見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「魔力発射地点特定、空間座標……確認!!」
「転送座標セット!」
「突入部隊転送ポートから転送! 任務はプレシア・テスタロッサの身柄確保です!」
俺らがアースラに帰還するとそれはそれはもう忙しそうなアースラの様子。
フェイトちゃんとアースラに帰還しても、彼女に手錠をつけなかったことはアースラなりの慈悲なのだろうか?
「そこんとこどうなの?」
「今忙しいから後にしてくれ」
そう言われて無視された。状況が状況だしそりゃそうだ。
突入部隊の持つ撮影用スフィアが今回の事件の黒幕、プレシア・テスタロッサを映すと、彼女は既に掌から血を垂れ流しゼェゼェと息を切らせていた。
「これってアレかな? ヤマト君が魔法跳ね返したからかな?」
「だろうな。普通は自分の使う魔法は効かないようにしてるはずなんだが……」
「たとえ効くとしても普通跳ね返された場合の対策はするべきだろ、ったく魔導師の風上にも置けないババアだZE☆」
「ちょ、レオやめなさいよ。フェイト、お母さんの悪口言われてすごい顔してるわよ」
「と言うか自分の攻撃って跳ね返されることあるの?」
「ってことはなのはのスターライトブレイカーも……跳ね返されたら防げる自信ないの…………」
「レオが母さんの悪口言ったことは後でお話しするとして……魔法を跳ね返せるのも、自分の魔法の対策してるのもヤマト達くらいだよ……」
だからこそ俺もヤマトもひなちゃんも跳ね返されても耐えられる魔法、対策を取れる魔法しか実践で使わない。
その縛りを解禁したら多分なのはちゃん達が4人がかりで来ても負けないんじゃないかな? 知らんけど
「……それって要は舐めプしてたって事じゃない?」
「嫌だなぁアリサ。危機管理の一環であって楽したくて手を抜いてた訳じゃないよ。だからその拳を下げるんだ。さもないと跳ね返されても耐えきれない規模の大魔法の餌食にするぞコラ?」
『せっかく私も起動してるところですしやりますかアリサちゃん。お?』
「……おいアリサ、レオ。喧嘩してる場合じゃないぞ。見ろよこれ……」
ヤマトの震えた声に喧嘩は一時休戦してモニターを見る。
『私のアリシアに触らないで!!』
手負いのババアとは思えない力で突入部隊を叩き潰し終わると、試験管っぽい何かを恍惚な表情でなでるプレシア。そして試験管の中にはフェイトちゃんが縮んだような女の子の姿。
「あれってフェイトちゃんの妹……?」
「いや、フェイトちゃん2号の可能性あるぞ」
「レオ、ほんとに空気読みなさいよ?」
「空気は読むものではない、吸うものだ」
「「……………………」」
「髪の引っ張り合いを始めたアリサちゃんとレオ君は放っておいて、あの子ってなんなの?」
なのはちゃんの疑問にフェイトが小さな声で呟いた。
「あの子がアリシア……私のオリジナル…………」
彼女の言葉にクロノ君達がフェイトちゃんの方を向く。
「……知っていたのか」
「もしかしたらあのときの竜弥君の発言で、気になって調べてしまったのかもしれないわね……」
フェイトちゃんと一緒に行動していたヤマトの方を見ると、知っていたと言わんばかりに俯いていた。
コイツは一体何を知ったと言うのだろ……はっ!?
(おいおいこのタイミングで思い出させるなんて、邪神は何考えてんだ!?)
『知りませんよ。と言うか普通記憶を抜かれたら二度と思い出す事はないのに、定期的に少しずつ思い出すマスターの方が異常なんです!』
あー、そう言う事か。そう言う事だったか!
確かにヤマトのやつ定期連絡で言ってたっけ、「龍帝院が気になることを言ってたからフェイトと一緒に調べてみる」って!!
『たった9個のジュエルシードでは辿り着けるかどうか分からないけど、もういいわ。終わりにする。この子を亡くしてからの時間も……この子の身代わりの人形を娘扱いするのも…………!』
プレシアのその言葉に俯くフェイト。
そしてプレシアはせっかくアリシアの記憶をあげたのに似てるのは見た目だけ、奪えと言ったのに従わず敵と仲良くなる役立たずで使えない人形とフェイトを罵り出した。
「最初の事故の時にね、プレシアは実の娘、アリシア・テスタロッサを亡くしてるの。駆動炉の暴走事故。アリシアはそれに巻き込まれて……。その後プレシアの行っていた研究は使い魔を超えた人造生命の生成。そして……死者蘇生の技術」
「記憶転写型特殊クローン技術。プロジェクトF.a.t.e」
エイミィさんとクロノ君の言葉に俯いたままのフェイトちゃんが続ける。
「あの二人の言う通りだよ。アリシアの代わりに作られたのが私。でも私はただのアリシアの偽物。母さんは私の本物、アリシアを生き返らせたかった。だからジュエルシードを持って帰ってアリシアを生き返らせれば……母さんは私を娘だと認めてくれると…………」
「…………」
「フェイトちゃん……」
そうか。フェイトちゃんが自分の出生を知ってもなおプレシアに従い続けたのは、娘と認めてもらいたかったからか。
『あら? こそこそ何をしてるのかと思ったら、自分のことを調べていたのね。馬鹿な娘、私の娘はアリシアただ一人だと言うのに……』
その言葉にフェイトちゃんの顔が歪む。
『フェイト、あなたは私の娘じゃない。ただの失敗作。だから……もうあなたはいらないわ。どこへなりとも消えなさい!!』
「……ぁ」
ショックでフェイトちゃんはフラリと崩れ落ちそうになり、なのはちゃん達がフェイトちゃんを支える。
それを見たヤマトは大声で叫んだ。
「ふざけるなよ、プレシア・テスタロッサ!! フェイトは自分の出生を知ってもアンタが娘と認めてくれるのを信じて今日まで頑張って来たんだぞ!! なのに……なんて事を言うんだ、お前は娘をなんだと思ってるんだ!!」
だがそんなヤマトの訴えを無視してプレシアは続ける。
『いい事を教えてあげるわフェイト。あなたを作り出してからずっとね……私はあなたが……大嫌いだったのよ』
「……!」
「「「フェイト(ちゃん)!!」」」
とうとう意識を失ってしまったフェイトが手に持っていたバルディッシュを落とす。
それを見たリニスはプレシアへ訴えかける。
「いい加減にしなさいプレシア! 失った命は戻ってこない。失った時間も同じです!! あなたにとってフェイトはもう一人の娘のはず! なのになぜ……そんな事を言うんですか!!」
『娘じゃないわ! 私を裏切った使い魔には分からない。私の娘はアリシアただ一人よ!』
それを見た俺は無言でこう思った。
ただのクソババアやんけ
まあこんなババアはどうでもいい。
フェイトちゃんの落としたデバイスを見ると、ただでさえ激戦で傷ついていたバルディッシュは落ちた衝撃で砕け散ってしまっていた。
「…………」
俺は無言でそれを拾うと後ろへ下がり、懐から取り出した機材を使って修理を開始する。
『最終整備と偽ってバルディッシュを壊すために機材を持って来ておいてよかったですねマスター』
「うるせえやい。3分で修理を終わらせるから手伝えアスカロン」
『イエスマスター』
一度目の修理でバルディッシュの内面は覗いてるんだ。この程度のダメージならすぐに治せる。
俺が修理している間に、何かの振動が起きる。
……そう言えば原作じゃこの後次元震を起こしてアルハザードへ旅立つんだったっけ?
これは3分では長すぎるな。1分で修理してフェイトちゃんに返そう。