見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「るるるるるーるーるーるるー♪ るるるるるーるーるーるるー♪ るるるるるーるーるーるるーるるるー♪ るるるるるる……ん?」
アスカのAIを基にした究極のデバイスを作るための材料がようやく揃い、早速作業に取り掛かっていたタイミングで、俺の携帯電話が鳴った。
正直今は良いところなのだが仕方がない。
作業を一旦中断して電話に出る。
「はーい、もしもし?」
『あ、れお君おはよー』
「おはよーひなちゃん。どったの?」
『うちのパン屋さんの近くに翠屋ってあるでしょ? バイトの人がお風邪ひいちゃって、お手伝いを探してるんだけど、れお君も手伝って?』
このタイミングで来るか。
ひなちゃんの頼みだしできれば叶えてやりたいが、今は少しデバイス制作に集中したいところだし、申し訳ないが断らせてもらおう。
「ごめんねー、今日ちょっと忙しくて……」
『あのねあのね、お手伝いしてくれたら、シュークリームご馳走してくれるって桃子さん言ってたー』
「なぜそれを早く言わない。四十秒で支度してそっち行くからちょっと待ってな」
『おいマスター、テメェ裏切りやがったな?』
金髪がバカやった影響で翠屋には行きづらくて行けなかったが、ひなちゃんに誘われた今なら行ける!
デバイス制作は後回しにしても問題ないところだし、それならお手伝いを頑張って翠屋名物のシュークリームを堪能させてもらうとしよう。
その後本当に四十秒で支度した俺は、足早に翠屋前で待つというひなちゃんの元へ向かったのだった。
「あ、れお君。おーい、こっちだよー!」
「はいはい、れお君参上。手伝いきましたよー」
翠屋の前にはひなちゃんの他に黒髪となのはちゃんも待っていた。
なのはちゃんはともかくなぜ黒髪まで……そういえば一年前に金髪の魔の手からなのはちゃん救ってたね。あれから仲良くなったんだろうな。
「れおくんってお前のことかよ……」
「あ、この間のスーパーの大人気ない子なの」
あれ、そういえば黒髪君に俺の名前教えてなかったっけ……あー、どうせ小学校で会うし待ち合わせに遅れるから名前教えてなかったわ。
あとなのはちゃん、君意外と容赦ないね。鋼のメンタルを持つ俺のハートにグサッときたよ。
「ひなちゃんのお友達の宮坂麗央です。好きなことは惰眠を貪ることと節約。嫌いなことは値上げとゴキブリです。どうぞよろしく」
「私は高町なのは、よろしくねレオくん」
「俺は
自己紹介もそこそこに翠屋に入り桃子さんと士郎さんに挨拶を行う。
「あぁ、君が桃子さんの言ってたスーパーランナーの麗央くんか。俺は高町士郎よろしく」
「え、俺スーパーじゃそんなふうに呼ばれてんの?」
なんだよスーパーランナーって、確かに日々の山登りと成長補正で強化された脚力を駆使して、一気に商品掠め取るのが俺のやり方だけどさ。そげな不名誉な二つ名はいらないんじゃ。
「有名人だよね。スーパーランナー」
「スーパーのおばさん達から噂になってるの」
「似合ってるぞスーパーランナー」
「おう豊田、テメェ屋上来いや」
ニヤニヤ笑う豊田に青筋を立てていると、桃子さんがまぁまぁと仲裁に入る。
チッ、命拾いしたな。
「そろそろお客さんも入る頃合いだし。みんなの制服用意してるからこっちにいらっしゃい」
「「「「はーい」」」」
桃子さんに連れられて店の裏で翠屋の制服に着替える。
あ、もちろん男女別だよ? いくらまだみんな小さいと言ってもそこら辺はちゃんとしなければ。特に中身おっさんの俺とか、精神年齢は何歳かは知らんけど思春期は迎えてるであろう豊田もいるし。
ただ……
「せめて制服も男女別にしてほしかったなー」
「ごめんねー。男の子用一人分しかなくって……」
「にゃはは、似合ってるよレオくん」
「可愛いよレオくん。あとで一緒に写真撮ってもらおー?」
おっさんの女装姿とは誰得だよいったい。
でも今は女顔だし髪長いから普通に女の子っぽく見えるのが悔しい。
あと数年したら男らしくなるかねぇ?
