見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「温泉旅行行くんだって。れお君もいこ?」
「いきなりだね。今回は誰が企画したの?」
「士郎さんたちだよー」
マドレーヌを頬張りながらひなちゃんが温泉旅行のお誘いをしてきた。
ここ最近身体の疲れが取れなくて、奮発してスパでも行こうかと考えていたため渡りに船だ。
それに企画したのが士郎さんと言うこともあり、ヒロインズがヤマトを誘惑するために仕掛けたものでもないだろう。
当然行かせてもらう。
「わーい! 今年はれお君も一緒だー!」
「今年ってことは去年まで俺はぶられてたの? だとしたらすごく悲しいんだけど」
いや待て。いくらヒロインズが企画したものではないとはいえ、温泉旅行ってことは原作ヒロインズとヤマトの仲を深める貴重なイベントだ。
最近ではフェイトちゃんもヤマトの方が気になり出したらしいし、せっかくのチャンスを俺みたいな踏み台2号が邪魔していいのだろうか? いや、良いわけがない。それならばここは遠慮したほうがいいのでは……。
「と言うわけで行かない方がいいのではと不安になってきたけど、どう思うひなちゃん?」
「みんなで仲良く遊んだほうがいいよ〜」
なるほど。ひなちゃんがそう言ってくれるなら、お言葉に甘えて俺も参加させていただこう。
〜旅行当日〜
海鳴温泉へはなのはちゃん家の車と、スズカちゃん家の車、そしてひなちゃん家の車で向かうことになる。ちなみにフェイトちゃんにも連絡を取ったらしいが、ちょうど旅館近くでジュエルシードを探してたらしいので彼女は現地集合だ。
まぁそれはさておき、年頃の乙女にとっては気になるあの子の隣に座りたいものだ。故に原作ヒロインズによる血で血を洗う戦争が……。
「なのは、すずか。ここは公平にじゃんけんで決めましょ。今回は私たちの二人がヤマトと両隣り、負けた人は羽鳥さんの車でひなとレオと一緒ね」
「「いいよ!」」
別に起きなかったな。じゃんけんでならば平和的に決めれるだろう。
「なぁ、俺はいつもなのはとスズカとアリサの誰かだけどさ。全員公平にするなら今回はレオとひなとで座った方がいいんじゃ「馬鹿野郎っ!!」ごぶぇ!」
空気も読まずにとんでもないことをほざきやがったヤマトを全力で蹴り飛ばす。
スーパーでの食料の奪いを通して培われたこの脚力で蹴られたヤマトは、二メートルくらい空中に蹴り上げられてそのまま頭から落っこちた。
……死んでないよな?
地面に落ちてからすぐに起き上がった彼をみて、死んで無い様で一安心した。……クソでっかいタンコブは無視させてもらう。
「いってぇな! 何すんだよレオ!」
「お前がバカなこと言うからだろ! 鈍感だからってやっていい事といけない事があるって、いい加減わからんかい!!」
と言うことで俺とひなちゃんは強制的に羽鳥さんの車だ。
一応ひなちゃんにヤマトと一緒がいいか聞いてみたが、お兄ちゃんっ子のひなちゃんは俺と一緒がいいと嬉しいことを言ってくれた。
『何鼻の下を伸ばしてるんですかロリコン』
「ばっかこの歳になっても懐いてくれるひなちゃんに、お兄ちゃんは嬉しいだけだよ」
「あれ? 私の子供がいつの間にか増えてる?」
困った顔の羽鳥さんは無視させてもらおう。
三分にも渡る激戦の末に今回はなのはちゃんが敗北したらしく、なのはちゃんには申し訳ないが俺と一緒の車だ。
「うー、負けちゃったの」
「あはは、でも帰りは確定でお隣に座れるんでしょ? 良かったねぇ」
「……アリサちゃんとすずかちゃんの二人のうち、どちらかは二回連続で座るってことだから、全然良くないの」
「可哀想ななのはちゃん……!! ひとえにテメェがじゃんけん弱ぇせいだが……」
「うー! 次は負けないの!! ……ところでひなちゃん。そろそろなのはにもリニスをなでなでさせて〜」
「いいよー。はい」
「にゃ〜ん、もっと首元お願いします〜」
普段なのはちゃんがヤマト君の尻を追いかけまわしているため目立たないが、なのはちゃんとひなちゃんは小学生になる前からの付き合いということもあり非常に仲がいい。
そもそも六人グループの中ではひなちゃんは末っ子、なのはちゃんは三女と歳下のような立ち位置のため、同じ立ち位置の者同士気が合うのだろう。
だからこそ、ヤマトと一緒に座れなかったなのはちゃんも普通に楽しそうだし、そこまで気にしては無さそうだった。
「三十分間お店でお土産を買ったり、お菓子とかを買ったりしよう。もうすぐ晩御飯だから買い食いはほどほどにな」
「「「「「「はーい」」」」」」
引率の士郎さんからのお言葉も済んだところで、今日泊まる旅館の途中にある道の駅で自由時間だ。
六人で色々お土産を見ていたのだが、なかなかセンスの良いお土産を見つけた。
「このウーパールーパーのキーホルダーイカしてると思わない? この道の駅のマスコットのウーパー君って言うらしいよ」
「うーん、ちょっとリアルすぎかな……」
「はっきり言ってキモい。レオ、あんたセンスないわねぇ」
言ってくれるじゃないかアリサちゃん。ではアリサちゃんの思うお土産とはなんぞ!?
