見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「兄上? 兄上!?」
「これは不味いわね! 胃潰瘍? が何かは知らないけど、取り敢えず病院に連れて行きましょう!!」
「いや、ここは私に任せたまえ! たかが胃に穴が空いている程度、余裕で治せる!!」
「どくたーついでに改造するの?」
「そうだねぇ、せっかくだから消化器官をさらに強靭なものに……なんなら機械に移植してやだなぁ、マッドサイエンティストのささやかなジョークじゃないか。だからクイント氏、私を殴る構えを取らないでくれたまえ」
「冗談に聞こえなかったんだけど?」
『言ってる場合ですか……! あぁ、もうどうすれば……』
『落ち着きなさいカリバー。こういう時はのんびりと考えればいい案が思いつくものです』
「のんびりと考えればか……。因みに聞くがレオ君のそれはウイルス感染かい?」
『いいえ、ストレスですね。今年に入ってから最高評議会の件とか魔王の件とか色々あってストレス溜めてましたから……あ、そうだ。クイントさん。ちょいと私をマスターに握らせてもらってもいいですか?』
「え、うん。こう?」
『はい大丈夫です。それじゃあフェニックスカートリッジロード』
「……ん…………」
『回復したのに目が覚めませんか? ならば……《スタンブリッツ》』
「がはぁ!?」
……うん?
痛みが引いた?
「兄上、良かった生き返ったんだな!!」
「勝手に殺さないでもらえるかな? ……それにしても腹の痛みが治ったけど一体どうして……」
『よく考えたらウイルス感染じゃないんで、フェニックスカートリッジの効果を使えないかと思って試してみたらこの通りですわ』
……その手があったか!!
そうだよ。別にピロリ菌に感染してるわけじゃ無かったんだし、回復魔法で充分治せるじゃん!
さてと完全回復してすっかり気が楽になった事ですし……
「ご心配おかけしました」ペコリ
「本当よ! 何で病気なのに無茶して来たの!? ちょっと正座しなさーい!!」
「いやいや納得行かねぇ! チンクからもしかしたら死者が出るかもって聞いたから救援に来たのに……!! そういう意味では真に怒られるべきはスカさんっしょ!! 空気読めないタイミングで捕捉されたんだから!!」
「そ、それこそ納得行かないね! チンクからの定期連絡で聞いていたが、レオ君はレジアス氏の護衛ではあれど事実上はゼスト隊所属なのだろう!? ならこちらに来るより前にレオ君を呼んでおけば体調不良だと分かって出撃は延期していただろう!?」
「「「…………」」」
「よし表に出なさい。ちょっと親子喧嘩しましょうか」
「別に親子じゃないけど、喧嘩は大歓迎。最近ストレス溜め込みすぎだと判明したからストレス発散させていただきます」
「ククク、私が新たに開発した新薬ワライガトマラナクナールの実験台にしてあげようではないか」
という事で俺が倒れた責任を押し付け合う醜い大人二人と子供一人は研究所の前で喧嘩をする事になったのだった。
ストレスを発散させるなら何も考えずにバカスカ魔法をブッパするのが一番だから、初っ端からオールユナイトフォームでゴリ押し殺法使わせていただこう。
「えっと……救援に来たレオ君が倒れたと聞いて来たけど一体どういう状況なの?」
「あぁメガーヌ。実はカクカクシカジカなんだが……」
「チンク? 説明が面倒だからって端折るものではないわ。カクカクシカジカなんて分かるわけが「え、胃潰瘍で倒れたけど回復魔法で事なきを得て、レオ君が無茶した責任を押し付けあって最終的に喧嘩になったですって!? こうしちゃいられない、すぐに止めないと!!」え、何で分かるのドゥーエさん?」
「お姉様!? まさかチンクと以心伝心するだなんて……私よりチンチクリンな妹の方がいいっていうの!?」
「なんだクワットロ? 喧嘩なら受けて立つぞ?」
「はいはい、こっちでも喧嘩しないの!! ほら手分けしてみんな止めるわよ」
◇
その後激戦を繰り広げていた俺とクイントさんとスカさんは三人仲良くウーノさんに「いい加減にして下さい。研究所が壊れるでしょうが!!」とぶっ飛ばされて、喧嘩は強制ストップ。
なんで非戦闘員の長女さんが強いんだよ。納得行かねえよ……。
しかもゼストさんとトーレもメガーヌさんに殴り飛ばされるし。メガーヌさん、あなた召喚師でしょうが、何で腕っぷしで止めてるんすか?
