見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
避暑地から帰還した俺は、数日自宅でのんびりした後、最高評議会の公開処刑の日を迎えた。
え、花火はどうなったか?
特に何も無かったからカット、どうせ駄弁ってるだけだし。
「この間は悪かったな。せっかくの旅行に水を刺して」
「いいよ、おっちゃん。自分を優先した結果知人が死にましたってなったら笑えないし。それに邪魔されたストレスは犯人で発散したから」
「犯人でストレス発散しないでほしいのだが……まぁ、見せしめになってるから良いだろう。それでは今日はよろしく頼む」
「了解ですっと」
今日の俺の役目はいつも通りおっちゃんの護衛をしつつ、最高評議会があの世へ旅立つ瞬間をこの目で見届ける事。また最高評議会派の人間が邪魔しないように警備は地上本部と次元航行部隊が合同で行なっているが、それを突破された場合の最終防衛ラインも務めている。
責任重大なお仕事だな。
「や、レオ君。今日は頑張りましょうね!」
「えっと……あ、ドゥーエお姉ちゃんか。またスパイで潜り込んだの?」
「うん。ドクターから脳みそ共が消える様を間近で見て来いってお願いされたからね。これが終わったらチンクも呼んでみんなでパーティーしましょ?」
「えー、流石にスカさんとつるんでるのがバレたら本局とかがうるさそうだしなぁ。せめていっぺん管理局に裁かれて綺麗な体になってほしい所だけど……」
「やっぱりそうなるよね〜。でもドクターったらこの指名手配の身だからこそ、ぶっ飛んだ研究をしたときの反応は凄まじいに違いないって気合い入っちゃってるから……」
「お姉ちゃんも大変だねぇ……」
え、こんな場所で堂々と会話してたらそれこそバレないか? 大丈夫、バレたときはドゥーエお姉ちゃん売るから。(ゲス顔)
しばらくドゥーエさんと雑談をしていると最高評議会の脳みそが入った試験管三つが地上本部に運ばれて来て綺麗に並べられる。
『ぐぬぅうう……レジアス! 今ならまだ間に合う。こんなバカな事はやめるんだ!』
『それに我々は管理局の未来の為に……!!』
『そうだ。我々がいなくなったら管理局の未来は……』
最高評議会の命乞いのも言える発言に、おっちゃんは地上本部のすぐ近くで見ている民衆の人達を指差す。
「見てみるがいい。ここにいるのは貴様らによって家族を奪われた者。友人を奪われた者。使い潰されて罪を背負わされた者達だ!」
そう。そこにいる数百人と呼べる人達は全員最高評議会の被害者。
罪を背負わされた人もすぐ近くに監視がついているがここで見届けることが許されている。クロノ君を始めとした執務官の皆様が彼らを調べて、必要に応じて減刑や釈放をするそうだ。
「改革に犠牲はつきものであると言うのは否定しない。儂のやろうとしている改革も魔導師の才能がある者の人生を犠牲にする可能性があるからな。だが!! いくらなんでもこれほどの犠牲を出した貴様らを許しておくわけにはいかん!!」
おっちゃんの言う通り、流石に数百人規模での犠牲はやり過ぎだろう。
そもそも改革に犠牲がつきものと言っても、犠牲になった人達にどう言う補填をするかを全部含めて改革と言える。
それを怠った最高評議会どもは間違いなく、吐き気の催す邪悪だろうな。
「貴様ら老兵の手を借りずともこれからは儂らで管理世界の未来を「レジアス中将、そこから先は生命維持装置を停止する直前に言うべきかと」……そうだな。すまん、熱くなりすぎた」
俺はこっそりとレジアスのおっちゃんを止める。
だが俺がおっちゃんを止めた。つまり最高評議会の前に姿を現してしまったことで最高評議会の標的は俺になったようだ。
『元はといえば貴様が全ての元凶ではないか!!』
『そうだ。貴様の卓越した頭脳、そして魔王の遺産は我々のために使われるべきだったのだ!!』
『我々を貶めて次は貴様が管理世界を支配するつもりか! 古代の戦乱を再現するとでも言うのか!?』
「……レジアス中将、発言の許可を。後とんでもなくゲスなこと言うのでお許しいただければ」
「許可しよう」
流石に両親の仇にそう言われては口汚く罵りたくなるだろうと思ったであろう。おっちゃんから発言の許可をいただく。
