見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
俺とアリサちゃん、すずかちゃん。連絡して来てもらったチンクは現在管理局のメンテナンスルームで、アリサちゃん達のデバイスにフォーミュラ機構を搭載。また、なのはちゃんや転生者組などフォーミュラが入っているデバイスも再調整や最適化を行っている真っ最中。
ただ基本的な設計図は完成してるし、データの書き込みなどの時間は暇なので、デバイス製作と同時になのはちゃん達と話しに花を咲かせていた。
「それにしても……ほんと、飛んだ夏休みの始まりになったわよね〜」
「うん。これ終わったらちょっとゆっくりしたいな」
『にゃはは、そうだね。でも夏休みの宿題があるよ?』
「それはゆっくりした後にみんなで一気に終わらせましょ」
『そうだね。八月の頭にまたオールストン・シーに行くからそれまでに頑張って終わらせよ?』
そうそう。一泊二日で予定してた、旅行ついでのオールストン・シーの取材は結局中止になってしまったからな。
特に俺とはやてなんかは一秒たりとも参加出来てなかったから、仕切り直すことになったのは不幸中の幸いだったね。
『今度はれお君も一緒に行こうね!!』
「今度こそはね。……おっと、チンクも一緒に行く?」
チンクは仮にも妹だ。彼女の目の前で俺一人だけ参加表明をするわけには行かないと誘ってみたが、チンクは難しそうな表情を浮かべる。
「どうしようか。私が行くならギンガや妹達が羨ましがりそうだしなぁ……」
「ならいっそみんな誘えばいいじゃないの。ちびっ子六人増えた所でこっちは無問題よ!!」
『流石はアリサ! えーと……デブだね!!』
空気が凍った。
モニターの向こうでとっても良い笑顔でサムズアップをするアリシアちゃんに対し、アリサちゃんは青筋を浮かべながらもヒクヒクと笑顔を維持してアリシアちゃんの間違いを指摘する。
「……アリシア? それを言うなら太っ腹よ? 確かに食べる量増えちゃってるけど、その分恭也さんとかヤマトに扱かれてるからそれで相殺されてるからね?」
『あ、ごめん太っ腹だったね。よ、アリサ! 信楽焼と同じくらい太っ腹!!』
「アリシア……アンタ後で覚悟しておきなさいよ……」
『お姉ちゃんが本当にごめんね!! ほらお姉ちゃんも謝って!!』
アリシアちゃん。無自覚な悪口ほどタチの悪いものはないんだよ?
それとあんまり怒らすのやめてよね。一応作業中なんだからさ?
後ついでにもう一言。信楽焼はイメージ的にははやてやろがい!!
「……というか私もちびっ子扱いなのか? ……確かに年齢の割には成長してないけど、よく食べてよく運動してよく寝てるし、ちょっとしたらきっと素敵なナイスバディに──」
「うーん、ミゼット婆ちゃんに母さんの写真見せてもらったけど、すっごいチビだったし望み薄いと思う」
「……神は不平等だ。……そうだ、ドクターに成長薬を作ってもらおう」
そうした方がいいよ。この世界の母親の写真見たら、小学生と勘違いするレベルの背丈でしかも童顔だったから。
そんな事を呑気に話していると、別のモニターが浮かび上がり東京湾の船にいるはやてとヤマトが映る。
『やっほー。お先にヤマト君とのデートクルーズ楽しんでるで〜』
「」ガタ
「」ガタ
『』ガタ
『』ガタ
はやての発言にアリサちゃん達は反射的に立ち上がったが、アリサちゃんとすずかちゃんはデバイスの整備。なのはちゃん達もこの後やる事があるため渋々座り直す。
「それで、どうしたの? こんなクソやべえ状況でデートクルーズを楽しむほど、オリ主も車椅子レーサーも愚かじゃないだろ?」
『いや俺さっきまで言霊でオールストン・シーの壊れた所の修復してて、たった今帰って来たんだが……』
「お疲れ様、テーマパークを修理してくれてありがとね。……二人きりにすらなってないじゃないの」
『もう、ヤマト君? そこははやてと一緒に大人になりましたって言う所やで? 『意味分からねえよ』……まぁええわ。私の用事はこれや!!』
はやてがそう言って取り出したのは、一枚の闇の書のページ。
確かこれってユーリちゃんが差し出して来てた……でもイリスの攻撃で燃えたんじゃ無かったっけ?
