見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「あ、あの母さ、いえ艦長……? 大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫よ。羽鳥を怒らせたらおっかないのは昔と変わってなかったわ……」
私の夫が亡くなった11年前の事件の後パタリと姿を消してしまった親友との再会は穏やかなものではなかった。
次元震があった海鳴市を訪れそのときに出会った魔法を使う子ども達。
歳の割に成熟した子が集まる中で年相応の未熟さを持つ桃色の髪の女の子を見たとき、親友の面影を感じていた。だがまさか彼女の娘だとは思わないだろう?
「娘に自分と同じ未来を歩ませたくないから、自分で選ぶならともかくあなたから勧誘はしないでちょうだいと念を押されてしまったわ」
「……母さんは才能がある人をスカウトする癖があるけど、僕は反対です。魔法が使えると言っても彼女らは訓練校も卒業していない。とてもじゃないが危なっかしくてこの事件を任せられない」
「そうでも無いみたいよ。エイミィ?」
「はいはーい、今映しますねー」
エイミィに指示を出し、モニターに一つの動画を映す。
ひなさんのミラクルホープが撮影をした動画があり、事件のいい資料になるだろうからと羽鳥から預かっていたのだ。
モニターの中でジュエルシードの位相体と戦う7人の子供達。ロストロギアは危険なので決めつけるのは早計ではあるだろうがハッキリ言って過剰戦力だ。
「……な? これは……」
「すごいでしょう……これ?」
一人一人が魔力だけでも魔導師ランクAAAはくだらない才能を秘めている。
しかもそれぞれがまだ子供という事もあり、鍛えればこれからもっと伸びるはずなのだ。
特にひなさんと黒髪の男の子の大和君、銀髪の男の子の麗央君はこの中でも頭ひとつ抜けていた。
この3人は他の4人に比べて一切の無駄がない。魔導師として完成していると言ってもいいだろう。
「うわぁひなちゃんの背中から生えてる翼可愛いな〜。まるで天使さんみたい!」
「エンジェルウイングね」
「艦長知ってるんですか?」
「ええ、昔羽鳥が使ってたレアスキルだもの。懐かしいわ……」
攻撃、防御、移動、全てにおいて使える最強のレアスキルだって昔羽鳥が自慢していたのを思い出す。
娘だもの。使えるのも不思議ではないわよね。
「ひなもすごいが……レオが使うのはチェーンソー型デバイスのはずだ。なのにどうして杖を持って……?」
「そうだね〜、でもさっき木の化け物と戦ってた金髪の男の子をやっつけたときは、ライフル型デバイスを使ってたよ。しかもすっごい魔力量だったんだよ! もしかしたらSに届いてるかも!!」
麗央君の観察を続けているとブーメラン型のデバイスや棒形のデバイス、籠手型のデバイスなど複数のデバイスを駆使して戦っていた。
「うっわー。レオ君複数のデバイスを使い分けてますよ!」
「えぇ、そうね。でも驚くところはそこじゃないわ」
「……今確認しただけでも炎熱と氷結、電気に突風の変換資質を有している。四つの変換資質だなんて聞いたことがない」
なるほど、変換資質を活かすためにデバイスを変えているのね。それにこの戦い方なら手数によって相手を翻弄する事もできる。
またデバイスを変えても動きは洗練されていて、これは武術に対する鍛錬も相当積んでいるのだろう。
「彼は自分の才能を余す事なく発揮するために、相当の努力をしているのね。本当にウチに欲しいわ」
「うわぁ……艦長がうっとりしてる。……かなりの逸材だったみたいだね」
おっといけない。他の子達も確認してみましょう。
ひなさん麗央君の順番できたなら次は大和君ね。
「……うーん、二人と比べると地味じゃない?」
「そう言うな。彼は近接では剣を遠距離では銃を使い分けているが、分野が少ない分レオよりも精度は高い」
「そうね。シンプルな分大和君の方が麗央君よりも強いと思うわ。ただ、搦手がありならば麗央君に分があるし……二人は対照的なのね」
「正々堂々なヤマト君か、卑怯なレオ君かって事ですね!」
エイミィの例えはどうかと思うが、まさにその通りだ。
おそらく二人は……いえひなさんも含めた三人は良いライバルであり、お互いと模擬戦を繰り返す事で成長していったのであろう。
「それになのはちゃんとアリサちゃんにすずかちゃんもいい動きをしますねぇ」
「あぁ、それとフェイト・テスタロッサもな」
「アリサさんが近距離攻撃で牽制して、なのはさんが後ろから砲撃、すずかさんが後ろで全員の援護を行い、フェイトさんが遊撃に出る。理想の連携だわ」
彼女達も発展途上とはいえとても良い動きだ。きっとこのまま魔法を極めれば、ひなさんや麗央君、大和君と並ぶほどの魔導師になるだろう。
「惜しむらくは……フェイトちゃんが違法収集者であることですね」
「そうだな。……そういえば母さん。桃崎羽鳥さんからフェイト・テスタロッサの保護をお願いされたんでしたよね?」
「ええ」
彼女はこう言った。「娘がご飯に連れてきたことがあったけど、すごい痩せてたし服の下には鞭で打たれたような傷があったわ。おそらく虐待されてるから保護してあげて欲しいの。最悪身元引受人には私がなるわ」と。
この動画を見る限りフェイトさんと他の子達は相当仲が良い見たいだし、逮捕ではなく保護という形で確保したいところではある。
「あ、さっきの金髪の男の子……龍帝院竜弥君でしたっけ? 彼が乱入してきましたよ」
竜弥君。先ほどの木の化け物との戦いを見ていたがそれはもう酷いものだった。
彼の魔力量は大和君達よりも上、おそらく麗央君と同等のものである。
でも彼の攻撃手段はレアスキルで剣を作り出して射出するだけ。たまに作り出した剣を振るう事もあるが素人に毛が生えた程度だ。
「な、何をやってるんだ彼は!? ヤマトに襲いかかって陣形が崩れてしまったぞ!!」
「……一応麗央君が背後から不意打ちして気絶させてから、陣形を組み直したみたいだけど……これは危ないわね」
やはり彼は捕まえて独房に入れてしまいましょう。
彼は魔導師以前の問題、人としてどうかと思うわ。
「っとこれで動画は終わりですね……あ!」
「どうしたんだエイミィ?」
「動画消えちゃいました! あ、一件メッセージが来てるので読み上げます。『これを管理局に提出したらあの手この手で勧誘が来るのは目に見えてるし、一度再生したら削除されるようになってます。by羽鳥』とのことです!」
ほんと抜かりないのは昔と全然変わらないわねぇ。
抹茶に砂糖とミルクを入れてひと啜り。……ふぅ。
あの子達が私たちに協力してくれるか分からないけど、なんとかこの時間が円満に解決するといいわね……。
「大変です! フェイトちゃんとリュウヤ君が接触しました!! フェイトちゃんは嫌がってるようですがリュウヤ君は一歩も引いてません!」
「……クロノ、大至急竜弥君を確保して来て下さい! 今回は竜弥君を最優先に、フェイトさんは見逃しても構いません!!」
「分かりました!」