見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「ユーリ、目が覚めたんだね! すぐに助けてあげるから!!」
レヴィがそう言ってユーリに駆け寄ろうとする所で、嫌な予感を感じて咄嗟に彼女を止めた。
直後ユーリのサブアームが彼女を殴ろうとして来た。止めていなかったらレヴィは被弾していただろう。
「ユーリ、どうして!?」
「くそ、まさか効いてないのか!?」
「うぅん、ちゃんとウイルスバスタープログラムはユーリちゃんの中に入った。……でも!!」
ユーリを解析したすずか曰く、ユーリの中にある自動防衛プログラムがウイルスバスターの進行を妨げてしまっているのだという。
ただウイルスバスター自体はちゃんと効いているようで、その証拠にユーリは自我を取り戻しているのだという。
「そんな……銀髪の人の奥の手でもダメでしたか……」
「うぅん、ウイルスバスタープログラムはユーリちゃんの中に残ってる。ユーリちゃんに攻撃を加え続けて防衛プログラムの回復機能を身体の回復に当てさせれば……」
「イリスを蝕むウイルスコードを中和してくれる。そういう事だな?」
とどのつまり当初の目的通り連続でユーリを攻撃すればいいって訳か。簡単だな!
ならば一気にやるかと、グラディウス(剣)を構えるとユーリが胸を押さえながら、ディアーチェ達に告げる。
「シュテル、レヴィ、ディアーチェ……イリスはきっと私が止めます! ですから……!!」
「っ!? 私達を退けてですか……?」
「ダメだよそんなの!!」
「馬鹿者が、動けもせずに泣いている子どもの言うことか!?」
「あなた達まで……失いたくないんですっ!!」
彼女はそう言うが、ウイルスコードのせいで強制的に戦わされてしまう。
流石に無理矢理戦わされてる子に攻撃を加えなければならないのは心が痛むが、それでもやるしか無いため良心が痛むのを我慢しながら攻撃を続ける。
「あの惨劇の中で残せたのは……イリスの心と……あなた達だけだった!!」
「っ!!」
ユーリはそう言いながらディアーチェに突っ込む。
無論ディアーチェもタダではやられない。はやてが渡した予備の夜天の書……紫天の書のページと魔力でユーリの突撃の威力を殺す。
「いつか故郷に帰る為……誓った夢を叶える為……あなた達までいなくなったら……私は……!!」
「な、魔心が……」
そしてユーリの手をディアーチェが受け止めた瞬間、ユーリの胸に埋め込まれた魔心レプリカと、俺が持っている魔心レプリカが光り始めた。
『元気になって良かったね!』
『ねー!』
『ここまで弱ってたのにここまで復活させられるなんて……!!』
『頑張りました!』
直後、俺の脳裏に飛び込んで来たのは、えっへんと胸を張るユーリと、それを感心するイリスの姿だった。
これって、もしかして過去の光景か?
でもどうして……そう言えばさっき魔心同士が光ってたよな。と言う事は魔心同士が共鳴して……そんな事あり得るのか!?
『あはは、一緒に読みますか?』
次に写ったのは部屋で寝転びながら、端末を読み耽る眼鏡をかけたユーリの姿。
『こらチビ助! あんたら私の部屋に恨みでもあんの!?』
『ご、ごめんなさい! みんな遊びたい盛りなんです……!』
『もぉ!!』
次に写ったのは汚部屋と化した先ほどの部屋の中で、怒るイリスと彼女を宥めるユーリの光景。
『コイツらいつもくっついてるわね』
『真ん中の子が二人の王様ですね。いつも他の二人の面倒を見てあげて……』
『こうして寝てると可愛いんだけどなぁ……』
え、王様?
もしかしてこれってディアーチェ達の過去か?
