見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
「それでは、後はよろしく頼みます」
「はい」
おっちゃんに報告を済ませ、他の局員に引き継ぎをしていたらすっかり夜になってしまった。
まさか報告と引き継ぎでここまで時間がかかるとは……。
「はぁ、疲れた。やっぱり関係のないことに首を突っ込むもんじゃないね」
「そんなことないよ。レオのおかげで助かった人もいるんだから。少なくとも私は嘱託魔導士になってよかったと思うよ」
フェイトちゃんは真面目だねぇ。
「今日はレオもうちに泊まりにおいでよ!」
「えぇ!?」
「えー、でもなぁ。俺次元転送できてるからどんなに夜が遅くても、次元転送で家まですぐなんだわ」
気軽にデバイスの機材を買いに行けるから重宝しているのだ。あまりに簡単に来れるため、ミッドチルダは俺の庭と言っても過言ではない。
「でもフェイトとはお泊まりしたことあるんでしょ?」
「あるなぁ、だがその時はヤマトとか なのはちゃんとかいたし」
「そ、そうだよ! ヤマト達がいたから何とかお泊まりできたけど、三人だとちょっと……」
「……流石に傷つくわー」
まぁ、フェイトちゃんって本質的には引っ込み思案で怖がりだからか、オッドアイ繋がりで俺のこと苦手っぽいからな。それに以前バルディッシュを分解しようとしたのも引きずっているのかもしれん。
「でもフェイトはレオの事も大切な友達だって思ってるんでしょ?」
「う、うん。なんだかんだで私の体調とかも気遣ってくれたし、バルディッシュが壊れたときもみんなのと一緒に修理してくれたし友達で恩人ではあるけど……」
「ならオッドアイごときで怖がってちゃダメだよ! このままじゃオッドアイの人と話せなくなっちゃうだろうし、ちゃんと克服しよう!!」
「そ、そんな。待ってお姉ちゃん。私まだ死にたくない!」
フェイトちゃんは一体俺のことをなんだと思っているのだろうか?
レオ→レオン→ライオン→野獣だとでも思っとんのか? 食ってやろうか、カニバ的な意味で。
「失礼なフェイトちゃんとは後で肉体言語でO☆HA☆NA☆SHIするとして、どっちにしろダメや。ひなちゃんにバレたらあの子拗ねちゃう」
「私とひな、どっちが大事だって言うの!?」
「ひなちゃん」
「な……!?」
そりゃあの子の方が付き合い長いし。貴様とはレベルが違うのだ!! (ゲス顔)
それに俺だけ泊まったら、私を差し置いてアリシアちゃんの方に行ったといった風ではなく、俺だけお泊りしたって意味合いで拗ねるだろう。
「くっそおおお、こうなれば強制連行だ! 拒否権はない!! フェイト連れて行くよ!!」
「え、ええ!?」
「え、なんでそうなる?」
結局アリシアちゃんに襟首をつかまれて強制連行されました。
~ミッドチルダ、ハラオウン・テスタロッサ家~
「ただいまー! レオを強制連行してきたよー!!」
「フェイト、アリシア!! 嘱託として立てこもり事件を手伝ってきたって聞いたわよ!! 大丈夫、ケガはない!?」
「だ、大丈夫だよ母さん。レオも手伝ってくれたから……」
強制的にハラオウン・テスタロッサ家に連行された俺であるが、お邪魔した直後紫色の若い女性がフェイトちゃんとアリシアちゃんを思いきり抱き締めた。
「お帰りフェイト、アリシア……どうしてレオがここにいるんだ?」
「どうもクロノ君。アリシアに誘拐されて来たんだけど……この人誰?」
「……プレシアだ」
クロノ君の言葉にババアの姿を思い出す。そしてテスタロッサ姉妹に抱き着く女性と見比べてみた。
…………。
「あの虐待ババアから劇的ビフォーアフターしすぎじゃね? この数か月間で何があったんだよ?」
「おそらくアリシアとの未来を取り戻すと言った彼女の願いが叶ったことで彼女の本来の性格に戻ったんだろう。彼女は事件当時本当に精神がおかしくなっていたんだ。……多分」
変わりすぎて怖えよ。プレシアはしばらく娘二人をじっくりと抱きしめていたがあきれたような表情のクロノ君と俺の存在に気付くとハッとして、二人を丁寧に開放すると何事もなかったように
「いらっしゃい、レオ君でよかったわよね? まずはお礼を……私たち一家を助けてくれて感謝します、ありがとう。歓迎するわ、さあ上がって頂戴」
