見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ?   作:蒼天 極

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俺はなぜ戦うか? そうだなぁ……

 先ほどまでお互い一歩も引かない激戦を繰り広げていたと言うのに、聖剣を壊したと言った瞬間に様子がおかしくなるなんてよっぽど因縁があるんだな。

 ちょっと聖剣関連で煽ってみるか。

 

「聖王家の聖剣にどんな煮湯を飲まされたんだよ? 手間暇かけて開発したあれやこれやを真っ二つにぶった斬られたか?」

 

「オリヴィエが生まれる数百年ほど前……私が無人世界を魔王国に開拓する前は聖王国の名もない科学者だったのだが、当時腐敗していた聖王家に結果を出すのが遅いと夫と娘を目の前で斬り殺されただけだ。あの聖剣で」

 

「…………」

 

「……あ、兄上。流石に謝った方がいいと思う」

 

「マジでサーセンっした!」

 

 想像の百倍は重い話でした。聖王国との戦争中に兵器とかを聖剣で悉く破壊されたんだろうなぁって想像してたけど、夫と娘を斬った剣って因縁っていうかもやは仇じゃねえか!!

 と言うかイルマって元々は聖王国の人間だったんだな。

 そんな事を考えてると「……ん? 数百年前? ……ちょ、ちょっと待て!!」とチンクが声を張り上げる。

 

「オリヴィエ……聖王が生まれる数百年前と言ってたが、あなたは聖王が存在した時代の人間のはず……もしや聖王のゆりかごが起動したときは……」

 

「あぁ、当時の年齢は300を超えていた。長生きだったとかじゃなくて、とある秘宝……お前らで言うロストロギアで寿命を伸ばしていたんだ」

 

「因みにそのロストロギアって()()の事だろ?」

 

「それだ。思えばそれにはだいぶ世話になったもんだ」

 

「え、兄上持ってたのか!?」

 

 懐から取り出したのは、この事件が始まる前に魔王の宝物庫から回収した二つ目のロストロギア。

 イルマはさっき最初にして最後の王と言っていたが、こいつで寿命を伸ばしてワンマン女王をやってたって文献に書いてあったのをシグナムさんが読んでくれた。

 

「まぁ私の生きた年数なんてどうでも良い。この世に執着して人の数倍生きただけだ…………。それにしてもそうか、聖剣を破壊したのか……そうか」

 

 しばらくブツブツと「そうか……そうか……」と言い続けていたイルマ。

 どうやら夫と娘を斬った聖剣がとっくの昔に壊されていた事が余程の衝撃だったようだ。

 しばらく俯いてブツブツ言っていたイルマは顔を上げて俺に問いかける。

 

「一つ質問しても良いか?」

 

「断る!!」

 

「何故だ。質問に答えるだけだぞ?」

 

「いやだってアンタ聖剣を壊したって事実が無かったら質問しなかっただろ? フラグ建てて無かったら問答無用だっただろ? そんなやつに話すことなんてないね!!」

 

「…………何も言い返せない」

 

 ほらな!?

 良いこと教えといてやるよご先祖、アンタ女王歴が長いから忘れたかもしれないけど、人との好感度って大事なんだぜ!? さもないとこんな風に聞きたい情報を聞けなくなる可能性があるんだからなぁ!!

 イルマはしばらく何か言いたそうにしていたが、諦めたように大きくため息を吐くと魔剣を構える。

 

「……なら勝負がついてから話すとしようか」

 

「ようやくやる気になったか。良い加減目の痛みがウザいからとっとと決着をつけさせてもらうぞ。行くよチンク」

 

「あぁ、話しの続きは終わってからにしよう」

 

 直後、凄まじい踏み込みで斬りかかってくるイルマ。

 その一閃をアースカリバーで受け止めると、今度こそ右目に銃を突きつけてきやがった。

 

「はいはい、想像通りだねぇ! それじゃ氷剣山ってなぁ!!」

 

「っ!?」

 

 鍔迫り合い途中で地面から氷の剣山を発生させて、銃の追撃をやめさせる。

 生えてきた氷の刃を横跳びで避けるが、サブアームで彼女の足を掴むと思いっきり剣山に叩きつける。

 危ない? 大丈夫、大丈夫。こいつ身体のほとんどが機械だから表面が傷つく程度だ。

 

「舐めるなよ」

 

「おっと」

 

 だがイルマもタダではやられない。魔剣の腹を盾にして剣山の刃が刺さらないようにする。この魔剣の刃が細ければ確実にダメージを加えられたんだがな。

 イルマはサブアームから脱出すると、舌打ちをしながら再び機動外殻を召喚。それをもはや斬らずにこちらに投げつけてきやがった!!

