見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「必殺、《ヨーヨーバインド》!」
「な、なんやって!?」
「ナイスアリシアちゃん! 同じく必殺、《クレセントブーメラン》!!」
「そ、そんな……まさか本当に試作品のデバイスで負けるだなんて……わ、私は認めへんからなぁああああああ!!!!」
怒り狂って襲いかかって来たはやてであったが、アリシアちゃんがヨーヨーの後でグルグル巻きにして、動けなくなったところをフェイトちゃんのハーケンセイバーと似たやり方で鎌の実刃を飛ばして撃墜させた。
彼女は後方からの広範囲魔法が得意分野。つまり攻撃する隙を一切与えなければ試作デバイス3号でも勝てると言う事だ。
……あ、実刃で斬り刻んだとは言え非殺傷設定で殺してはいないので悪しからず!!
「やったねレオ! 諸悪の根源を滅したおかげでリインフォースⅡの胸は守られたよ!!」
「あぁ、我が二番弟子もこれに懲りて少しはマトモになってくれる事を祈るよ」
目を回して気絶したキョンシー姿のチビダヌキを回収すると改めてヤマトの自宅へとお邪魔する。
リビングに入るとお菓子をもらってご満悦のひなちゃんや、いろんな仮装をしたみんながいた。
「やっほーみんな、トリック・オア・トリート!!」
「やぁやぁみなさん。菓子を寄越さないとはやてちゃんみたいなことになりますぜ?」
「ねぇ、レオ。その言い回しはハロウィンじゃなくてただのカツアゲなのよ」
狼男……いやアリサちゃんは女の子だから狼女の仮装……と言うか犬耳に犬尻尾つけただけのアリサちゃんがツッコミを入れる。
あれ? 俺が抱えてるはやての存在は無視っすか? え、ひなちゃんからはやてがおいたをしたって聞いたから撃墜の件は自業自得?
はやても人望ないな〜と呑気に思っていると、シスター服のすずかちゃんがデパートの袋を渡して来た。
「アリシアちゃん、レオ君、ハッピーハロウィン。これどうぞ」
「え、こ、これって……!? 海鳴駅に隣接する海鳴百貨店に最近オープンしたスイーツ専門店のパンプキンタルト!? うわぁ、こんな良いもの貰っていいの!?」
「うん。食べてくれると嬉しいな」
「やったー! すずか大好き!!」
大興奮のアリシアちゃんは満面の笑みですずかちゃんに抱きつくのだった。
ほぉん、知らない間にそんなお店がオープンしたんだねぇ。そう言えばこの間なのはちゃんと桃子さんが敵情視察とか言って二人で百貨店来てたっけ?
「あ! べ、別にレオのお菓子が良いものじゃないって訳じゃなくて、女の子としてあのお店は良いよねと言いますか……ええっと……ええっと……!!」
そんな事をぼーっと考えていると、慌てた様にアリシアちゃんは弁解を始めるのだった。
「いやいや気にせんでええよ。別に本職に勝てるとは思ってないし家スイーツと店スイーツは違うんだからね」
「そ、そう言ってくださると助かります……」
別にお菓子作りなんてひなちゃんが遊びに来る様になってから、お菓子代を浮かせるために始めたのをひなちゃんが美味しい美味しい言って食べてくれるから趣味として続いただけだ。
だから百貨店のぽっと出のお店に負けても別に気にはならないのだ。
「すずかちゃんお菓子渡し終わったよね?」
「うん終わったよー」
小悪魔衣装に身を包んだなのはちゃんがこちらにやって来た。
「それじゃ、トリック・オア・トリート!!」
「言うと思った。今回俺が作ったのはこれだ!」
持って来ていたパンプキンパイを開けると、普段は「わぁ、美味しそうだね」と言った風の感想を聞かせてくれるなのはちゃんは突如として驚く。
なになに、一体どうした?
「にゃ、な、なのはが作って来たお菓子と同じ物なの!?」
「え、マジで!? やっちまったぁああああああ!!」
クソ、ハロウィンにあやかってカボチャを使ったメニューに限定したのが仇となったか!!
流石に同じメニューはあかんやろ同じメニューは!!