『ボクが修理したんだ〜!』
『ほんと? 流石レヴィだね』
『えっへん! もっと褒めて〜!!』
フェイトちゃんに褒められて、嬉しそうに胸を張るレヴィ。あくまでも2Pカラーだから姉妹に見えるなぁ。
『と言うわけで、ユーリが私達に何を見せたかったのか……ちょっと見てみよ?』
「デバイス班は作業の片手間で見るようにね」
「うん」
「分かったわ」
「私も見て良いものなのか……まぁ、大丈夫か」
『……あ、それはアミタさん達にも見てもらった方がいいかも。ちょっと呼んでくるね』
なのはちゃんが別室にいたフローリアン姉妹を呼んできたのを確認してから、モニターの向こうでレヴィが闇の書のページを操作すると、闇の書のページからモニターが映し出され動画が再生された。
『資源の枯渇と土壌の砂漠化。命が暮らす星としてはもう死にかけている惑星。それが私達の故郷、エルトリア』
ん? なんだか今すっっっっっっごく聞きたくない声が聞こえて来たぞぉ?
『死にかけた星を見捨てて新しい大地に逃げようとしている人が増えていく中、この星に残って星の再生を目指そうとしている人達もいます! それが我ら惑星再生委員会!!』
そう言って映し出されたのはイリス。
……………………。
「それじゃ、これから集中タイムな」
「了解。さっさと終わらせて寝る時間を確保しましょう」
「もぅレオ君、アリサちゃん? ダメだよ。確かにとっても見たくないけどユーリちゃんが見せようとした物なんだからちゃんと見よ?」
……ま、確かにもしかしたらイリスを簡単に倒せる裏ワザとかが載ってるかもしれないしな。
情報を制するものが勝負を制するとも言うし、蕁麻疹出来そうだけど我慢して見るか……。見るか……。はぁ、見たくねぇなぁ……。
『因みに、私は委員会の製作物の一つ。生体型テラフォーミングユニット、型式IR-S07。マスコットネーム、イリス!』
っ! まさかこんなに有益な情報を入手する事ができるとは……!!
「良いこと聞いた! コイツ人造生命体なんだな!? ならいくらでもやりようあるじゃねえか!! イリスのAIを自壊させる為のウイルスプログラム作ってくる!!」
『うるさい。【デバイス作りながらでも良いから、ちゃんと最後まで動画を見ろ】』
突如、身体は勝手にモニターの前に座り直してしまう。
ちょ、ヤマト! 言霊は流石に卑怯だって!!
その後、途中退席が出来なくなってしまった為渋々動画を見る俺。
動画にはエルトリアの現状、惑星再生委員会の主な仕事内容、どこかで見た文様がある遺跡の中でのイリスとユーリちゃんの出会い、そしてユーリちゃんの緑を作り出す能力がイリス達惑星再生委員会の希望となって、一緒にエルトリアに緑を増やしていくと言うなんとも希望に溢れた活動が綴られていた。
「……これだけ見ると、素敵な動画なんだけどね」
「そうだね。でも何があってあんな事になっちゃったんだろ?」
「多分そこら辺の真相はこれからじゃないか?」
だが途中で動画にノイズが走り出し、やがて見れなくなってしまった。
これからどんな結末を辿るのか気になってた所だったんだけどなぁ。
『あれ? あれれ?』
『途切れちゃいましたね』
『だがなるほど、私が眠っている間にこんな事があったのか』
リーン姉さんは納得したかのように頷く。
確かユーリちゃんは元々闇の書を夜天の書として運用する為の外部アクセサリで、三代前の闇の書の主の抵抗で闇の書が正常に動かなくなったタイミングで闇の書のコントロール権を乗っ取ったって言っていたっけ?
なら彼女にとって意識が無い時に闇の書がどんな使われ方をしていたかを知れて、悪用されてないと知って胸を撫で下ろしたに違いないだろう。
『やっぱりデータが破損してるみたい』
『ヤマト君、言霊で修復できるか?』
『……すまん。激戦の後にオールストン・シーの修復したし、流石に魔力使いすぎてエネルギー切れ。自分の身体の状態を戻す魔力すらない』
『そっか。なら飛ばせるところまで飛ばして一気に見よか。レヴィお願い』
『はーい』
その後映し出された光景は、夜の研究棟。
『早く……こっちだ!!』
『は、早く逃げないと──ぐぁああ!?』
『お、おい!? がは!!』
『きゃぁあ!?』
惑星再生委員会の研究員が何者かに襲撃され、蜂の巣にされて次々と死んでいく光景。
いやいや、飛ばした間に何があったし?
