見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ? 作:蒼天 極
え、この時間に結界!?
「《ルインズ・ザンバー》!」
「《スプラッシュカリバー》!」
ある初冬の朝、俺とヤマトは斬り合っていた。と言っても喧嘩では無く普通に朝練だ。今日は近接に対する鍛錬のため、ヤマトのグラディウスと俺のカリバーでやり合っていた。
「お前水属性も対応してたのか!?」
「な訳あるかい! 普通に炎と氷の魔力を混ぜ合わせて氷溶かしただけじゃい!」
「なるほどなぁ!!」
ここからは斬り合いに集中する。剣術ではヤマトに分があるため、少しでも気を抜くと撃墜されてしまう。
相手の剣閃を防御し、躱して、受け流して、僅かな隙を縫って攻撃を加える。よしよし最近は実力差も縮まってきてるんじゃ無いか。
直後、ヤマトの目が変わる。あ、こいつアレを使うつもりだなぁ?
「《神速》」
「大体ここら辺から来るー!!」
「なぁ!?」
敢えて隙を作っていた、右に剣を振るうとヤマトがいたが見事に避けられてしまった。
まぁ予想通り。だがやつは神速を使った直後だから動きにブレが出るはず、ならばそこを突けば俺の勝ちだ。
ピピピピ ピピピピ
「っだー! このタイミングで終了かよ!! 今日はオリ主を超えられると思ったのに!!」
「そりゃ、残り時間少なかったから勝負を決めに行ってたしな。残り時間も戦略に入れるべきだったな」
「クソ、実戦ならお前負けてたくせにー!!」
「なんとでも言え結果が全てだw」
ヤマトの嘲笑いながら宣った言葉、結果が全て、悔しいがその通りだ。
まぁ斬り合いで引き分けに持ち込めたのだから良しとしておこう。ヤマトのアイデンティティであった剣術に関して追いついたのだから、今なんでもありでやり合ったら勝つことが出来るだろう。
「まだ時間あったっけ? あるならIスティックとかFガントレットの練習もしておきたいんだけど」
「……今は6時45分か。帰って学校行かないと遅刻すると思うぞ」
「そうか、ならこの二つはまた今度だなぁ」
さっさと帰宅して、手早く学校の準備をしてしまおう。
山を駆け下りながらヤマトが口を開いた。
「だが、ついに剣術で追いつかれちまった。不甲斐ねぇ……」
「この機会にオリ主の座を俺にくれよ」
「まだ諦めてなかったのか! ……と言ってもお前見た目が踏み台なだけで、立派にオリ主やってんじゃねえか」
俺なんが魔力が多いだけのデバイスマイスターぞ? 言霊みたいに事実上何でも願いを叶えられるチートなんざないから、理論を駆使して発想とそれを可能にする技術の開発をすることしかできない。俺はお前が羨ましいよ。
「特にバッテリーデバイスなんざ、一から理論作ったからかなり時間かけたんだからな?」
「何年だ?」
「2年」
「逆に2年で作れるお前なんなの? 俺みたいにゴリ押しじゃなくて、強くて頭がいいってそっちの方が羨ましいけどな。なんなら変わって欲しいくらいだよ。……でも言霊だってレオみたいに発想次第では…………」
お、強化フラグか?
ヤマトの事だから言霊で自らの身体を強化するくらいしかしないだろうけど、ミスったら死ぬかもしれないからひなちゃんのいるところで試すんだぞ。
〜放課後〜
「ねぇねぇ、フェイちゃんとシアちゃんっていつ来るのー?」
「アリシアちゃんは明日には到着するって言ってたよ。それから色々手続きとかもあるから……いや、リンディさんの事だからもう済ませてるか。早くて明後日には学校に来ると思う」
「そっかー。楽しみだねなのちゃん!」
「うん。またみんなで遊べるの!」
「でもひなは複雑なんじゃないの? レオを狙ってるライバルが来るのよ。今までみたいにレオを独り占め出来るのかしら?」
「あ!?」
確かにそれなんだよなぁ。今までアリシアちゃんはミッドにいて、いい感じにひなちゃんと隔離されてたんだけどそれが一緒になるってことは……三角関係が完成するのは見える見える。
「なんか俺がやってる事って浮気なんじゃ……」
「れお君とひなは付き合ってないし、浮気じゃないよ?」
ひなちゃんはそう言ってくれてるが、これ以上ズルズルとこの関係を続けるのは不誠実だよなぁ。
この際しっかりとどちらかを決めた方がいいんじゃないだろうか?