「管理世界を支配する? 何をバカな事を言ってるんだ? ご先祖様みたいに世界を支配したら管理が面倒くさいでしょうが。それに世界を俺のものにしたとして、新たな体制を作り法整備をする間は無法地帯だ。その間に何人の人が死ぬ? 支配なんて労力だけがあって恨みも買うものなんかになんの魅力もないね」
『な、ならなぜ我々を貶めた!?』
その言葉に俺はゆっくりと試験管の前に立ってとても邪悪な笑みを浮かべる。
「簡単だ。お前らが邪魔になる存在だったから」
『な!?』
「最高評議会さん。別に俺だってアンタらと対面して問題が無ければ話し合いで解決しようと思ってたんだよ?」
本心だ。もし最高評議会がどういう未来の為に協力してほしいと真摯に訴えて来ていたならば、俺はカメラを止めて話し合いに応じる気でいた。
「でもアンタらは従わないなら友達の命を奪う。俺の身辺を脅かす。……そう脅して無理矢理言う事を聞かせようとしたじゃんか。流石にそれは容認出来ませんわ。だから自分や友達の身を守る為にも、ここで逃したら次は何をしてくるか分からないアンタらを排除したってわけ。管理局の未来じゃ無い。俺の未来を守る為にね」
『な……自分自身の為。そう言いたいのか!?』
「当たり前じゃん。嘱託の仕事もお給料出るし司法取引でやってるだけなんだから」
「レオ、周りの目もある。それくらいにしておきなさい」
「了解です」
流石に今の発言は仕事を真面目に取り組んでいないと誤解を生んでしまう発言だからな。もしかしたら後でおっちゃんから発言について叱られるだろうが、まぁそれは甘んじて受け入れよう。
「……そろそろ時間だな。それではこれより最高評議会との世代交代の儀式を行う!」
開始時刻になった為ここからはおっちゃんに任せるとしよう。
世代交代の儀式と言っても、最高評議会の罪状を読み上げて、世代交代を宣言。そして一言ずつ最高評議会の最後の言葉を聞き、生命維持装置を止めるものだ。
かなり悪辣な儀式であるが、流石に管理局を創設した本人をただ処刑するわけにはいかない為このような形を取ることになったのだ。
そして罪状を全て読み上げ切ったおっちゃんは大声で宣言する。
「本来ならば死刑になってもおかしく無い悪事の数々……だが最高評議会の方々は管理局の礎を作ったお方達でもある。故に生命維持装置を止める事で彼等を天に還し、改めてここに世代交代を宣言する!!」
『……マスター』
「了解」
直後最高評議会の被害に遭った人達から大歓声が上がる。
だがその瞬間俺はおっちゃんの前へと躍り出てシールドを展開。
「ど、どうしたレオーっ!?」
「……狙われてたよおっちゃん」
非常に離れた所から銃火器を備えたスナイパーによりおっちゃんは狙われていたため咄嗟に守らさせていただきました。
ここら近辺には中継機を置いて周辺情報の全てがアスカとカリバーに届くようにしており、怪しい動きをする奴らは全てこちらに筒抜けになっていたってカラクリさ。
そして狙撃した奴は丁寧にバインドで縛り上げて、死なない程度の電流を流して気絶させたから後で回収してもらおう。
だが中将が狙撃された事で現場は大混乱。一般局員はパニック状態の一般人を守るので精一杯だ。
「さて、混乱したどさくさで奴らが最高評議会を助けるのは目に見えてる。ドゥーエさん、レジアス中将の護衛は任せました!!」
「了解です!!」
近くにいたドゥーエお姉ちゃんに仕事モードで指示を出すと、魔力を集中させて辺りを索敵する。
……。
「はいそこ!!」
「ごぶぇ!?」
そして俺が誰もいない空間に、震脚からの崩拳を叩き込むとそこに一人の魔導師が現れて見事に吹き飛ぶ。
びっくりしたー。まさか光学迷彩を使って来やがるとは。少しでも反応が遅れてたら最高評議会と接触していたかもしれない。
レアスキルかなんかで移動される可能性も大いにあるから、接触はなんとしても阻止しなければな。
……む、まだいるな。反応は複数、手練れもいる。ちょっとこれは警戒レベルを上げたほうがいいな。
なんで最終防衛ラインまで侵入を許してるんだ。
仕事をしろよ管理局ぅうう!! と思ってる方、相手が一枚上手だったって事で。