見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
という事で劇場版編まで後一月を過ぎてしまいました。
二期の時のように対策なしで挑んだら、まーた面倒臭いことになるかもしれん。と言うわけで今からできることをできるだけこなしておく必要があるだろう。
だが転生者である事を明かしてクロノ君やリンディさんに協力を要請しても、「疲れてるのよ休みなさい」と信じてもらえないだろう。故に今回ばかりは事情を知っている転生者連中のみで暗躍する必要がある。
ピンポーン
「れお君来たよ〜」
「ありがとうひなちゃん」
と言うわけでひなちゃんに連絡を入れて来てもらいました。
ひなちゃんを召喚する場合アリシアちゃんがついて来てしまう可能性が高いが、今日はアリシアちゃんはフェイトちゃんとなのはちゃんの三人で、とある事件の対処に別の世界に行ったから問題はないだろう。
「それでお手伝いして欲しいんだよね?」
「うん。俺って世界の未来のことをたまに思い出すでしょ? そこで近々事件が発生するんだけど、そのために色々準備をしたいんだ」
「準備? 修行ならひな付き合うよ?」
「ううん、ひなちゃんの力を利用するのは本っ当に申し訳ないんだけど、フェニックスカートリッジを量産したいんだ」
「うん。いいよ! ひなの力がみんなを癒してくれる事には変わりないもんね。どんどん羽持って行って?」
ひなちゃんはやる気満々のようだ。本当にありがたい。
フェニックスカートリッジはひなちゃんのフェニックスウイングにより羽の形に固形化していた魔力から、固形化させるためのプログラムを抜いてカートリッジに半ば無理やり入れていた。
でも今回は別の方法を試させてもらおう。
「ひなちゃんには以前言ったと思うけど、フェニックスウイングってエンジェルウイングにひなちゃんの別の癒しのレアスキルが付与された複数のレアスキルの複合体なんだよね」
「? そうだね。……あ、ならフェニックスウイングから癒しのレアスキルだけを抜き取れれば!」
「そう言う事。ひなちゃん、エンジェルウイングとフェニックスウイングってどんな風に使い分けてるの?」
「え? 使おうと思えば使えるよ? どうやってって言われても……なんとなく?」
うん、ひなちゃんならそんな風に言うと思ったでござる。
転生者の中では理論派の俺に対して、ヤマトとひなちゃんは感覚派。故にどんな風にと言われてもなんとなくとしか言えないのだ。
「うーん。それじゃあフェニックスウイングを展開してみて?」
「えっと、フェニックスウイングを開いて……」
ひなちゃんはそう呟きながら赤い翼を展開する。……あ、棚の上に飾ってあった去年買ったウルカイザーがひなちゃんの翼に落とされた。……ゲ、ウルカイザーの武器が折れちまったよ。後でヤマトのところに持って行って言霊で修理してもらお。
「あ、ご、ごめんね!!」
「いいよいいよー。ヤマトに修理してもらうから。それじゃあフェニックスウイングからエンジェルウイングだけを収納する感じでやってみて?」
「う、うん」
ひなちゃんはフェニックスウイングを引っ込めるが何も起こらない。どうやら失敗のようだ。でもひなちゃんの周りにほんの少しだけ薄い桃色オーラが出てたから、俺の考察は間違っていないはずだ。
「むぅ、失敗……。もう一回だ! ……あ、今度はれお君のおもちゃを壊さないように気をつけて……っと」
その後何回か赤い翼を出しては引っ込めてを繰り返していると、なんとなくコツを掴んだのかやがてひなちゃんから出る桃色のオーラがどんどん濃くなっていく。
「もう一回……えい!」
「お、これはいい感じじゃない?」
十数回目の挑戦で、フェニックスウイングを収納すると同時にひなちゃんは桃色の炎を纏った状態になった。
え、これ大丈夫? 引火しないよね? 試しに触ってみたが……うん、そこまで熱くない。と言うか温かい。でも夏休み間近の今じゃこれすら辛いな。もうちょっとエアコンの温度下げよ。
「おぉ〜。見て見てれお君! 出来たよ!!」
「本当にできたね……ん?」
おや? 昨日中澤君達と野球やってて滑り込みしたときに出来た怪我が治った……。
ってことはこの魔力はエンジェルウイングの構成式と言う不純物の混じってない純粋な癒しのレアスキルなのだろう。
「俺の予想が正しければこの魔力をカートリッジに入れれば従来のカートリッジ以上の回復力が見込めるはずだよ」
「本当? それじゃあ早速カートリッジを作ってみよ!!」
「お願いねひなちゃん」
「うん!!」
空のカートリッジを手に持ったひなちゃんは「うむむむむ……」と言いながら魔力を込める。
しばらくするとボフンッ! とカートリッジが弾け飛んだ。
「わっ、び、ビックリした〜」
「大丈夫ひなちゃん? 怪我はない?」
「大丈夫だよ! えへへ、魔力込め過ぎちゃったかな? もう一回今度は丁寧に……」
ボフンッ!
