見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
その後なのはちゃんとひなちゃんとヤマト、そしてユーノ君から全てを聞き出したアリサちゃんは頭を抑える。
「はぁ、まさかこの街でこんなことが起きてたなんて……」
「ということはこの間のボートが壊されてた件なんかも、ジュエルシードの仕業だったりするのかな?」
「はいその通りです……」
ヤマトもなのはちゃんも内緒にしてたからすっごく気まずそう。え、ひなちゃん? アリサちゃんの怒気に当てられて、俺の胸でギャン泣きしてるよ。
わんわん泣くひなちゃんの背中をさすってやりながら、なのはちゃんに訪ねる。
「うわぁあああああん! ええぇーん!」
「よしよし……それでさっき電話で俺に話があるって言ってたのも、この件に関してだよな」
「う、うん。ヤマト君がレオ君にも手伝わせたら? って」
「おいヤマトよぉ、一応こう見えて踏み台やぞ。原作っていう重大なイベントに俺が横槍入れるのをよしとするんかテメェは?」
ヤマトを睨みながら問い詰める。
だがやつは何言ってんだお前と言った顔で「お前だから巻き込むんだよ」なんてほざきやがった。どういう意味だコラ。
「だと言うのにお前は、学校サボって念話にも出ないで……。ただでさえ海鳴市は広いんだから空気読めよな?」
「あ、それ私も気になってたのよね。なんか色々あって忘れてたけど、今日はそれを問い詰めるために呼んだわけだし。ほらなんで休んだのか、なんならなんで最近遊びに誘ってもあんまりこなくなったのかまで、全部言いなさいよ」
「あ、あのアリサちゃん。何もそんなに追求しなくても……」
自らも隠し事があるらしいすずかちゃんは控えめにアリサちゃんを止めようとするが、こうなったアリサちゃんは誰にも止められない。
「いや、大丈夫だよすずかちゃん。そもそも今日は今まで隠してたことをぶちまけるために来たわけだし。白熱したとはいえサッカーの練習試合なんてついでだったんだよ」
「お前それ本人の前で言うなよ」
呆れた顔で非難してくるヤマトは完全無視しつつ俺はバッテリー型デバイスを取ろうとポケットに手を突っ込んだ瞬間。
遠くの方で大きな光の柱が発生した。
「……え、何! なんなの!?」
「あ、あれって……樹?」
光の柱が発生したところからどんどんと樹が急成長を遂げて、大樹と化していく。そして樹の根っこがあちこちを侵食して街を破壊していく。
あ、余波がこっちに……
「Nロッドセットアップ! 《アルティメットプロテクション》!!」
このまま海鳴商店街に根っこが侵食するのを防ぐために、商店街全域を守るようにシールドを張る。
「な、あれだけの大きさのシールドを張るだなんて……一体どれだけの魔力を持っているんだ!?」
魔力SSSですがなにか!? ついでに言うとまだ99%くらい魔力残ってますがなにか!? チートですがなにか!? 踏み台舐めんな!!
「こ、こんなに魔力を使って大丈夫なの!?」
「レオは大丈夫だ、こいつ金髪と同等以上に保有魔力多いから」
「れお君は私の先生だから、この程度なら全然余裕だよ」
転生者二人からの評価はかなり高かった。てかヤマトお前あの金髪と一緒にするんじゃねえよ。
そんなことを毒づきながらしばらくの間街を守っているとやがて侵食が止まった。
どうやらジュエルシードが安定したみたいだな。
シールドを解除し、一息つく。
「ど、どうなっちゃったの?」
「あそこのビルの屋上からなら様子見えるだろうし、見に行くぞ」
…………なんだこの胸騒ぎ。
これほどの規模だ。あの金髪が黙って見てるわけがない。きっと余計な事をしにくるだろう。そして結局被害が拡大する。なんかそんな気がする。
「いや、俺は最悪の事態を想定してここ守ってるから、封印はなのはちゃんたちに任せるよ」
「分かったの。レオ君はアリサちゃんとすずかちゃんをお願い!!」
「行ってくるね!」
「すぐ戻る!」
変身したなのはちゃん達は飛んでビルの上に向かう。
心配そうに事態を見守るアリサちゃんとすずかちゃんの近くでアスカと念話を行う。
(アスカ。お前的にこの状況での最悪の事態ってどんな感じだ?)
『そうですね……金髪があの大樹に取り込まれて、大樹がさらに急成長。海鳴市全域を飲み込んで世界一大きな樹となりギネスと世界自然遺産に登録されて一つの観光名所と化す。……そんな感じですかね?』
(仮に金髪が取り込まれたとして、金髪の魔力を喰らってパワーアップした大樹の根っこを俺のシールドで防げるもんなの?)
