見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
その後逃げるようにショッピングモールを後にした俺達は、マックで少し早いお昼ご飯を食べていた。
「ごめんねひなちゃん。今日はショッピングモールのあのハンバーグ屋行こうかなって思ってたのに……」
「ううん、大丈夫だよー。ハンバーガーにもハンバーグ挟んであるもん! ほら見てハンバーグ二つ重なってるの頼んじゃった!!」
ニコニコとそう言うひなちゃんであるが、今の姿での笑顔の破壊力を少しばかり自覚欲しい。俺の顔から火が出てないよね?
「む……ねぇねぇレオ。ポテトをポッキー代わりにしてポッキーゲームしようよ」
「積極的に行動するのはアリシアちゃんの美徳ではあるし、最近はそんな姿が素敵に見えてしまってひなちゃん一筋だったはずの俺は全力で困っているんだけどね。……こんなあからさまにやられると引いてしまって逆効果なものなんだよ?」
「ガーン!!」
ひなちゃんの無自覚スマイルに対抗しようとしたアリシアちゃんを容赦なく反撃していると、はやてが面白くなさそうに突っ伏した。
「あーあ……結局ショッピングモール何処も回らなかったな〜。あのナンパさんいくら何でもタイミング悪すぎや〜」
「確かにな。アイツらがいなかったら俺らは今頃ショッピングモールで遊んでプリクラとか撮ってただろうに」
ヤマトの発言に「思い出したら腹が立って来たわね」と青筋を浮かべたアリサちゃんがポケットからスマホを取り出して操作して、スマホを耳に当てる。
「……もしもし、鮫島? あの三人なんだけどやっぱり許せないから地下労働施設送りにして貰えないかしら?」
「地下労働!? ア、ア、アリサ! 流石にそれはまずいよ!!」
「そ、そうなの。バレたらお巡りさんに捕まっちゃうの!!」
青い顔をしてアリサちゃんを咎めるなのはちゃんとフェイトちゃんだが、そんな二人に対してアリサちゃんはドス黒い笑顔を浮かべる。
「大丈夫よ……証拠は残さないから。……あ、聞いちゃった二人は証拠になっちゃうか。…………しょうがない、この五年間楽しかったわ。ありがとうね、なのは、フェイト。……それじゃあさようなら♡」パンパン
…………。
アリサちゃんは先ほど鮫島さんを呼んだ時のように手を叩くが何も起こらない。
「……って流石にそれは冗談って分かっちゃうの。て事はさっきのお電話も?」
「えぇ、実は鮫島に電話かけてなかったの。因みに地下労働施設も嘘よ。そもそも地下での重労働なんて今では機械がやってるからね。いるのは機械の整備士とかエンジニアさん。衛生管理もしっかりしてるんだから」
「それに賭博黙示録カイジみたいな地下労働施設なんて現実じゃあり得ないもんね」
すずかさん? カイジは小学生が読むような漫画ではない気が……そう言えばヤマトの家の本棚にカイジが最新刊まであったような。
「犯人はお前か」
「そうだ俺が犯人さ。なんとなく読んでみたらハマってつい最新刊まで揃えちまったよ」
「このまま散財しまくって破産すればいいのに。……それそうと今度読ませて」
「いいぞ」
なのはちゃんは「かいじ?」と頭にハテナマークを浮かべながらも納得の表情をする。
「確かに言われてみればその通りなの。すっかり騙されちゃったよ。ね、フェイトちゃん?」
「あ、アリサのこれは犯罪だから局員として逮捕しないと……でも次元法は何処も違反してない……? それにアリサを捕まえるなんて私には……一体どうしたら…………」
「……フェイトちゃん。今のアリサちゃんの嘘なの。だからバルディッシュ構えないで、ここで変身したら大騒ぎになるの」
「そ、そうなの!? 嘘つくなんてひどいよアリサ。私、アリサを捕まえなきゃ行けないじゃないかって心配したんだから!!」
「アンタのその騙されやすすぎる性格の方が心配だわ」
「だから騙し甲斐があるってもんやけどな」
はやて、お前は鬼か?
エイプリルフールなんかも「今日のお昼の12時に隕石が降って来て地球が滅ぶで」ってなかなかエゲツない嘘ついて泣かせてるんだからもう少し手加減というものを…………あれ? あの嘘全然エゲツなくも無いなんともありきたりなものなような…………。アレはひなちゃんも嘘だってすぐに分かってたし、これは引っかかる方に問題があるのでは無いか?
