見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「ヤマトよ。俺最近思うんだ」
「なんだ?」
女子組がはやての身体を仲良く洗っている間に、ヤマトに呟いた。
「さてはアイツら俺を男として見てないよな」
「そうか?」
いや、だってそうだろ。ひなちゃんはともかく原作組は年齢と比べてかなり成熟している。
故にチョロイン達がヤマトを風呂に誘うのもアプローチの一環のはずだ。なのに何故、俺と言う異物を入れるのか?
俺は踏み台なのに。踏み台なのに!
「それはお前が人畜無害だって信用されてるからじゃないか?」
「それは違うと思う。ニコポナデポと言う得体の知れない恐怖があった以上、心で信用していても本能は拒否してしまうはず」
ならば何故か。答えは簡単、俺は男として見られていないと言うことだ。
転生者の男連中の中で唯一俺は女顔で、女だったらかなりの美人顔である。
なんなら先ほどすずかちゃんに女扱いされてしまうほどである。
「そういえば、初めて会ったとき以来レオを男として見たことはないわね〜」
「髪の毛長いしサラサラだし、なのは達より女子力高いし……。レオ君と一緒にいると男の子ってなんだっけって思っちゃうの」
「うん。普段のレオ君を見てるとひなちゃんのお姉ちゃんって印象の方が大きいよね」
「お姉ちゃんやない。お兄ちゃんや」
いつの間にか湯船に戻ってきていた、アリサちゃんとすずかちゃんとなのはちゃんが話に入る。
ひなちゃんははやてちゃんに背中を流してもらっているところだ。
「そんなにか〜。ならもう少し男っぽくした方がいいかね……。ばっさり髪を切ったり、弁当をスーパーの半額シールの貼られた菓子パンにしたり、なのはちゃん達を嫁って言ってみたり」
「言ったらフレイムアイズで叩っ斬るからね?」
「言ったらスノーホワイトで氷漬けにしちゃうからね?」
「言ったらディバインバスターを零距離から撃つからね?」
「……そんなに嫌か」
まぁ、金髪に嫁嫁言われ続けたんだ、拒否反応を起こすのもしょうがないよな。
てかもし言ってたら俺の作ったデバイス達に攻撃されるのか。絶対に言うのやめよう。
……あ、そうだ。
「なぁヤマト。ちょっとなのはちゃん達に嫁って言ってみろよ」
「今の話の流れでどうしてそうなる!?」
金髪のせいでなのはちゃん達は嫁という言葉に忌避感を持っている。このままじゃ、好きな人がいても全然進展しないのは目に見えている。
だからお前がリハビリをしてやるんだ。大丈夫、なのはちゃん達はヤマトのこと大好きだから、嫁って言ってもボコボコにされないよ。
「そうやな〜。リュウヤ君につけられた心の傷が思った以上に深いし、これはヤマト君にリハビリしてもらわなあかんわ〜」
いつの間にかヤマトの隣にいたはやて。どうやら俺の悪ノリに付き合ってくれるらしい。……というかヤマトから嫁って言って欲しいんだろうな。
「いくらリハビリのためとは言えなのは達の心の傷を抉りたくはない。だから……ごめん。俺には言えない」
「あら〜、はやてさんはやてさん。こちらにチキンがいますわよ」
「そうですな〜レオさん。彼はとんだチェリーだったご様子で」
「俺は鶏でもさくらんぼでもないぞ? というかそんなに克服したいならレオに頼めばいいんじゃないか?」
「レオ君、私のこと嫁って言ったら車椅子で轢き飛ばすからな?」
「はやてのそれは普通に死ぬやつや」
やはりニコポナデポがなくなったところで踏み台は踏み台。
嫁と言ったら当たりがきつくなるのは避けられないことらしい。
「と言うかヤマト以外から嫁って言われるのは誰でも嫌ってだけね。多分すずかが私のことを嫁って言ってもフレイムアイズ持ち出すと思うわよ」
「私も同じかも。嫁って本当に言われたくないから……」
「なのはも二人と同じなの。リュウヤ君いなくなっても迷惑かけてるの」
「何故俺だけ許されてるのかは知らんが、そう言うことなら嫁って言葉は禁語指定した方が良さそうだな」
「せやな。この言葉は禁止にしないと戦争起こるわ」
踏み台だからここまで攻撃的だったわけでは無い事に安心しつつも、踏み台である俺以外も制裁対象であったと言う事実に驚愕。
金髪ももうこの街にいないんだし、時間が解決するのを祈るしか無さそうだ。
そんな事をぼーっと考えていると、はやてちゃんがニヤリと笑いこっちを向く。
「せや、レオ君。さっき告白してきたひなちゃんなら嫁って言っても問題ないんやない?」
「よし、試してみるか。こらこら嫁ちゃん? いくらヤマトの家のお風呂が広いからって泳いじゃダメっていつも言ってるよね?」
「ごめんなしゃい。……あれ? れお君今ひなのことなんて言ったの?」
「嫁ちゃんって言ったけど?」
「ごめんねれお君。リュウヤ君を思い出しちゃうから嫁って言われたくないな」
「ごめんなさい。いや、マジですみませんでした」ゴボゴボ
湯船の中で土下座。気管支にお湯が入ってくるが、ひなちゃんが今受けた苦痛はこんなものでは無いのだ。甘んじて受けなければ。
「なーなー、ひなちゃん? もしレオ君以外が嫁って言ってきたらどうする?」
「シャイニングバスター零距離で撃っちゃう」
「シャイニングバスターが何かは知らんけど、良かったなれお君。注意で済んでるって事は愛されてるで」
〜風呂上がり〜
はやては今日は起きたまま誕生日を迎えたいと言う事で全員夜更かし中だ。
「それで、どうして嫁って話になったん?」
「レオが自分の事男として見られてないって言ってね〜」
「なんやその事か。私はスーパーのレオ君しか知らんけどレオ君はちゃんと男の子やで。それに下の方も……なかなか立派な物をお持ちだったようやしな」
「下ネタぁああああ!!」
なんて奴だ! 少なくともコイツは俺が男であるとキチンと理解した上で一緒に入ってたのか。ただの悪女じゃねえか!
あと下ネタは俺の膝の上ですやすや寝息を立てているひなちゃんの教育に悪いんでやめろください!!
「まぁ、見た目は女の子そのものやし、ヤマト君と友達なら大丈夫だと思ったんよ」
「……さいでっか」
これはまた随分と信用されているようで。
だが俺は中身40のおっさんだから、事案じゃ無いかっていつもドキドキしてるんだよ。もうこの際嫌われる覚悟で転生者だって正体明かしてやろうかしらん?
「あー、もうこの話面白く無いからやめやめ! せっかくお泊まりで親も執事もいないんだからゲームでもしましょう!!」
「深夜のゲーム大会だね。今日ぐらい悪い子になってもバチは当たらないよね?」
「お、私このゲーム持って無いんよ。これやらない?」
「でもこのゲーム四人までしか遊べないから二人は仲間はずれになっちゃうの」
「交代交代でやれば問題ないでしょ。ほらやるわよ」
そして交代でみんなでゲームすること数時間。
夜の12時になりはやては誕生日を迎えたのだった。