見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
と言うことであれから早いことで二週間後。
シグナムさんの所の道場と練習試合の日がやって来たのだった。
「お久しぶりですシグナムさん」
「あぁ、久しぶりだ高町。今日はよろしく頼む」
師範代同士がお話ししている間にこちらもシグナムさんの道場の子達と交流を深めてしまおうか。
そんなことを考えていると、なのはちゃんがシグナムさん道場所属のフェイトちゃんの下へ行く。
「フェイトちゃーん!」
「あ、なのは」
「フェイトちゃんはどこのポジション?」
「中堅だよ」
「え、私と同じなの! 絶対に負けないからね!!」
「そうなの? 魔導師として戦う事はあるけど、剣道は初めてだね。……負けないよ? なのは」
相変わらず仲のいい二人である。
この微笑ましい光景を見ていたなのはちゃんの姉の美由希さんや、フェイトちゃんのお姉さん的立ち位置のエイミィさんはお互い微笑んでいた。
…………エイミィさん?
「エイミィさんはどうしてここに? 別に剣道やってないでしょう?」
「そりゃあね、私はオペレーターだし。今回は見学で来たんだぁ。本当はプレシアさんが見学したがってたけど、お仕事入っちゃってね……」
そう言ってチラリと見せるはカメラ。つまり娘の勇姿を撮ってこいと言われたのだろう。
「そしてアリシアちゃんも今日は来たんだよ」
「レオー!」「れおくーん!」
「ん? なんだか妹分の声も聞こえたなぁ!?」
その直後金髪の女の子と桃髪の女の子に抱きつかれる俺氏。
え、ちょ、いやいや待て待て! アリシアちゃんはまだ分かるにしてもどうしてひなちゃんまで!?
「いや〜、フェイトの活躍を見届けるために来たけど、レオの剣道着姿を見られたのは収穫だよ。私も高町道場で剣道しようかな……」
「別にいいけど地獄だよ。俺やアリサちゃんを持ってしてもね」
「……そ、そうなの? じゃあやめておく」
アリサちゃんからしても地獄と言うことは、割とすぐに根を上げるタイプのアリシアちゃんではまず耐えることはできない。
すぐに身の丈に合わないと察したアリシアちゃんは潔く引き下がるのだった。
「そう言えばひなちゃんの道場着も似合ってるねぇ」
「えへへ、そうかなぁ?」
「……でもどうして剣道着なんか来てるんだい? ひなちゃんは別にここの道場で稽古なんてしてないでしょ?」
「道場の子が風邪ひいちゃったから代わりにって頼まれちゃった」
「…………はぁ?」
詳しく聞くと朝早くからはやての家に遊びに行っていたらしいが、今回のシグナムさんの道場のメンバーに欠員が出たため頼まれたような。
「流石にそれはあかんのちゃう? 素人と経験者じゃ勝負にならないじゃん」
「そ、そうだよ。流石にこれは……人数が足りないなら最悪私が棄権すればいいし、ちょっとシグナムさんを止めてくる!」
俺や美由希さんの言葉に魔導師としてのひなちゃんを知っているエイミィさんが苦笑いをしながらながら頬をかく。
「うーん、大丈夫だと思うけどね〜。ひなちゃんよくレオ君のカリバーと斬り合ったりするし」
「そうだよ。ひなもけんどーできるもん!」
「そう? ひなちゃんが良いなら文句はないんだけど…………」
美由希さんは釈然としない様子で引き下がる。
「うーん……やっぱり納得いかねぇ」
「ま、まぁ大丈夫だよ。ひなも強いし、基本弱い人が入りやすい次鋒に入ってもらうらしいから」
「いやいや、いくら次鋒だからってひなちゃんの兄貴分として流石に待ってアリシアちゃん、今なんつった?」
「え? ひなも強いって」
「違うその前」
「基本弱い人が入りやすい次鋒に入ってもらうらしい?」
弱い人が入りやすい次鋒に入ってもらうらしい
次鋒に入りやすい
次鋒
「俺じゃん!!!!」
「え、相手れお君なの? なら安心してけんどーできるね!!」
〜数分後〜
「先鋒勝者、アリサ・バニングス!」
「ありがとうございました!」
流石はアリサちゃん。火属性に違わない苛烈な連続攻撃を叩き込んで、相手に一切攻撃を与える暇もなく完封で倒しやがった。
ほらあまりにも実力差がありすぎて、向こう側の先鋒の子凹んでるじゃん。
「よし、この流れ続きなさいレオ!! ……なんでそんな死んだ顔してるの?」
「ごめん、俺負けたかもしれん」
「なんでよ。剣術縛りのひなは手加減しても勝てる相手でしょうが?」
「俺に可愛い妹分をやれと?」
「いやいつも模擬戦で散々ひなをぶっ飛ばしてる奴が何言ってんだ」
ちゃうねん。あれは将来ひなちゃんが犯罪者どもに負けないようにって割り切ってやってるだけで、戦ってて普通に胃が痛いねん。
「はぁ、流石にひなちゃんをこんな棒切れで叩くわけには行かないし棄権するか……」
「もうレオ君? やるからには全力でやらなきゃ。それこそサッと終わらせちゃえば良いでしょ? ほら恭ちゃんもなんとか言って?」
「…………ま、まぁ良いんじゃないか? レオが負けてもなのは達が取り返してくれるだろうし」
「もう恭ちゃん!!」
可愛い妹がいると言うことで通じる部分があったのだろう。恭也さんは俺を責めることなく、棄権することを認めてくれた。
よしそう言うことなら次鋒はひなちゃんの不戦勝だな!
