見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ?   作:蒼天 極

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スーパーでの仁義なき戦い

 タイムセールや半額シールが貼られる時間帯のスーパーは戦場へと変わる。

 それは毎月百万円ずつ支給される俺にとっても変わらない。

 基本俺は金があるからと言って、それを無駄遣いしたりなんかはしない。それはなぜか? 答えは簡単、生活費や税金以外は全てデバイスの材料費などに注ぎ込んでいるからだ。

 特に最近だとミッドチルダに最高級のデバイスの素材を買い付けに行く関係で常時金銭不足なのだ。故に一円でも節約するために、洗濯はまとめ洗いかつ風呂のお湯の再利用、無駄な電気は使わないなどを心がけている。

 そんな俺が絶対に節約のために犠牲にしないものがある。それは食事だ。精神年齢こそ加齢臭ムンムンなおっさんではあるが、それでも今は五歳。しっかりと栄養バランスの取れた食事を摂らなければならない。

 だからこそ、お金が足りなくなる支給日前のスーパーのセール品はなんとしても手に入れたい。たとえ他の何かを犠牲にしてでも……!!

 

「……アリシアを蘇らせたいと願ったプレシアもこんな気持ちだったのかな……」

 

『食料品への情熱で原作知識を思い出した……!?』

 

 ……あれ? 俺今なんて言ったっけ? まぁいいや。

 今日の安い商品は卵。そう、ほとんどの料理に使われている卵だ。今日は茶碗蒸しを食べたいので絶対に手に入れたいが、そうは問屋が卸さない。

 このスーパーにはタイムセールの商品を手に入れる三人の猛者がいるのだ。

 

「あら麗央くん来てたのね」

 

「……羽鳥さん。こんにちわ」

 

 一人目はひなちゃんのお母さんである桃崎羽鳥さん。優しい感じの普段の姿とは裏腹に主婦の間を華麗に切り抜け商品を手に入れるその姿は女怪盗と呼ばれるほどだ。

 

「麗央くん、今日は私に譲ってくれないかしら? 今晩ご飯食べに来てくれてもいいから。ね?」

 

「いいえ、俺は今晩茶碗蒸しの気分なんです。この卵は譲れませんよ……」

 

「今晩茶碗蒸しにしてあげるわよ?」

 

「因みに茶碗蒸しは白だし派ですか? 出汁の素派ですか?」

 

「出汁の素よ」

 

「俺は白だし派なんで」

 

「あら、残念」

 

「あら? 羽鳥ちゃんに麗央くん。早いわね、まだタイムセールまで五分あるわよ?」

 

 っ!?

 まさか高町桃子さんまで来たか……。

 近所の喫茶店翠屋のパティシエールの彼女もまた猛者の一人、スーパーの特売を勝ち取るためだけに夫の士郎さんから神速を習った彼女の速さは、おそらくこの街、いやこの国一番だろう。

 

「十分前行動が俺の信条ですので」

 

「まだ子供なのに偉いわねぇ」

 

「それに比べて桃子先輩は随分とゆっくりですねぇ。卵くらいなら取られても問題ないってことですか?」

 

「開始時間は同じなのだからギリギリで問題ないでしょう? 私は効率重視なのよ」

 

「あらら、四天王揃い踏みみたいやな」

 

「「「はやて(ちゃん)!?」」」

 

 くそ、コイツまで来たか。車椅子レーサー、八神はやて!