そして再び場面は飛ぶ。そこに映し出されたのは、イリスを製作したと思われる一人の男性の遺体を抱きしめたイリスと、それを見つめるユーリの姿。
『どうして……なんで!? ねぇ、ユーリ!!!!』
そして再び場面は飛び、次に映し出されたのは湖の真ん中でユーリの能力である黒い結晶に貫かれてスクラップになってしまったイリスとそれを見つめるユーリ。
…………。
「この状況だと、ユーリはイリスのお父さんとイリス自身を殺した。でもイリスのAIは生きていて復讐しに来たって見て取れるわね」
「うん。でも重要な場面が見れなかったし、そう決めつけるのは早計だと思う」
「そうだねぇ。……そもそもあの状況でユーリちゃんが人を全滅させるメリットはないし、仮にユーリちゃんがやらかしてたとしても、それをわざわざ俺らに見せるか? タダでさえイリスに執拗に攻撃されてたのに、それでその映像を見せようとするなんてもはやサイコパスだ」
「そうよね。てことはなんらかの誤解でイリスはユーリを仇と勘違いしてるってところかしら」
まあ、オチとしてはそんなところだろうなぁ。
もしかしたらイリスとはまた違う本当の諸悪の根源がいるのかもしれない。
……でもまぁ
「それとこれとは話が別だよな」
「そうね。だからと言って、この世界めちゃくちゃにする理由にはならないわ」
「
「よし、ならイリスに目に物見せるためにさっさと仕上げるよ」
「うん!」「えぇ!」
「…………まさかあのすずかすら同情をせずにぶっ飛ばすと言い切ってしまうとは。イリスと言うやつはよっぽど最悪な事をしたんだな」
おまけ
〜第二の闇の書を作らないように!〜
「ロッテ、アリア」
「ひっ! は、羽鳥!?」
「な、なんの用だい……!?」
「ちょ、驚きすぎよ。別にお仕置きするってわけでも無いのに」
「わ、悪いねぇ。あのお仕置きがトラウマになっちゃって……」
「悪いのは私らなんだけど……悪いのは私達って頭で分かっていてもどうしてもね……」
「……あら、やり過ぎちゃったかしら? でも保健所にぶち込まれなかっただけ、ありがたいと思ってもらわなきゃ」
「「あ、あはは……」」
「二人も反省している。あんまり虐めてやるな」
「「あ、お父様」」
「久しぶりね父さん。ちょっと話したい事があったから来たんだけど……」
「あぁ、東京でエルトリアと言う管理外世界の者が暴れていることだな」
「あら、知ってたのね。アイツらにうちの可愛いひなが怪我を負わされたの。歯を折った子はちゃんと謝ってくれたから和解したけど、逃げてる奴らは相当タチが悪くてね。ロッテとアリアを戦力として貸して頂戴」
「ひなを!? それは許せないねぇ……」
「ひなもそうだけど、あの子達には本当の本当に悪い事ちゃったからね。私達でよければぜひ使って。父様、私とロッテでちょっと行ってくるね」
「……いや、私も行こう」
「「父様!?」」
「父さん。いいの? 仕事忙しいんでしょ?」
「構わないさ。地球は私にとっても生まれ故郷。そこを荒らされているのに黙っているわけにはいかない。それに……」プルプル
「……父さん、もしかしてすっごい怒ってる?」
「あぁ、この怒りの半分は可愛い孫を傷つけたこと。そしてもう半分は……はやてから夜天の書を強奪し悪用している事だ!」
「…………そうね、流石にそれは笑えない。はやてちゃん達が必死に作った夜天の書を第二の闇の書にさせるわけにはいかないわ」
「あぁ。既にかつて闇の書の件で協力してくれた人達に声をかけ、クロノ執務官にも手伝わせて欲しいと打診しておいた」
「私が協力を求める前から準備してたのね。……でも闇の書の被害者の会の力も借りるのね」
「…………被害者の会の者達がはやてや、夜天の書を害そうとするかも知れない事を懸念しているんだな? ……大丈夫だ、みんな既に割り切っている。闇の書も天に還ったのに、今更何かしようとする者はいないさ。それに……」
「それに?」
「そんな事をしてしまっては、私達が前科者にならないように手を回してくれたリンディ提督とレオ君に申し訳ないからな」
「ふふ、そうね。それじゃあ私は先に戻るわ。父さんも気をつけてね」
「あぁ」
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おやおや、イリスが夜天の書を奪った+ユーリちゃんを操ってひなちゃんを傷つけたもんだから、それにブチギレた人達がいるみたいだ。
※グレアムや被害者の会の皆さんはこの後に及んで悪さはしません。