「それで結局どうする? 捕まえたいのは山々だけど、チンクの家族だし今は悪い事してないみたいだし……」
「ならばこそ逮捕して更生させた方がいいと思うんだが……」
ゼストさんに賛成。全員捕まえて綺麗な身体にした方がこれからも付き合いやすいってもんだ。
「いやいや、流石に管理局でタダ働きは勘弁してほしいものだね。それに私には野望がある。その野望を叶えるためには犯罪者の身でないと実現できないのだ!!」
「犯罪者の身でないと叶えられない野望? ジェイル・スカリエッティ、いったい何を企んでいるの!?」
「フフフ、それは「発明したのが犯罪者でも見らざるを得ないほどの大発見をする。それがスカさんの野望ですね」ねぇなんで言っちゃうの? ここ私が胸張って言うところだよね?」
俺の発言に呆れた様な表情を浮かべるメガーヌさん。
「随分と呆れた理由ね。ならなに? 歴史に名を刻めるほどの大発見をしたら潔く捕まるって言うの?」
「あぁ、それが実現したときは喜んで捕まろうじゃないか。そうでないなら捕まえたとしても人には言えない方法で脱獄するだろうね」
「どうする? 手足砕いて連れて行く?」
「母上、流石にそれほど手荒な真似は……」
物騒な思考のクイントさんである。ほら、流石のチンクも顔を青くして止めてるじゃないか。
でもどうするかねぇ。スカさんも頭はいいから捕まえたところですぐに逃げるだろうし、行き詰まった研究とかを渡してる身からすれば、なんとかそれらをリサイクルしてほしいところではあるし……。
「ふむ、ならばスカリエッティ、決してここにいるナンバーズの者達を兵器として活用しない事、研究が終了したら捕まる事、この二つを誓ってもらおうか」
「ふ、良いだろう。私は出来る科学者だから約束は守るさ」
いやそれで良いのかよゼストさん? 職員としてそれは流石に怒られるんじゃ……
え? トーレさんと戦ってみて分かったけど正直倒せるか分からなかった?
あのゼストさんが勝てるか分からないってどんだけ強いのよトーレさん。脳筋は伊達では無いってか。
それに唯一勝ち目のありそうなチンクや俺もスカさんと知り合いだから戦うのは本意では無さそうだし、ここは最低限の事を誓ってもらって自由にやらせるのが一番良い? なるほど。
「えー! せめて子供達だけでも保護した方が良くないですか?」
「こらクイント、子供達は一応大切に育ててるみたいだし、親から子供を奪うべきでは無いわ」
「そう言う事だ。ゼスト隊、撤退するぞ!!」
「また遊びに来たまえ」
なんとも閉まらない形でゼスト隊とスカリエッティ研究所との抗争は終わったのだった。
「……あ、あのディエチ、ノーヴェ、ウェンディ? 久しぶりに会ったのは分かるが離してくれないか?」
ん?
後ろを見ると幼い少女達に捕まって動けなくなっているチンク。
「やだぁ! チンク姉と一緒にいたいっす!!」
「次いつ帰って来るか分からないから連れてって」
「チンク姉……」
あれま。どうやら妹達にとっては親よりも姉の方が好きだったみたいだね。ほらスカさんショックで膝をついてるもん。
俺はドゥーエお姉ちゃんと耳打ちをする。
「チンクって慕われてるんだ」
「そりゃあね、妹の面倒も率先してみてくれてたし、三人ともすっごく懐いてたから。チンクがナカジマさんの家に養子に行ってから三人とも寂しそうにしてたみたいなの」
なるほどこれが人徳というやつか。
「……クイント氏」
「なに?」
「どうか三人を大切に育ててくれたまえ。あと一月に一度でいいから合わせてくれたら嬉しい」
「わ、分かったわ」
スカさんに三人娘を託されたクイントさんは、チンクに張り付いている三人娘と目線を合わせる。
「えっと……チンクと一緒にいたい?」
「いたい」
「もちろんっす!」
「う、うん」
「ならうちの子になろっか?」
「「「うん!」」」
「えーっと……なんで言えばいいか……スカさん。ドンマイ!」
「……いいもんいいもん。私よりクイント氏の方が健やかに育つだろうし、セッテとオットーとディードはパパ大好きっ子になるように育てるもん」
こうしてナカジマ家に家族が三人増えた。
胃潰瘍完治!
「あ、よく考えたらフェニックスカートリッジでなんとかなるじゃん!」
こういう展開を作りたかったけど、駄文になってしまった……。