◇
「おいしかったねぇ」
「うん、ハンバーガーは初めて食べたけどこんなに美味しいなら今度ノエルに作ってもらっちゃおうかな〜」
「俺も久しぶりに食べたけど、これはたまにテイクアウトしてもいいかもしれないなぁ……」
前世の兄だった人間の好物だったから個人的にジャンクフードは嫌いだったけど、こんなに美味いならご飯の用意とかが面倒くさい時にマックを選択肢に入れてもいいかも知らないな。あ、ケンタッキーでも試してみるのもいいかもしれん。
「さて、ある程度時間もおいたしそろそろモールに戻っても大丈夫かな?」
「なら気を取り直してショッピングモールにレッツゴーやね」
「今度は変なのに絡まれないように注意して行くわ「すみません、今から少々お時間よろしいでしょうかー」…………」
アリサちゃん、この人女の人だから大丈夫だよ。
だから声かけられたくらいでそんな恐ろしい顔して鮫島さん呼ぼうとしないで。いくら仕事だとしてもそう何度も呼び出されたら鮫島さん可哀想だから。
「なんでしょうか? これからショッピングモールに行くんで出来れば手短にお願いしたいんですが……」
「あ、すみません。すぐに終わらせますから……」
そう言って眼鏡をかけた女性は俺達一人一人に丁寧に名刺を渡してくる。
えっと……エンタテイメンツ芸能プロダクション……芸能プロダクション!?
「単刀直入に言います。あなた達はアイドルに興味ありませんか!!」
「「「「「「「「「……………………」」」」」」」」」
(え、え、えぇええええええ!!?? ア、アイドルにスカウトされちゃったの!!)
(ナンパの次はアイドルスカウト!? 全く、今日は一体どうなってんのよ!?)
(さ、流石にこれは驚きだよ〜!!)
(お姉ちゃん管理局で既にアイドルやってるけど、兼業って出来るのかな?)
(私はあくまで管理局の広報・PR部門の顔役として色々やってるだけでそんな本腰入れたアイドルって訳じゃないよ!?)
(ひなアイドルやってみたい!)
(やめときひなちゃん。冗談抜きで芸能業界は魑魅魍魎……顔だけでやっては行けないで?)
(……と言うかもしかしてこれ俺も誘われてるパターン? え、女と間違えられたっぽいレオだけじゃなくて?)
(そりゃこのお姉さんもヤマトの顔面を捨ておかねえだろうよ)
俺らが念話で色々と話していると、お姉さんは困ったように笑う。
「すみません、話が急過ぎましたね。ですがあなた達からは非常に素晴らしい才能を感じました。整った顔だけでなく、声、立ち振る舞い、それに人を惹きつけるカリスマ。ぜひそれをうちの芸能事務所で開花させてみませんか?」
さーて、これに関しては流石に答えはノーだ。そもそも俺ら大人に化けてるだけのガキだし、もしそうじゃ無いにしても俺らは管理局勤め。アイドルをやるなら管理局を辞めなければならない。
だが他のみんなも管理局を辞めてまでアイドルになりたそうな顔をしてないからなぁ。
さてどう断ろうかと考えていると、お姉さんは困ったような顔で笑う。
「すみません、流石に話が急過ぎますよね。ですが一度帰ってゆっくり……家族とも相談して考えてみてください。もし少しでも興味があれば名刺に乗った電話番号に掛けてくだされば。勿論見学でも構いませんので」
「あぁ、これはご丁寧にどうも」
「それでは貴重なお時間ありがとうございました。ぜひ検討してみてくださいね?」
そう言って丁寧にペコリとお辞儀をするとお姉さんは言ってしまった。
…………………………。
「にゃはは、流石にビックリしたの……」
「ほんとだねー。まさかひな達がスカウトされちゃうなんて」
「予想外を遥かに通り越して行ったなぁ。帰ったらヴィータとツヴァイに自慢出来そうや」
「俺、ああ言った相手を尊重して下さる人嫌い。誠実に対応して来てくれるせいで不遜な態度が取れないんだもん」
「お前歪んでんなぁ……。ま、流石にアイドルは選択から外してもいいだろ」
「そうね、年齢を偽ってアイドルやってもいい事なんてないわ。それじゃあ改めてモールに行くわよ!!」