「……こ、こんどはちょっとずつ……」
ボフンッ!
「むぅうううう!!」
「この魔力はカートリッジに対応してなかったか……」
流石に欲を張り過ぎたようだ。
ただでさえ従来のフェニックスカートリッジでも死ななければ大概の怪我は癒せるんだから、これ以上力を求めるな。……いや、ひなちゃんを利用しようとするなと言う聖王様からの天啓なのかもしれない。
「まぁ俺も流石にひなちゃんの力を悪用し過ぎかな? って内心思ってたからいいもんね。カートリッジをひなちゃんの魔力に対応するように出来そうだけど、そう言うことなら流石にやめておこ」
「ひなは別に大丈夫だよ?」
「俺が気にするの」
冷静になって考えてみると、別に俺のチートでもないのに他人のそれを複製してみんなに渡す行為自体ルール違反なのよね。
ひなちゃんは優しいから許可してくれるけど、これ以上一線を踏み越えるべきではないだろう。従来のフェニックスカートリッジで我慢しよ。
「うーん……」
「ん、どうしたの?」
「れお君は失敗しちゃったけど、この力を使えないかな〜って思っちゃってね」
ひなちゃんはこの溢れ出す桃色の炎を見つめながらそう言うが、ただでさえフェニックスウイングの状態で充分回復できる代物だしなぁ。
今回純粋な癒しの力を欲しがったのも、カートリッジに余分な魔力を込めずに純粋な癒しの魔力で満たすための実験だったし……。
「この魔力をスフィアにしてなのちゃん達に当てたら回復するかな?」
「でもそれだってフェニックスウイングの羽を投げれば出来るよね? 何故か絶対にしようとはしないけど」
「だって痛そうなんだもん。……そう考えちゃうとスフィアも痛いよね。……ダメ、いい案が思いつかない! ねぇねぇれお君、なんか応用方法ってある?」
「うーん、正直俺も思いつかないかなぁ」
「それじゃあこれは使えそうにないかぁ。むうぅ」
「まぁ実験ってのはいつも上手くいくもんじゃないから仕方ないよ」
「むうぅ……悔しいから普通のフェニックスカートリッジを量産しちゃお! れお君、はいこれ! それじゃあお願いね」
「あいよ!」
ご機嫌斜めになってしまったひなちゃんから赤い羽を大量にもらいそれを残った空のカートリッジに入れる。
その後夕方までフェニックスカートリッジを二人で大量生産して、翌日いざという時の為にと言う名目でみんなに配ったのだった。
〜週末〜
「ふふふ〜ん。あ、そうそう。ドクターからそろそろ新しい研究を頂いてこいと頼まれていたんだった。兄上、この『ひなちゃんのフェニックスウイングから純粋な癒しの魔力を引き出すための考察』とやらを持って行ってもいいだろうか?」
「あ、タンマこれはダメ! ひなちゃんが拉致られる!! これはシュレッダーにかけて処分します!!」
研究者としてのサガなのか、考察をまとめてしまっていたレオ君であった。