 くそ、後ろにチンクがいるから避けたら危ない。チンクを回収してからじゃ避けるのも間に合わない……仕方ない!!

 

「ぐぉおおおおおおおあああああ!!!!」

 

 サブアームと化していたFガントレットを腕部に装着して機動外殻を受け止めるが、その時には既にイルマが無防備になった俺の懐を侵略していた。

 

「させない!!」

 

 このままでは俺の上半身と下半身がバイバイしてしまいそうになった瞬間、間にチンクが入ってきて、イルマの振るう剣の持ち手を掴んで止める。

 

「ぐっ……!!」

 

「おっと、良いのか? こんな距離に入ったら攻撃してくださいと言ってるようなものだぞ?」

 

「確かに私は中距離型だが……油断しすぎじゃないか?」

 

「っ!?」

 

 そう言ってチンクが取り出したのは一本のナイフ。

 それを表情が変わったイルマに押しつけた瞬間爆発!

 

「チンク、無事か!?」

 

「あぁ、ダメージを受けたが想定の範囲内。大丈夫だ」

 

 チンクはこんな能力の為、自爆紛いな事をしても耐えられるように他の姉妹より身体が少し丈夫に作られてるみたいだし、スカさんが真心と狂気を込めて作った爆発に耐えられる海賊風の特殊な防護服を身に纏っている。

 故に爆発に巻き込まれたところで大したダメージにはならなかったみたいだ。

 でもイルマは自爆するのは予想外だったのか、大きく吹っ飛ばされた。

 

「これ返すわ!!」

 

「っ!!」

 

 ある程度吹き飛んだタイミングで、機動外殻を思い切り投げ返す。だがイルマは舌打ちを一つすると再びサイコロステーキ状に斬り裂いてしまった。

 

「なかなかやる。ぐっ!?」

 

 突如腹を抑えるイルマ。どうやら動きすぎたせいで、最初のレールガンのダメージが響いているらしい。

 いくら機械の身体って言ってもその状態で動きまくったらそりゃそうなるよな。

 

「……正直そろそろ決着をつけたいところだな」

 

「同感。俺も良い加減本当に目を治したい」

 

「……次で最後にしようか」

 

「……いいぜ。……というわけでチンク、今からお互い本気の一発を撃ち込む。下がってて」

 

「…………分かった」

 

 チンクに避難を呼びかけて彼女を追い払うと、イルマと俺は双方構える。

 流石は先祖と言うべきか、イルマは今まで敵対してきた連中の中では一番強かった。ならばその実力にだけは敬意を表して、全力全開……いや、限界を突破してでも超えて見せるのが子孫としての礼儀ってもんだろう。

 

「はぁあああああ…………」

 

「こぉおおおおお…………」

 

 俺の5Sを超える魔力を……何なら魔心も使ってアースカリバーに耐えられるギリギリまで魔力を込める。一方のイルマも……魔王レオノーラも限界まで魔心から魔力を引き出して、その全てを刀身に込める。

 俺は散々周りを引っ掻き回したイルマを捕まえる為、イルマは子孫である俺から遺産を取り返す為。

 さーて、どちらの想いが強いか……確かめて見ようじゃねえか。

 

「ベルフェリオン──」

 

「フィニッシュ・オブ──」

 

「ツェアファレンッッ!!!!」

 

「エレメタリオンッッ!!!!」

 

 イルマの魔剣シュリセルと俺のアースカリバーがぶつかり合うと、目の前が真っ白になった。

 

 

 ◇

 

 

「……に……え…………あ……うえ……」

 

「…………ん」

 

「兄上! ……良かった、目が覚めたんだな!!」

 

 気がつくと、俺は闘技場ではなくスカイツリーの前で倒れていた。どうやら意識が飛んでるうちに結界が解けたようだ。

 

「魔心とあれは……まだある。てことはイルマは……」

 

「イルマはあそこだ」

 

 チンクの視線の先を見ると、そこには右腕を失い残った左腕もひしゃげたボロボロのイルマの姿。

 どうやら俺が勝ったようだ。

 俺はヒビが入ってはいるが、かろうじて無事だったアースカリバーを手に取り、フェニックスカートリッジをロードして傷を治しながらイルマの下へ行く。

 

