見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
天啓を得たひなちゃんは、早速海の見える公園に結界を張ると魔力でできた翼を展開する。
そして自身の翼から、大量の羽をぶちぶちと引きちぎった。
「ちょ、ひな大丈夫なの!?」
「ほぇ、なんで? 魔力で出来てるから痛くはないよ?」
痛くないのは事実であろうが、思わず不安になってしまう気持ちも分かる。だってみるからにひなちゃんと繋がってるように見えるのに、それを引きちぎるって普通に痛そうだ。
そんな俺たちの心配に気がつかないひなちゃんは、一人呑気に翼を細かくちぎってわた状にすると、それをより合わせて糸を作っていく。
「ねぇレオ君?」
「なんだい助手1号君?」
「鶴の恩返し見てたから布を作ろうとしてるんだろうなぁって思うけど、羽で布って作れるものなの?」
「普通は不可能だろうね。でもひなちゃんの羽は鳥の羽ように柔らかくも、ナイフのように固くもなる。その上魔力で出来たものだから、やろうと思えば羽同士を繋げることが出来るってわけだ」
でも羽同士を繋げるだけでも羽を形作る魔力の構成式を把握した上で、接合部をマイクロ単位で書き換えなければならないと言うのに、糸に加工するとなると撚り合わせると同時に羽軸を削除してかなり複雑に構成式を書き換える必要がある。
だがひなちゃんも流石は転生者と言うべきか、その複雑で精密な作業を感覚だけでやっている。
はっきり言ってすげえ。
「ふふふーん♪ るるる〜♪」
「なんか地味な作業だね。近くのコンビニでお菓子でも買って食べながらやる? 私買ってくるよ?」
「いいの? ありがとうシアちゃん!」
「良いよ良いよ〜。それじゃあちょっと行ってくるね〜」
途中アリシアちゃんが結界を抜けてお菓子を買って来てくれた為、それをみんなでチビチビ食べながら糸を撚ること一時間。非常に長い糸ができた。
さて次はこれを布にすれば完成だけど……
「よーし! 後はこれを布に織るだけ……あ」
「どうしたのひなちゃん?」
「布を織るのってどうやるんだろ?」
「ええっとね」
ひなちゃん編み物得意だから布の織り方は分かってると思ってたが、別にそんなことはなかったようだ。
だが博識なすずかちゃんに教えてもらいながら、ひなちゃんは糸を器用に操作して糸を布に織って行く。
てかこの段階で糸を操作できるならこれだけでも充分な武器になると思うんだけどなぁ。取り敢えずアナライザーに糸の構成式解析させて、アスカに記憶させておこ。
「よし、かんせーい!」
俺が糸の構成式を記憶させてる間に布が出来たようだ。ひなちゃんの手には30センチくらいの魔力の布が収められていた。
「おぉ〜、……でこれをどうするの?」
「えへへ、これをもっと大きく作れば布で相手を捕まえちゃうことが出来るんだよ! 名付けてフェザークロス!」
ひなちゃんはそう言いながら布を宙に放り投げて、遠隔操作で布を自由に動かしたり折り曲げたりする。
ひなちゃんは気づいてないかもしれないが、エンジェルウイングの羽は硬化してナイフのようにもなるから、硬化させて普通のプロテクションよりも強力なシールドにしたり、この布で相手を捕まえて硬化させて仕舞えばバインド以上の捕縛力を得ることも出来るだろう。
だがそれに対して複雑そうな表情のすずかちゃんとアリシアちゃん。一体どうしたと言うのだろう?