『本気出せばいけると思いますよ? ただ守るのに精一杯でここから動けなくなるでしょうね……』
(充分だ)
俺が動けなくてもなのはちゃん達が封印するまで耐えればいい。
最悪アスカロンに搭載してるカートリッジとかを悪用して限界突破でもすればなんとかなるだろう。
再び大樹から今度は金色の光の柱が発生した。
それは金髪の魔力光とおんなじ色で……
「やっぱりなぁ、警戒しておいて良かったよ!! 《アルティメットプロテクション》!!」
Nロッドを掲げ本気のバリアを展開する。
根っこはバリアをも侵食しようとするがそうは問屋がおろさない。
魔力変換資質を用いて魔力を炎に変換し、燃えるシールドを事前に展開していたのだ。
侵食しようとする根っこは片っ端から燃えて崩れ落ちていく。
(大変だよれお君!!)
(金髪が取り込まれたんだな!? 商店街はまだ守れてるから三人で頑張ってくれ!)
(そうも言ってられない事態になりました!)
(どうした、オコジョのユーロク!?)
(ユーノです! あとこの姿はあくまで魔力を回復させるためなだけで、人間ですから! ってそうじゃない!!)
ユーノ君の声はかなり深刻そうだ。
どうしたと言うのだろうか?
(あのねあのね! ジュエルシードを見つけたんだけど、とっても分厚い木に覆われちゃって、なのちゃんの砲撃も私の羽もヤマト君の砲撃と剣も全部弾かれちゃうの!!)
「予想以上に最悪な事態で草超えて大草原っすわ、クソッタレ!!」
思わず叫んでしまった。
俺のそんな緊迫した表情を感じ取ったのかアリサちゃんとすずかちゃんはこちらによってきた。
「ど、どうしたのレオ君! なんか不味いの!?」
「非っ常に不味い。下手したら俺もここの防衛を捨ててなのはちゃんの達のところに行かなきゃいけない」
「でもそうなったら商店街が……!!」
そうなんだよなぁ! ここには翠屋とかモモザキベーカリーとか気に入ってる店も多くあるし壊させたくないんだよ!
どうしたものかと、マルチタスクも駆使しつつ必死に考えているとアリサが悔しそうに叫ぶ。
「なのは達だってあんなに頑張ってるのに、私たちは見てることしかできないって言うの!?」
……よし。
「アリサちゃん、すずかちゃん。俺のズボンのポケットの中に、二人へのプレゼントが入ってるんだよ。俺今動けないし取ってくれない?」
「え、えぇ!? レオ君今じゃなきゃダメ!?」
「そうよ、プレゼントなんて後ででもいいでしょ!?」
「今じゃなきゃダメなんだよ。早く取って!!」
アリサちゃんとすずかちゃんは一度顔を見合わせて頷き合うと俺のズボンのポケットに手を突っ込む。
くすぐったいけど集中だ。ここで集中力を切らしたらシールドを突破されてしまう。
アリサちゃんとスズカちゃんが俺のポケットから取り出したのは、橙色と青色のビー玉。
つまりレイジングハートの待機状態の色違いだ。
「一年の頃のあの日、アリサちゃんは言ったね? 私たちも魔法を使えるようになりたいって! なんとかしろって! だからなんとかして魔法使えるように設計したのがこいつだ!!」
「え!? てことは私たちもなのはちゃんみたいに魔法使いになれるの!?」
「そ、そう。アンタが今まで引きこもってたのは、これを作ってたから……」
「ただし! 本来才能がない奴は魔法使いにはなれない。つまりこれは俺が新しく作った技術。だからこそどんなデメリットがあるのか、どんな最悪の結果をもたらすか分からない。二人は実験台になるってことだ。俺はキュウベエじゃないからはっきり言うけど、安全性だけは一切の妥協なく徹底的に追求したけど、最悪死ぬことになる!!」
正直これがあるから作ってる最中も本当にいいのだろうかと常に葛藤し続けていた。だがやはり二人だけ蚊帳の外というのもどうだと思うし、二人が魔法の事件に巻き込まれる可能性だってあった。
だからこそせめて二人に決めさせようそう思ったのだ。
……まぁこんな危機的状況の中で聞くのは卑怯だと思うけど。
「こんな状況で聞くなんて卑怯よ。そんなのやるとしか言えないじゃない!!」
「どうすればいいのレオ君!?」
「マスター認証はもう済ませてある。だからコイツらに名前をつけてくれ。そして名前の後にこう叫ぶんだ。セットアップ!!」
二人はしばらくビー玉を見つめると二人同時に、ビー玉を空へ掲げた。
「フレイムアイズ!!」
「スノーホワイト!!」
「「セットアップ!!」」
お待たせしました。
アリサちゃんとすずかちゃん。魔法少女へ覚醒の時でございます。