見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ?   作:蒼天 極

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あいつは俺以外が倒したらダメなような気がする。

 その後オールストン・シーのホテルに帰還(俺とはやては初入場)した。

 せっかくの高級ホテルであるが、現在はお通夜ムード。そりゃそうだ。ひなちゃんのおかげで今みんな怪我してないけど……いや、俺は腕切断したときにかなり出血したから今輸血中だけど、今回は完全敗北だったからなぁ。

 てかなんですずかちゃんのお母さんは輸血パックなんて持ってるの? あなた医者じゃないでしょ?

 

『アミタという女性はその後、本局に到着後に意識を失ったから救急病棟に搬送した。これから検査と出来る限りの治療をする。残酷なようだが、すぐに話しを聞かせてもらわなければならない』

 

「そう言えば腹撃たれてたっけ? 妹の方のアレを見ちまったせいですっかり忘れてたけどさ」

 

 嫌な事を思い出したと言わんばかりに、苦笑いを浮かべるヴィータちゃん。

 まぁ確かにアレと比べたら可愛いもんだろうて。……アミティエさんも普通に重症だけどなぁ。

 

「クロ君が止めちゃったけど、本当にひなが治療しなくて良かったの?」

 

『あぁ、彼女がまだ味方かどうかも分からない。それにレオとの確執もあるし暴れられる可能性も充分にある』

 

「申し訳ないね。でもキリエのあの様子からひなちゃんの件を抜きにしても、魔力ダメージで気絶させるよりも、物理的ダメージで一気にやった方が夜天の書を奪われるリスクは少ないって踏んだ」

 

『仕方がないさ。夜天の書も今は安定してるし、魔王の心臓についても咄嗟の機転でレプリカを渡したとはいえ、使い方次第でこの世界が崩壊する可能性はゼロじゃなかった。最悪怪我をさせてでも止めなければならない。……だが次から殺傷設定をオンにしてあそこまで痛めつけるときは殺害許可を取ってくれ。もし何かあったときに庇えなくなってしまう』

 

「了解」

 

「ねぇ、すずちゃん? なんでひなの耳を塞いでるの?」

 

「今のクロノ君とレオ君の会話はひなちゃんにはまだ早いからだよ?」

 

 今回少しばかりリンディさんに叱られたが、それは必要以上に痛めつけた事とキリエの片腕を完全に破壊したから。

 俺の実力ならもう少し上手く立ち回れたのではないかと言われてしまったのだ。

 死ぬかもしれない戦場でそんな事を言われてもと思うかもしれないが、確かにあのとき非殺傷設定で無力化させただけなら、途中でアミティエさんの妨害が入らずに上手く気絶させられたかもしれないのもまた事実。

 

「そう言う意味では今回は反省文書いた方がいいかもしれないね」

 

「でもあのイルマってやつはめちゃくちゃ強かったんだろ? だったらキリエの方も強いんじゃないかって本気出すのはしょうがないと思うぞ?」

 

 ヴィータちゃんがそうフォローを入れてくれたが、俺の得意分野は相手の特徴を見抜いて即座に無力化するように実行する事。

 例え保険のために最初は本気モードでやってたとしても、戦っていればイルマより弱いと気づけたかもしれないし、「邪魔すんなよ?」なんて言わずにヤマトと組んで、包囲でもすれば途中何かがあっても充分に対応ができたはず。

 だが今回はひなちゃんをやられた怒りで、相手を痛ぶることしか見えていなかったのだ。

 

「それに、もしかしたらひなちゃんに甘えてたのかもしれない」

 

 フェニックスウイングがあれば、もし何かあっても相手に何をしても回復してもらえるから大丈夫と考えてしまった。

 そう言う慢心こそが逆転される一番の原因だと分かっていたのにだ。

 ……ヤベェ、そう考えると今回の一番の戦犯は俺かもしれない。

 

「ひなに甘えてたの? ならもっと甘えていいよ、膝枕してあげる」

 

「意味が違うよひなちゃん?」

 

 どこまでもマイペースなひなちゃんにツッコミを入れるすずかちゃん。

 この子はいくらなんでも危機感が無さすぎるような……いや、自然体でいられる方が充分な力を発揮できるし、悩むよりもむしろこれくらいの方が良いのかもしれないな。

 

「と言うか今回はレオ君のせいじゃないよ。私が最後の最後で油断してしまったからや。とんだ失態や、申し訳ない」

 

『想定外の相手だ、謝る事じゃない。それよりも……』

 

 クロノ君の言葉にはやては頷く。流石に夜天の書を奪われてしまったことは彼女に取ってダメージが大きかったようだ。

 はやては、悔しそうな表情を浮かべていた。

 

「うん。取り返すよ、失態のツケも私の宝物も。……もうこうなった以上もう手段は選んでられへん。リィン、リィンフォース。練習中だから上手にできるか分からんけど、あれ試してみよか?」

 

「はいです。はやてちゃん! お姉ちゃんと一緒に頑張るです!!」

 

「はい。二代目の夜天の書が第二の闇の書に変えられてしまうのは防がなければなりません。なんとしても止めましょう」

 

 はやてとリィンフォース姉妹の奥の手……あぁ、多重ユニゾンか。

 マトリョシカ的に複数のユニゾンデバイスと同時にユニゾンする、俺がリーン姉さんにプログラムしておいた真能力だ。

 