「いや本当に何があったんだよ。別の転生者でも憑依したんか?」
「レオが何を言ってるかは知らないが気持ちは分かる」
その後、家にお邪魔すると優雅に砂糖入り抹茶を啜っているリンディさんがいた。
彼女は俺を見つけるとにこりと微笑んだ。
「いらっしゃい麗央君。アリシアさん、フェイトさんと事態に当たったって聞いてから泊まりに来ると思って準備してたから、今日は我が家だと思ってゆっくりして行って頂戴」
「夜分遅くにすみません、本日はお世話になります。それと一ついいですか?」
「何かしら?」
「あの金髪釈放したせいで今日テスタロッサ姉妹がしつこく言い寄られてましたよ」
直後後ろにいたプレシアさんがあの時の事件のようなおっそろしい雰囲気をまとう。
そうそう俺が知ってるプレシアはこれだよ。
「フェイトやアリシアにさんざん酷いことをしておいて懲りずに来るなんてあのクソガキ……リンディ。少し出てくるわ」
「行かせないわよ? ……ごめんなさいね。上にも危険すぎるから実刑判決を与えたほうがいいって言ったのだけど……。魔力だけは優秀だしレアスキルを保持しているから更生させて管理局に貢献させたほうがいいって聞かなくてね」
リンディさんは遠い目で呟く。あなたも苦労しているんですね。
レジアスのおっちゃんもこれ以上問題を起こすなら海に突っ返すって言ってたし、近いうちに豚箱に送られることを祈るよ。
金髪の話題が終わるとリンディさんは目を輝かせてアリシアちゃんの方を向く。
「アリシアさん。麗央君からフォーチュンドロップを受け取ったのよね? リンディさんに見せてくれないかしら?」
「はいはーい! フォーチュンドロップ、ミラクルチェンジ!!」
セットアップとは違う掛け声で変身したアリシアちゃん。変身時の掛け声もおしゃれにしたいという要望に応えた結果だ。
「かわいい! かわいいわよアリシア!! クールでかっこいいフェイトも最高だけど、キュートで素敵なアリシアも最高!! どっちか選べなんて私には選べない~」
「プレシアうるさいわ。これがアリシアさんのデバイスなのね」
アリシアちゃんの手にはガラスのキャンディポット。中に内包されているキャンディ一つ一つが待機状態のデバイスのなのだ。
このフォーチュンドロップにはアリシアちゃんの書いた要望書によってインスピレーションが湧いた俺が新たに考案した多重セットアップ方式を採用している。
アリシアちゃんは先ほどの事件で使用した2丁拳銃を展開する。
「スロットナンバー1、ドロップ改めラッキーシューター!」
「バッテリーデバイスのドロップをストレージデバイスにしました。以上」
「スロットナンバー2、ハリセンスマッシュ!」
「ハリセンは攻撃力ないに等しいんで、吹っ飛ばし力に特化させました」
「スロットナンバー3、マイクスター!」
「声による波状攻撃に加えて、声を媒介にした支援魔法をプログラムしております。これが一番苦労しました」
「スロットナンバー4、ポンポンフラワー!」
「チアリーダーでどう戦うか悩んだ末に、こちらはダンスをベースにした支援型です。ちなみにガントレットのように使えるようにしています」
「素晴らしいわ……」
一応要望書に書いていたデバイスはこの4つだが、それに加えてスケボー型デバイスとヨーヨー型デバイスを入れている。
そしてさらにこいつにはもう一つ機能がある。
「フォーチュンドロップはフェイトちゃんも使えるようにしております」
「え、私!?」
アリシアちゃんのデバイスお披露目を微笑みながら見ていたフェイトちゃんが驚愕の表情を浮かべる。
姉妹で活動することが多いと考えたので、フェイトちゃんにデバイスを貸し出すことも可能にしている。バルディッシュとハリセンスマッシュの二刀流も可能なのだ。
「フェイトも使えるだなんて最高よ!! レオ君も素晴らしいデバイスをありがとうね」
「どういたしまして」
「……ところで麗央君これを作るのにいくら懸けたのかしら?」
「すいませんもらった資金全額使ってやろうと思ったのに50万余っちまいました……」
「……使いすぎよ。あなたへの報酬を含めてたのよ?」
いや50万もあれば十分ですよ。俺も楽しみながら作りましたし。
その後、夕飯の時間までアリシアちゃんのデバイスのお披露目会は続いたのだった。