見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
俺と同じ転生者の桃崎ひなと知り合って数日。あれ以来ひなちゃんは俺と一緒に魔法の練習をするようになった。
それだけならまだいい。どうやらあの子にとって前世も含めた人生で俺が初めての友達らしく、練習が始まる前も終わった後も、挙げ句の果てには練習が休みの日にも俺に会いにくるようになったのだ。
この世界に転生してから一年余り、俺も話し相手はアスカくらいしかいなかったので丁度いい。
それに最近だと父性が湧いてきたのか、ひなちゃんが一人で出歩いていると心配になってしまっている自分がいるのだ。子供がいたらこんな感じなんだろうな。
『いえ、それは単純にマスターがロリコ嘘ですごめんなさい。謝りますので私を握らないでください。あ、メキッて言いましたよ、私の身体メキッて言いました! 嫁入り前の身体になんてことするんですか!』
「デバイスに嫁もクソもないだろうが。つか、ロリコンはマジでやめろよ。俺だって言われなき誹謗中傷で嫌な気持ちになるんだぞ」
ピーピー文句を言うアスカを無造作にポケットに突っ込むと、鞄を持って家を出る。今日はひなちゃんの家にお呼ばれしたのだ。女の子の家に行くだなんて前世含めた生涯で初めてのことで無茶苦茶緊張してますが何か?
ひなちゃんの家は駅前の商店街の中にあるらしいので、商店街前で待ち合わせしている。今の時間帯ならば約束の時間の十分前にはつくだろう。
「踏み台ぃ! テメェこの間はよくもアリサとの時間を邪魔してくれたなぁ!!」
「アリサとの時間? ふざけんな!! アリサ嫌がってただろうが、いつもいつも女の子たちに嫌がらせばっかりして……。恥ずかしくないのかお前は!!」
「うるせぇ! アリサのあれはツンデレだよ。分からねぇくせに首を突っ込むんじゃねえよ!!」
……。
「原作始まる前にお前消してのんびり三人を攻略してやるよぉ!」
「攻略だと? あの三人をなんだと思ってるんだ!!」
「俺の攻略対象、嫁だよ! くらえ、アンリミt「地獄への入り口だぁ!!」おっごぉおおおお!!?!??!」
「うおわ、またやりやがったこいつ!?」
街中で暴れようとする金髪を華麗なる一撃で無力化した後、黒髪君と向き直る。
「よっす。お前も大変だねぇ、こんな奴に絡まれて」
「お前は……踏み台転生者の見た目のくせになのは達に詰め寄ってこないどころか、龍帝院のやつの男の象徴を蹴り抜くくらいしか印象がないよく分からないやつ!!」
「おう、喧嘩売ってんなら買ってやるで」
青筋を立てて金髪を蹴り抜いた右足を構えると、股間を押さえた黒髪君は苦笑いで謝ってくる。
でもまぁ言われてみればそうだ、なのはちゃんとは一回しか会ったことないし、アリサちゃんにすずかちゃんとは会ったことすらない。
黒髪くんからすれば、俺はせいぜいたまに姿を表して、よくわからんことをするだけの脇役なんだろうな。
「せっかくちゃんと話す機会があるんだから。転生者同士ちょっとお話をしたいところだけど、お友達と待ち合わせをしてるから、今日のところは許してやろう。それじゃあアディオース!」
「あ、おい。せめて名前くらい教えてくれよ!」
「小学校に入学したらまた会えるだろ。お前の名前もそんとき覚えるわー」
何なんだあいつとつぶやく黒髪くんを放っておき、俺はひなちゃんとの約束の場所へ向かった。
俺が到着する頃にはもう、ひなちゃんは待っていてくれていた。
俺を発見すると同時に、パァっと笑顔をさせて俺の方へ駆け寄ってくる。
「れおくんおはよう!」
「おはようひなちゃん。来るの早いねぇ、いつから待ってたの?」
「一時間前から!!」
「嘘だろお前!?」
え、俺時間間違えてたか? こんな真夏日の炎天下の中小さな子を一時間も待たせたのか俺は……!?
『マスター、……やっちまいましたね』
「……ごめんひなちゃん。時間間違えて遅刻しちゃって、引っ叩いても文句は言わないよ」
「え? れおくんは間違えてないよ? 楽しみ過ぎてひなが一時間前から待ってだけだから」
「……」
その後、近くの自販機でスポーツドリンクを買って飲ませてやりながら、待ち合わせは五分前に着いていればいいと教えておいた。
とまぁちょっとしたトラブルはありつつも、改めてひなちゃんのお家へ案内してもらう。
ひなちゃんの家は待ち合わせ場所から五分のところにあった。
ひなちゃん家はパン屋を営んでいるそうで、その二階に家があるらしいのだが……
「ついたよー」
「え、うわ、ここモモザキベーカリーじゃん……」
「な、なんでそんな嫌そうな顔するのぉ……?」
不安そうな顔をするひなちゃんには悪いが正直この店にはいい印象が湧かない。
と言うのも数ヶ月前にちょっとした冒険心からこのパン屋を訪れたことがあるのだが、なんでか知らないが客や店員から睨まれてしまい居心地が悪すぎたので、何も買わずに出たのだ。
それ以降二度と行ってたまるかと思っていたのだが、まさかひなちゃんがこのパン屋の子だったとは……。
「……でもまぁ、俺はなんの負い目もないもんね。大丈夫だよひなちゃん」
「そぉ? それじゃ入ろ〜」
ひなちゃんを追ってあの魔境、モモザキベーカリーへと再び足を踏み入れた。
「ただいま、ママー!」
「お帰りなさいひなちゃん。あら、この子は……」
「あのね、前から言ってたおともだちだよ! 魔法教えてくれたり遊んでくれたりするの!」
あの睨んだ店員さんがひなちゃんを出迎えたのだが、お母さんだったのか。
「ど、ども宮坂麗央です」
「あらあら、そうだったの……。君、この間来た子よね? あの時は睨んでごめんなさいね。怖かったでしょう?」
「あ、いえ、別に大丈夫ですけど。……なんか、いろんな意味で俺ですみません」
ぺこりと頭を下げるとひなちゃんのお母さんは焦りながら謝り説明をする。
なんでも俺がこの店を訪れる数日前に金髪がやってきたようだ。そこでひなちゃんになのはちゃん達にやってるような事をしたようで、お母さんはそれを止めたとのこと。
そしたら金髪は逆ギレしてお店を荒らして出ていったようで、それでピリピリしてしまったとのこと。
あの金髪ほんとクソだな。もっと強く蹴って子供作らないようにしてやればよかったか。
「これで償いになるかわからないけど、これ貰ってくれるかしら?」
ひなちゃんのお母さんが俺にメロンパンを渡してくれた。
バターのいい匂いがして美味しそうだ。
「えへへ、ママ特製のメロンパンは美味しいんだよ」
その後、物欲しそうに見ていたひなちゃんと半分こしてメロンパンを食べた後、二階でおままごとや人形遊びをして夕方頃に帰宅した。帰りに食パンをお土産に持たせてくれたのだが、バタートーストにしたらこれがとても美味しく、それ以降このパン屋の常連になった。