見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「……ん、ここは…………身体が軽い?」
目を覚ましたババア……プレシアは自らの身体に起こった変化に戸惑っていた。それもそのはず、もう長くないと思っていなのに目を覚ましたらあの頃の身体だなんて、夢でない限り体験できない事だ。
「ママ!」
「あ、アリシア……!」
プレシアがもう大丈夫だと分かったアリシアちゃんは、プレシアを抱きしめ、プレシアもまた彼女を抱きしめ返した。
さてこれであとはフェイトちゃんが抱きしめれば、ハッピーエンドではあるが……
「……フェイト。どこへ行くんだ?」
静かに部屋を出ていこうとしたフェイトちゃんをヤマトがとめる。
なぜフェイトちゃんは出ていこうとしているのだろうか?
フェイトちゃんは必死の作り笑いをヤマトに向ける。
「私のいるべき場所はここじゃないから。アリシアが生き返ったんならあの場所は、アリシアだけの場所。偽物の私が混ざったら悪いよ」
「「「「「こんの、おバカ(バカ)!!」」」」」
俺の他にヤマト、アリサちゃん、すずかちゃん、果てはひなちゃんまでフェイトちゃんに怒鳴りつける。
「み、みんな……?」
「あのねぇ、いくらいらないって言われたからってそこまで卑屈にならなくて良いじゃないの!」
「そうだよ! プレシアさんともう一回話し合お?」
「いらないって言ったら、またひながおばちゃんをやっつけるから……ね?」
「みんなの言う通りだ。それにフェイト、お前はアリシアの偽物じゃない。フェイトっていう一人の女の子だろうが」
4人が俺の方を向く。あ、俺の番か。
「それに生まれ方はどうであれ、プレシアがお前を生んだんだ。ならプレシアには大人になるまでフェイトちゃんを育てる義務が発生する。生んでもらった責任を果たしてもらえや」
俺たちの言葉にフェイトちゃんはしばらく悩むと、やがて決心した様な顔になりプレシアの元へ向かう。
そして無言でプレシアとアリシアちゃんに抱きついたのだった。
「……フェイト。…………いいの? 私はあなたをたくさん傷つけた。あなたの母親になる資格なんてないわ」
「それでも……私の母さんはあなたただ一人です」
「ママ、このお姉ちゃんはだれ? 私に似てるけど、お姉ちゃんがいたの?」
「……アリシア、この子はあなたが欲しいって言ってた妹よ」
「え、ほんと!? あなたは私の妹なの!? やったぁあああああ! ママありがとう!!」
「う、うう……うぇえええええん!!」
ようやくプレシアと和解できたフェイトちゃんは嬉しいのか泣き出してしまった。
よかったよかったこれにて一件落着
「レオくーん、レバニラ貰ってきたの……リンディさーん! みんながフェイトちゃんを泣かせてるー!!」
「あらあら困った子達ね。こっちに来なさいみんな纏めてお説教よ!」
「「「「「誤解だ!!」」」」」
その後なぜかリンディさんに叱られた。解せぬ。
〜数分後〜
なんとかなのはちゃんとリンディさんの誤解を解いた俺たちは、食堂で昼食をいただいていた。
テスタロッサ親子は先ほどの病室で親子仲良く食事をとっており、こちらはリンディさん、クロノ君などの管理局メンバーとだ。
俺のはレバニラとかほうれん草とか鉄分豊富な食べ物中心だ。
パンを咀嚼していたクロノ君が静かに話す。
「フェイトはこの事件の重要人物だが、羽鳥さんから虐待を受けていると管理局に通報があったため、保護という形になる。しばらくはプレシア・テスタロッサから隔離されるだろう」
「そんな……」
まぁそうだろうな。プレシアのした事はかなり悪質だった。ならフェイトちゃんが引き離されるのは当然のことだ。
それに……
「そして引き離されている間にプレシアは有罪判決を受けてムショにぶち込まれる。……そういう事ですね?」
「ああ、フェイトとアリシアには申し訳ないが、可哀想だから無罪というわけにはいかない」
「せめて私が保護責任者になる事になったわ」
当たり前だ。
どんな理由であれこの世界を滅ぼそうとしたんだ。親子水入らずの時間はもう帰ってはこないだろう。
……でも。
「納得がいかないのが悔しいところよな」
「そうだな。俺も出来るならプレシアも守ってやりたいが……」
こればかりはどうにもならないと、みんなは分かっているようで悔しそうに俯いている。
俺は栄養が行き届いてなくてまともに働かない頭をフル回転させる事にした。
……多分これならいけるか?
「クロノ君執務官だよね? 法律には詳しいはずだ」
「ああ、それがどうした?」
「管理局法でさ、事件当時プレシアがまともな精神状態じゃなかった事を証明出来ればどうなる?」
「そりゃ多少の情状酌量の余地は出るだろうが……」
「俺思うんだけどさ、ヒュドラの駆動炉の事故だっけ? それって本当にプレシアが起こしたのかな?」
「どういう事だ?」
俺は続ける。
自分が原因で結果的にアリシアを失う事になったのなら、26年もアリシアを生き返らせる事に躍起にならないのではと。
自分が原因ならしょうがないと諦めてしまうのが普通だが、あそこまでの執念を持っていたという事はあの事件に真犯人がいて、プレシア自身理不尽に娘を奪われたのではないかと。
「それが証明出来れば、理不尽に娘が奪われた。罪をなすりつけられて管理世界から叩き出された。駆動炉の暴走の後遺症で病を患ったという事になる。これでは正気でいることの方が難しいのではって持っていけるはずだけど」
「確かにその通りだな。確かにレオの言う通り当時の事故は怪しい所が多い。当時開発主任であったプレシア・テスタロッサよりも開発副主任が力を持っていたそうだしな」
「……でも副主任周りを調べるのは難しいわ。彼は管理局でもかなり偉い立場の人間とのコネクションがある。追求したところで上手く逃げられてしまうわ」
「そんな……そんなのってないよ!」
「やっぱりここで権力が出てくるか……やりきれないわね」
「うん、やっぱり大人は汚い」
「すずちゃん顔怖いよ?」
「ふざけんなよ! 人一人の人生を奪っておいてのうのうと生きてるだなんて!」
みんなが憤りを露わにするが、一旦落ち着かせる。
まぁ待てよ。これについても俺に考えがあるんだからな。
「そいつが権力者と繋がってるって事は、捜査を断り切れないほどの奴より上の立場の権力者の協力と、揉み消しが効かないレベルの徹底的な捜査が必要って事。つまりその二つがあればオールオッケーってわけだな?」
俺はそう言うと懐から一枚の紙とペンを取り出す。
さらさらさら〜っと。
「なぁクロノ。この手紙を管理局の本局統幕議長ミゼット・クローベルさん経由で法務顧問相談役のレオーネ・フィルスさんに持って行ってくれない? 宮坂麗央からって言えば受け取ってくれると思うから……」
「はあ!?」
レオ君はコネを持っていた。しかも超絶凄い人とのコネを!!