見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ?   作:蒼天 極

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(ヤマト視点)俺が……守る!

「……あっれー? また来たんだ。君も懲りないねぇ」

 

「生憎諦めが悪いからな。それにしてもあの脅迫状……お前のキャラじゃ無いだろうが?」

 

「あはは、最高評議会のクソジジイどもの真似だよ。それっぽかったでしょ?」

 

 管理局の結界に捕らえられた傀儡の所有者である少年は俺の姿をみるなりケラケラと笑い出す。

 バリアジャケットを着たレオを連想させるような姿をした少年だが、多少濁ってはいるが理知的で真っ直ぐな瞳をもつレオとは違い、ドス黒く汚れ切った瞳の少年はその顔をグニャリと歪めていた。

 

「諦めろ。今度こそ次元法違反でお前を逮捕する」

 

「僕の結界に閉じ込めて勝ったつもりかい? バカだなぁ、わざと捕まってあげたんだよ? キミ達あまりにも弱すぎてつまんないからね。それによーく見るとそれってあの時君が使ってた武器じゃ無いね。あ、やっぱりあのときに完全に壊れちゃった? そんなザマでどうやって僕のヘカトンケイル勝つって言うのかにゃ〜?」

 

 ……少年は複数のロストロギアを合成させた物を核に持つ複数の腕を持つ赤色の傀儡にスリスリと頬擦りしながらバカにしたように宣う。

 コイツ……前回相対した時よりも調子に乗っているな。俺に勝った事で増長してしまったのだろう。ならばグラディウスがなくても勝利して鼻っ面をへし折ってやるのが、俺なりのケジメと言えるだろう。

 管理局からグラディウスが完成するまでの繋ぎとして借りていた量産型の剣型のベルカ式アームドデバイスを構える。

 

「一度はリリースしてあげたけど二度目はしてあげない。手足をもいで殺しちゃお! やっちまえ僕のヘカトンケイル!!」

 

『ヴゥォオ"オオオオオオ!!』

 

 来る!

 あの傀儡は攻撃力が凄く高い上に、腕が何本もあって攻撃を避けづらい。だからと言って腕を破壊しようにも防御力も高すぎて破壊するのも至難の業という無理ゲーだ。

 だが今奴は俺のことを舐めて言霊を封じてはいない。一か八か……!

 

「【かの傀儡よ動きを停止「おっとそれはダメ〜! ヘカトンケイル、《シーリング》!」クソ、ダメだったか……」

 

「アハハハ! 君はレアスキルだけの人間だからね。使えなければただの雑魚だよ。ザマ、ザマ、ザマァ!!」

 

 本っ当にウザいなコイツ!!

 一発殴ってやりたいところだけど、傀儡に守られて攻撃が出来ないな。

 …………言霊がダメなら、あの傀儡の腕を避けながらなんとかコアを破壊するしかないか。

 俺はまっすぐ傀儡の下へ走る。腕が妨害してきた瞬間に神速を発動して一気に懐へ……。

 

「アハハハ、言霊がダメだからってムキになって突っ込んできちゃって! 無駄無駄無駄だよぉ!! ヘカトンケイルの新しい機能を見せてあげる。はい、《絶対障壁》!!」

 

「っ!?」

 

 直後傀儡の体を纏うように障壁が展開される。

 おいおい、ここに来てこれかよ。それにあいつの口ぶりからしてこれにはかなり自信がある。つまり非常に堅牢である可能性が高いな。

 ならば今の俺が使える最大火力の砲撃で……!

 

「ふぅううう……《ルインズレクイエム》!!」

 

 俺の掌から放たれた漆黒のビームが障壁を破壊しようとするが、障壁はヒビ一つ入らない。

 

「クソ、やっぱりグラディウスがないと威力も半減か!!」

 

「あれー? アレアレアレアレー? 前回よりもヘナチョコな砲撃でちゅね〜? やっぱりあのデバイスを壊されたのは辛いんじゃないのぉおお?」

 

「ぐ……!」

 

 その通りだ。

 俺はグラディウスありきで戦って来ていた。だからあいつがいないと俺の本来の力すら発揮できないのだ。

 

「それじゃ、そろそろ反撃しようかな〜。ほーら、ビームビーム〜」

 

「チィ!」

 

 傀儡の大量の腕の一本一本から極太の砲撃が放たれる。

 確かに脅威ではあるが、この程度なら避けるのは容易い。避けている今のうちになんとか活路を……!

 

「う〜ん、当たらないなー。あ、そうだ。AMF展開〜!!」

 

 AMFか。でも大丈夫、AMFは克服を……直後急に飛ぶ事が出来なくなる。いや、飛ぶ事は可能ではあるがかなりキツイ!!

 一体どうして……AMF対策プログラムをレオが作ってくれたのに……あ! AMF対策プログラムはグラディウスの中。つまりこれはAMF対策が施されたデバイスじゃ無いからAMFの影響を受けるのか!!

