「ねぇ、シャーレのあの噂知ってる?」
「あの噂って?」
「シャーレの手伝いじゃなくて直属の生徒の話! なんかね、とんでもなく強いんだってさ! その上通称がね、葬儀屋!」
「とんでもなくって強いって、噂でしょ? しかも葬儀屋って(笑」
「いやいや、A子がブラックマーケットほっつき歩いてた時に見たんだって! 葬儀屋がマーケットガードの大隊丸ごと木っ端微塵に蹴散らしてるの!」
「大隊丸ごと木っ端微塵って……え、さ、流石に話盛ってるでしょ?」
「いや、この話には続きがあってさ、あんまりにも手に負えないからブラックマーケット全域でアンタッチャブル指定? されたらしいよ!」
「は? アンタッチャブル指定ってアレでしょ? マーケット内で懸賞金かけても手に負えないヤツが指定されるっていう……ヤバ!」
「ヤバイよね! センセーはアタシらみたいなのにも優しいのに!」
「飴と鞭ってヤツじゃね?(笑」
「それだ!(笑」
■月√日
シャーレに来てそれなりに経った。書類仕事のお手伝いとお茶汲みの日々に加えて、原作にすら無いサブイベントを時には一人で、時には先生と共に踏破していった。
いやぁ、色々あったなぁ……なんか知らんけど便利屋との仕事以降、個人的にブラックマーケット絡みがやけに多かったような気がするけど。
とにかく、日記を読み返せば退屈しない程にイベントが目白押しだった。
さて、今日は何があったかというと、ミレニアムのゲーム開発部の所に行ってきた。どうやらパヴァーヌ第一章が始まったようだ。
呑気に黒猫様と留守番してようと思ったのだが先生が「君も来るんだよ?」って言うから、仕方なく付いて行った。
いやぁでも廃墟の冒険は楽しかったね、何よりパニッシャーを派手にぶっ放せたのは爽快だった。
ブラックマーケット絡みでそこそこ使いはしたけど、オートマタ相手は兎も角生徒相手じゃ加減しないといけないから。
ただ、モモミドにちょっと……いやかなりドン引きされた、何故だ。葬儀屋の噂がどうのって聞こえた気がするけど……葬儀屋? 何のこっちゃ?
とりあえずドンドン湧いてくるロボット相手に殿をつとめ、先生とモモミドを例の工場へと逃がした私は思う存分に暴れまわった。
私が工場のセキュリティにどういう認識をされるかわからんから近寄る気が無かったってのもあるけど。
そうしてしばらくテキトーにパニッシャーで遊んでたら3人が4人に増えて帰ってきた。
あの子がAL-1S……アリスか、マジで見た目はロボットって感じがしなかったなぁ、クソゲーでAIがバグるのが楽しみだ。
そんなアリスを連れてゲーム開発部の部室に帰って来てわちゃわちゃしていると、ユズがロッカーから出てきたので挨拶した……んだけど最初はめっちゃビビられた。
けど私がゲームについて語れると気付くや否や警戒心を解いてくれた、うーん良い子。そして始まるアリスにオススメするゲームについての論争。
私もゲームのチョイスにはちゃっかり口を出した。ゲームのタイトルは『クロックトリガー』と『冥界戦記ディスアース』、元ネタは語るまでもあるまい。
理由? いやゲーム開発部のチョイスは嫌いじゃないけど『ディスガ〇ア』はともかく『ク〇トリ』が無いのは駄目でしょ、常識的に考えて。
■月Θ日
原作通り、見事に一晩でアリスは愉快な性格に変貌を遂げた。
……ただイワシに妙なこだわりを抱いてしまったのはひょっとしたら私やっちまったかもしれない。でもイワシ閣下は素晴らしいお方だから仕方ないね!
で、今日はアリスの武器選びの為にエンジニア部に向かった。この辺の流れも大体既知だったな。
ただ、エンジニア部がパニッシャーに興味を持ってしまったのはちょっと想定外だった。コレどう考えてもオーパーツの塊だからなぁ……下手に触らせられない。
どうにか諦めてもらったけど、うーん、まぁ私も気にならないわけじゃないんだけどさぁ、どうしよっかな。
■月ф日
想定外の接触があった。それはG.bibleを探しに再び廃墟へと赴いた帰り道の事―――
「―――……ん?」
「”どうしたの? ニコラ”」
妙な気配を感じて辺りを見渡すニコラ、だが上手く姿を隠しているようでそれらしき姿が見当たらない。
明らかに見られている、それも相手はニコラだけを見ている、どうやら誰かがニコラを誘い出そうとしているようだ。
「……先生、ちょっと野暮用、先に帰ってて」
「”え?”」
そう言ったニコラを見た時、サングラスの奥の目が戦闘中のように鋭くなっているのに先生は気が付いた。
「”………………。 気を付けてね?”」
「なになに? どうしたの?」
「!!!!」
そんな2人の様子に気付いたモモイ、ミドリとユズも首をかしげている。
その横でアリスは何かを察したような顔で目をキラキラさせている、絶対に何か勘違いしている。
「ここはニコラに任せて帰りましょう! これはきっとソロ限定イベントです!」
「お、話が早くて助かるよアリス、んじゃみんな、後でね」
そう言って飛ぶようにニコラは廃墟の奥へと向かって駆けていった。
「あ、ちょっと! 行っちゃった……っていうかはやっ!?」
「もう見えなくなっちゃった……」
「……す、すごいね」
「あれが本物のブーストダッシュですね!」
「”さ、私たちもやる事をやりに行こう”」
「はーい」
「さて、ここらで良いだろう、出て来なよ」
先生たちから十分に距離を離した所で足を止めたニコラはそう声をかける。
すると、廃墟の一角から誰かが気配を隠すのを止めて歩いて出てきた。
「―――ご配慮頂き、ありがとうございます」
「あんたは……」
現れたのは金髪碧眼のメイド、確かコイツは……とニコラは思考を巡らせる。
「お初にお目にかかります、ミレニアムサイエンススクール、C&C所属、コールサイン04。飛鳥馬トキと申します」
「ご丁寧にどうも、その様子だと知ってると思うけど連邦捜査部シャーレ所属、速水ニコラだ」
「存じ上げております、今回こうしてこの場にお誘いしたのは……」
「あぁ良いよ、みなまで言うな」
「?」
そう言ってトキの会話を遮るニコラは、飛鳥馬トキとこの時期にセットになる人物は一人しか居ない事を思い出していた。
「そこのドローンの向こう側の人、喋っても良いよ」
『…………。 話が早くて助かるわ』
そう、その人物こそ―――
『初めまして、ミレニアムサイレンススクール、セミナー所属、生徒会長の調月リオよ』
……ちなみにこの時のニコラの内心は「珍兵器アバンギャルド君の生みの親にして横領都市エリドゥを作り出した実はおもしれー女だ!!」だったという。
『アンタッチャブル指定』は本作オリジナル設定です。
早い話がブラックマーケット全体でのブラックリスト殿堂入り。
ブラックマーケットの各勢力同士で対象への接触制限の協定。
なお別に破っても良いけど多分破滅させられるだろうから覚悟はしてね♡的な代物です。