見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「よくぞ気づいたな我が子孫よ。では改めて……私の真の名はレオノーラ・ベルフェリア。古代ベルカ、魔王国を統治した最初にして最後の王だ!」
イルマは……魔王レオノーラはそう言っていかにも魔王っぽく名乗りを上げる。
…………。
「先祖、本名名乗ってもらって悪いけどイルマって呼んでいい? レオノーラだと俺の名前のレオって単語が含まれてて紛らわしい」
「構わん。真名を晒しておいてなんだが名前としてはイルマの方が気に入っている」
「いやいや、どの名前で呼ぶかはどうでもいい。分からないことが多々あるんだが……」
チンクはそう言って頭にハテナマークを浮かべて困惑状態。
そんな彼女にイルマは苦笑すると「いいだろう。なんでも聞くといい」と彼女に告げる。
「まず一つは……兄上の祖先と言うが一体どうしてこの時代に存在する?」
「それについては簡単だ。古代ベルカでは記憶転写という記憶や人格を別の器に宿す技術があった。お前を作ったスカなんとか氏も記憶転写については知っている筈だ」
確かにスカさんなら知ってるだろうね。
そして記憶や人格が収められた何かがあるのなら、どうしてそれがイリスに利用されてしまったのかって事になるが……まぁ、これについても理由は察しておりますよ。
「魔王の宝物庫の一つがエルトリアにあるんだな?」
と言うかこれしかないだろう。大方エルトリアの魔王の宝物庫の中にイルマの持ってる魔剣と一緒に記憶や人格を保管していた物が納められていて、宝物庫の扉が壊れたか無理矢理突破されたかで宝物庫の中にイリスが入ってしまい利用されたんだろうな。
「あぁ、第一宝物庫。宝物庫の中でも重要なアレコレを納めた宝物庫だったんだが、ユーリと呼ばれる少女がエルトリアに飛来した際に壁を破ってしまったようでな……」
なるほど、そう言えば昼頃に見たイリスとユーリちゃんの過去で、イリスとユーリちゃんが対面した場所の壁の紋様がどっかで見たことあると思ったんだが、なるほどあれは魔王の宝物庫の紋様だったのか。
「まぁ壁が壊れたと言っても、あそこはエルトリアでも危険なエリア。しばらくは侵入される事はなかったのだが。……二年半前、イリスの端末を持ったキリエが宝物庫に入って来たんだ」
イルマ曰く、宝物庫に侵入する者がいたら意識を覚醒するようになっていたため、キリエ達が宝物庫に入ってきてからの事は覚えているようで、当時の彼女達はキリエのお父さんの病を治すための何かが魔王の宝物庫に無いかを探していたのだと言う。
「そのときにキリエに隠れてイリスが私を回収し、記憶と宝物庫内に僅かに残っていた魔王の細胞を組み込んだテラフォーミングユニットを作り出して、ウイルスコードで縛ったと言うわけだ」
「そうだったのか……」
大方イリスがキリエの父親を助ける手がかりがあるかもと言って、魔王の宝物庫に自分を連れて行ってイルマを戦力として確保しに行ったのだろう。
イリスめ……本当にタチが悪いな。
でもこれで数百年も前に死んだ筈の魔王がこの世界に蘇った理由は分かった。
だがまだ分からないことが一つ。
「ならどうしてイリスに従うフリをしていた? ウイルスなんて楽に解けるのに何故敢えて解かずに俺らに喧嘩を売った? 事と次第によってはいくら先祖だろうが容赦なくぶち壊すけど」
「フフ、簡単さ。宮坂麗央、お前が魔王の心臓を入手したからだ」
え、俺のせい?
確かに魔王の心臓は元を正せばイルマ……魔王の所有していたもの。でも子孫に残すために宝物に入れていたって言うのに返せと言うのもそれはそれで変な話なんじゃないの?
「あぁ、本来ならばな。……だがお前は我が遺物を受け継ぐに値しないと判断した」
そう言えば初めて会った時も、魔心は俺が持つべきではないって言ってたな。なるほど、そう言うことだったのか。
「なぜだ? 兄上は魔王の心臓を悪用なんかした事は……した事は……無いよな?」
「チンク……そこは兄ちゃんを信用しておくれよ……」
いや、まぁ割と悪用してたけどさ。魔心をカリバーに嵌めれるようにしたし、魔心の次元震で相手を怪我させたりしたし……
あ、もしかしてそれらがダメだったのか?