「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」
〜その後〜
「君可愛いね〜。僕とお茶しない?」
「お断りしますなの」
「是非とも私達の芸能事務所に!」
「前向きに検討させていただきます」
「他の人から女の子に見えていたとしてもボクの目は誤魔化せないよ! 君は男の娘だね!?」
「うん、男の子だね。それが?」
「ドゥフフフ、こんな可愛い男の娘は初めてだ。是非ともボクとお話ししてほしいなぁ……」
「キモい、あっち行け」
「男の娘の罵倒……ありがとうございます!」
「姉ちゃんらスタイルええなぁ。ウチ、グラビア撮ってんやけどどうやろ? 給料高いで〜」
「結構です!!」
「まぁまぁそう言わずに、一枚だけでええから……な?」
「ちょ、離して下さい!」
「鮫島〜!!」
「逸材だ……。こんな逸材は見た事がない……」
「え、俺ですか?」
「あぁ、そうだ。こんな整った顔を私は見た事がない! キミ、是非うちのホストクラブで働いてみないかい? 給料の相場の三倍……いや五倍は出そう!!」
「「「「「ダメー!!」」」」」
「あらひな、丁度いいところに」
「あ、ママだー!!」
「今からタイムセールなんだけどお一人様一つだったの。ね、せっかくお友達と遊んでる所悪いけど、お菓子買ってあげるから一緒にレジまで並んでくれない?」
「はーい。ごめんねみんな、ちょっとひな行って来まーす!」
「え、タイムセール品トイレットペーパーじゃん!? やっべリサーチしてなかった、俺も行こ!!」
「あ、私も……って今日車椅子の用意できてなくて戦えへん! レオ君、私の分もとって来てー!!」(※特売では今もなお車椅子利用)
「あいよー!!」
「……私達はちょっと待ってましょうか」
「そうだな。相手がひなのお母さんなら仕方がない」
「あ、忍じゃん。こんな所で奇遇だな〜!」
「この子達友達かいな?」
「…………ご、ごめんなさい。人違いだと思います!」(お姉ちゃんの友達の晶さんとレンさんだ〜!!)
「え、確かによく見たら髪型とか違う……? どっちかと言うと妹のすずかの方にそっくりだ。それにこっちはなのちゃんに……」
「にゃ!?」
「こらおさる! あんまりジロジロ見るもんやないで!?」
「痛っ!? 何も叩かなくてもいいだろうがこのカメ!!」
「わ、私達はこれで失礼しますね!」(騙してごめんなさい晶さん、レンさん〜!!)
(もう、晶ちゃんもレンちゃんもこんな店中で取っ組み合いの喧嘩なんてして……翠屋でのバイトの日にO☆HA☆NA☆SHIしなきゃ……)
(……あぁ、どっかで見た顔だなーって思ったら翠屋のバイトの人か。前から思ってたけど猿って呼ばれた人スバルちゃんに似てるなぁ。スバルちゃんが成長したらこの人みたいになるのかね?)
「「「「「「「「「ぜー……ぜー……」」」」」」」」」
な、何故だ。
羽鳥さんと翠屋スタッフの人以外全員ナンパとかスカウトってどうして今日に限ってこんなに声かけられるんだ……!?
あれか? やっぱりなのはちゃん達も美人だしヤマトもクソイケメン! 俺も非っ常に気に食わないが顔だけは美少女のくくりと言っていいだろう。
だからどいつもこいつも見逃さないってか!?
「……もう思い出作りいいや。……ねぇ、もう帰らない?」
「……そうね。さっきから声かけられてばっかりで全然目的とかも果たせないし……なんかもういいや」
「うん。正直大人はもう懲り懲りなの……」
「そうだね……もう時辰儀に頼らず普通に成長していこ?」
定期的に大人に変身しようと考えてたなのはちゃん達はすっかり今回の事で懲りてしまったようだ。
レプリカを破壊せずとも懲りてくれるなんてラッキー……でもないな。その代償がこれほどの疲労ってキツ過ぎだろ!!
すっかりヘトヘトになってしまった俺らは、今日はもう解散して自宅へ帰るのだった。今晩夕飯用意するのだるいな。マックでいいや、注文しよ。