 

「つっかまーえたー♪」

 

「あぐぅ!?」

 

 動きが鈍った隙を突かれて傀儡の腕に捕まってしまった!

 クソ、このままじゃ……!

 

「ヤマト! 助けに来たわよー!!」

 

「あ、ヤマト君捕まってる、すぐに助けなくっちゃ! なのはちゃん、お願い!!」

 

「分かったの! 《ディバイーンバスター》!!」

 

「おいおーい邪魔しないでよ〜? 今から殺すんだからさ。《絶対障壁》」

 

 直後、俺を包むように傀儡の周りに障壁がもう一枚展開される。

 これによりなのはの砲撃は障壁で阻まれてしまった。

 

「にゃ!? 防がれちゃったの!!」

 

「なのちゃんがダメだなんて……ならひなの砲撃で……!」

 

「私も手伝うよ!!」

 

 なのは達は今度は複数人で同時攻撃をしようとするが、それでも障壁はヒビ一つ入らない。

 あの砲撃特化のなのはでダメってどんだけだよ……。

 

「あは、イイネ、君の絶望した表情……。本当にたまらないよ。もっと苦痛に歪んだ顔を見ーせーて?」

 

「ぐ……ぐぉああああ……!」

 

 俺を掴んでいた腕が俺を握りしめる。

 うぐぅ……やっぱり俺じゃダメなのか……? せっかく神様から力を貰ったのに。……レオやひなとあれだけ練習をしたのに……。

 

「ゴフッ!」

 

「アハハハ、吐血したね。そろそろ死ぬかな〜? このまま握り潰したら、お次は障壁の外で水鉄砲を打ってるかわい子ちゃん達だね。可愛い子が絶望しながら逃げ惑う姿は本当に堪らないから、ついつい時間をかけちゃうかも!! でも必ず君のところに送ってあげるから、先にあの世でゆっくりしてると良いよ」

 

 ……!

 コイツ、なのは達を傷つけるつもりか……?

 

「それに見た感じ最高評議会の言ってた魔王の子孫がいないな〜。もしかして一人だけ逃げちゃった? なら約束通りこの街も壊さなきゃ。良かったねぇ、死んでもこの街の人達とずっとずっと一緒に暮らせるみたいだよ? 魔王の子孫に感謝しろよな〜? ……まぁ、魔王の子孫がロストロギアくれてもみんなやっちゃってたけど。アハハハハハハハハ!!」

 

 なのは達だけじゃ無い。

 この街の人達まで……!

 

 前世で精神的に疲れ切って自殺した俺は女神様によって前世の記憶と経験を保持したままこの世界に転生した。

 もう消えて無くなりたい。転生直後はそう思っていたけどこの世界で素晴らしい出会いがあったのだ。

 

 なのはは一人暮らしで寂しかった俺と一緒にいてくれた……。

 ひなはその無邪気さで温かい気持ちにさせてくれた……。

 レオは転生者としては未熟な俺の道標になってくれた……。

 はやては一人暮らしで苦労する俺を助けてくれた……。

 アリサとすずかは前世を思い出して辛い気持ちになったときに励ましてくれた……。

 フェイトは辛い記憶を持つ者同士通じる所があった……。

 アリシアはその明るさとポジティブさで明るい気持ちにさせてくれた……。

 

 みんなは俺にとって大切な宝物。

 ……それをコイツは殺す?

 嫌だ。殺させたく無い、たとえ俺が死んだとしても大切なみんなには明るい人生を歩んでほしい。

 こんな奴に……殺させたく無い。だから守る……。絶対に……俺が守る!!

 

「うぉおおおおお……」

 

「え?」

 

「うぉおおおおおあああああああああああ!!!!」

 

「え、ウソ!?」

 

 全身に思い切り力を込めると傀儡の腕が砕け散る。

 ……なんだこれ、なんだか凄く力が湧いてくる。それにAMF環境下なのに身体がすごく軽い。

 これならいけるか?

 

「ま、まぁ今のは偶然でしょ? マグレで腕を壊したからってヘカトンケイルが負けるはずがない……絶対障壁が砕けるはずかないもんね!! やれ、ヘカトンケイル!!」

 

「ふぅうううう……。《神速》」

 

 直後視界がモノクロに写り、時の流れが止まったかのように傀儡の動きが停止する。

 そのまま足に力を込めてヘカトンケイルの懐に潜ると、アームドデバイスに魔力を込めて障壁を一閃する。

 

「……《御神流 虎乱》」

 

 直後障壁ごと、傀儡の胸が袈裟に斬れる。

 コアを斬ることは出来なかったが、斬られた衝撃で傀儡は後ろに倒れた。

 

「な、嘘……嘘だろぉおおおおお!?」

 

「……あ、剣が折れた」

 

 しまった。いくらアームドデバイスと言えど無茶をさせ過ぎてしまったか!?

