見た目が踏み台だからと言って、中身も踏み台だとは思うなよ?   作:蒼天 極

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体育は転生者の独壇場。……のはずなんだけどなぁ

 前世では、お世辞にも運動ができるとは言えなかった。俺自身インドア派だと言うことも相まって、外で元気にサッカーするよりも、家の中で本読んだりゲームしたりネットサーフィンを楽しんだり、つまり俺はそっち系なのである。

 だが、今世ではどうだろうか。あの邪神に成長の限界を取っ払ってもらったことに加えて、そこまで高くない山ではあるが、毎日毎日上り下りを繰り返したことも相まって、今の俺は相当な脚力を手に入れている

 腕力だってそうさ。魔法の練習で杖をくるくる振り回したり、剣型デバイスを振り回したり、銃型デバイスの集中行ったときにその反動に耐えたり。

 つまり、俺が何を言いたいかと言うと……

 

「50メートル三秒!? お前人間やめてんだろ!?」

 

 体育では無双できるんだよね。

 本当ならば適当に手を抜いて普通っぽく振る舞うのが正解なんだろうけど、この手の隠蔽はどうせボロが出るんだから、初めっから実力を隠すような事はしないと決めたのだ。

 尤も勉強に関しては、わざと何問か間違えて普通の成績を維持しているため、周りからの印象はただのスポーツマンと言った感じである。

 

「ねぇねぇ、宮坂くん。陸上クラブに入るつもりはない?君なら絶対オリンピック狙えるよ!」

 

「いや、あくまで体育の授業で楽しむ程度でいいわ。ガチでやったら疲れそうだ。心が」

 

「ちぇ、いいですよー。なら豊田君を誘うから」

 

 当然ながら同じ転生者であるヤマトとひなちゃんも運動神経はかなり良い。なんなら俺よりもヤマトのほうが運動できる。

 

「なんなんだよ50メートル一秒ってよ? 新幹線にでもなるつもりか」

 

「ヤマトが規格外なのは認めるけどアンタも人のこと言えないからね?」

 

 言うなアリサ、自覚してるんだから。

 ひなちゃんに関しては完全に俺と同格。いや、随分余裕そうだしこの子もまだ余力を残してるかもしれない。恐ろしい子。

 え? 金髪はどうなんだって? あいつはダメだ。貰ったチートに胡座をかいて努力するということを知らないから、普通の子以上俺たち未満というなんとも微妙な位置に収まっている。

 そして、そんな転生者の俺たちと運動神経で肩を並べられる規格外の存在が一名。

 

「すずちゃんすごーい! 私また負けちゃったー!!」

 

「えへへ、私なんてまだまだだよ」

 

「いやいや、すずかちゃん。ヤマトとタイ記録叩き出しておいてまだまだって。将来はリニアモーターカーにでもなるつもりなの?」

 

 すずかちゃんである。この子俺たちみたいに神の加護と言うインチキをもらってないんだよね? 一体それでどうやってヤマトレベルの運動神経を発揮するのだろうか?

 またアリサちゃんの運動神経も割と化け物レベルであり、金髪とほとんど互角な運動神経をしている。まぁ彼女の場合はまだ人間の常識内で戦ってるからマシである。

 

「はーい次はドッジボールをしますよー。アリサちゃん、言っても無駄だろうけどリュウヤ君も、相手が怪我しちゃうから手加減して投げてあげてね」

 

「分かりました。本気出すのはヤマト達だけにします」

 

「は! 俺が神様からもらったチート能力をわざわざ抑えるわけねーだろ」

 

「……ひなちゃん、レオ君。あなたたちが本気で投げたら相手が骨折しちゃうからリュウヤくん以外には手加減して投げてあげてね」

 

「はーい! ねぇねぇアリサちゃん、リュウヤ君には私が投げて良い?」

 

「いいわよ、目にもの見せてやりなさい」

 

 ひなちゃんはただ全力を出したいだけで、金髪に怪我をさせたいから投手に立候補したわけではないと俺は信じてるよ。

 

「あとすずかちゃんにヤマト君、わかってると思うけど本気で投げたら相手がひき肉になっちゃうから、絶対に全力の1%しか出しちゃだめよ」

 

「そ、そんなに酷くはなりませんよ!?」

 

「そうですよ。ひき肉になる前にボールがパンクしますって!」

 

 ウケを狙ったのかヤマト君? ほら見ろみんな引いてるぞ。

 

 〜数分後〜

 今日はなかなかに激戦だな。

 今、自チームでコートの中に残っているのは、俺とヤマトとなのはちゃん。敵チームでコートの中に残っているのは、すずかちゃんとアリサちゃんとひなちゃんだ。

 金髪は開始早々、ひなちゃんの餌食になってそこで気絶してる。

 

「にゃはは、なんか残っちゃった」

 

 そして、意外なことにお世辞にも、運動神経が良いとは言えないなのはちゃんが残ってしまった。

 まぁ、向こうのお三方は絶対になのはちゃんを狙わないからな。

 仲良しグループの中で唯一運動神経が悪いなのはちゃんを憐れんでいるのか、ただ純粋になのはちゃんにボールを当てたくないからなのかは、彼女たちだけが知ることである。

 

「レオ、ここは勝負に出るぞ」

 

「よし、任せろ」

 

 今ボールはひなちゃんが持っており、本来ならばコートの後ろ側に下がるべきなのだが、ここで俺はあえて前に出る。すると予想通りひなちゃんは俺の方へボールを投げてきたので、腕ではじきヤマトの方へアーチ状に飛んでいくように計算する。

 そして速度が死んで重力に従って落ちて来るボールをヤマトは……

 拾わず地面に落とした。

 

「「「「え?」」」」

 

 これで俺はアウト、外野へ移動しなければならない。

 俺はゆっくりと外野へ歩いて行き、コートの真ん中を陣取ると邪悪な笑みを浮かべる。

 

「これで挟み撃ちだぁ」

 

「や、やられた!」

 

 ここからはワンサイドゲームだった。

 コートの両側からのボールの猛攻に耐え切れず、ひなちゃんにボールが当たった。後二人、次にフェイントをうまく活用した戦略によりすずかちゃんも陥落。

 これで後一人、アリサちゃんだけだ。

 

「行くぞアリサ!」

 

「ひっ、や、やめて……」

 

 アリサちゃんは目の端に涙を浮かべながら両腕で身体を守るようにする。

 な、アリサちゃんのやつここで泣き落としを使ってきやがっただと!?

 たがこんなんで手加減するほど流石のヤマト……も……?

 

「おいヤマトてめぇ、マジでふざけんなよ?」

 

 やりやがったこいつ。

 女の子の涙に絆されてなのはでも取れるヘロヘロボールを投げやがった。

 そのボールをキャッチしたアリサは舌を出して可愛く「ありがと♡」と言うと、外野のすずかへと渡した。

 

「すずかー。あとは任せたわ!」

 

「任せてよアリサちゃん。それじゃあヤマト君覚悟してね!」

 

「ちょっま、ぎゃぁああああああ!!」

 

 動揺したヤマトにすずかの豪速球を防ぐ術も避ける術もなくあっさりやられやがった。

 トボトボと外野に歩いて来るヤマトに冷たい視線を向けると、彼を指さして一言「こいつ戦犯だわ」。

 この言葉をトリガーにうちのチームメイト達は戦犯に向かって襲いかかり始める。

 

「にゃぁああああああああ!!」

 

 コートに取り残されたなのはちゃんの断末魔をBGMにボコボコにされるヤマトを眺める俺であった。

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