見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「えー、今日は宿題がないからと言ってはっちゃけすぎないように。勉強はしっかりしましょうね? 恋愛よりも先に勉学、分かりましたか豊田君、宮坂君!?」
「え、あ、はい」
「先生に彼氏できないからってリア充に絡んでんちゃうぞー! みんな、毎日毎日独り身の愚痴を聞かされ続けていいのか? 良いわけないよなぁ、今こそ反旗を翻すんだ!! 俺に続けぇえええ!!」
「宮坂君、今日こそ決着をつけましょうか。後で屋上に来て下さい。麻雀で白黒つけますよ!?」
「先生、レオ、毎日毎日朝礼と終礼で喧嘩しないでください。それじゃあ起立、礼」
『さよーならー!』
「バニングスさん!? まだ帰りの会は終わって……まぁいいや。みんな気をつけて帰って下さいね〜」
と言うわけで放課後になりました。
我が校の問題教師である担任に屋上で麻雀を誘われた俺ではありますが、今回は断らせていただこう。何せ今日は魔導師組で集団下校すると決めているのだ。
と言うのも現在海鳴市にはミッドのテレビ局の連中がいるため、見つかったりしたら闇の書の件を問い詰めてくる。一人で大人に囲まれたら萎縮してしまうだろうが、みんなで固まって行動すれば怖くないと言うやつだ。
「うぅ……学校の外に出たくないなぁ。……またあの怖いおじちゃん達がいるんだろうなぁ……」
「大丈夫だよひな。みんないるから怖くないから……。ほら、怖いなら手を繋ごうか?」
「うん! ありがとフェイちゃん!」
「私はひなの姉弟子さんだからね」
外で大の大人複数人に囲まれたひなちゃんはすっかり外に出るのを怖がっていたが、フェイトちゃんが手を繋ぐ事で少しは落ち着いたようだ。
それにしても細かい気遣いができて、フェイトちゃんは本当にイケメンだよなぁ。それに最近はクロノ君に憧れたのか執務官になりたいらしくて勉強してるみたいだし……。ヤマトに嫉妬する男の気持ちがちょっとは分かるよ。
「ん? レオー、うちの妹に不埒な視線を向けたでしょ? 向けるんだったら私に向けてよね!!」
「……はぁ、妹の方はしっかりしてるのに。頑張れよお姉ちゃん」
「た、ため息つかれた!?」
俺とアリシアちゃんの会話を聞き流しながら、チラリとひなちゃんを見て大きくため息を吐くアリサちゃん。
「それにしても……ひなをここまで怖がらせるなんて……ますます許せないわね」
「全くだ。俺らの妹をここまで怖がらせた罪は償ってもらわないとな」
ヤマトも転生者繋がりでひなちゃんとはよく話す。
俺ほどではないが幼い彼女を気にかけて色々昔っから面倒を見続けてるこいつからしても、ひなちゃんを泣かせたのは許せないようだ。
「レオ君、一応お兄ちゃんとお姉ちゃんに連絡はしたけど……本当に大丈夫なの?」
「まぁ行けるだろ。昼休みにちょいとミッドに飛んで調べてみたけど、前々からあのテレビ局の無理矢理な取材とかでっち上げなんかは色々と問題になってるみたい……。俺らに喧嘩売った事後悔させてやろうZE☆」
「うーん、流石にレオの作戦は可哀そうな気がするけど……。でもまぁバチが当たったと思えばそれでいっか。それじゃあ早速帰ろっか? せっかくだから翠屋で何か食べて行こ?」
「それええね〜。それじゃあ提案したアリシアちゃんの奢りや!」
「ええぇ!? ちょっと、自分で払ってよ〜!」
「そうだそうだ。妹ポジにたかってんじゃないよ。ほら、奢って欲しいならダーリンに奢ってもらえ」
「そうやね。それじゃあダーリン、私モンブランが食べたいわ〜♡」
「いや俺ダーリンじゃないんだが?」
「ダーリン私はショートケーキ!」
「しまったその理論だと俺も奢る羽目になるのか……まぁいいか」
そんなくだらない会話をしながら集団下校開始!
◇
学校を出てしばらく雑談しながら歩き、無事商店街に到着。ふぅ、後徒歩三分くらいで翠屋に到着だな。
そしてこう言うのは代々ゴール直前で出てくるもんだ。
「すみませーん、ミッドテレビの者ですけど、闇の書を葬った魔導師ですよね?」
ほーら来なすった。
商店街の影から大人がゾロゾロと俺らを取り囲む。おおう、これじゃあ逃げることも出来ないなぁ。
普段ならひなちゃんを泣かせたこいつらに有無を言わさず襲いかかるタイプの俺ではありますが、今日は作戦があるためあくまでも理性的に立ち回るとしようか。
ヤマトに目配せすると、ヤマトはカメラを持ったテレビ局のスタッフの前へ行く。
「あの、すみません人違いです。って言うかなんですか魔導師って……?」
「いやいや嘘つかなくて良いですよ? 既にあなた方が魔導師であることは調べがついていますのでね。ほらほら、あそこでちょっと色々お話聞かせて下さいよ〜」
「え、嫌です。知らない大人について行ってはいけませんと先生に言われてるのに……!」
あくまで魔法を知らない子供を演じてテレビ局のスタッフを追い返す作戦。しつこいテレビ局には意味をなさないが、これでテレビ局の連中が引いてくれるならこれで良しだ。
俺らだって善良(実態は闇が深そうなテレビ局ではあるが)な人を嵌めたくは無いのでね。
だがしばらく魔法を知らない少年少女のフリをしてテレビ局を追い返そうとしてると、やがてスタッフの一人が舌打ちを一つ。
「チッ、ガキだからって下手に出てれば……おい、あんまり大人を困らせない方がいいよ? そっちがその気ならこっちも考えがあるんだよ? いいの? ある事ない事書いても? こっちは視聴率が取れればそれで良いんだからさぁ?」
とうとう化けの皮が剥がれたか。俺らが違うって言っているうちにやめておけばそれでよかったものを……。
(なのはちゃん、すずかちゃん? 繋がった?)
