見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
チンクと一緒に入った行きつけの喫茶店で、紅茶とタルトを楽しみながら愚痴をこぼす。
現在時刻は10時半。今食べたら昼飯があんまり入らなくなるだろうが、誕生日くらいいいだろう。
「納得いかないねぇ。ツヴァイの生誕記念パーティーに俺の誕生パーティーを兼ねてくれるのはありがたいけど、自らのパーティーのクオリティを上げるために手伝っても良いと思うんだよね」
「まぁ、まぁ。兄上は食堂だったり外で食事をするときは、誰かが作った飯は特別美味いと言うだろう? だから甘えれば良いと思うぞ。……そういえば、アリサやすずか達の会話を聞くに誕生パーティーを開いてもらうのは初めてなのか?」
「初めてだね」
そもそもなのはちゃん達と友達ではあったけど、ニコポナデポのせいで好感度はある程度で差し押さえられてたから、原作始まるまではそこまで仲も良くなかったし。
「基本ひなちゃんが誘わない限りは俺はなのはちゃん達には近づこうとはしなかったからね」
「それは兄上がコミュ症なだけなんじゃ……」
「誰がコミュ症や。こう見えて人望はあったぞ? 厄介なレアスキルを持ってたから不用意に近づかなかっただけ。その証拠にニコポナデポ対象外のヤマトとはよくゲームしたり、おもちゃ屋でカード買って対戦したりしてたからな」
「一応聞くがヤマト以外の男友達はいるのか?」
「そうだねぇ。バスケ仲間の加藤君だろ? 野球仲間の中澤君だろ? ミニ四駆のライバルレーサーの鈴木君だろ? 走り屋(自転車)仲間のアレックスだろ? あとは──」
「男友達は意外と多いんだな……」
「基本放課後にやる事が無ければそいつらと一時間二時間遊んで帰ったりするな」
特に自転車とミニ四駆は家燃えてから参加できなくて見学してたから、買い直して燃やされる前の状態にカスタマイズし直して復帰した時にはそれはそれはもう喜ばれたなぁ。
「話を戻すけど、そう言うわけで基本誕生会なんて無かったね。ひなちゃんがクリスマスプレゼントの他に誕生日プレゼントにリボンとかビーンズアクセサリとかくれるくらい」
だから原作が始まって更に仲が深まって、ニコポナデポと言う好感度差し押さえシステムが消えてからは関係も親友にランクアップしたから、去年はクリスマス会と並行して俺の誕生会も企画してくれていたけど、結局闇の書事件で出来ずじまいだったからなぁ。
「そうだったのか。なら今年は気合いが入るだろうな」
「まぁ期待しておこうかね。ぶっちゃけ俺よりもツヴァイの生誕パーティーに力を入れて欲しいところだけど……さて、紅茶もタルトも食べ終わってしまったしそろそろ出ようか」
「そうだな。……これから予定はあるのか?」
「特に無いけど?」
「それなら私の家に行こう。丁度今日は父上が非番だったはずだ」
「急に俺お邪魔して大丈夫なん? 迷惑にならない?」
「父上も母上も私の兄なら歓迎すると言っているぞ?」
「そう? それなら行こうかね」
◇
という事でナカジマ宅に到着。
「ただいま帰った」
「お邪魔しますー」
「おかえりチンク──あ! レオ久しぶりね!!」
「ゴフッ!?」
そして俺の顔を見るなりギンガちゃんは思いきりこちらに対してハグという名のタックルを仕掛けてきた。
金髪の件で思い知ってはいたが、俺は油断し切ったときの不意打ちにはめっぽう弱い。
故にこの状況では避けることも止めることもできずに、そこそこな速度で突っ込んできたギンガちゃんの餌食となった。
「いてて……久しぶりギンガちゃん。元気だった?」
「うん! 家族もいっぱい増えて楽しいよ! ……そう言えば母さんがレオが体調崩したって言ってたけど大丈夫?」
「うん。お腹痛めて倒れてたけど無事なんとかなった」
ギンガちゃんとお話ししながら、リビングに入る。
するとそこには……
「おとーさん遊んでー!」
「パパリンまた抱っこして欲しいっすー!」
「本読んで」
「あ……あの……えっと……」
「俺は一人しかいねえから、一つずつじゃねえと無理だぞ? 後ノーヴェ、お前さんはもっとしっかり発言しちゃどうだ?」
スバルちゃんを含めた幼女四人に囲まれるガタイの良いおっさんの姿であった。
普通ならこれだけで通報ものだが、ゲンヤさんはあくまでこの子達の養父であるため、通報しなくても大丈夫だろう。大丈夫だ。だからうっかり110番に連絡しようとしてたこの腕は早よ止まれ。この世界ではこの携帯は動かないぞ?
