モチベは高めでしたがリオが、リオが動かしづらい……!
ミレニアムの生徒会長、調月リオは顔にこそ出していないが驚愕していた。
リオの視線の先にあるモニター、そこに映るのは人の形をした他を寄せ付けない圧倒的な暴力、速水ニコラの姿。
ニコラについてはあらかじめ調べてある。ある日突然現れた正体不明の生徒であること。武装が明らかにオーパーツの塊であること。現在はシャーレの暴力装置のような活動をしている事。通称が葬儀屋であること。
……もっとも、本人に暴力装置のつもりは無い上、通称に関してもリオに告げられるまで知らなかったようだが。
そんなリオは今、世界の脅威に備える為にリオ自身が手ずから作り上げた要塞都市エリドゥに配備予定(ニコラにはエリドゥの事は伝えていない)の防衛装置のテスト……という建前でニコラの戦闘能力を調査していた……いたのだが。
ニコラは想定を超えてあまりにも強かった、強過ぎた。
当初、リオはニコラの強さは彼女の武装であるパニッシャーに由来するモノだと想定していた。
しかしどうだろう、いざ戦闘が始まれば彼女がパニッシャーの火力任せではない事がすぐに明らかとなった。
多数の戦闘用ドローンAMASから放たれた弾幕は全てパニッシャーを盾に防がれ、懐から取り出したサブアームのハンドガンで丁寧に1機ずつ潰されていった。
ならばと近距離からの射撃はどうかといえば、パニッシャーを振り回してAMASを殴り粉砕していった。
死角から放たれたヘッドショット狙いの遠距離狙撃も、まるでそちらにも目が付いているかの如く避けてみせ、避け切れなかった1発は歯で噛んで受け止めるなどという離れ業までやってのけた。
流石に周囲を囲まれての飽和攻撃は無傷とはいかなかったようだが、まるで効いているように見えない、否、傷がすぐさま回復していっていた。
その飽和攻撃も、最終的にあの質量を担いでいるとは思えない移動速度で以って回避、迎撃して見せた。
ならばと処分予定だったプロトタイプのアバンギャルド君を投入するも、パニッシャーの掃射で一瞬で粉砕されてしまった。
いくら装甲強度が正式仕様と比べてワンランク下がるとはいえあの破壊具合、恐らく正式仕様でも駄目だっただろう。
最終的に分かった事は、全てにおいて高水準、否、他を寄せ付けない圧倒的な戦闘能力を持っている、という結論だけだった。
まるで底が見えない……キヴォトスにおいて誰が最強か、という話題に上がる人物たちでさえも、下手をすると彼女に太刀打ちできないのでは、と思わせる程。
パニッシャーが手元に無ければ戦いになるだろうか? 否、あの重量を片手で扱っている時点で異常なのだが、その重りを持った上であの機動力だ、今度は機動力が手の付けられない次元になるだろう。
現状のデータで判断する限り
とりあえず、真正面から戦っても勝ち目がないという事がはっきりした。ならばどうするか、制圧が不可能であるならば……交渉するしかない。
今回ばかりは理解して貰えないなら仕方ない等と言っている場合ではない、いかにAL-1Sが
■月Δ日
今日はミレニアムの生徒会長に呼び出されて防衛装置のテストの依頼に付き合った。
いや、まさか軽く流して戦っただけで白旗振られるとは思わなかったね。ていうかアバンギャルド君にプロトタイプなんてあったのか……鉄屑にしちゃったけど良かったのかな。
しっかし改めて思うけど強すぎでしょこの体、パニッシャーが強いのは当然として、そのパニッシャーを十全に扱える時点で相当なのはわかってたけどさ。
神造の肉体、ね。この身体能力、どっちかっていうとウルフウッドよりもリヴィオ*1寄りな気がするんだけど、二重人格とかにされてないよね……?
それはそうと、リオちゃん会長から懇切丁寧にアリスの脅威度合いについて説明を受けた。で、その上でどうか協力して欲しい、とお願いまでされてしまった。
いや、わかるよ、リオちゃん会長の懸念はとても良くわかる。正直パヴァーヌ編も色々な要素がかみ合った結果どうにかなったのだから、それが一つでも欠けたら例のバッドエンドスチル一直線だ。
まぁ結論から言うと断ったんだけどさ――
「話はわかった、だけどその計画への協力自体は断らせてもらうよ」
『………………。 理由を聞いてもいいかしら?』
ニコラはサングラスの奥の鋭い視線をホログラムで投影されたリオに向けたまま言葉を続ける。
「正直に言うと、迂闊に排除って形に持ってく方がはるかに危険だと思うんだけど? 相手は設置型の爆弾じゃなくて明確な意志、心がある存在だ。余計な事して爆発したらどうすんの?」
『それは……』
感情的な言葉での否定を想定していたリオは、思った以上に理性的な否定の言葉がニコラから出て来た事に驚いた。
これはニコラが前世で原作をプレイしていた時から疑問に思っていた事でもある、アリスを連れていくシーンの乱暴っぷり、もっとどうにかならんかったのか? と。
「……あのさぁ、私の事脳筋か何かだと思ってない?」
『………………。』
気まずげに目をそらすリオを見てニコラはため息をついた。
「沈黙は肯定と受け取るよ……でだ、アリスの
『……その可能性に賭けて、もし上手くいかなかったら? その結果キヴォトスが滅亡しましたでは遅いのよ?』
危険の芽を摘んでおきたいリオと、
そもそもお互いに見ている視点が違うから仕方のない事なのだが。その後もあーでもないこーでもないと言葉が続いたが……
「……ま、平行線か」
『……そのようね』
そのままお互い無言で見つめ合う事数十秒、リオが肩をすくめた。
『……わかったわ、ここはいったん様子を見る事にしましょう、貴女の機嫌を損ねて暴れられても困るもの』
「誰が暴れるか、誰が。ま、ここらが落としどころか……」
不服そうなニコラのジト目をリオは軽く受け流した。というか、一見冗談のように聞こえるリオの発言だが、本人に冗談のつもりは欠片も無かったりする。
「じゃあ、私はもう帰っても良いのかな?」
『ええ、データは十分に取れたわ……』
「おー、そりゃ良かった。あーそうだ、私から一つだけ」
『……何かしら?』
ひと息ついてからニコラは口を開いた。
「アンタさ、超人でもないのになんでもかんでも背負い過ぎじゃない? 世界規模の問題なんだからもうちょい他人を巻き込んでも良いと思うけど? って、協力断った私の台詞じゃないか……」
『………………。』
「ま、そんだけ、じゃあね」
すたすたとその場を離れていくニコラを見送るリオ、その心はニコラに言われた言葉がグルグルと回っていた。
『………………。 ……私は……』
頭の良いキャラって難しい……