「……照準は、必要ありません。行きます!」
「だから無理だって……ん? この状況で発射準備……? おい、まさかてめぇ……!?」
「――あ、マズイ」
目の前で繰り広がられている光景を見てぽつりとニコラは呟いた。
ここはミレニアムのとある廊下、現在行われているのはアリスとC&Cのリーダー、美甘ネルによる一対一の勝負だ。
ここまでの経緯は原作と全く変わらない。セミナーからハッキングツールOptimus Mirror System――通称『鏡』の奪取が行われ、G.bibleを閲覧しひと悶着があり、ゲーム開発部は無事新作のゲームをミレニアムプライスに出品、その直後にC&Cによるゲーム開発部の部室の襲撃、それらを経て現在に至っている。
ちなみに『鏡』の奪取の際ニコラはリオの用事に付き合って不在だった為、ニコラを戦力としてアテにしていた皆からは後で小言を言われたりしたが、逆に「私が下手に暴れたら校舎ごと消し飛んでいたけどそれでも良かった?」の一言で黙らせていた。
閑話休題。
そんなニコラの存在以外ほぼ原作通りに進んだ最中、イレギュラーが発生していた。具体的に言うと、それはネルからは見えない角度、
「何がマズイのニコr……って、居ない!?」
「え!? さっきまでここに居たのに!?」
ニコラの呟きに反応したモモイと、モモイの声に気付いたミドリがそちらに振り返るも、そこにはパニッシャーだけが取り残されてニコラの姿はなく。2人が再び前に視線を戻せばアリスがスーパーノヴァを蹴り上げて空中に居るネルに強引に砲口を向けて接射しようとしていて――
「光よっ!!」
「んなぁっ!?」
「――はい、そこまで」
いつの間にかそんな2人の間に立って、片腕でネルのスカジャンの襟を掴んでネルをぶら下げ、ヤクザキックでスーパーノヴァの砲身を通路の窓側へと向けたニコラの姿があった。
直後に放たれたスーパーノヴァの衝撃で体勢を崩されていたアリスは盛大にすっ転び、ネルは砲身が自分に向いた直後に咄嗟に取った防御の姿勢のまま固まっている。当然2人とも何をされたかはまだ気付いていない。
「ねぇ、今の見えた……?」
「いや……何も見えなかった」
「気が付いた時には既にあの場所に……」
「ニコラって、瞬間移動出来たんだ……」
「いやお姉ちゃん、ゲームじゃないんだから……」
「……い、一体何が起きたの?」
「”何度見ても凄いなぁ、ニコラの本気は”」
その場に居たC&Cとゲーム開発部、そして先生がそれぞれ感想を述べる中、何をされたのか全くわかっていなかった渦中の2人が再起動する。
「え? あれ? ニコラ??」
「……ハッ!? ちょ、てめ、降ろせ! 降ろしやがれ!?」
床にへんてこな格好で転がった状態で頭にハテナマークをいっぱい浮かべたアリスと、つままれた格好で顔を真っ赤にしてじたばたしているネル、色々と台無しになっている。
「あ、ごめん、今降ろすね」
「お、おう……素直だな? じゃなくて! なに人の勝負邪魔してくれてんだてめぇ!?」
「はっ! 一騎打ちイベント戦の強制終了ですか? アリス、規定ターン数以内にネル先輩をやっつけられませんでしたか?」
「いやお前はお前で何言ってんだ?」
「あー……まずは一人ずつ順番にね」
そう言いながらアリスを起こしてやるニコラ、その眼は、ちょっぴり怒っていた。
「アーリース?」
「ひっ!?」
両手でアリスの顔をがっちり掴んで目線を合わせて姿勢を低くするニコラ、いつもよりワントーン低い声を聞いたアリスは逃げたそうにあわあわしているが逃げられない。
「私言ったよね? 私の真似しても良いけどスーパーノヴァでの接射は危ないから余程の時以外使うな、って」
「あ、アリスは今がその時だと……」
「言い訳は結構、返事は?」
「はいっ! ごめんなさい師匠!!」
「誰が師匠か、まぁいいや……で、そちらの、ネル、だよね」
「おう」
アリスから手を離してやりネルに向き直ったニコラは少々バツの悪い顔をしながら続けた。
「いやぁその、私が教えた戦い方でアリスと一緒に誰かが大怪我するの黙って見てられなくてさ……」
「アレお前の仕込みか! 流石のあたしも肝を冷やしたぜ! で?」
「お詫びと言っちゃなんだけどさ――
――私と
■月Å日
いやぁ、美甘ネルは強敵でしたね。流石ネームドの中でも上澄みは格が違う。
単射で撃っても当たらん事当たらん事、しまいにゃ「加減は要らねぇからマジで来いよ!」なんて言葉もらっちゃ、燃えちゃうじゃん……
案の定パニッシャーの掃射に建物が耐えられなくなって有耶無耶になっちゃったけど、まぁまぁ満足してたっぽいし良いでしょ。
しかしここでも出たか『葬儀屋』の呼称……えぇ、C&Cにもこの呼び名で知られてんの?
ていうか葬儀屋はSTAMPEDEの方なんだよなぁ、レーザービーム砲欲しくなっちゃうじゃん。いや要らんけど。
とりあえず後はミレニアムプライスの結果発表を待つだけ、まぁ大丈夫でしょ。
「で、リーダーどうだった?」
「どうって……あー、ヤバさは噂以上だったな。負けるとは思いたくねぇが、アイツとは二度とやりたくねぇ」