見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ?   作:蒼天 極

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発信者不明のメッセージ?

 ナノマシンを入れた後仮眠をとってちょっとは疲労も回復した俺たちは、出撃命令が出るまで指揮船で寛いでいた。

 

「みんな、もう一度聞くけど身体に違和感とか痛みとか無いわよね。ほんの少しの変化も隠さずに正直に申告して頂戴?」

 

「平気だよ?」

 

「むしろなんだか身体が軽くなったくらいよね」

 

「うんうん。なんだか元気いっぱい! 気力もバッチリ!! なのましん? って凄いんだね!!」

 

「と言うかママ。その質問これで57回目だよ? ちょっと心配しすぎじゃ無い?」

 

「だ、だって〜!!」

 

 プレシアさんの心配も分かる。

 なにせナノマシンなんて異物を、最低限の安全確認だけして治験や臨床試験もせずにぶっつけ本番で注射してしまったからな。

 一応チンク経由でスカさんに確認してもらって「大丈夫、大丈夫!! これなら副作用なしで筋肉や神経が活性化して以前よりも活発に動けるようになるだろう。一科学者として断言しよう。これは安全性100%の素晴らしい代物さ、流石はプレシア女史だね!! ……あと私はこれから娘達とお出かけをするから失礼するよ。フハハハハハハ、ハーハハハハハハ、ハハハハハハハ!!」と太鼓判を押してもらったらしいけど、プレシアさんが不安に感じるのも当たり前ってもんだ。

 

「大丈夫だよ。出撃中に体調悪くなっちゃったらちゃんと撤退するし、最悪倒れちゃってもひなのフェニックスウイングとかヤマトの言霊に助けてもらうよ」

 

「そ、そう? 本当に何が起こるか分からないんだから気をつけるのよ!!」

 

 そう言ってやることがあるプレシアさんは後ろ髪を引かれながらも退室。……あの分じゃまた3分後位に来そうだな。

 そんな事を考えていると、突如アラームが鳴り始める。

 直後モニターにはやての上司のレティ・ロウラン提督が写る。

 

『はやて、こちら操作本部。対象イリス、イルマの拠点を発見したわ。今最寄りの武装局員を突入させている。みんな、出動準備よ』

 

「了解です!! みんな、時は来たで! お死おきのお時間や!!」

 

「「「「「「「「おー!!!!」」」」」」」」

 

「え、お仕置き……? い、イリスを捕まえるのよね?」

 

「考えてはダメですキリエ。彼女はやりすぎた、どんな結末になっても彼女の自業自得なのでしょう。だから……うん。別れがあれば出会いもありますよ……」

 

「えぇ!?」

 

 流石のアミティエさんも諦観の表情でキリエを諭すのだった。

 

「さてと準備準備〜。あれ、レオは今回魔王の心臓を持っていくの?」

 

「うん。今回で潰すつもりだからな。出し惜しみは無しにしたほうが良いと思って。因みにもう一個の魔王の遺物も持って来ておりますよ〜」

 

「あれか。そう言えばあれの効果は聞いてないけど、どんな能力を持ったロストロギアなんだ?」

 

「それはね『うわぁあああああ!?』ん?」

 

 駄弁りながらもテキパキと準備をしていると、モニターの向こう……イリスの拠点を包囲していた魔導師達から悲鳴が聞こえる。

 何事かと見てみると、魔導師達が短髪のイリス達に惨殺される光景。……いや、バリアジャケットで守れてるから死んでは無いだろうけど、しばらく入院しないといけないやつだぞこれ。

 

「あ、アミタさん。これって……」

 

「父が言っていました。委員会が手掛けていたテラフォーミングユニットは環境と状況に合わせた自己増殖機能を持つと」

 

「とどのつまり、無性生殖をするゴキブリみたいなもんってことか? 殺虫剤かけたらやっつけられるかな?」

 

「ご、ゴキブリ……」

 

「随分と最悪な例えをしたな。はやてよぉ?」

 

 俺らが顔を顰める中、ゴキブリの存在を知らないアミティエさんは首を傾げながらも続ける。

 

「元々星の一つを丸ごと改良するのが仕事です。資源の少ないエルトリアですらそれを可能にする能力があった。素材もエネルギーも大量にあるこの星なら……」

 

「作り放題ってことか。……これならやろうと思えば地球の資源を全部食い尽くして増殖することだって……ゴキブリじゃなくてイナゴだな」

 

「虫ネタはもう良いんだよ」

 

 そんな事を話しているうちに、イリスの拠点を探っていた部隊は全滅。そしてそれが合図になったかのように量産型イリスが拠点から次々と出て来る。

 一応関東全域は結界を張っていたらしいから良かったものの、もし結界張ってなかった阿鼻叫喚の地獄絵図になっただろうな。

 だがイリスも結界の存在は知っている。量産型を結界の外周に移動させて脱出させようとしている。

 

