見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
練習試合終了後、借りたユニフォームを士郎さんに返して私服に着替え、翠屋の外の席でケーキを堪能していた。
うめぇ、やっぱケーキといえば翠屋だよなぁ……。どうやってもこの味は家では再現できねぇ。
あ、そうそう。
俺は思い出したかのように机の上でお座りいているフェレットを見る。
「ひなちゃんから聞いてたけどこの子が、なのはちゃんの保護したオコジョのユーロクなんだね」
「ち、違うよ!? フェレットのユーノ君なの!」
律儀に突っ込んでくれるなのはちゃん。
くくく、もう少し遊ぶか。
「そうなの? ごめんごめん勘違いしてたよ。でもこれから本格的にこの子を飼うなら、しっかりと去勢はしないとダメだよ」
「キュ!?」
「なんできょせーしなきゃいけないの? きょせーしたら赤ちゃん出来なくなっちゃうんでしょ?」
ひなちゃんが純粋な顔で尋ねてきたので、博学的に答えてやる。
「フェレットは発情期に入ると体臭が強くなったり、凶暴になったりするんだよ。以前テレビで見たんだけど凶暴化したフェレットに噛まれた飼い主が狂犬病を発症して亡くなった事例があるらしくてね」
「…………」
なのはちゃんが深刻な顔でユーノ君を見つめる。
しばらくユーノ君はダラダラと汗を流しながらなのはちゃんを見つめていたが、やがてヤマトの肩の上へと避難した。
「こらレオ君、嘘ついちゃダメだよ! 狂犬病は日本の動物からは発症しないんだよ!」
「あら、バレちゃいました?」
博学なすずかちゃんに見事看破され、参りましたと言わんばかりに両手を上げる。
でも日本じゃ確認されてないけどフェレットもしっかりと狂犬病にはかかるから注意は必要だよ。
「う、嘘だったの!? もう!」
「キュー!!」
おぉ息ピッタリだなぁ。
だが俺はニヤニヤ笑いながら続ける。
「でも体臭が強くなったり凶暴化するのは本当だよ。特になのはちゃん家は飲食店だから体臭とかは心配なんじゃないかな?」
「そ、それは確かにそうなの……」
「もうやめてやれレオ。別に今すぐじゃなくて問題ないだろ?」
ヤマトの一言で強制的に黙らされてしまう。
もう少しからかいたかったのに……。
「それにしてもこのフェレットほかとちょっと違わない?」
「院長先生もこの子はちょっと変わってるね。って言ってたね」
アリサちゃんとすずかちゃんの疑問に、ヤマトからの助け舟を出され安心していないなのはちゃんは再びギョッとする。
……ニヤリ。
「そういえばユーノ君がどんな種なのか気になって、フェレットについて調べてみたんだけど、こいつどの種にも当てはまらないんだよね……。も、もしかして新種なんじゃ? なのはちゃん、ちょっとこいつ研究所に連れて行こうぜ! こいつを研究すればきっとフェレット業界に嵐が巻き起こk「よーし! ちょっと向こうでお話ししようかレオー!」おごご……」
ヤマトに頭をガッチリホールドされて、翠屋の裏手に引き摺り込まれた。
「ゲホッ、ゲホッ、流石に力強すぎだって。この馬鹿力が」
「お前が事情を知ってるのに引っ掻き回すからだ」
咳き込みながら恨み言を吐く俺を呆れた顔で見るヤマト。
俺は息を整えてるとヤマトが聞いてくる。
「念話しても全然反応しなかったけど今まで何してたんだよ?」
「念話? そんなもん届いてなかったけど……あ! 授業中になのはちゃんとお前のイチャイチャボイスがクソうるさかったから、ヤマトとなのはちゃんの念話をブロックして俺に届かないようにしてたんだった」
殴られた。
「痛えな。てか、どうしても俺に話しがあったなら電話するなり、ひなちゃん経由で伝えればよろしかろう!? 他にあった複数の手段を使ってないのに殴るなんて酷いやつだな! それでもオリ主か!?」
「ひなに頼んだところで、伝言忘れてお前と雑談するだろう? それに電話だって電話代高いから念話にしろって言ったのはお前だろうが。手段を一つに絞ったくせして偉そうに語ってんじゃねえ殴るぞ!?」
「もう殴ったやろがい! もうキレた絶対許さねえ! 今日という今日こそはお前ぶっ転がしてオリ主の座を強奪してやる!!」
「やってみろ踏み台が!! 所詮踏み台はオリ主に勝てないってことを身をもって味わわせてやる!!」
「「死ねぇええええええ!!!!」
俺とヤマトはぶつかり合った。
〜数分後〜
「……さて、なんでアンタらは喧嘩になったのよ?」
ヤマトとの全力全開の殴り合い。お互いに一歩も引かない激戦だったが、騒ぎを聞きつけてやって来たアリサちゃん達によって正座させられ今に至る。
「だってこの馬鹿がー」 「だってこのリア充がー」
「「ああん!?」」
「だから喧嘩すんなっての!」
胸ぐらを掴み合って再び一触即発状態に陥った俺とヤマトは、アリサに二人仲良く殴り飛ばされた。
ウイスキーピークで喧嘩していたルフィとゾロが仲良くナミに殴り飛ばされたときのルフィ達の気持ちが分かったよ。
「それでなんで喧嘩してたの? ほら、ヤマトから!」
「それはこいつが電話代勿体無いから話があるなら念話にしろって言って来たくせに、念話を届かないようにしてたから」
「念話ってアンタ達魔法使いが使える遠距離通信のことよね? 次、レオ! なんで念話をブロックなんかしたの!?」
「授業中になのはちゃんと念話で喋ってて、うるさかったからです」
「ちょ、ちょっとレオ君、聞こえてたの!? というかしー! しーだよレオ君!!」
「結論、どっちも悪い! まずレオ! ブロックしたなら後でちゃんと着信届くようにしなさい!! あとヤマトも! 授業中念話なんてするんじゃないわよ! 魔法使えない私達への当てつけの……ちょっと待ちなさい。レオ、アンタ今なんて言った?」
「いや、だから授業中になのはちゃんと喋っててうるさかった……あ」
そういえばアリサちゃんとすずかちゃんはなのはちゃん達の事情を知らなかったっけ?
アリサちゃんはギギギギと鈍い音を鳴らしながらなのはの方を向く。
「なーのは? アンタ魔法使いじゃなかったわよね? なんで念話なんて使えるのかしら?」
「え、えっと。それはそのう……」
「……あと魔法繋がりって言ったらひなも何か知ってんじゃないの?」
「し、知らないよ! ユーノ君が発掘したジュエルシードがこの街にばら撒かれちゃって、封印のお手伝いをしてることなんて知らないからね!」
うん、ひなちゃん。全部言っちゃったね。
ゴゴゴゴゴゴゴという効果音と共にアリサちゃんの身体から、赤黒いオーラが吹き出す。やべぇ、これ完全にキレちゃってるよ。
だがしばらくすると赤黒いオーラが消えてニコリと笑った。
「なのはとひなも正座しなさい。ちょっと色々と聞かせてもらうわよ?」
後日、近くで様子を見守っていたすずかちゃんは「あのときのアリサちゃんには悪魔が宿ってたよ」と語った。