(うん! お兄ちゃんもお姉ちゃんもすぐ来るって)
(今日はお姉ちゃんもバイトの日だから恭也さんと一緒に来るはずだよ。ついでにノエルにも連絡してくれるみたい)
俺の作戦は至ってシンプル。今回相手は魔導師でも武器を持ったりもしてない。ならば大人にこいつらを取り押さえてもらおうと言うわけだ。
と言うわけでなのはちゃんやすずかちゃんに頼み、電話で恭也さんや忍さんを呼んでもらう事にしました。
「……ふ、ふぇ……ふぇええええええええん!!!!」
あらら、今朝の記憶が蘇ったのかひなちゃんが泣き出しちゃったよ。早く来てくれないか「おい何やってんだコラァ!!」ん?
「我らが商店街のお姫様を泣かすたぁ、良い度胸だなぁおい!!」
「て言うかアンタらなんなのよ! 不審者? 不審者なのね!?」
「こんな白昼堂々ふざけた奴らだ。警察に突き出してやる!!」
「ウチの娘に何やってんのよぉおおお!! 魔法なしでぶっ飛ばしてやるわぁあああ!!」
ひなちゃんの泣き声が商店街に響き渡ったと思うと、あちこちからおじさんおばさんらが出てきてテレビ局のスタッフを取り囲む。って言うかその中に紛れて羽鳥さんいるやんけ。元管理局員が手を出したら……いや、今は管理外世界でパン屋を営んでるし大丈夫か。
テレビ局のスタッフがおじさんおばさんに襲われる光景を見たなのはちゃんは「あぁ」と思い出したように手を叩く。
「そっか。ひなちゃんってこんな性格だから商店街のお店のおじさんおばさんにはすっごく可愛がられてるんだった」
「え、てことは……?」
「恭也さん達が来なくてもここで姿を現した時点でコイツらは詰んでたみたいだね。あ、今のうちに110番しちゃお。もしもしポリスメン? あ、はい。事件です」
それから一分もしないうちに、恭也さんや美由希さん、忍さんが来たが、そのときには既にミッドのテレビ局の皆さんは商店街のおじさんおばさんに取り押さえられてしまった。
「えっと……なのは、何があったんだ?」
「えっと……この人達に囲まれてひなちゃん泣いちゃって……そしたらひなちゃんの泣き声を聞いた商店街の人たちがやっつけちゃったの」
「あー、ひなちゃん商店街のお姫様って呼ばれてるからね〜」
「ひっく……ひっく……うぅ……」
「大丈夫よひな。悪い人はママがやっつけたからね〜」
「通報があって来ました。えぇっと……」
そしてやって来ますは日本の警察官!
俺が考えた作戦とは恭也さん達の力を借りてこいつらを取り押さえて、警察に突き出す事だったのだ。もちろんこれだけじゃ済まないぜ?
俺は子供のように振る舞いながら警察官に話す。
「あ、あのおまわりさん……急にこの人達に話しかけられたんですけど……この人達外国語かよく分からない言葉を話してたんです!」
「え、え? 君は何を……?」
ミッドのテレビ局が困惑の声を上げる中、俺の言葉に忍さんが若干大袈裟に反応する。
「な、なんですって!? って事はもしかしてコイツら妹とその友達を誘拐して海外に売り払おうと……!?」
「た、確かにコイツらは見た目は海外の人……日本で人身売買とは……貴様ら! しばらくは国に帰れると思うなよ!! 16時24分誘拐の現行犯で逮捕する!!」
普通に日本の警察に突き出すだけでは味気ない。そこで人身売買の疑いを掛けさせてもらった。
どうせ証拠不十分でしばらくしたら解放されるだろうが、人身売買の疑いで裁かれかけた経験をすればちょっとは懲りるだろう。
「忍さん。助かりました」
「いえいえ良いのよ。うちの妹を困らせたんだし、これくらいは向いを受けてもらわないとね〜」
「ハハハハ」
「フフフフ」
「ハハハハハハハハハ!」
「ウフフフフフフフフ!」
「お姉ちゃんとレオ君って混ぜるな危険だよね……」
「ほんと、こればっかりはテレビ局の人に同情するわ」
「あいつらは喧嘩を売ってはいけない相手に喧嘩を売ってしまった。……それで良いんだろ」
その後今回の顛末は夕方のニュースとして放送され、それを見たリンディさんに「やりすぎですよ!?」と叱られました。