見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「レオ、今回は非番なのに呼び出して悪かった。お前がすぐに来てくれなければ、更にたくさんの犠牲者が出ていたことだろう」
「いえいえ、お気になさらず」
最初は頭に血が昇ったものの、民族テロという言葉に文化の違いや民族差別なんかで苦しんだ末のテロなのだろうなと思い無理やり怒りを鎮めた俺であったが、ゼストさんからテロの理由を聞くと「この世界は我が民族が支配するべき。故にこの地に貴様らなど不要!」と言う欲望フルスロットルなテロだったため、遠慮なくぶちのめしてやりました。
「だが思った以上に今回の連中はしぶとかったな。おかげでもう夕方だ……。やはり殺せないと色々面倒だな」
「ダメよチンク? いくら悪い人でも人生を奪っていい理由にはならないんだから。……でも本当にレオ君には悪い事しちゃったね。今日は人生初の遊園地だったんでしょ?」
「別に気にしてませんよ。生まれて初めてのテーマパークをずっと楽しみにしてたのに、空気読めないタイミングでテロなんか起こしやがるものだから本気で殺意が湧いたのに、今回は査察官がいるせいで犯人を半殺しにすらできなくて不完全燃焼な件なんて……全然気にしてませんから。はい」
「め、メチャクチャ気にしてる!? 本当に情けない先輩達でごめんね!!」
「冗談ですよ」
いや本当にゼスト隊の皆様は恨んでいませんよ。
隊長がちょっと堅物だけど、和気藹々としたアットホームな職場だから人間関係も楽だし、局員の中では優秀だから非番でも呼び出されることは非常に少ないから。……まぁ呼び出されるタイミングに限って、旅行とか大事な用事が重なるのは不運すぎてむしろ笑えてくるけど。
「今回行けなかった分は今度ウチと遊園地行こうね!!」
「そうですね。チンクも遊園地初めてだろうし、それはいいかもしれません」
「いや。私はドクターに連れて行ってもらった事があるし、この間もギンガや妹達と行った」
「…………」
い、いいもんいいもん。こうなったら俺一人でどっかのテーマパーク遊びに行くからいいもーんだ。(泣)
え? 子供だけじゃ入れない? こっちには裏技があるんだよ裏技が。
「それじゃあ俺帰ります。今から行けば夕飯と温泉にはありつけるんで」
「あぁ。今回は本当にすまなかったな。代わりと言ってはなんだが、困った事があったら呼んでくれればこちらも駆けつける」
「聞きましたよ、今の言葉? それでは」
報告書なんかは書いたため、後始末はゼスト隊の皆さんに任せて俺は海鳴市に帰還する事にしたのだった。
◇
海鳴市の自宅に時空間転移して時計を確認すると、すっかり日が傾いてしまっていた。
電車で向かったら今から行っても夜になってしまうし、急いでオールストン・シーに向かうとしよう。
ピロリロリーン ピロリロリーン
ん? 俺のスマホが鳴ってる。
え? スマホが発売されるのはまだまだ先だよ?
映画準拠なのか知らないけど、まだ前世でスマホが発表された年になってないにも関わらず、今年の春に発表して売り出され始めたんだよな。
「はいもしもし?」
『あ、レオ君。繋がったって事は帰ってきてたんやね』
「うん、これから電車でテーマパークに行く。そっちは?」
『それがな? すずかちゃんのお父さんが乗せてくれるって言ってくれてるんや! レオ君も一緒に乗らへん?』
「電車代節約できるから乗る。ダッシュで合流するわ」
『大丈夫や。レオ君の家に迎えに来てくれるみたいやから準備して待っとって』
「はいはーい」
これは渡りに船だ。
荷物はひなちゃんに預けてるし、お昼ご飯食べてなくて空腹だから簡単なものでも腹に入れておくか。どうせこの後なんらかの事件が起きて豪華な晩御飯とか温泉とか言ってられなくなるだろうからな!!
その後モモザキベーカリーの食パンを数枚大急ぎで食べて、水で流し込んだタイミングではやてを乗せた月村家の車がやって来た。
「君がデバイスの先生をやってるレオ君だね? 娘がいつもお世話になってるね」
「いえいえ。むしろこっちがお世話になってるくらいで……今日はよろしくお願いします」
普段アリサちゃん家もすずかちゃん家も家に両親がいない関係上、すずかちゃんのお父様の月村俊さんに会うのは初めてだったが眼鏡をかけた優しそうな人物であった。
「朝ぶりやねレオ君」
「よ、はやて。お互い楽しみ損ねてしまったなぁ。……あれ? リーン姉さんもおるやんけ」
「あはは、主の保護者として招待されていてな。リィンとナハトも一緒だ」
「本局以外では初めてのお泊まりです!」
「あはは、そっか」
い、言えねぇ……。この後なんらかの事件があって楽しいお泊まりにはならないって……。
ま、まぁ。はやてとリーン姉さんは後部座席、リィンとナハトはリーン姉さんの肩に座っているから俺は助手席に座らせてもらうか。
◇
「すずかは姉の忍に似て機械いじりが好きな子でね。魔法というのがメルヘンな物じゃなくて、科学の延長線上の物であると知って、きっと魔導機械に興味を持つと思ったんだよね」
「流石はお父様。俺に弟子入りしたのも興味を持ったのが理由でしたね。やはり好きなものこそ得意になると言いますか。教える事を聞き漏らさずにどんどん吸収して行ってくれて、最終的にアリサちゃんとはやての三人で凄い高性能のデバイス……魔導機械を作ってくれたんです」
「そうなのかい? はやてちゃんも凄いねぇ。そっちについたらぜひ三人の努力の結晶を見せてもらってもいいかな?」
「あはは、照れますなぁ……。あ、すずかちゃん達、お風呂に入るの待っててくれるそうです」
「そう。……流石に男女別だからね?」
「当たり前ですよ。俺らもう11歳っすよ?」
まぁまだ俺は誕生日来てないから10歳だけどな!