 パラリンピックに出られるほどの車椅子さばきで目的地まで移動するその姿はまさにレーサーと言われる俺と同い年の少女だ。

 

「久しぶりやなレオくん……。足の動かない私に卵譲ってくれてもええんやで?」

 

「前回の件、忘れたとは言わせねえぞ? もう車椅子だからって油断はしねぇ。前回の屈辱果たしてやる」

 

「物騒やな、はぁやだやだ。オッドアイは碌なやつがおらんのかいな?」

 

「あの金髪と一緒にすんじゃねえよ」

 

「なんやリュウヤ君知っとんの?」

 

「黒髪君に怒鳴り散らしてうるさいから、いつも股間を蹴り抜いてやってるよ」

 

「後で詳しく教えてぇな」

 

「あら、はやてちゃんも麗央くんも仲良いわねぇ。子供はあっちで遊んでてもいいのよ?」

 

「そうよ、ここは大人の戦場。なんだからね?」

 

「すみませんが、こちらも生活がかかってますんで」

 

「右に同じく」

 

 おっと、雑談している間にタイムセールまでもう一分が切ったぞ。

 俺や他の主婦達はこれから来たる足への酷使に備えて屈伸だったり軽いエクササイズを行なっている。はやては足を動かさない代わりに手をぶらぶらさせたり回したりして腕のストレッチだ。

 

 残り三十秒

 

 二十秒

 

 十秒

 

 五秒

 

 

「負けないわよぉ」

 

「卵は私がもらうんだから」

 

「いくでいくでぇ!」

 

「今日の俺は最初っから全力だオラァ!!」

 

 卵のタイムセールという名のレースの火蓋が切られた。

 

 桃子さんの使う神速には勝ち目がない。だけどあれは足にかなりの負担を強いる物だから、商品の目前での一瞬にしか使わないはず……。

 羽鳥さんに関しては回避、相手を追い抜く力に特化してるけど所詮はそれだけだ。圧倒的な速さでそもそも追いつかれなければどうとでもなる。

 ならば問題ははやてか。

 

「なんやレオくん、前よりも速くなったやんか! 鍛錬を積んだみたいやな!」

 

「そちらさんも以前とは比べ物にならないほどじゃねえか! くそ、毎日山登り降りした俺の苦労はなんなんだっ!!」

 

「あら、お喋りしてるなら私先に行くわね」

 

「「なっ!?」」

 

 桃子さんに追い抜かれてしまった。一体どうして……そうか! 神速はあくまで最大速度、ならこの中で一番足が速いのは桃子さんだったんだ……。くそ、失念していた!!

 

「もぉ、みんな速いわねぇ……!」

 

 くそ、後ろから羽鳥さんも追い上げてきている……。

 卵まで後数メートル、ここは一気に勝負に出るか。

 

(アスカ、あれをやる。サポート頼む)

 

『了解です』

 

 足に力を入れて思いっきり床を蹴る。

 直後、先ほどまでとはまるで違う次元の速度で身体が前に進む。

 カラクリは簡単、魔力変換資質で魔力を微細な電流に変え、足の神経と筋肉に流して本来出せる限界を突破した踏み込みを行ったのだ。

 

「な!? 《神速》!!」

 

 桃子さんも不利を悟ったのかこのタイミングで神速を切ってきたか……!

 俺が先に動いたとはいえ、やはり神速のほうが速いのか後ろから桃子さんが迫ってきている。

 間に合え……‥間に合え……

 

 卵まで後数センチ。手を伸ばせば……

 

 

 結果、俺と桃子さんは同時に卵をゲット。その後羽鳥さんとはやてが同着で卵を手に入れ、結果四人全員が卵を手に入れる結果となった。

 

「いたた……よかった、全員買えたわね」

 

「よかったよかった。これで白だし茶碗蒸しが食える」

 

「これでウチも今夜のメニューを変えなくてすむわ」

 

「卵手に入ったし今夜はちょっと豪勢に行こかなー?」

 

 戦利品を持ってライバル達と笑い合っていると、お菓子売り場からひなちゃんとなのはちゃんがやって来る。

 あれ、君たち友達だったの?

 二人は呆れたような顔をしており

 

「「みんな大人気ないの」」

 

 その一言は俺ら全員に突き刺さったのだった。




好き勝手やったため、キャラ崩壊などあります。
後悔はしていません。
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