「ふふふ、これよ! このめんだこキーホルダー、この潰れた目がキュートね! 鮫島にお土産として買おうかしら!!」
「う、うーんこれはこの道の駅とは関係なさすぎないかな?」
「なんならこれ商店街の雑貨屋でも売られてるぞ。もっとここでしか買えないもの買おうぜ?」
「ぐっ!」
すずかちゃんとヤマトの言葉に撃沈したアリサちゃん。ふふふ、君も人のことを言えないじゃないか。
「ねぇねぇ、なのちゃん! このルーパーちゃんのキーホルダー可愛いよ! ランドセルにつけるからママに買ってもらおー」
「ひなちゃん、こっちのヒョウモンダコも可愛いの! この紫のつぶつぶが綺麗なの!」
「……俺たちがおかしいのか?」
「好みは人それぞれだから……」
なのはちゃんとひなちゃんも似たようなキーホルダーを取っているのを見たヤマトとすずかちゃんは自分の感性を疑ってしまいましたとさ。
キーホルダー売り場でキャッキャとはしゃいだ俺たちはソフトクリームを買い食いすることにした。
なのはちゃんが抹茶味、アリサちゃんとヤマトがチョコ、俺とスズカちゃんがミルク、ひなちゃんはチョコとミルクのミックスだった。
「ふふん、私はヤマトとお揃いよ」
「甘いねアリサちゃん……」
「私とすずかちゃんはヤマト君と違う味だから、一口どうぞってできるの!」
「な!? 迂闊だった……! でも同じ味でもあーんは出来る!」
いやいや、そんなに食わせたらヤマトが腹冷やしてトイレから出て来れなくなるぞ?
外に座れるところがあったのを確認していたので、そこで食べようかと決まり建物を出る。
するとそこには……。
「あれ、ヤマト。みんな」
フェイトちゃんがベンチに座り、ちびちびと抹茶ソフトを舐めていた。
「わぁ、フェイちゃんも来てたの?」
「うん、集合時間まで時間あったし少し休憩することにしたんだ」
「あ、フェイトちゃんも抹茶食べてる! 私とお揃いなの!」
「ほんとだね。なのは」
思ってもいないところで友達と会えると、すごく嬉しい気持ちになるよね。
それはみんなも同じだったらしく、フェイトちゃんを取り囲んで仲良くソフトクリームを食べたのだった。
「はいヤマト君あーん」
「あ、すずかちゃんずるいの! 私のもどうぞ!」
「あ、二人とも……ヤマト! 私のも一口あげるわ」
「え、あ、じゃあ私も……」
おいおいそんなに食べたらヤマトが腹壊す……
「おいヤマト、俺のソフトクリームはカラースプレーかけてもらったんだけど、意外といけるぜ? ほら食えよ」
「ヤマト君、ひなの一口あげるからヤマト君のも一口頂戴!」
面白そうだから乗っかろう。
その後予想通り腹を冷やしたヤマトはトイレに籠ることになった。
「おーい、フェイトー!」
ソフトクリームを完食したタイミングで、オレンジ色の髪にイヌ耳を生やした女子高生くらいの女性が駆け寄ってきた。
「あ、アルフ。みんな、紹介するね。この子は私の使い魔のアルフだよ」
「あ、コイツらがフェイトの言ってた子達かい? アタシはアルフ。アタシ達は本来敵同士だけど今は手を組んでるんだし、フェイトと仲良くしてやっておくれよ」
パッと見た感じかなり気のいいお姉さんだ。
フェイトにとって彼女は頼れる姉であり、相棒なんだろう。
ヤマトがトイレから帰還し、そろそろ出発しようと言う士郎さんの声を聞いた俺たち。
せっかく会ったんだしみんなで行こうと言うことになり、フェイトとアルフは羽鳥さんの車に乗ってみんなで旅館に向かったのだった。