「……お、レオじゃねえか。遊びに来たのか?」
「はい。ご無沙してます。……それにしても懐かれましたねぇ」
「今は女房がいないからなぁ。女房がいるときはこいつら全員女房の所を離れないぞ?」
「それはそれは……。そう言えば急に三人増えたけど大丈夫ですか? 子育てには色々と入り用でしょう?」
「気にすんな。俺も女房も高給取りだし、俺がチンクを引き取った時点で今更だしなぁ。お前が心配しなくてもせっかくウチに来てくれたんだ。せいぜい可愛がって大切に育てるさ」
クイントさんが独断で三人を養子に引き取ったものだから、ゲンヤさんは思うところがあるんじゃ無いかと思って遠回しに聞いてみたが寛容であった。
なんでも子供が生まれなくて諦めてたけど、子供はたくさん欲しかったんだと。
見た感じスカさんの所の三人娘も良い親に巡り会えた様だねぇ。……まぁスカさんも悪い人では無かったけど、いかんせん環境が……ねえ?
俺がうんうんと頷いていると、スバルちゃんのそっくりさんでは無い赤髪の女の子、ウェンディがこちらを向く。
「あれ? チンク姉のそっくりさんがいるっす!」
「本当だ。チンク姉のクローンの人」
「今のは流石に聞き逃さないなぁ茶髪っ娘? 誰がチンクのクローンだって?」
「そうよディエチ。レオはチンクのクローンじゃなくて、お兄さんよ?」
「姉上の言う通りだ。それにどちらかと言うと私の方がクローンだ」
「それじゃあチンク姉のオリジナル?」
「チンク、あなたのせいで余計ややこしくなったじゃないの……」
全くだよ。普通に生き別れた兄とでも言っておけば納得しただろうに……。
「そうだぞ。それに俺にとっちゃお前はクローンじゃねえ。俺と女房の娘で、レーヴェ氏の娘でもあり、レオ坊やギンガの妹でスバルやノーヴェ、ウェンディにディエチの姉のチンク。それで良いじゃねえか? そう自分を卑下にすんな」
「良い事言いますなぁゲンヤさん」
ゲンヤさんのこの言葉には流石のチンクも感激して涙を流すに違いあるまい。
さぁチンクの反応は……
「なぜクローンが私自身を卑下する事に繋がるんだ? むしろ私はクローンである事に誇りを持っているぞ?」
……流石はスカさん製の戦闘機人。クローンはコンプレックスじゃ無くて個性、誇りであると良いきりやがった。
あ、そうだ。今の会話フェイトちゃんの耳元で延々と流し続けたら、フェイトちゃんも自分を卑下することは無くなるんじゃ無いかな?
「おいレオ坊? すっげえ悪い顔になってるぞ?」
「あらバレちった」
「それでチンク姉のそっくりさんは今日はどんなご用っすか?」
「暇つぶし」
「兄上は今日誕生日だから、パーティーの準備の間はミッドで遊んでる様に言われてしまったんだ」
「え!?」
チンクの発言にショックを受けた様なギンガちゃん。
しばらくワナワナと震えていると、急にまた突っ込んできた。
「グフゥ!?」
「な、なんで教えてくれなかったの!? 今日が誕生日って知ってたらプレゼント用意したのに……いや、待って。まだ間に合うよね? ……よし、お父さん。私少しレオのお誕生日プレゼント買いに行ってくる!」
「あー! ギン姉ずるい! 私もレオ姉の誕生日お祝いするー!!」
「二人では不安だ。私も行ってくるから兄上と父上は妹達と遊んであげてくれないか?」
「いやいや、そう言う事なら全員で行こうぜ! レオ坊には普段女房も娘達も世話になってんだ。誕生日プレゼントくらいやらなきゃな!! 車出すからみんなで行くぞー!!」
なんか誕生日ごときですっごい騒ぎ様だな。ナカジマ家ではいつもこうなんだろうか? (※前世含めてこんなに誕生日を祝われたことがない為、戸惑っているレオ君であった)