見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
魔法で辺りを索敵して敵の大体の位置を割り出す事には成功したが、ここからその位置を見ても敵の姿はいない。
魔力を偽造したフェイク? もしくはさっきの光学迷彩は殴り飛ばした魔導師のレアスキルじゃなくて何か道具を使った?
「……AMF展開」
パチンと指を弾き取り敢えずAMFを展開してみる。
パッと見て魔導師しかいないみたいだし、そいつらを相手にするならAMFを張っておけばまず間違いは無い。
それに魔力による道具で姿を消しているならAMFで打ち消せるはずだ。
直後魔力反応のあった場所から複数の魔導師が姿を現した。
「な……、AMFだと!?」
「馬鹿な……AAAランクの高位防御魔法だぞ!?」
「このガキがこれほどの魔法を使うとは……!」
「はい取り敢えず発見っと」
すぐさまバインドで拘束する。
いやいや動揺して隙を晒したらダメでしょ? 咄嗟にバインドを回避した大型の剣を持ったベルカ系魔導師の男と、杖を持ったミッド系の魔導師の女を見習いなさいよ?
「属性変換、《スタンバインド》」
「あがばばばば!?」
「ぐべべべべ!?」
大概バインドで拘束したくらいじゃ手練れの二人が解放してしまうのがオチだ。そこでバインドに電気を流して確実に意識を刈り取ってやる。
これで最悪の場合でも数の利で最高評議会を奪い返される心配は無くなった。いや今の状態でも1対2で俺が不利なんですけど……。
そんな事を考えながら黒焦げになって倒れた雑魚魔導師はこのまま捨ておいて、手練れの魔導師二人と相対する。
「ぐ……まさかこれほどの魔導師だったとは……」
「これは……些か油断しすぎてしまいましたねぇ」
『おぉ、お前らは……』
『よく助けに来た! だがいたのならば何故もっと早く助けに来ない!?』
『い、今はそれもどうでもいい。早く我々を離脱させるのだ!!』
この状況下でも上から目線をやめない最高評議会の脳みそども。その歪んだ精神だけは心から尊敬するよ。
俺だったら「この状況下でも上から目線だと!? ふざけんな!!」って言って帰るだろうに。
俺がそんな事を考えていると、魔導師の一人が口を開く。
「単刀直入に言う。最高評議会の方々を解放しろ。この方達は管理局の未来に必要だ」
「断る。てかアンタらは後ろの被害者達が見えないの? そんな人達の前でよくそんなこと言えるね?」
「あなたは何を言っているのです? 最高評議会の……管理局の礎となった。それは光栄な事ではありませんか? なのに最高評議会を逆恨みするなど……それこそ恥を知るべき事です」
『そうだ。コイツの言う通りだ!!』
『やはり目をかけてやったのは正解だったようだ!!』
『いいぞ、このままこのガキをやってしまえ!!』
あー、はいはい。今の発言で分かっちゃったよ。コイツら最高評議会の妄信者の連中ですかい。
一体どう言う甘言を囁かれ続けたかは知らないが、コイツらは最高評議会のする事為す事を絶対と思い込んでいるのだろう。
社会的信用が完全に無くなって助けてもなんの旨味も無くなった最高評議会なんて助けるメリットが無いだろうと思っていたが、妄信者ならば納得が行く。
「最後にもう一度だけ言おう。最高評議会の方々を解放するんだ」
「だから断るって言ってるだろう?」
「後悔しますよ?」
「やれるもんならやってどうぞ?」
直後女が杖を構えたと思うと足にバインドをかけられ、その直後男が真っ直ぐ突っ込んで来た。
なるほど足にバインドをかけられては逃げる事は出来ない。男と正面から斬り合いをせざるを得ない状況になってしまった。そしてその隙に女が最高評議会を解放する。もしくは、斬り合っている間に背後に回って攻撃を仕掛ける。そんな感じだろう。
「ま、相手のやり方に付き合ってやる必要はないわな」
俺は懐から袋を取り出すと、中に入っていた粉を掴み男の眼前にばら撒く。
「ぐぅ、目眩しか。卑怯な……! だがこの程度……一時凌ぎにもならんわ!!」
男はそう言って咄嗟に目を押さえながらも真っ直ぐ突っ込んで来た。
男は目を潰されて距離を取ることこそ俺の思うつぼ。そう思ったんだろうな。突っ込む事こそ俺の思う壺だったと気が付かずに。
「甘い。《ランブルデトネイター》」
「なー!?」
直後、ばら撒いた粉が男を巻き込みながら爆発する。
この粉はランブルデトネイターの対象となる砂鉄と、粉塵爆発を誘発する為の小麦を混ぜた物。
目潰し用ではなく爆発用だったというわけだ。
「しまった!!」
爆発に巻き込まれてダメージを負い体勢を崩した男にアスカを振りかぶると、女の方が救援へ向かおうとするが爆発という予想外の事態で反応が遅れたようだな。
「《フリージングカリバー》!!」
「がっ!?」
「からの崩拳ドーン!!」
「ッハ……!?」
氷の魔力を纏った一閃で男の身体が凍りつき動きを止めると、そのまま崩拳を叩き込み意識を刈り取ってやった。
「さて、後一人だな」
『な……ひ、卑怯だぞ!!』
『そうだ、貴様には局員としての誇りは無いのか!?』
こんな小ちゃな子供に大の大人二人がかりでかかってくる方がよっぽど卑怯だと思うんだけど……いや、俺はチート持ちだしこれくらいが丁度いいのか?