「ま、まぁ確かにレオ君がひなちゃんを大切にしてるのは分かるけど、流石にそれはひなちゃんが可哀想なの!」
「そうよ。ひなもやる気を出してるんでしょ? それなら兄貴分として受け止めてやるべきだと思うわ!!」
「そうだ。これはひなの鍛錬なんだ。ロイヤルホープの剣術を鍛えるための訓練。そう思い込むんだレオ!」
……これはひなちゃんへの訓練?
ひなちゃんの訓練
ひなちゃんのくんれん
ひなチゃんのクんレん
ヒなチャんのクンレん
ヒナチャンノクンレン…………
「…………よシ、やってやル」
「……あれ? なんだか洗脳状態だったヴィータ達やアリシアと同じ目してない?」
「まさか自己暗示をかけたのかコイツ?」
「まさかここまでするなんて……よっぽど戦うのが心痛むんだねレオ君」
(ひな視点)
えへへ、れお君とけんどーだ。
魔導師じゃ無いところで戦えるよ。楽しみだなぁ。
「次はひなだ。申し訳ないがよろしく頼むぞ」
「はーい!」
「嬉しそうな顔しちゃって。私も代理に立候補すれば良かったよ」
悔しそうな顔でそう言うシアちゃん。
シアちゃんフォーチュンザンバーとか使うし、恭也お兄ちゃんのところが嫌でも、シグナムお姉ちゃんの道場で練習すれば良いのに。きっとフェイちゃん喜ぶと思うよ。
え、ひな? 気が向いたときに思いっきりやりたいから習い事はいいかな?
「次鋒は互いに前へ!」
「はーい!」
「……はい」
ひなはレオ君と相対する。
これがけんどーしてる時のれお君の姿……。カッコいいなぁ。
でもなんで目に光が無いんだろう?
「よろしくね、れお君!」
「……よろしクひなちゃん」
「それでは面か胴に当てたら一本、三本勝負で先に二本取った方の勝負です。それでは構え………………始め!!」
よーし、それじゃあまずはれお君の隙を狙って「面」っ!?
「宮坂麗央、一本!」
び、ビックリした〜。まさか急に距離を詰めて面を取るなんて、普段のれお君の戦い方とはまるで違う。これがけんどーモードのれお君なんだ……!
……ハッ! いけないいけない見惚れちゃってたよ。まだ勝負は終わってないから油断は禁物だよね。
「では二回目構え……………………始め!」
さっきのやり方じゃあ、また面を取られちゃう。今度はひなから攻めちゃうよ!!
「胴」
「ふぇ!?」
ひなが面を取ろうと竹刀を振り上げたときにはすでに勝負は終わっていた。
なんとれお君は竹刀を振り上げた瞬間に懐に入り込んで胴を取ってしまったのだ。
「宮坂麗央、一本! 次鋒勝者、宮坂麗央!」
「ありがとうござました」
圧倒的。まさにそう言っていいだろう。
ひなとれお君の間じゃ勝負にもならなかった。
「ひなドンマイ。……ねぇ至近距離でレオ見てたでしょ? どうだった?」
「……すっごいカッコよかった」
「やっぱり? 動きや立ち振る舞いにキレがあって普段よりも数倍カッコよく見えたよね?」
「見えた見えた!! やっぱりれお君はすごいなぁ」
直後、れお君のチームの方から悲鳴が聞こえる。
「ちょレオ君しっかりするの!!」
「まさか暗示を使った反動が来たって言うの?」
「それに含めてひなとやり合ったストレスもあるんだろう!」
「レオが倒れちゃったよ!!」
「い、急いで助けに行くよシアちゃん!!」
その後意識を失ったれお君は休ませて試合を再開。
ひなの後に続いたフェイちゃんは激闘の末になのちゃんに勝利。続く副将戦は美由希お姉ちゃんが相手だったのにまさかのこっちの勝利。あれは多分わざと負けたと思う。ヤマト君も練習試合に参加させるための配慮だったのかな?
その後の大将戦でヤマト君が勝利して結局シグナムさんの道場は負けちゃったのだった。
おまけ 〜練習試合から数日後、海鳴病院にて〜
「宮坂麗央君ですね。今日はどうしました?」
「ここ数日胃もたれが酷かったり食後に胃のところがキリキリするんですけど……ちょっと見てもらえません?」
「少し検査してみましょうか」
〜数十分後〜
「胃潰瘍ですね」
「マジすか」