「ぷ、くくく。もうお前女の子として生きていけよwww」
「豊田オメェマジで屋上来いや。お前叩き潰して俺がオリ主やるからよぉ……」
「もぅ、喧嘩はやめるの!」
なのはちゃんに止められたため渋々引き下がる。
だが覚えておけよ、いつか機会があったらお前にも女装させてやるからな?
さて、そんなこんなで始まった翠屋の手伝いだが……
「ショートケーキとコーヒー下さい」
「ショートケーキとコーヒーですね。かしこまりました」
「お待たせしました、コーヒーと翠屋特製シュークリームでございます」
「あ、フォーク落としました? すぐ代わりのものをご用意します。少々お待ちください」
「……れお君すごく手際がいいの」
「私たちも負けてられないね、なのちゃん」
そりゃあ、飲食店でバイトしてたことありますし。
それに比べたら今回のお手伝いは楽勝と言える。それにミスしても見た目は子供だからお客さんも笑って許してくれるしその上頑張ってと応援してくれる。人生ヌルゲーですわうはははは。
「よぉ、なのは! 今日従業員足りないんだってな。婿である俺に教えないなんて水臭いぞ!!」
「ヒッ、リュウヤくん!?」
……。
「それにひなもいるじゃないか。夫妻で力を合わせて翠屋を盛り上げよう……なんだよお前?」
無言で金髪の前に立った俺。多分俺いま恐ろしい表情してんじゃないのかな?
だがそんな様子の俺に対して金髪は傲慢な表情で口を開く。
「銀髪にオッドアイ。さてはお前踏み台だな? 女装までしてなのは達の気を引こうだなんてやってることが女々しいなぁおい。なのは達は俺の嫁なんだよ邪魔すんじゃねえ」
一発で男であるのに気づいたのは流石と言えるが、随分と見当違いなことで。ほらなのはちゃんの方を見てみろよ。怯えた表情で豊田の後ろに隠れてるぞ。……ひなちゃん、俺の後ろは危ないよ?
「おら、なんか言ってみろよ踏み台?」
「え、なんか言っても良いの? それじゃあ遠慮なく。なのはちゃんの方見てみなよ、あの子明らかに君より豊田に懐いてるだろ? それに俺の後ろに隠れてるひなちゃんだってお前のこと随分と怯えてるじゃんか。あ、照れてると思ってんなら二人の顔を見てみればいいさ。怖がってんの分かるから。そもそもなのはちゃんに呼ばれなかった時点でお前はそもそも頭数に入れられてない負け犬であると自覚したらどうだい?」
「……あ?」
ピキピキと青筋を立てる金髪。なんか言ってみろと言われたから言ったのに、言ったら言ったで怒るとかまさに理不尽な権化みたいな奴だね。
そんなどうしようもない彼に中指を立ててとっても良い笑顔で言う。
「お前みたいな負け犬は帰ってママのお乳でも吸ってn「はい、ストップストップ。店壊されたら困るしあとは俺が対応するわ!!」」
なのはちゃんとひなちゃんに半ば無理やり、店の裏に引きずられていった。
その後言い過ぎだよと二人に怒られたけど、あの勘違い野郎にはそれくらいがちょうど良いとだけ言っておく。
結局怒り狂った金髪を豊田君が殴り倒してからは何事もなかったように営業を再開したが、それ以降は何も起こらず平和にお仕事を終えた。
「みんな今日はありがとうね。桃子さんも士郎さんもすっかり助かっちゃったわ」
「みんなにとっておいたから、食べて帰ってくれ」
高町夫妻はそう言ってシュークリームをご馳走してくれたのだが、めちゃくちゃ美味かった。
今までは何となく行きづらさを感じて翠屋へ行った事はなかったが今日の件で士郎さんとも面識を持ったし、これからはたまにシュークリームを食べに来よう。
「それじゃあ俺やることあるからお先に失礼するね」
「今日はありがとうなの、れお君。今度は四人で遊ぼうね」
「ばいばーい!」
「じゃあなレオ」
これを機にたまに四人で遊ぶようになったのだが、それは割愛する。