見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
『よかった、風邪が治ったんだね』
「ほんと、ご迷惑をおかけしました。それとありがとうございます。俺のためなんかにプール延期していただいて……」
『にゃはは、気にしないで。あ、でも風邪治ったばかりなのにプールに行ったらぶり返しちゃうよね? 無料チケットの期限はまだまだ余裕あるし一週間は様子を見よっか』
「お願いします」
なのはちゃんにプールを延期していただいたお礼の電話をして、詳しい日時と持って来るものを教えてもらい電話を切った。
一週間後か。まぁ俺も普通に風邪引くって分かったしここはしっかりと療養に努めようかね。
『マスター。時空管理局統幕議長、ミゼット・クローベルさんからメールが届いてますよ』
「え、ミゼット婆ちゃんから?」
アスカ曰くちょっと大事な話がしたいから直ぐに本局まで来て欲しいとの連絡だった。
と言われても、俺はミッドチルダ以外に次元転送が出来ない。故にリンディさんがミッドで待ってくれているらしい。
「いつもは数日前に連絡して来るのに、今直ぐってよっぽど切羽詰まってんのかね? 行くよアスカ、カリバー」
『はいはーい』
『かしこまりました』
いつも通り次元転送を行う。そしていつも通りパトロール中の管理官に捕まってしまったのだった。
「今日はゼストさんですか。いつもお疲れ様です」
「あぁ。渡航許可証はあるな?」
「はい」
「……よし」
いつも通り渡航許可証という名の印籠であっさりと回避した俺。
リンディさんは地上本部で待ってくれているらしいし、早速行くか。
「お待たせしました。待たせてすいませんね」
「気にしないでちょうだい。早速行きましょうか」
いつも通り交通機関を乗り換えて地上本部へ行き、リンディさんと合流した。
本局には地上本部の転送ポートから楽々行けるようだ。せっかくだし座標暗記しておいて、わざわざミッドを経由しなくても本局に行けるようにしようかな……え、関係者以外立ち入り禁止? あ、そう。
「よぉ嫁、お前は今日も可愛いな。遊びに行こうぜ!」
「うぁああああああああーん!!」
「私の可愛いスバルにナンパするなんていい度胸ねぇ……豚箱にぶち込んでやらぁ!!」
「ぐぁああああああああああ!!」
「…………」
リンディさんは無言で紫髪の短髪の少女とクイントさんに深く深く深ーくお辞儀をすると、本局への案内を再会する。
「流石に罪悪感が湧いたんですね?」
「と言うか常に地上本部の方達には申し訳ない気持ちでいっぱいよ。やっぱり虚数空間に捨ててしまった方が良かったかしら……?」
〜本局〜
地上本部の転送ポートに乗って本局へやって来た。
本局は次元の海に浮かんだ人工の基地なのだが、まさかここまでの規模とは……
「ごめんなさいね、こんな急に呼び出して。久しぶりですねレオ?」
「あ、ミゼットさん。お久しぶりです」
「ここで話すのもなんです。行きましょうか。美味しいお菓子も用意しましたからね」
「ありがとうございます」
リンディさんはこのまま本局で仕事をすると言うので、ここでお別れ。
仕事中に来てもらってすいませんね。文句ならそこのミゼット婆ちゃんにして下さいね。
ミゼットさんに連れられて、応対室へと通される。
「それで、本日はどう言ったご用件で?」
「あ、敬語は不要ですよ。プライベートでは無いけれど、今は誰もいないからね」
「……さいでっか。それでミゼット婆ちゃん、急に呼び出してどったの? ……あ、まさかバッテリーデバイスに致命的な欠陥あった!?」
もしそうだとしたらかなり致命的だ。
ただでさえバッテリーデバイスを司法取引に使ったのだ。ある程度未熟でもしっかり完成させておかなければならない。ましてや欠陥なんてもってのほかだ。
「いいえ、大丈夫ですよ。むしろその逆だったからあなたを呼んだんです」
「逆ってことは出来が良すぎたってこと?」
「ええ、レオの作ったバッテリーデバイス。基礎理論と言ってましたけど、ほとんど完成と言ってもいい代物でした。故にプレシア・テスタロッサを免罪にしたくらいでは対価として成り立たないんです」
「え、つまり?」
ミゼットさんは近くにあったアタッシュケースを複数個俺に差し出す。
中を見てみるとミッドの通貨。しかもこの量は数億円単位……
「え、え、えぇ!? 婆ちゃん流石にそれは冗談キツいって!」
「冗談じゃないですよ。レオの作ったバッテリーデバイスは管理世界に革命を起こします。だからこそタダでは貰えない」
ミゼットさん曰く、俺がタダで管理局に論文や設計図を提出して知的財産権を譲ったわけだが、タダで貰ってしまったからこそ、俺が後から管理局に盗まれたと騒がないように。そして管理局が盗んだと周りに言わせないためにする措置らしい。
「いや、俺は騒がないよ。なんなら新しい技術とか作るし」
「普通の人はそうならないんですよ。それに世界に新たな技術をもたらしたのだからやっぱり、それに見合った報酬は与えないといけませんしね」
これでも本来特許として売りに出した値段のほんの一割ほどだと微笑むミゼット婆ちゃん。そんなに凄かったの、バッテリーデバイス?
「それにレオはいつも高い材料を買っているし、お金はいくらあっても良いでしょう? これだけあれば新しいデバイスを作ることも、新しい技術を作る資金にもなるでしょう」
「……ほんとにいいんだね? やっぱり返しては聞かないからね?」
「えぇ、ええ。持っていって下さい。これは正当なあなたへの報酬であり、この金額の支払いを持ってレオと私たち管理局のバッテリーデバイスの取り引きを終了させていただきますよ」
やべぇ、億万長者になるって夢一瞬で叶っちまったよ。
はは、笑いが止まらねえぜ。ハハハ……。
ミゼットさんの用意してくれたケーキを一切れ口に含みながら笑う。
「ところで考えてくれた? 管理局の局員になるか」
「……うーん、正直言って後ろ向きだね。定期的に遊びに来るとはいえ俺は管理外世界の住人だし」
ミゼット婆ちゃんには魔法の才能やデバイスの知識を買われて、よく局員にならないかスカウトを受けている。でもやはり俺は海鳴市で、ひなちゃんやヤマト、そしてなのはちゃん、アリサちゃん、すずかちゃんと学校に通って遊んだらバカやったらするイメージしか湧かないのだ。
あくまでデバイスを作るようになったのは、魔力を持っている以上巻き込まれてしまう原作を生き抜くためだ。
「それに局員になった瞬間、俺がまとめてるフルダイブシステムだったり、多重セットアップ方式を管理局に取られそうだ。だから局員になるのはその特許権を売ってからだね」
「そう。ところでフルダイブシステムと多重セットアップ方式って何かしら? 取らないからおばあちゃんに聞かせて下さいよ」
「いいよ。フルダイブシステムってのはねー」
その後はいつも通り日が暮れるまでミゼット婆ちゃんとのお茶会に興じたのだった。
興味本位に覗きに来た職員によって、俺がミゼット婆ちゃんの孫であると言う疑惑が立ったのはそれから少し後のことであり、ミッドでレオ・クローベルと呼ばれるようになることをそのときの俺はまだ知らなかった。