 

「うぐぐぐぐ……でもデバイスが壊れたなら何も出来ないだろう? 助けも来ないみたいだしこのまま踏み潰してやる! やれ、ヘカトンケイル!!」

 

 ……っ!!

 だがその直後なのは達と俺を断絶している障壁の向こうから凄まじい魔力を感じた。

 

「行くよフェイトちゃん!」

 

「うん。なのは!」

 

「N&F、中距離殲滅コンビネーション……」

 

「ブラストカラミティ……」

 

「「ファイア!!」」

 

 直後もう一枚の障壁が砕け散り、桜色と金色の混じった極太光線が傀儡を貫く。

 

「……ハァ?」

 

「ま、まさかあの障壁を撃ち抜くなんて……」

 

 俺が呆然としているとなのは達が俺の下へ降り立つ。

 

「ヤマト君ごめんね。障壁を突破するのが遅くなっちゃったの!!」

 

「いや、それは構わないが……凄い一撃だな」

 

「うん。アリサとすずかのを参考にして、なのはと二人で考えた合体魔法だよ」

 

「凄いよね、ひなもれお君と合体魔法考えてみようかな……? あ、ヤマト君怪我してるの? すぐに癒してあげるからね!」

 

 ひなに抱きつかれて握られたダメージが癒えていく。だがその直後

 

「《シーリング》」

 

「……あれ!? フェニックスウイングが消えちゃった!?」

 

「あの傀儡の能力だ。でもかなり回復したから大丈夫!!」

 

 俺らが再び傀儡に向き直ると、傀儡の肩に乗っていた少年は憤怒の表情を浮かべていた。

 

「なんなのお前ら? ヘカトンケイルの絶対障壁を破壊しやがって。それにあの力……今まで手加減してたって事? ふざけてんの? あーあ、せっかく楽しかったのになんだか萎えちゃった。もう良いや、勝てそうに無いし今日は帰ろ。……でもその前にストレス発散でコイツでこの街壊しちゃおっかな」

 

 そう言うと傀儡は結界を破壊しようと複数の掌から四方八方にビームを放つ。

 

「コイツ逃げる気!?」

 

「結界から逃がしたら海鳴市を壊されちゃうよ!!」

 

「みんなで結界の強化を……!」

 

「あー、大丈夫。干渉して強化したから」

 

 だがその直後傀儡によってヒビが入っていた結界が綺麗に治る。

 そして声の主はすごく顔色の悪いレオだった。

 

「待たせたなヤマト。ご注文の新生グラディウス、お届けに参りましたぜ?」

 

「か、完成したのか!?」

 

 レオに手渡されたのはグラディウスの待機状態姿である正方形のエンブレムに、更に豪華な装飾が足された代物。

 

『マスター、ただいま帰りました。遅れてしまい申し訳ありません』

 

「いや、問題ない。いけるよな、グラディウス?」

 

『はい。私にとってもあの傀儡には借りがあります。今こそ借りを返す時でしょう』

 

「ああ、そうだな!レオ、グラディウスのことありがとう!ここは俺に任せてくれないか?」

 

「当たり前だ。今日は手伝わない……少し脳に負荷をかけ過ぎて疲れたから寝るわ。それじゃあガンバ……」

 

 俺にグラディウスを届けたレオは白目を剥いて膝から崩れ落ちてしまった。

 どうやらこれを仕上げるために相当の無茶をしてくれたようだ。代金とは別に今度何かしてやらないとな。

 

「はぁあああああ!? なんだよコレ、逃げられないんだけど!? おいふざけんなよ、たかが結界ごときにどんだけ力入れてんだよ!! あぁ、急に強くなるわ、絶対障壁を斬られるわ、撃ち抜かれるわ……。人をバカにするのも良い加減にして欲しいなぁ!! ヘカトンケイル、やれ!! 全員殺せ!!」

 

『結界の維持はマスターに変わり私が行いますんで、なんか調子に乗ってるあのクソ野郎をぶっ飛ばして来てくださいな』

 

「了解だアスカロン。みんなはレオを見ててやってくれないか? アイツは俺がやる!」

 

「え、でもヤマト君苦戦してたけど大丈夫なの?」

 

「大丈夫。レオからグラディウスも届いて完全復活したしな。……それに踏み台がここまでお膳立てしてくれたんだからオリ主としてもそれに応えないといけないしな。いくぞ! グラディウス・ネクスト!!」

 

『了解です』

 

「セットアップ!!」




 ヤマトが急に覚醒した理由ですが、転生特典の一つである“大切なものを守れるだけの力”が働き、ヘカトンケイルの防御を突破できるほどの力を手に入れたと言うのが真相です。
 次回グラディウス・ネクストで調子に乗りまくってたクソガキを分からせます
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