「イルマ……いや、レオノーラ・ベルフェリア。次元法違反で逮捕する……」

 

「……あぁ、負けたか。やはり自前の身体でなければ戦闘力も半減してしまうな」

 

 いや、あれでも弱体化してたのかよ。チンクと二人がかりでやっとの思いで倒したのに、それ聞いて凹んだわ。

 

「……さっき聞きそびれた質問だ。お前は……何のために戦っている?」

 

「……いきなりなんだよ?」

 

「頼む、答えてくれ」

 

 イルマは満身創痍だと言うのに、まっすぐとこちらを見据えて頼み込む。

 

「……ま、ボコボコにして溜飲も下がったし答えてやるか。俺が戦う理由……巻き込まれたとか、成り行きでってのもあるけど、一番は理不尽に何かを奪われないようにだ。……イルマにだから教えるけど、俺には前世の記憶ってのがある」

 

「……ほう?」

 

「前世は散々だったよ。理不尽に住むところを失って、勉強する機会を失って、就職した所もこちらの弱みを握って理不尽に残業を強要して、休みを取らせないで、給料を下げられて……でもやっと就職出来たところだったから訴える事も出来なくて……。俺の前世は理不尽に搾取され続ける人生だった」

 

「…………」

 

「その経験があるからさ、目の前で理不尽に搾取しようとする奴がいると、どうしようもなくムカつくんだよ。だから戦う。真っ当な理由もないくせに、悪い事をしてない人から何かを奪おうとするクソ野郎をぶん殴って、これ以上俺みたいな思いをする人を増やさないように……こんなんで良いか?」

 

「……クク、フフフ、ハハハハハハ!」

 

 おいおい、せっかく答えてやったってのに笑うなよ。どうせ前世なんてあるわけ無いのにとか思ってるんだろ!? なら聞くんじゃねえよ。その顔踏んでやろうか?

 イルマはひとしきり笑うと、清々しい表情をする。

 

「なるほど……理不尽からみんなを守る為に戦うか。……私が負けるわけだ」

 

 イルマはゆっくりと身体を起こすと、近くに落ちていた割れた第二の魔心が入った魔剣シュリセルをひしゃげた左腕を無理やり動かして拾うと、それを俺に手渡す。

 

「受け取れ。これはもうお前のものだ」

 

「え?」

 

「その魔剣が真の力を発揮する為には、魔王の心臓と私の血を継ぐ者の魔力が必要。私のこの身体ではこの魔剣の本当の力を引き出す事が出来なかったが、お前ならこの魔剣を100%の出力で使える筈だ」

 

「……どうして? お前俺から遺産を没収するんじゃ無かったのか?」

 

「……お前には遺産を賭けて戦ってもらい、そして私が敗北した。ならば負けた私はお前が賭けた遺産と同じ価値のものを渡す義務があるのさ。……二つ賭けてもらって一つしか渡せないのは申し訳ないが、宝物庫の場所で手を打ってくれ……」

 

 イルマはそこまで言うと、カクリと力が抜けて倒れそうになるが咄嗟に受け止める。

 いや、無茶して起き上がるんじゃ無いよ。……え? 子孫に渡すときくらいカッコつけたかった? バカか。

 

「腐っても魔王だ、自分のした事のケジメはキチンと取る。大人しく縛を受け入れよう。だが一つ……頼まれてくれ。私を利用したイリスと彼女の背後にいるフィル・マクスウェル……その二人を私が利用されてる間に仕掛けておいた罠と、その魔剣を駆使して見事捕まえてほしい」

 

「……当たり前だ。アイツらをぶっ飛ばさないと事件は終わらない」

 

「フッ……たのん……だ」

 

 イルマはそういうと静かに目を閉じる。どうやら意識を失ったようだ。

 

「……チンク、イルマのことを頼んで良いか?」

 

「任せてくれ。……そして、事件が終わったらもっと詳しく聞かせてくれ。兄上の前世の事」

 

「あ"」

 

 ヤッベ!!

 チンクがいたのに前世のこと話しちゃってたよ!! バカだ、俺バカだ!!

 その後チンクには前世の事は内緒にしてほしいと土下座で頼み込むと、ご先祖から継承した魔剣シュリセルを持ってまずはイリスを捕まえに行くのだった。




レオ君はご先祖に認められた。魔剣シュリセルを継承した。

これにてイルマとの因縁は一旦終了です!!
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