俺がガンガンと頭を床に叩きつけていると、アリシアちゃんと同じく吸血鬼姿のフェイトちゃんが「ま、まぁまぁ」と言いながら提案してくる。
「同じお菓子を作って来ちゃったんなら、どちらが美味しいか食べ比べる事が出来ると思うよ?」
「フェイトちゃん、お菓子勝負で俺となのはちゃんを戦わせたらあかん」
「え、どうして……あ、そっか。なのはの方がお菓子作りに関しては……」
「そうなのです。お菓子作りに関して引き分けた事はあれど、なのはちゃんに勝ったことは一度だってないのです……」
「喫茶翠屋の娘として負けるわけにはいかないの。えっへん!」
まぁお菓子作りに関しては勝とうだなんて考えた事は無いんだけど、やっぱり負け戦は気が進まないんでござる。
流石に同じお菓子だからとお菓子を渡すのを渋ってイタズラされても嫌なので素直にパンプキンパイを差し出すと、なのはちゃんは「ありがとう」とお礼を言ってから一口食べる。
「……うん、充分美味しいの。でもこの分量ならお砂糖は小さじ4分の1減らしたら素材の味が引き立ってもっと美味しくなるかも」
「ねぇアリサちゃん。一口食べただけでお菓子の改善点が分かるのに、どうしてなのはちゃんはパティシエになろうと思わないんだろう」
「そう言う意味ではなのはって士郎さんと桃子さんの良い所を両方継いだハイブリッドよね……」
お菓子作りが得意。剣術も得意。それに成績も上から数えた方が早いくらいには良い上に、転生者と言うイレギュラーで目立たないとは言え魔導師としても優秀。
流石は原作主人公と言うべきか、彼女も中々にハイスペックだなぁ。
「お、美味そう。レオ、俺にもくれ。トリック・オア・トリートだ」
…………。
俺は無言でヤマトの手を引くと廊下まで連れて行く。
「よろしいならばテメェにはお菓子と一緒に請求書をくれてやる」
そしてパンプキンパイと共に請求書を差し出してやった。
今回ハロウィンイベントのついでに済ませてしまおうと考えていたのだ。
「あぁ、そう言えばグラディウスの改修の支払いがまだだったな」と言いながらパンプキンパイを食べながら請求書を確認するヤマト。
行儀が悪いな。おい確認するのは食ってからにしろ。あと感想聞かせろや。……え、 なのはちゃんの方が美味しい。そりゃそうだ。
「……え、こんなにするの? これって確か材料費だけだよな?」
「材料費だけだな。しかも前に言った通りこれは材料費の9割だから本当はこれの1割り増しだ」
「…………いや、確かに払えるよ。毎月100万なんて使い切れないから通帳の中はとんでも無いことになってる。……でもこの額は流石に払うのを躊躇ってしまう値段だな…………」
まぁインテリジェントデバイス10個分なんて一度に払いたくは無いわな。でもグラディウスは本当に複雑な構造だし貴重な素材もふんだんに使われていたとあってもう一セット買ったらこの価格なんですわ。
「魔心のレプリカも作るのにそこそこしたけど、これについては請求してないから安心しろよな?」
「……あぁ。まぁメイドインゴッドのデバイスだしこれくらいするのは当然か。取り敢えず帰りでいいか?」
「別にこんな金額を一括払いしようと銀行に金おろしに行っても職員に突っ込まれるだろうし、ゆっくりでいいからな?」
そんな事を言いながらなのはちゃん達の下へ戻る俺とヤマトであった。
おまけ 〜数日前、百貨店にて〜
「嘱託のお給料が入ったしちょっと贅沢していい物でも……ん? あそこにいるのは高町親子かな?」
「なのは、今日は遊びに来たわけじゃ無い。分かってるわね?」
「うん、分かってるの。このお店のお菓子の味を調べて対策するべきかを考えるんだね」
「そうよ。くれぐれも怪しい動きはしない様に。さぁ、敵情視察と行きましょう!!」
「おー!!」
「…………こんな大きな声で会話してたらバレるんだよなぁ。ほら、あそこの売り子さんちょっと引いてるじゃん。狙ってやってるのか天然なのか……桃子さんェ」