見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
最高評議会がこの世から消え去ってからは、ビックリするほど平和な日々が続いている。
奴らが裏で押し進めていた戦闘機人についての研究も、最高評議会というスポンサーがいなくなった事で戦闘機人による犯罪も少なくなっていているし、そのおかげで地上本部も防衛に専念する事が出来ているため、嘱託のお仕事も今では気を楽にして行う事が出来ているのだ。
「は〜、やっぱり平和っていいね〜」
『ですね〜。ですがマスターがフラグを建てたから、この平和な日々もこれでおさらばですよ。どうしてくれるんですかこのバカマスター』
「おうアスカ、デバイスの分際でマイスターの俺に喧嘩を売るなんていい度胸だな? そもそもフラグを建てたって言っても現実じゃ急に平和な日々が終了するなんて事は……」
ピンポーン
『……何か言うことは?』
「いやいや、三階から地下一階までの掃除が大変過ぎてルンバを二台注文してたからそれが届いたんだよ。はいはーい、今開けまーす」
そう言って扉を開けると、メチャクチャ顔色の悪そうなヤマトの姿だった。
「……すまん、デバイス壊したから……修理頼んでいいか?」
「……」
『……何か言うことは?』
「フラグ効果すげー」
平和な日々、終了しましたクソッタレ。
「ま、デバイスは後でいいよ。顔色悪いけど一体どうした? 風邪か?」
「いや、嘱託でなかなか強い奴がいてな。良い一撃を貰っちまった……ゲホッ、ゴホッ……!!」
ヤマトはそう呟くと同時に咳き込んだかと思うと、吐血しやがった。お前の血で家汚したらぶっ殺すからな?
そう毒づきながらもアナライザーで確認してみると……折れた肋骨が肺に突き刺さっているという悲惨な状態。
あー、うん。
「ヤマト、アスカロン持ってて」
「? おう……」
「アスカ、フェニックスカートリッジをロード」
『はいはーい』
以前使っていた残りのフェニックスカートリッジをロードしてヤマトの身体にひなちゃんのフェニックスウイングの魔力を循環させる。
「……痛みは?」
「無くなった」
「よろしい。次からはダメージ受けたらひなちゃんの所に行くように……あ、よく考えたら今日はひなちゃんは塾の小テストで悪い点取って補習で夜までいないんだっけ?」
「そういう事だ。一応シャマル先生にも見てもらったけど、彼女じゃ治しきれないみたいだし、ひなを待つにも結構キツイからお前のところに来たって訳だ」
つまりコイツは修理もあるがフェニックスカートリッジでの治療も期待していたって訳か。
ちゃっかりしちゃって、治療費はきっちり請求しますからね!?
まぁそれはさておき……
「……それでグラディウスを壊したんだってな。取り敢えず見せてみ?」
「ああ」
ヤマトから彼のデバイスであるグラディウスを受け取り見てみると、今までのように剣の部分が折れたとか銃口が歪んだとかそう言うのではない。大破、そう言っていいほどのダメージを負った悲惨なグラディウスの姿があった。
「……何があった?」
「とある違法研究所が恐ろしい実験をしていてな」
ヤマト曰く、複数のロストロギアを合成すると言う頭のおかしい研究をしてやがった研究所の制圧を任されていたそうだが、制圧している途中で研究所は研究の成果という名の最終兵器を持ち出して来たのだと言う。
「ロストロギアの融合体が組み込まれた傀儡だったんだが、そいつは俺の言霊を封じてきてな。しかも強いのなんのって……情けない事に敗走することになった」
「言霊……レアスキル封じか。ヤマトにとって一番辛いデバフだな」
「あぁ。おかげ様で言霊を封じられてこのザマだ」
何でも現在は言霊が使えず傷の治療も出来なかったと。
シャマル先生が言うには数日で再び使えるようになるとの事だが、ヤマトが回復する頃にはもう違法研究施設の奴らは逃げている……いや、もう移動を完了しているだろうな。
「なるほど、素のヤマトでも苦戦を強いられる相手なのに、言霊は使用不可という縛りプレイだったと……そりゃ負けるわ」
ヤマトで負けるなら俺が戦ってもキツそうだな。……いや、レアスキルを封じられるって事はランブルデトネイターは使えないだろうけどそれ以外なら使えるか? ならばオールユナイトフォームでゴリ押せば俺ならワンチャン勝てそうではあるが……。
……やめておこう。ヤマトもリベンジしたがってるし、俺がやったら恨まれそうだ。
「今回取り逃した事で捜索からやり直しになったらしいし、数ヶ月は猶予があるだろ。その間に修理できるか?」
「もちろん。フラガラッハの借りもあるし、タダで引き受けたらぁ。その間恭也さんの所とかで修行でもしてな?」
「助かる。……あ、一個頼んで良いか?」
「お前が頼みとは珍しい。どうしたんだ?」
「この際グラディウスの強化を頼みたいんだ」
「ほう? どんな強化をご所望で?」
「グラディウスは剣と銃のワンセットだろ? それをもう一セット作って欲しいんだ」
「なるほど、二刀流二丁拳銃スタイルで戦えるようにしたいと。……随分と無茶振りするじゃねえかテメェ……」
なんて言ったってグラディウスは神特製デバイス。そんじょそこらのデバイスを作るのとは訳が違うのだ。
それこそアスカやカリバーの時にやった様な究極デバイスを作る勢いでやる必要があるのだ。
「俺もかなり無理難題を押し付けているとは思うが、頼めないか?」
「……ま、オリ主を引き立てるのが踏み台の役目だしな。それに普段お前の相手をしてるからグラディウスの性能もよく分かってる。良いだろう。暇な時にもしグラディウスを強化するならこんな感じか? って強化案は考えてるからそれも追加してやる」
「え、マジで? それは助かる! ダメ元で頼んで見たがまさか引き受けてくれるとは!!」
なんでもグラディウスの修理まではしてくれるだろうが、強化したら俺が勝ち目が無くなるだろうからと断られるかもしれないと思い込んでいたらしい。
「舐めんな。今のお前はライバルじゃなくてお客様だ。そして俺は職人としてお客様の満足するデバイスを作る義務があるんだよ!! それに勝ち目が無くなるからなんだ? 圧倒的強者がいれば、課題とかが見えてくるかもしれないだろうが?」
「……お前が友達で本当に良かった。でも流石にこれだけ頼んだらフラガラッハの分だけじゃ足りないよな? いくらだ?」
「俺とお前の仲だから手数料は抜いてやる。新生グラディウスにかかった材料費の9割を後払いで請求させてもらうから数ヶ月は節約して材料費の準備しておいて。その分クオリティは今作れる最高レベルに仕上げてやるから期待しておけ」
「……分かった。流石に高待遇すぎて納得がいかないから、過剰な恩返しの分はいつか言霊で返させてもらう。それじゃあグラディウスの事、よろしく頼んだ」
「おう」
ヤマトを見送った俺は、弟子たちに念話を飛ばす。
(アリサちゃん、すずかちゃん、はやて。今良い?)
(私は大丈夫よ)
(うん。私も大丈夫だよ)
(私も暇すぎてお昼寝しようと思ってたし大丈夫や)
(ヤマトからデバイスの修理と強化改造についての依頼が来た。……俺の言いたい事は分かるな?)
(((今からそっちに行く!!)))ガタッ!
よし。それじゃあボチボチ取り組むとしますか。
久しぶりの本業のお仕事だし気合いが入るね。