「でも良いの? あれ俺で言うオールユナイトフォームに相当する物だから負担がそこそこ来るでしょ?」

 

「大丈夫や。夜天の主として夜天の書を取り返すのは私の義務や。それに師匠が腕犠牲にして助けてくれたんやから、それくらいせんとあかんしね。それにレオ君もあれで黙ってないやろ?」

 

「もちろん」

 

 丁度そのタイミングで通信が入る。えぇっと……マリエルさんからか。

 

「はいこちらレオ。シャーリィちゃんに預けたあれ見てくれました?」

 

『う、うん。見たよ。……でも良いの? あれを私に渡すって事は……』

 

「別に良いです。どうせこの研究では特許取れないですし」

 

「えっとレオ君? 今回はどんな驚くような事をしたの?」

 

 すっかり事件の途中で技術チートを駆使して、事件を解決に導く何かを開発するのが習慣になってしまったからか、すずかちゃんがなんだかワクワクしたような顔でそう尋ねてくる。

 と言っても今回は大した事はしてないんだけどね。今回はちょっと休んだ後にこの後すぐ出るから時間がないし。

 

「これからすずかちゃん達のデバイスに組み込まれる、管理局がカレドヴルフ社とやってた次世代兵装の技術の欠点の燃費の悪さを改善する機構と、更に守備力を上げるのに適した素材なんかをすぐさま実行に移せる範囲でピックアップしてシャーリィちゃんに渡しただけ」

 

『だけじゃないよ!? 私達が今やってる次世代兵装を更に一歩発展させた新しい規格で作られてるし、作業を簡略化するプログラムが収められたメモリとか専用のパーツなんかも渡してきて…………。いいの? この技術でなのはちゃん達のデバイスを強化するって事は、レオ君じゃなくて管理局の功績として……』

 

「いや緊急事態なのにそんな事言ってられないでしょうが」

 

 どうせ「もったいない。こうすればもっと良いのが作れるのに」と暇つぶしで作った物だ。

 それに以前ヴィータちゃん達に次世代兵装見せてもらってから、欠点を解消するならこんな感じかと手直ししたものだから、こんなものを発表したところでパクリとか技術の盗用とか言われるのがオチ。

 

「どうせ俺の手元にあっても日の目を見ないんだから使って下さい」

 

『〜〜! ありがとう!! でもなんとか上に掛け合ってみるから!!』

 

 そう言って通信が切られた。

 

「ま、まさかそう言う形で動いとったなんて……」

 

「技術提供をしたんだね。でもそれじゃあ私達のデバイスは……」

 

「デバイスを回収するときにマリエルさんが、この子達はもっと強くなるって言ってたけど、そこから更にもう一段階強くなるってことだね」

 

「そ、そうなんだ。……うぅ、やっぱりレオ君に追いつくのはまだまだ先だなぁ」

 

 技術面に関しては俺の唯一と言って良いアイデンティティだから、そう簡単に追いつかれてたまるものか。

 そう言ってマッドサイエンティストの如く「フハハハハハ」と笑っていると、ひなちゃんがコテンと首を傾げる。

 

「でもヤマト君のグラディウスとひなのロイヤルホープはさっきれお君が回収しちゃったよね? 輸血が終わったられお君が強化するの?」

 

「うん。グラディウスは全員でヤマトのために強化したのもあってバルディッシュ以上に改造が難しいデバイスだし、ロイヤルホープについては渡してから二年以上……そろそろ大幅アップデートをしたいと思ってね」

 

 故にこの二つは現在自宅の製作ルームで俺のデバイスと共に試験管の中でプログラムだったり、安全な為に設置してたリミッターを一段階外す作業を自動で行っている。

 ヤマト曰く更に一段階覚醒したとか言ってたし、グラディウスのリミッターを外して更に出力を上げたところで動けるだろうし、俺に関しても……

 

「魔力のリミッター外せばなんとかなるだろ」

 

「ちょっと待ちぃ。今リミッターを外すって言った? レオ君リミッターつけてたんか?」

 

「うん。魔力ランクが5Sから更に上いったから」

 

 こうは思わないか? 無印からA'sで魔力量が大幅に増加したくせに、なぜA'sから劇場版の二年で成長していなかったのか?

 答えは簡単。成長してたけどこれ以上魔力量が増えたら色々とやばい……制御だったり次元震の考慮もしないといけなくなるためリミッターを積んで最大魔力量を制限してたのだ。

 

「イルマってやつは俺でも簡単には倒せない。でもレプリカとはいえ魔心を奪われたから、俺がケリをつけるべき相手だろ。それになんでか知らないけど、なんだかあいつを()()()()()()が倒したらいけないような気がする」

 

「それって……」

 

「いや、因縁とかライバル認定したとかじゃないんだけどな? でも俺が倒さないと意味がないって思ったんだよ。……だから今の俺にできることはなんでもする。次はリミッターを撤去した本来の俺自身の力で勝負だ。と言うわけでクロノ君、あいつはひき肉にしてオールストン・シーの水族館のサメのおやつにするから殺害許可ちょーだい?」

 

『最初から殺す前提で動くんじゃない! 一応僕たち警察みたいな物だからな!?』

 

「水族館のサメさんに人の味を覚えさせちゃダメだからね!?」




どうやらレオ君はイルマの事が気になるようだ。
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