『分散した軍隊イリスはこちらの方で結界から出さないように叩くわ。クロノ君にはやて達も出撃して』

 

『はい』

 

「了解です!!」

 

 

 ◇

 

 

 準備も完了して船の看板に向かっていると、はやてがディアーチェ達に話しかける。

 

「共同戦線や。ユーリが出てきたら姉やんが助けてあげてな?」

 

「だから我はお前の姉では無いと言ってあるだろう小鴉!!」

 

「まぁまぁ、……信用していいんですか? 私達の事を……」

 

 シュテルが眉を顰めてそう質問して来るが、ユーリちゃんとコイツらはどうやら因縁があるっぽいのだ。ならばユーリは彼女らに担当してもらうのが一番いいだろうと言う判断だ。

 

「目的は同じやろ? ユーリを助ける。イリスをぶっ飛ばして尋問する」

 

「戦力は多いに越したことはねーしな」

 

「お前らは自分達の好きなように行動すれば良い」

 

「敵になるときはその時はその時。容赦なく斬り伏せるまでだ」

 

「その後は縛ってはやてちゃんにお仕置きしてもらいましょ」

 

「それええなぁシャマル」

 

 なんて恐ろしい事を考えるのだろう八神家の風の癒し手は……。ほら見ろ、ディアーチェが顔真っ青にして自分の身体を抱きしめてるぞ。

 

「自分の身を守るために、小鴉はここで倒しておいたほうが良いような気がして来たぞ……」

 

「もちろん協力し合えるならそれがええんやけどなぁ。……でも敵に回ってくれたら姉やんの身体を好きなようにグヘヘヘヘ……」

 

「ひぃ!?」

 

「コラー! 王様を虐めるなー!!」

 

 うん、確信した。ディアーチェ達は絶対に裏切らない。ディアーチェとはやての力関係がなんとなく分かったもん。

 厄介な狸に目をつけられたディアーチェに内心合掌していると、ツヴァイが彼女の背丈では大きなカバンを持って遅れてやって来た。

 

「はやてちゃん! 持って来たですぅ!!」

 

「ありがとうな。王様にはこれ」

 

 そう言ってツヴァイが持ってきたカバンを開けるとそこにあったのは二冊の本。あ、これって二代目夜天の書を作ってるときの失敗作じゃん。

 

「欠陥が見つかって一から作り直す事になったときに、勿体無かったからこの二つは貰って欠陥を上手い事解決してちゃんと完成させといたんや!! 夜天の書ほどの出力はないけど王様でも充分使えるはずやで。妹からのプレゼントや!!」

 

「紫色の夜天の書……紫天の書と言ったところか。我も戦力が必要だ、貴様を妹と認める訳では無いが貰っておこう」

 

 そう言って受け取ったツンデレディアーチェなのであった。

 素直じゃ無いなぁと内心ニヤついていると、ゴム紐にくくりつけているアスカから着信音声が鳴る。

 

『マスター。発信者不明のメッセージが届きました』

 

「発信者不明? 一応内容を教えて」

 

『時は来た。今こそ私とお前の因縁にケリをつけよう。スカイツリーとやらの前で待つ』

 

「……」

 

「え、これって」

 

「もしかして……イルマ?」

 

 だよなぁ。イルマしか考えられねぇよな。

 罠の可能性もゼロとは言い切れないが、これはちょうど良い。前回イリスを取り逃した原因の一つは間違いなくコイツの妨害のせい。

 ならばこいつを潰して仕舞えばイリスを捕まえるのは圧倒的に楽になるだろう。

 それに良い加減決着をつけたかったのはこちらも同じだ。

 

「……レオ、どうする?」

 

「イルマとは因縁があるし、個人的にハッキリさせておきたい事もある。それにイルマはロストロギアの魔剣持ち。ならば同じくロストロギア持ちの俺が相手をするほうが良いだろ。行かせてくれ」

 

「……分かった。ひな、レオに付いて行ってくれないか? レオは大怪我しやすいから、何かあったら癒してやってほしい」

 

「分かった!!」

 

「おいヤマトー? 俺だって怪我したくて怪我してるんじゃ無いからな?」

 

 でもまぁ、イルマは間違いなく裏ボスレベルの力を持ってる。

 一期の暴走アリシアちゃんの時も、二期のリーン姉さんとの一騎打ちもピンチになってる俺からしたら一緒に戦ってくれる人がいるのは普通に心強い。

 

「ま、そう言う事なら分かった。イレギュラーはきっちり押さえておくから、ヤマト達はユーリちゃんとイリスを頼む!」

 

「すぐにやっつけて合流するからね。それじゃあ行こうれお君。目的地はスカイツリー前だよ!!」

 

「おう!!」

 

 俺とひなちゃんは指揮船を飛び出し、真っ直ぐスカイツリーへ向かった。

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