「確かに強力そうなんだけど……これくらいの大きさの布を作るのに一時間もかかっちゃってたら、実戦では使えないと思うよ?」
「うん。それにひなの羽沢山使ってるからその分消費魔力も多そう……」
「…………」
無言で崩れ落ちてしまったひなちゃん。崩れ落ちると同時にフェザークロスも魔力に還って消えてしまった。あぁ、ひなちゃんの一時間の結晶が……。
消費魔力に関しては日に日にどんどんと最大魔力量大きくなってるから時間が解決してくれるだろうけど、生成までにかかる時間はネックだよなぁ。
「うぅ、良い案だと思ったんだけどな〜……」
「でもせっかく頑張ったのに無駄になったら可哀想だよね。ねぇレオ、なんかいい案ない?」
「うんあるよ」
「なーんて、流石のレオでもえ、あるの!?」
「もちのろん。純粋な実力にはヤマトに負けるようになったけど、それでも魔法に対する知識力だったりデバイスに関しては最強だと自負してますんで。アスカ、フェザークロスと魔力糸改めフェザースレッドの構成式をミラクルホープに送って」
『はいはーい。……ほらよミラクルホープ。あなたが嫌いな我がマスターからのご慈悲です。泣いて喜びなさい』
『ぐ、ぐぬぅ、なんたる屈辱……。ですが、ひなちゃんの笑顔には変えられません。ありがたく頂戴いたします』
「アスカ、ミラクルホープに喧嘩売るな。あとミラクルホープ、そろそろ俺に対する毛嫌いを無くしてくれてもいいだろお前」
全くアスカもミラクルホープも困ったもんだ。ウチのカリバーとヤマトのグラディウスを見習ってくれ。いやマジで。
「ひなちゃん、ひなちゃん。ミラクルホープにフェザークロスの情報送ったから、ちょっとこれでやってみなよ。今まで翼を作って来たイメージで布を作るようにしてみて?」
「う、うん、やってみるね。《フェザークロス》!」
ミラクルホープを掲げてそう叫ぶと、目の前にさっきの手作りの布よりも更に大きな布が姿を現す。
「わぁ……。ねぇねぇみんな。ちょっと相手してもらってもいい?」
「え、みんなって俺たち三人で?」
「大きく出たね〜。なら負けないからね?」
「あ、アリシアちゃん。あくまでフェザークロスの性能を確かめるだけだから、本気にならなくていいと思うな?」
まぁ他でもない可愛い妹分の頼みだ。布と言われて対策を思いついてしまってるが、今回はそれを使わずに実験台になってあげよう。
四人で空に上がると、早速勝負開始!
「それじゃあまずは布で捕まえてみるよ?」
「分かったよ。動かないからやってみて?」
「ありがとすずちゃん。《クロスキャッチ》! ……どう? すずちゃん?」
「うーん……あはは、動けないや」
魔力布でぐるぐる巻きになったすずかちゃんは強度を確かめる為なのか、なんとか拘束から逃れようと身体をねじったり力を込めたりするが脱出できないようだ。
「おぉ、あのすずかが動けないなんて」
「すずかちゃんの筋力は我が校の女子の中では最強クラス。最近じゃ俺のMブラスター(重さ100Kg)を両手ではあれど持てるようになり、挙げ句の果てには握力測定器も握り壊せるほどの力を得た彼女がまさか……」
「レ、レオ君? 後でO☆HA☆NA☆SHIしようね!?」
おっと、今の発言はすずかちゃんには禁句だったようだ。青筋を浮かべたすずかちゃんがニコニコ笑ってこっち見てるよ。
その後拘束から解放されたすずかちゃんがこちらに来たが、明らかに俺が悪い為逃げずに潔く投降しました。俺の誠意が伝わったのか頭をポカリと叩からた程度で済みました。全然痛くなかったです。
「取り敢えずすずかちゃんには後で改めてちゃんと土下座するとして……それじゃあ次なんだけど、ひなちゃん、布を丸めてみて?」
「うん。……こう?」
「そうそう。そしたら羽を硬化させるのと同じ要領で布を硬化させてみて」
「ええっと……こうかな?」
「そうそうそんな感じ。それじゃあ軽くチャンバラごっこしてみよっか?」
「う、うん!」
Iスティックを取り出してひなちゃんと軽く打ち合う。
俺の持つデバイスの中では最も丈夫なIスティックで割と力を入れて打ち合ってると言うのにヒビ一つ入ってないね。これならある程度なら壊れないんじゃないでしょうか?
「強度は充分。……これなら実戦で使っても問題ないかね」
「ふむふむ、バインドはすずかが、強度はレオがテストした。なら私は実戦テストを担当するよ! ひな、どこからでもかかってこーい!」
「いっくよー! シアちゃん!!」
俺からしたら強度テストまででテストは終了だったのだが、アリシアちゃんもなんらかのテストをしたかったようだ。
そしてひなちゃんも早速フェザークロスを実戦で試したかったようで、満面の笑みで模擬戦を開始してしまった。
「巻き込まれたら困るし避難するよすずかちゃん」
「そうだね。下で見よっか」
俺とすずかちゃんは一足早く地上に降りて、二人の戦いを眺めることにした。
「それにしてもひなちゃんは凄いねぇ。まさか、羽から布を作るなんて。子供だからこその柔軟な発想かな? 布だけに」
「ブフッ!? きゅ、急なダジャレはやめてよレオ君! ……それにしても……うん。フェザークロスでちゃんと戦えてるね。これならエンジェルウイングの発展になるんじゃないかな?」
「そうだね。降りて来たら俺の考えた発展系をひなちゃんに伝授して解散しようか」
「え、発展を考えてたの? 流石はお師匠様だね」
「えっへん」
椅子に腰掛けてそんな会話をしながら、のんびりとひなちゃんとアリシアちゃんの戦いを観戦する俺とすずかちゃんであった。