「恋愛狂いのなのはちゃん、アリサちゃん、すずかちゃん。ヤマトが誰か一人を選ぶ決心をしたらどう思う?」
「うーん、ようやく決心してくれたんだって嬉しい反面少し寂しいかな? 取り敢えずレオ君は後でディバインバスターね?」
「そうねぇ。関係が変わっちゃうわけだし、選ばれなかった人とギスギスしちゃいそう。後でフレイムアイズの錆にするから遺書書いておきなさいよ?」
「レオ君のやろうとしてる事は誠実なんだろうけど、アリシアちゃんやひなちゃんを傷つけちゃうかもしれないし、二人が気にしてないなら大人になってからでもいいと思うな? 後でスノーホワイトの……ごめん今のやっぱりなし。後でお説教ね」
すずか様、お説教にしてくださるなら、そこの物騒な二人も止めてくださいまし。
……でもそうかー。不誠実だけど、告白自体は先延ばしにして逃げてるし、ゆっくり決めても良いのかもしれないな。
スクールデイズ見たいな結末にはならないように線引きはしっかりしなければ。
〜その夜〜
すずか様の説得によって言葉遣いについての説教で済んだ俺は、のんびりと夕飯を食べながらアニメを観ていた。
『私は……必ずアリスに…………アリスになって…………お父様に……完璧な人形に………………おとうさま………………』
「やっぱ人形師ローゼンってクリエイターの風上にも置けない野郎だと思うんだよな」
『ですねぇ。心を持った人形にその魂とも言えるローザミスティカの奪い合いを……殺し合いさせるだなんて、私、彼によって作られていたらと思うと……ゾクゾクしますね』
『アスカロンは全力で殺し合いを楽しみそうだと思うのは私だけでしょうか?』
直後空気が変わる。
これは結界に飲み込まれたのか? しかもこれは守護騎士の……!?
でもこんな時間に魔法の訓練をするわけが無いし、するにしてもこんな大規模な結界なんて使わない……。
「まさか蒐集!? でも羽鳥さんに蒐集はしないって誓ってるし……」
『取り敢えず守護騎士に会ってはいかがでしょう?』
『襲ってきたら返り打ちにして尋問すれば解決ですしね』
確かにそうだ。管理局にはやてが捕まること自体は避けたいし、はやての判断にしても、守護騎士の独断にしてもなんとか説得して思い留まってもらおう。
『おそらくなのはちゃんにひなちゃん、ヤマト君は結界に巻き込まれてる筈なのでまずは彼女らと合流しましょう』
「こんなとき、住宅街から離れてるアリサちゃんとすずかちゃんが羨ましいよ」
俺は机の上に置いてあったカードを手に取る。
[アーセナル]それがこいつの名前だ。
アスカとカリバー以外のデバイスを一つにまとめたデバイスであり、こいつを使ったことでデバイスチェンジにかかる時間を大幅に減らして見せたのだ。
「アーセナルセットアップ!」
変身するとアーセナルは両腕の前腕部を覆うプロテクターに姿を変えた。
このプロテクターの中にNロッドやMブラスター、四属性のデバイスが内包されていると言うわけだ。
「行くぞアスカ、カリバー」
『はいはーい』
『了解です』
家を飛び出して、結界の中心部へと向かうのだった。