの年齢の女性が起こす。
嫁さんかな? いやなんだかお母さんみたいな人だ。
「チンクのお母さん?」
「いや、長女だ」
「長女というと、スカさんとか脳筋な三女や色々とヤベェ四女のメガネの行動に頭悩ませてる姉妹のお母さん的立ち位置の人よな?」
「そうだ。趣味はお裁縫。特技は料理と家計簿をつける事。最近の夢はお嫁さんらしい」
『ちょっとチンク!? 内緒にしててって言ったじゃない!!』
悪い事は言わないからチンクみたいに自首しなさいよ長女さん。
その後長女さんはスカさんの無事を確認すると家事に戻り、スカさんは一通り悶絶するとよろよろと起き上がり、今までの余裕そうな顔から一転してありえないと言った顔を浮かべて魔王の心臓を指差す。
『こ、これは魔王の心臓じゃないか!? え、な、なんで? どうしてレオ君が待ってるの!? いや、それはいい。別にいいんだ。……魔王の遺産であるロストロギアを持てるのはその血族だけなのに一体どうして持ててるんだい!?』
「え? 魔王家の子孫だから。スカさんもそれが分かってたからチンクを産み出したんじゃ無いのか?」
『はぁあああああ!? レオ君が魔王の子孫!? レオ君のお母さんがなかなか便利なレアスキル持ってたから遺伝子をちょちょいと失敬しただけで、私そんなの聞いてない!!』
どうやらスカさんは今世での俺の母のレアスキルであった金属を爆発させる能力を見込んでチンクを産み出しただけで、魔王と宮坂家……いやベルフェリア家と魔王家の繋がりは知らなかったらしい。
なんだ、偶然かよガッカリした。
『え、待って? て事はチンクってもしかして……』
「魔王の血を継いでいるそうだ。兄上、魔王の心臓を貸してほしい」
「はいよ」
「ありがとう。ほら」
チンクが右手で魔王の心臓を掴んで持っている様子をスカさんに見せるとスカさんは俯く。
『ククク……フフフフ……ハーッハッハッハッハ!!』
『おぎゃぁああああ!!』
『あぁああああああ!!』
『びぇええええええ!!』
『あぁ……ドクター!! やっとセッテとオットーとディードが寝てくれたのに、大声で笑ったから起きちゃったじゃ無いですか!!』
『ごめんよウーノぉおおお!!』
『もう! チンクがいなくなってただでさえ妹達の面倒が大変になったのに……』
「おや? 三人はまだ試験管から出さないんじゃ無かったか?」
『いやぁナンバーズも兵器として運用する気が無くなったから、赤ちゃんから育てようと思ってね。……話を戻そう。まさかチンクに魔王の血が混じっているとは衝撃だった。ならばチンクよ。パパのお願いをちょっと聞いてはくれないだろうか?』
「オーダーか。今の所管理局の仕事は週二で休みだし、二日間での活動でよければ引き受けるが……」
『あ、なら無理だな。タダでさえ週二の休みの一日をレオ君のスパイに使ってもらってるのに、休み返上で働かせるわけにはいかないからね』
意外とホワイトな悪の組織であったとさ。
まぁスカさんはマッドサイエンティストのくせに娘に対しては親バカとも言える対応してるっぽいからなぁ。
「スカさん。このタイミングでのオーダーって事は魔王関係の調査か遺物の捜索についてだと見た。何を命令しようとしたのかちょっと聞かせてみ? 暇なら俺が調査、捜索するけど。もちろんゲッチュした遺物とかは管理局のものね?」
『そんなご無体な!? 端っこ! せめて端っこだけでも分けておくれ!! 悪用したいんじゃなくて、解析して別の技術に使えないか考察したいだけなんだ!! あと命令じゃなくてお願いだから! 可愛い娘に命令なんてしないから!!』
「さいでっか。それで、チンクに何を頼もうとしたの?」
『魔王の遺産の捜索さ』
詳しく聞いてみると……てか尋問してみると、俺が魔王の心臓を見つけた遺跡はあくまで本命の宝物庫の鍵が納められていた宝物庫なのだと言う。
「鍵? …………あぁ、こいつの事か」
『そうさ。レオ君の持ってる魔王の心臓こそが本命の宝物庫を動かす為の動力源。……つまりは鍵だ』
どうしてそれをスカさんが知ってるのかは知らんが……と言うか聞きたくもないが、それが事実ならばなかなかにロマンのある話じゃ無いか。もしかしたら魔王の心臓を見つけた遺跡に何か手がかりが残ってるかもしれないし、色々調べてみてもいいかもしれないな。
『それじゃあ私はここら辺で失礼させていただくよ。……あ、そうそう。レオ君は最高評議会を潰すつもりなんだろう?』
「そうだね。邪魔する為にチンクの姉妹を送るなよ? 送ったらその姉妹は死体になって帰ってくるからね?」
『邪魔なんてしないさ。君に娘を殺されたくないからね。ただ……せっかくだから私も手伝いをしようと思う』
「手伝い?」
『詳しい話はお楽しみだ。なぁに、少なくとも君達の邪魔をする為でも命を狙う為でも無いさ。クククククク……』
スカさんはとてもドス黒い邪悪な笑みを浮かべていた。
「ドクター。それは妹が泣くからやめてくれと言ってるだろう?」
『あ、そうだったすまない』
締まらないなぁ。