俺が内心そう思っていると、イルマは首を横に振る。
「むしろ逆だ。魔心を使わない……いや、お前は魔王についての関心が無さすぎる」
「え?」
「エルトリアからお前のことは見ていたが、お前は一度だって遺物を集めようとはしなかったな。本来あれは滅びてしまった魔王国を子孫が復興するものと信じて遺したもの。なのに受け継いだ者がそんな体たらくでは魔王国の復興なんて夢もまた夢」
確かにな。管理局がある中で俺は魔王の遺物を集めて魔王国を復活させようなんて考えたことは無かった。そんな事したら管理世界の人は大混乱するだろうし、何より管理がめんどくさいから。だが先祖にとってこの関心のなさはアウト判定だったようだ。
「故に私はこうしてイリスに便乗してやって来た。宮坂麗央、お前から遺物を没収するためにな」
……なるほど、まぁ筋は通っている。
そりゃ魔王国を復活させようとも思わないやつに、魔王国復活の鍵をいつまでも預けておくわけにはいかないわな。
…………でも。
「その為にイリスと一緒に悪事を働いたのか? オールストン・シーをメチャクチャにしたのか? それは普通に許せる案件ではないな」
「あぁ。大問題だ」
「……おっと、私のやり方が気に食わなかったようだな」
当たり前だ、それが理由ならイリスに力を貸す必要はない筈。イリスに便乗せずとも普通に俺の家まで尋ねて事情でも話して回収すれば良かったのだ。
なのにさっきまでイリスに力を貸していて、挙げ句の果てに魔心を量産してイリス本体や一部の量産型を強化しやがった。
「……まぁ怒るのは理解できる。これではイリス以上にタチが悪いからな。……だが、私が今まで協力したのには……やつらに魔王の心臓の複製品を配ったのには理由がある」
「……一応聞こうか?」
「憤っていても話は聞くタイプなのだな。まぁ今回に至ってはそれが正しい。私がいつでも逃げられるのに敢えてイリスと悪事を続けた理由。それは──」
「──っ!!」
イルマがイリスに協力した理由。それを聞いた瞬間俺の中のイルマへの怒りが一気に消える。
なるほどなるほど、そう言うことか!!
そして同じく理由を聞いたチンクも納得はしながらも呆れたようにため息を吐く。
「なんと言うか……兄上の祖先である事に納得が行った」
「褒め言葉と受け取っておこう。……それでは麗央、お前の持つ二つの遺物をこちらへ。心配せずとも別の宝物庫に封印し直すだけだ」
「……流石はご先祖。イリスを……イリスの裏にいるやつを引き摺り出す為の作戦だったなんて本当敵わないね。……でも断る!」
「ほう、何故?」
「俺は管理局員。いくらあなたが本来の持ち主であったとしても、ロストロギアを渡すわけにはいかないのでね!!」
「なるほど、組織に所属しているならそれはそうだ。……そう言うことなら無理矢理没収するとしようか」
イルマはそう言うと魔心レプリカを空に掲げる。
直後、ゼスト隊が戦っていた最上位個体の胸に埋め込まれていた魔力が魔心レプリカに蒐集されていき、イルマの魔心レプリカは本家と遜色ないほどの魔力を含んだ代物と化す。
そしてそのおかげでこの場にいる最上位個体は動けなくなった。ゼスト隊の人達ももっと有利になっただろう。
「ここでは本気で戦えない。舞台を変えようか」
そしてその魔力を使用してイルマを中心に結界を作り出す。
俺もチンクも抵抗せずに結界に飲み込まれると、先ほどまでのスカイツリー前ではなく、まるでコロッセオのような闘技場にいた。
イルマは優雅にそこに降り立つと、魔剣に魔心レプリカ……いや、第二の魔心と化したそれを嵌め込むとこちらに剣を向ける。
「ここでなら全力で戦えるだろう? ……それでは宮坂麗央、ここで決着をつけようか? お前も子孫だ。負けても命までは取らないから安心してかかって来ると良い!!」
これで最後にしたいのは俺も同じ。
デバイスを全て展開してオールユナイトフォームに変身すると、アースカリバーに魔心を嵌め込んでこちらもイルマにそれを向ける。
「イルマ……いや、魔王レオノーラ・ベルフェリア、次元法違反で逮捕する。一応ご先祖だ。捕まえても上手いことイリスと真の黒幕に罪を被せてやるから安心してかかって来な!!」
「「行くぞ!!」」
さぁ、魔王退治の始まりだ!!
「……なんか私の存在忘れられてる? いやいや私も兄上に加勢しなければ!!」
次回、魔王VS子孫……をしたいんですが、視点移動してヤマト視点とひな視点を先にやらせていただきます。