見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
この世界に転生してから一週間。
こんな小柄な身体での生活はそこそこ不便ではあるが、一人暮らしの長さが功を奏して今ではすっかり自炊にも慣れてしまった。
また、広い家には十分すぎるほどのデバイスを作成するための機材と材料があったため、試しに一つストレージデバイスを作ってみた。
Nロッドと名付けたそれは初めて作っただけあって普通の性能。搭載されてる魔法もスフィアとシールド、あとはバインドくらいのものである。
だが初めて作ったのだからこんな物だろう。
そして……
『当分はNロッドを用いて、魔法戦に対する基礎固めを行います。私は厳しいのでお覚悟を』
「よろしく頼むアスカ」
Nロッドを作成した翌日からアスカによる基礎固めが始まった。
白を基調としたTシャツと足首まである黒いズボン。青色に白の差し色が入ったロングコートといったバリアジャケットに身を包み、待機状態のアスカはポニーテールに使っているゴム紐にくくりつけている。
一度バリアジャケットを着込んだ状態で鏡を見たがなかなかにイケてるのではないだろうか。
とまぁバリアジャケットの話はここまでに。
『複数のスフィアを用意しました。複雑に動くそれを撃ち落としてください』
「分かった!」
魔法の訓練は最初こそ非日常といった感じがして楽しかったのだが、慣れてくると同じ事の繰り返しで飽きてしまった。というかつまらん。それに宣言通りアスカはかなりのスパルタで、なかなかの無茶振りを要求してくるのもタチが悪い。
「き、きつい。死ぬ……」
『何を勝手に休憩しているのですか? 休憩はまだまだ先です。ほらマスターならイケるイケる。早く立ち上がりなさい』
これを少なくともあと5年はやらなければならないのか。うん、地獄だわ。
数時間後ようやく本日の鍛錬が終わり、棒のような足を引き摺りながら帰路についていた。
『マスターは成長補正があるので、あの程度ならあと一週間もすれば慣れるはずですよ』
「それ本当か〜? まぁ、千里の道も一歩からと言うし、原作に置いていかれたくないから頑張るけどさ〜」
今晩はもうご飯の準備するのが面倒くさいからカップ麺で済ませるとして、これ明日筋肉痛地獄だよなぁ。サボろうかな……
そんな下らないことを考えながら公園を横切ると
「いい加減にしてよ!! 私はりゅうやくんのお嫁さんじゃないって言ってるでしょ!?」
「アハハハなのははツンデレさんだなぁ」
「うー! なんでそうなるの!?」
金髪オッドアイの少年が栗色の髪をツインテールにした女の子に絡んでた。
あー、これはこれは……
「……なぁアスカよ。あれってもしやモノホンの踏み台って奴じゃないか?」
『そうですね、今どき珍しい天然ものの踏み台転生者ですよ』
てか天然の踏み台いるなら俺銀髪オッドアイにならなくて良かったじゃんか。ニコポナデポいらないじゃんか。
天然の踏み台がいたことに対しての衝撃が強すぎて、生なのはちゃんを見かけた感動もクソもないぜ。
『創造主は金髪の踏み台があるなら、銀髪の踏み台も欲しいよねって言ってましたよ』
「邪神ェ」
そんな理由のために俺を踏み台っぽい見た目で転生させたのかよ。勘弁してくれよ全く。
「もうお家に帰るの!」
「何言ってんだよなのは、今公園に来たばっかりだろ。サッカーでもやろうぜ。あ、なんならデートでもするか?」
「は、放してよりゅうやくん!!」
おっと、なのはちゃんは本気で嫌がってるな。このままじゃ泣いちゃうのも時間の問題だし助けようか?
『やめた方がいいかと。今のマスターではあの金髪には勝てませんよ』
「え、あいつそんなに強いの?」
『無限の剣製』
「あ、無理だわ」
俺がしゃしゃり出たところで剣に貫かれてあの邪神のいるところに帰還するのは目に見えている。よし、ここは見なかったことにしてさっさと帰ろう。済まないなのはちゃん。力のない僕を許しておk「おい何やってんだよ。この子嫌がってるだろ!?」おや?
声の主の方向を聞くと黒髪黒目の少年が、金髪の踏み台の方へ詰め寄っていた。
「なんだモブゥ! 俺となのはの時間を邪魔してタダで済むと思ってんのかあぁ!?」
「もう一度言うがその子は嫌がってるだろ! 嫌がってる子に対して無理やり迫ってはいけませんって親に教わらなかったのか!?」
「あ、殺すわお前。マジで殺す! モブがこのオリ主に向かってそんな態度とったこと後悔させてから惨たらしく殺すわ!!」
……ん、今チャンスじゃね?
「アスカ、あの金髪に不意打ちぶちかましたら一撃で倒せるかな?」
『後頭部を強打すれば意識を刈り取ることが出来るでしょう』
「それはあかん」
後頭部は死ぬかもしれないから除外だ。それに戦闘不能に出来ればいいのだから意識を刈り取らなくても問題はない。
……よし、男として本当ならやっちゃいけないことだが、まぁアイツにならいいだろう。
出来るだけ気配と存在感を消して、それでも少々急ぎめに金髪の背後へ距離を詰める。
あ、黒髪くんが気づいた。俺に対して反応はしないで。シーだよシー。
俺の意図が伝わったようで黒髪くんは俺の存在を完全無視して金髪に向き直る。
直後金髪は右手を前に突き出して剣を射出しようとする。
「くらえ! アンリミテッドブr「ゴートゥーヘェルッ!!!」おごぉおおお!!?!???!?」
俺の右足が金髪の股間。ゴールデンボールのある場所へと突き刺さった。
俺は背後に立ってるから分からないけど、金髪は多分顔青くして脂汗ダラダラ流してるんだろうなぁ。
産まれたての子鹿の様にしばらくはガクガクと足を震えさせながらも踏ん張っていた金髪だったが、急所への不意打ちは流石に堪えた様で崩れ落ちてしまった。
「お、お前なかなかえげつない事するな」
なんとも言えない表情をする黒髪くんにあまりにカオスな展開についていけなくなり目が点になっているロリなのはちゃん。
さてやる事は終わった。ならばこの踏み台その2はクールに去るZE。
「失礼しました。それでは」
「あ、あぁ」
「う、うん。またね?」
ちゃんとバイバイしてくれる翠屋の白い天使に心悶えつつも、振り返らずまっすぐ帰宅したのだった。
『マスターってもしかしてロリコンですか?』
「否定はしないけどYESロリータNOタッチを心情としてるんで、これ以上なんか言ったら叩き割るかんな」