見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
いくら神速の耐久勝負でシュテルの足を破壊したとはいえ、飛行魔法で飛び回る空戦魔導師にとって、足がダメになっても戦闘は継続できる。
シュテルが足の痛みに気を取られればまだ楽なのだが、足の腱が切れたことなど気にも止めずに戦闘を継続しているのは、流石と言えるだろう。
「神速って言うアドバンテージが無ければ、なのはとアリサは食らいつける。ここからどう逆転するつもりだ?」
「もはや作戦などありません。全力全開であなた方に食らいついて、刹那の隙に喉笛を噛みちぎって見せましょう!!」
「あんた頭脳派に見せかけて意外と武人キャラだったのね!!」
さてここまで見れば、三対一で俺らの方が有利だろうが、そうは言ってられない。
と言うのも神速の長時間使用で結構体力を使ってしまい、近接はアリサが、シュテルが離れたらなのはが戦う横で俺は援護に徹している状態なのだ。
言霊で自分の時を巻き戻して回復すれば良いと思うかも知れないが、言霊を使おうとしたときに限ってシュテルはこちらに攻撃してくる。レオみたいな戦い方しやがって!
「質問しても良いですか?」
「え、今?」
「戦闘中に何よ?」
「あなた方は先ほどから私を空に誘導していますね? それに流れ弾は地上に落下しないようにヤマトが撃ち落としている。なるほど、地上の建造物を守っているのですね? ですが地上の施設に生命反応は見当たりません。無人の建造物を守る理由はなんですか?」
気づかれていたようだ。上手く立ち回ったつもりだったんだがな。
「それは……この施設はみんなが一生懸命作ってるもので、完成を楽しみに待ってる人がいて、沢山の人の努力と期待がこもっている場所だから、壊したくないの!!」
「ここは私やすずかのパパやママが企画して、協力して作り上げた場所。パパ達の努力の結晶が壊されそうになってただ指を咥えて見てる娘なんていないでしょうが!!」
「俺は二人ほど高尚な理由じゃ無いんだが……今回の内覧会でははやてとレオがいなかったからな。また日を改めてみんなでここで遊びたいのに、ここを壊されたら困るってだけだ!」
「それを守りながら、私の攻撃を受け切れるとでも!?」
直後彼女の攻撃が更に苛烈になる。
だがなのはもアリサもそれに負けじとギアを上げながら話す。
「やってはみるよ! 無理でもなんでも……物分かりよく諦めちゃうと後悔するから! だから決めたんだ。どんな時でも諦め悪く食らいついて……私の魔法が届く距離にあるものは、全部守っていくんだって!!」
「今のままで受け切れないならもっと頑張れば良い! 頑張って……頑張って……ここを守りながらあんたも倒す! 無茶っていうのはこう言う時にするものなのよ!!」
「二人の言う通りだ。恭也さんやレオに鍛え上げられたこの力と魂を出し切ってやる。【回復】!」
「言霊を……どうやらお喋りが過ぎましたね。……ですがそれがあなたの覚悟ですか……」
こちらに質問しているうちに、悟られないように魔力を貯めて言霊で身体を戦闘前に戻す。
だが俺が完全回復したのが驚異に感じたのだろう。彼女は素早く距離を取る。
逃すか。回復したなら一気に距離も詰めて……っ!?
「ば、バインド!?」
「設置型のバインドも使えたのね……」
「くそ……。そりゃあ何も対策せずに距離は取らないよな。回復したからって油断した……!!」
「私にも覚悟があります。……王を守り王の願いを叶える炎であると言う覚悟です!!」
彼女はそこまで言うと、彼女の武装であるルシフェリオンに使い切れなかった残存魔力を集める。
「集え赤星、全てを灼き消す焔と変われ……」
「「「収束魔法!?」」」
そうか。彼女はなのはやアリサ、そして神速を使える事からおそらく俺の成分も入っているのだろう!
ならばなのはの収束魔法に相応する砲撃なんかも使えるのだ。しかも炎の変換資質持ちなら破壊力はなのはのスターライトブレイカーを超えるだろう。
「私とあなた方の心と魔導……どちらが強いか比べ合うとしましょう」
「こっちも収束魔法で相殺するしかない……。だけど……こんな距離で撃ち合ったら地上の施設が……」
「ヤマト、言霊で何とかならない!?」
「魔力を溜めるよりもあいつが撃つ方が早い! クソ……こうなればもう一回神速で(なのは、アリサ、ヤマト大丈夫! 地上の施設は僕が守る!!)そ、その声は!!」
無理矢理拘束を外して物理的に彼女を無理矢理止めようと脚部に力を込めながら集中力を高めようとしたその瞬間、懐かしい声が聞こえたかと思うと地上の施設が黄緑色の膜に覆われる。
こ、この防御魔法は……
(あ、ユーノ君!!)(ユーロク、来たんだな!!)
(ユーノだよ! なんでそっちで覚えてるんだよ。どうせレオのせいだろうけど!! ……ってそれどころじゃ無いか。ここは僕が守るから、なのはは気にせず、全力でぶっ放して!!)
(ユーノだったっけ? 悪い、忘れてた! だが大丈夫なのか? なのはの収束魔法は二年前とは比べ物にならないぞ!?)
(え、マジで……? ならヤマトも手伝って!!)