ピロリロリーン
ん? クロノ君から連絡が来たな?
えっと何々……
「レオ君、これって……」
「こりゃまた傍迷惑なやつがいるみたいだな」
なんでもここ最近都市部で工事現場や廃棄場、自衛隊の基地などから車やクレーン、戦車などが盗まれる事件があるらしい。
普通これだけなら日本の警察が捜査する物だが、突如としてなくなることから魔法関連の事件なのだと。
そして容疑者に上がってるのはピンク髪の女子高生ね……。
「うわっ!!」
「ひゃああ!」
「っ! リィン無事かい?」
「はいお姉ちゃん!」
直後車が急に左へ車線変更。
どうやら後ろから二台のトラックに距離を詰められた様だ。
「危ないなぁ」
「ホンマですねぇ。おかげでリィンとナハトが落ちかけちゃいましたよ……っ!?」
直後前方に出ていたトラックが横転……ってここ高速道路だから急には止まれねぇ!!
「うぁあああ!?」
「っ! 《アルティメットプロテクション》!」
とっさにシールドを展開して車を無理やり止める。
すずかちゃんのお父さんが咄嗟にブレーキを踏んでいたことと、プロテクションに衝撃緩和の魔法を付与していたおかげで、車に傷はついただろうが綺麗に止まることが出来た。
「は、はやてちゃん、レオ君、リィンフォースさん……大丈夫!?」
「は、はい!」
「こっちも平気です! ったくこんなところで魔法を使う羽目になるとは……っ!? ちょ、前のトラック爆発しますよ!」
「な、なんだって!?」
すずかちゃんのお父さんはすぐさまバックでトラックから離れる。安全圏まで下がると同時にトラックが大爆発。爆発が止むとなんとそこには先ほどスマホで見た盗まれた車両を素材に使ったのであろうロボットが蠢いていた。
「はぁ、こういうタイプかよ。はやて、管理局に連絡頼む!」
「了解や! 月村さんすみません! 私達あれの対処をして来ます!!」
すずかちゃんのお父さんを置いて車から出ると、Nロッドを展開、封絶結界を発動してロボを隔離する。
「レオ君、連絡すんだで!!」
「ヤマト達へもこちらから連絡を取った!」
「おう。……おっと、あなたが犯人ですかね?」
諸々の準備を済ませて、いざ迷惑ロボット殲滅作戦へ移ろうとすると、ロボの上に一人の赤い髪の少女が現れた。これは幻影かな?
『あなたが八神はやてちゃんと宮坂レオくんね?』
「時空管理局地上本部護衛官兼ゼスト隊準所属、宮坂麗央です。あなた随分と恐ろしい事をしますね?」
「時空管理局本局人事部所属、八神はやてです! あなたは!?」
問答無用で捉えたいところではあるが、最初に身分を明かして投降する気がないか聞くのがルールのため、軽く自己紹介を済ませて要件を聞こうとすると、少女は目を細める。
『あなた達の持ってるその本……ロストテクニクスデータストレージ、闇の書。そしてロストテクニクスエネルギージェネレーター、魔王の心臓。……それを貸してもらいに来たの』
「お話しやお願いなら、局の方で伺います!!」
「というか貸してもらいに来た割には随分と物騒な借り方じゃないですか。ジャイアンでもそんな借り方しませんよ?」
遠回しにお前に貸すわけねえだろボケェ!! っと言ってやったが、相手はロボを操縦すると元はトラックの一部であっただろう鉄屑を掴む。
『すぐに返すから……抵抗しないでくれると嬉しいわ!!』
「……行くよ。リィン、リィンフォース、レオ君!」
「はいです!」
「了解です、我が主!」
「おう!!」
今日は仕事で遊べなくてムカついてたんだ。ついでにストレス発散させてもらうからな!?
と言うわけで、次回イリス(の操縦するロボ)VSレオ君&はやて&ツヴァイ&アインス。
今回レオ君に急に仕事を入れたのは車椅子レーサーと行動させるためでした。