『名前付けたんだよね? なんだっけ?』
『シュテルとレヴィ、それからディアーチェですよ』
そして最後に写ったのは、三匹の子猫と猫達を微笑ましく見つめるユーリとイリスの姿だった。
「っ!!」
どうやらここで過去の記憶は終了。意識は河川敷での戦いに戻る。
「や、ヤマト……今のって!!」
「王様達の正体ってもしかして……」
どうやら今の記憶はアリサとすずかも見ていたみたいだ。
でも納得がいった。ディアーチェ達がユーリを全力で助けようとする理由……。
コイツらにとってユーリは飼い主だったんだな。
「う、うぅ……うわぁああああああ!!」
直後、ユーリは悲鳴をあげながら再びディアーチェに襲い始めるが、もうこれ以上は攻撃させない。
「ちょっと痛いけど我慢しろよ? 《ファングスバレット》!!」
「あぅ!?」
グラディウスの魔力弾でアリサ、すずか、シュテル、レヴィのいる所に吹き飛ばすと、彼女達はユーリの両手両足をチェーンバインドで拘束。
これで動く事はもう出来ない。
「動きを止めたわ。気付けの一発、ぶちかましてあげなさい!!」
「さぁ王様!!」
「ディアーチェ、助けますよ! 私達の主人を!!」
「ボクらの大切な子を!!」
「おう! お前を苦しめる枷を今、打ち砕く!!」
ディアーチェはコクリと頷くと杖を掲げて無数のスフィアを形成すると、それらを拘束されたユーリの側に設置する。
「《ジャガーノート》!!!!」
ディアーチェがそう叫ぶと、スフィアは膨張を始め、スフィアのど真ん中にいたユーリを盛大に巻き込んで大爆発を起こした。
◇
ディアーチェの渾身の一撃を受けて、完全に撃墜。川に沈んだユーリを救助して河川敷で寝かせてやる。
「ユーリ、しっかり!」
レヴィの呼びかけに、静かに目を開けたユーリ。
良かった。なんとか無事なようだ。
「レヴィ、シュテル、ディアーチェ……ごめんなさい。私は……」
「よかった。元に戻ったんだね……。よかった、よかったよぉおおお!!」
「レヴィ……みんな……ごめんなさい! ありがとう……!!」
ユーリの無事を知ったレヴィは大泣きしながら彼女を抱きしめ、ユーリもレヴィに吊られて泣き出してしまった。
「やりましたね」
「あぁ!」
「猫ちゃん達の恩返し……フフ、素敵だね」
「ほんと、いい話だわ。……さ、これでユーリは取り返した。後はイリスとイルマだけね!!」
「そうだな、イルマはきっとレオが倒す。ならユーリを本局に保護してイリスを────っ!?」
殺気を感じて振り向くと、橋の上でユーリに銃口を向けている誰かが目に入る。
そいつが引き金を引いた瞬間に、ユーリの前に立ってグラディウスで弾丸を斬り裂いてやった。
「な、き、貴様!!」
「……なかなか思い通りには行かないものだね」
そこにいたのはフォーミュラ武装をして、胸に魔心レプリカを装備した男性。
コイツ……見た事がある。確か、イリスの製作者……惑星再生委員会のお偉いさんじゃ無いか!?
確か最後の映像ではイリスの胸の中で死んでたはずだけど……
「ユーリと猫と魔法使い達……全部をイリスが相手をするんじゃ、手に余るらしい……」
「……あ、あなたは!」
ユーリも彼がここにいるのは予想外だったようで、目を大きく開ける。
そんな中男は静かに橋の上から降りて呟く。
「《アクセラレーター・オルタ》」
「っ!? 《神速》!!」
咄嗟に神速を発動して、高速移動を始めようとする男に襲いかかる。
「っ!? おっとまさかアクセラレーター・オルタについて来れる子がいるなんて素晴らしい……本当に素晴らしい。私の子にしてあげよう」
「ぐ……気色悪い事言ってんじゃねえ!!」
一旦距離を取ると高速移動で彼と何回か打ち合うが、こいつキリエの数倍は早いな! フォーミュラを搭載してもらって無かったらどうなっていたか……!!
「あの子は貰っていくよ。トラブル続きではあったが……なに、最後に笑っていればいいの……さ!!」
「ガハッ!?」
そして神速の長時間使用で疲労が溜まった隙を突かれて、裏拳を放たれ吹っ飛ばされる。
痛ってぇな……でもキリエに一度同じ負け方してんだ。こうなる事は想像ついてたんだよ!!
「き、貴様……!!」
「次は君達だ──「【緊急転送! 対象はここにいる魔導師組とそっくり三人衆とユーリ】!!」なっ!?」
バカめ! 最悪の事態を想定して、言霊でいつでも本局に逃げられるように打ち合ってる間に魔力を溜めてたんだ!!
咄嗟の言霊のおかげで、あの男のこれ以上の追撃を防ぐ事に成功。俺らはギリギリ本局に逃げる事に成功した。
「あ、ヤマトさん達無事だったんですね!!」
「えぇなんとか……マリエルさん、ユーリの胸に埋められた魔心の摘出を頼みます。シャーリィ、悪いけどみんなに連絡頼む!! 今俺が戦ったあいつ……多分黒幕だ!!」
残る敵はイリスとイルマだけじゃ無かった。……というか一番倒さないといけない相手だろう。
ユーリはディアーチェ達に任せて、俺はすぐ地球に戻ってもう一度戦いに行かなければ……!!
ヤマト君のとっさの機転により、本当の黒幕の襲撃から逃れてユーリちゃんを本局で保護する事に成功しました。