防御魔法、拘束魔法が得意なユーノでも、流石に二年前以上の出力の収束魔法を受け止められる自信はないようだ。
そう言う事ならこの防御魔法を言霊で補強するとしようか!! なぁに、シュテルの収束砲を止めるのは間に合わないけど、ユーノの防御魔法を強化するだけならすぐに魔力を溜められる!
「【ユーノの防御魔法、百倍強化】!! ……悪いが俺は手伝えそうにない! なのは、頼めるか!?」
「ありがとうユーノ君、ヤマト君! それじゃあ早速……」
「なのは、私も手伝うわ! ユーノの防御を百倍にしたなら耐えられるだろうし、以前ノリと勢いで作った合体技、いけるわね!?」
「にゃはは、もちろんなの! いくよアリサちゃん!!」
「任せなさい!!」
なのはとアリサが二人でストライクカノンを構える。
どうやらユーノと一緒に地上の保護と防御に専念する選択は正解だったようだ。近接火力最強と砲撃火力最強が協力する。それすなわちユーノの防御魔法なんてあっさり砕け散ろうものなのだ。
「集え星の輝き……!!」
「太陽のように燃え上がりなさい……!!」
なのはとアリサの合体魔法。
なのはがチャージした収束砲にアリサの魔力が混ざり、桃色の光の球は朱色の炎塊へと姿を変える。
シュテルの方が先にチャージを始めていたが、なのはとアリサも二人が協力してチャージをする事で時間差についての不利は埋められる。
「ブレイカー同士の激突……ってアリサとなのはが手を組んだらここ消し飛ぶんじゃ……!?」
「大丈夫だ。俺とユーノで守ってる! ヴィータ、ここは危険だ。こっちに来い!!」
「あ、あぁ!」
シャマルさんやザフィーラの協力もあり、無事に巨大兵器を完全破壊したヴィータがこちらに来たが、大急ぎで安全な所へ避難させる。
火属性の収束砲VS火属性の収束砲、一応念には念を入れてユーノの防御魔法を百倍にしたが足りるのか……? いや、ダメだろう。防御魔法は苦手だけどユーノの防御魔法に重ねがけして……
「ルシフェリオン……」
「「N&A、バーニング・スターライト……」」
「「「ブレイカー!!!!」」」
直後、感じたのは凄まじい衝撃と熱の暴力。
真紅の魔力と朱色の魔力がぶつかり合い、超新星大爆発を連想するほどの大爆発を起こす。
「頑張れユーノ! ぐぉおおおおお!!!!」
「ほ、本当に強くなってる!? なんとか耐えられそうだけど、今でこれなら大人になったらどんな大火力を発揮するんだ!?」
「な、なんだこの大厄災。ベルカでもこんなの見たことねー……」
ヴィータが目を点にしている傍らで、なのはとアリサ、そしてシュテルは全力で撃ち合っていた。
「撃ち切れ……この砲撃に耐えられる人間など……!」
だが撃切った直後になのはとアリサは既に動いていた。
「ストライクカノン、A.C.Sモード!!」
「フレイムアイズ、A.C.Sモード!!」
突撃モードのストライクカノンとフレイムアイズで一気にシュテルの下へ移動。速度の乗った突きを放つが、シュテルは不意を突かれながらも防御に成功する。
っ!? こいつらこのまま近距離で撃ち合うつもりか!?
「ヒート……」
「バースト……」
「タイラント……」
「「「エンド!!!!」」」
再び大爆発。これはお互い無傷で済まないんじゃ……いや、油断は禁物。シュテルにとってこれは致命的な隙になる。
「ちょっと行ってくる!!」
「や、ヤマト!? どこへ行くんだ!?」
爆発が止むと、爆発地点から少し離れたところにシュテルはいた。彼女の服はあちらこちらが焦げてボロボロ。
だが彼女の目にはまだ炎が宿っていた。
「な、なかなかやりますね。ですがまだです。まだ負けるわけには……「いいや、これで終わりだぁあああああ!!!!」っ!?」
彼女の姿が見えた瞬間に神速で一気に距離を詰めると、彼女の鳩尾に全力の突きを叩き込む。
さっきのブレイカーや超近距離での砲撃でダメージも溜まっているのだろう。ダメ押しの一撃を叩き込んでやれば、流石の彼女もおしまいだ。
「カハッ!? …………む、無念……です」
ガクリと力が抜けるシュテルをそのまま受け止めると、ボロボロながらもやり切った顔のなのはとアリサがこちらに来ると、意識を失った彼女に声をかける。
「私達の勝ちだね。目が覚めたらお話し聞かせてね?」
「これに懲りたらもう悪い事するんじゃないわよ?」
「シュテルを引き渡したらクロノと合流だな……。ふぅ、なかなかハード。少し休憩したい所だな」
「確かに。もう限界なの……」
「頑張りなさいよ。……と言いながら私もキツいかも。ヤマト、言霊で回復お願い」
「あぁ」
言霊で俺達(シュテルを除く)を癒しながら、地上に降りてシュテルを局員へ引き渡しに行った。
一歩間違えればオールストン・シーが消し飛んでいただろうから手加減しろよと思うかもしれませんが。なのはとアリサが一切手加減しなかったのは、ユーノとヤマトが協力すれば守り切れるだろうと言う信頼の現れだったという事で。