見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
プレシア捕縛に立候補したひなを連れてきたのは正解だった。
「行くよミラクルホープ、《セラフィムフレア》!!」
ひなはたった一人で襲いくる傀儡兵を蹂躙して進む。
炎で溶かし、翼から風を起こして吹き飛ばし、羽をナイフのように関節部に刺して破壊する。あまりに戦い慣れをしていた。
「あぅ!」
「大丈夫かひな!」
「大丈夫だよ! すぐに治るもん!!」
傀儡兵の攻撃がひなの身体に掠ったが、傷口を炎が焼くとそこは完全回復した。彼女の助けになれていないのは執務官として情けない限りだがすごく心強い。
彼女の力もあり、いともあっさりとプレシアの元へ辿り着く事ができた。
プレシアは試験管の中のアリシア・テスタロッサの遺体を眺めていたが、僕たちに気づくと振り返る。
「なぜ……なぜ次元震が抑えられて…………あら、あなた達は……」
「よーやく見つけたよ、おばちゃん! フェイちゃんに謝りなさい!!」
「……邪魔よ消えなさい!」
「きゃん!」
「ひな!!」
プレシアが手を翳すと凄まじい電撃を放つ。
ひなはそれを避ける事も防御することも出来ず電撃に飲み込まれてしまった。
僕は急いで彼女の元に駆け寄るが、ひながいた場所にあったのは赤色の翼で出来たボール。どうやら翼を盾にしたようだ。
「……もうお前は終わりだ、プレシア・テスタロッサ」
「そーだよ、次元震はれお君に抑えてもらってる。そしておばちゃんはリニスの二番弟子の私がやっつけちゃうんだから!」
「リニス……あのヤマネコは余計な事しかしないわね。いいわ。どうせここを乗り切らなければ、アリシアは生き返らせることは出来ない。邪魔する奴は排除するだけよ!!」
来る!
僕とひなは同時に別々の向きへ回避する。
プレシア・テスタロッサは強い、条件付きSSの大魔導師だ。
でも……
「《セラフィムストーム》!」
「っく!」
ひなもプレシアと同じくらい強い!
実力は拮抗している。ならばひなの攻撃の合間に生まれるほんの少しの隙を見極めて、そこを僕がカバーすれば勝つ事ができるだろう。
次元震もレオが抑えてくれている事で、まだそこまで崩れてはいない。駆動炉の方もなのはにアリサにすずかにユーノが向かった。攻略するなら充分すぎるメンツだろう。
これならイケる!
そう思った直後、一瞬だけ大きな揺れが発生する。
これは……次元震が進行してる?
レオに何かあったのか!?
「……れお君?」
「隙ありね!」
「あ!」
しまったひなが被弾した。
すぐに回復するからひなは無事だろうが、それでも身体の痺れは取れてないはず。ならば!
「《スティンガー・レイ》!」
「無駄よ……なっ!?」
プレシアがシールドを貼り防御しようとしたが、僕のこの射撃魔法は防御魔法を貫通するものだ。
少し耐えられはしたが、プレシアのシールドを割った。
だが流石は大魔導師プレシア・テスタロッサ、身体を翻す事であっさり避けられた。
「痺れてる間にとどめをと思ったけど、なかなかやるわね執務官」
「もう諦めろ。あなたに勝ち目はない!」
その直後また次元震が弱まる。直後ここにモニターが展開され母さんが映った。
だがそれよりも気になる事がある。母さんのいる場所はレオと別れた場所のはずなのだが、ここにレオはおらず血溜まりがあった。
本当にレオが傀儡兵か何かにやられたのか!? だがここで動揺したらプレシアに隙を突かれてしまう。落ち着け、お調子者の彼のことだ油断して少し怪我をしたに違いない。
『プレシア・テスタロッサ、終わりですよ。次元震は私が抑えています。駆動炉もじきに封印。アースラ協力者の大和君とあなたの娘フェイトさんもそちらに向かっている事でしょう』
「……」
『忘却の都アルハザード、彼の地に眠る秘術……そんなものはもうとっくの昔に失われているはずよ』
「……違うわ。アルハザードは今もある。失われた道も次元の狭間に存在する!」
『仮にその道があったとして、あなたはそこへ行って何をする?』
「取り返すわ。私とアリシアの過去と未来を……。取り戻すの、こんな筈じゃなかった世界の全てを!!」
あまりに勝手な言い分だ。
その為ならばこの世界が滅びても良い彼女は言ってるのか!
「ならフェイちゃんはどうなの!? あなたの都合で生み出したフェイちゃんはこれからどうすればいい!? フェイちゃんの未来は!? あなたの勝手な都合で悪いことさせて未来を奪って……そんなあなたに未来を取り戻す資格なんてないよ!!」
「っ! あなたみたいな子供に、何がわかると言うのよ!!」
激昂したプレシアの電撃。それはついさっきなのはとフェイトの戦闘区域に落としたものと同じほどの威力を持っていた。
「《セラフィムグローブ》! ふんっ!!」
「な!?」
「嘘だろ!?」
だがひなは翼を自らの左腕に纏ったかと思うと、それを左腕ではたき落としてしまった。バチィンと音を立てて地面に落とされた雷により、足場が崩れたがもうひなはプレシアに向かって走り出していた。
一体どこにそんな力が……!?
「ひなは子供だもん。まだ大人の言うことは分からないし、おばちゃんがアリシアちゃんを生き返らせるためにどれだけ頑張ってきたのかも分からない……!」
「っく、離れなさい!!」
再び強力な雷をひなに向かって放つ。だが彼女は今度は斜めに弾く。プレシアはその後も何回も雷を放つがそれはひなによって悉く弾かれてしまう。
「な、なんなのよあなたは!?」
「でもこれだけはひなでも分かるよ! おばちゃんがフェイちゃんを虐めてる事、悲しませてること……!」
「来るな、来るなぁ!!」
「ひなは子供を虐める親は大っ嫌い!! 経緯はどうあれフェイちゃんはあなたが産んだ子なんでしょ? それならアリシアちゃんの妹でしょ!!」
「っ!? ……い、いもうと…………?」
妹という単語に反応したプレシアの動きが止まるが、ひなは止まらない。
プレシアの元へ辿りついたひなは、素早くプレシアの懐へ潜り込んだ。
「なのに娘じゃないなんて言うな! 大嫌いなんて言うな!! フェイちゃんに謝れぇええええええ!!」
「うぐぅ!!」
ひながプレシアに叩き込んだのは左ストレート。彼女の信念のこもった一撃をもろに受けたプレシアは、後方へ吹っ飛び壁に叩きつけられた。
「さあクロ君! お願い!!」
「……っ!? あ、ああ!」
我に帰った僕は素早くプレシアを魔法で拘束した。
そして彼女に静かに告げる。
「プレシア・テスタロッサ。次元法違反及び、故意的な次元断層での管理外世界崩壊未遂で現行犯逮捕する」
ひなの活躍で野望を打ち砕かれたプレシアはボソボソと「妹……妹…………」と呟き続けていた。
ジュエルシードで欠席した分はここで活躍してもらいました。
またひなちゃんがここまで憤っているのは、ひなちゃん自身、前世で虐待を受けていたと言う事があり、プレシアの姿がかつての親を思い出させたためです。
因みにひなちゃんの戦い方は基本的にレオ君の真似をしています。
セラフィムストーム→暴風域
セラフィムグローブ→Fガントレット