「卑怯? 褒め言葉だね。俺の戦いは卑怯そのもの。初見殺しを突破できない様なら俺には勝てないよ。あなたはどうする? 投降するなら痛い目には合わないけど」
「ぐ……勝ち目はない。……ですが最高評議会の皆様を助けるためです」
そう言って凄まじい量のスフィアを撃ってくる女。
俺は懐からフラガラッハを展開して、俺に襲いかかる全てのスフィアを跳ね返してやる。
「な!? うぐ……」
「おっと、咄嗟にプロテクションを張ったか……。でも甘いな」
すぐさま足のバインドを解いて、プロテクションで跳ね返ってきたスフィアを守り隙ができた女の背後に回る。
「《スタンブリッツ》」
「カハッ……」
「せーの、どっせぇい!!」
あくまで気つけの為の電気魔法で一瞬だけ身体を麻痺させると、彼女を思い切り空高くに投げ飛ばす。
そして5Sの魔力を存分に使い、ゴリ押しの雷をぶちかましてやる。
「《トールサンダー》!!」
……これをマトモに食らったらまず意識はぶっ飛ぶ。なんて言ったって跳ね返されたら俺でも意識が飛ぶ代物だ。
「おっちゃん。全員やっつけたよ」
「……流石だ。襲撃があった以上本来ならば一時延期をするのだが、延期をしてしまえば最高評議会派の連中に準備の時間を与えるだけ。予定通り儀式を進めさせてもらう」
ここで伸びている襲撃を仕掛けてきた魔導師の連中や、ここから遠くの方に落下したゴリ押し殺法の餌食となった女を手早く手の空いてる職員に確保してもらい、再び儀式を続けることになった。
「……それでは改めて、儀式を再開させていただく!! 奴らの罪状については先ほど話した通りだ。この悪事の数々は死刑になってもおかしく無いが、最高評議会の方々は管理局の礎を作ったお方達でもある。故に生命維持装置を止める事で彼等を天に還し、ここに世代交代を宣言する!!」
襲撃があったから手早く終わらせてしまう腹づもりなのだろう。おっちゃんはさっさと最高評議会の試験管の前へと行く。
「さぁ、最後に何か言い残した事があれば言うがいい」
『……我々は、そもそも狙った相手を間違えてしまった様だ』
『世界をひっくり返しかね無いほどの知能に加えて、これほどの実力とは……奴を狙った事が我々の敗因なのだな……』
『レジアスよ。せいぜいあの小僧に寝首をかかれない様にする事だ』
圧倒的な実力の差を間近で見てしまった最高評議会の面々はようやく観念したのか、呆然とそう呟いた。
いやー、ザマァないね。
あとおっちゃんの寝首はかくつもりは無いよ? なんて言ったってあれだけお世話になってるんだし。
「……ここへ来ても遺族に対しての謝罪の言葉もないとは呆れた奴らだ。もはや貴様ら老兵の力を借りずともこれからは儂らで管理局の未来は作っていく。……レオ、最後にコイツらに言いたい事があるなら言いなさい」
「ありがとうござます。……せいぜい地獄で今までやってきた罪を償うんだな。全く、悪い事をしなければ偉人として後世に名を残せたのにバカな奴らだよ」
「……よし。やれ」
おっちゃんが生命維持装置の近くにいた職員を促すと、彼らは生命維持装置を操作して生命維持装置の電源を止める。
最高評議会の連中は一瞬くぐもった様な声を上げると、やがて静かになった。
「……これにて世代交代の儀式を終了する。これから地上本部の新体制について講話を述べたい所ではあるが、今は管理局を作った3人の英雄の冥福を祈ろうでは無いか」
おっちゃんはそう言うと会釈をして壇上から降りる。
こうして最高評議会の時代は終わり、新しい時代へと進んでいくことになった。