一応ニコラ視点のパヴァーヌ1章は前回で終わりですが
ちょっとニコラ以外の視点の裏話が入ります。
今回はネル視点です、どうぞ。
――私と
魅力的な提案だと思った。元々シャーレの『葬儀屋』の情報はいくらか持っていたから気になってはいたのだ、噂話を含めた情報が全て事実だとして実際どのくらい強いのか。
なにより、
……なんてのが甘い考えだっていうのは、戦ってすぐに思い知らされることになった。
まず単射で放たれる弾丸の威力も速度も尋常じゃない、このミレニアムの校舎の廊下に1発で大穴が開きやがった。
あらかじめ持っていた情報で予想していたより遥かに強い、こちらが回避しつつ幾らか弾丸をばら撒いてみても必要最低限の動きで避けつつ射撃を続けてくる、避けながら進もうにも少しずつしか近づけない。
だがまぁこのヒリつくカンジは悪くなかった、ここまで強い奴がこのキヴォトスに居た……いや、現れたとは!
ただし、良い流れだと思っていたのはここまでだった。
アイツの懐に入り込んでモロに直撃弾をぶち込もうと思ったその時だ、ほんの一瞬、瞬きの間に何故か正面を向いていた筈のアイツの背中が見えていた。
マズイ――殆ど反射的に防御姿勢を取った、だが次の瞬間にはアタシは弾丸ライナーになっていた。
アイツがした事は至極単純、アタシが間合いに入り込むと同時に片足を軸に一回転してパニッシャーの砲身で思いっきりアタシをぶん殴ったのだ、ほぼ知覚不能に近い速度で。
――なんつー馬鹿力ッ! 骨がイカレるっ!!
その打撃の威力は先ほどのアリスの比じゃない、なるほど確かにこりゃあこっちが元祖だ、一体どんな体してやがる。
ただ力任せに振るっただけじゃない、腕力そのものに加えて全身を使って回転をかけた遠心力、それをただでさえ重量があるはずの武器で放つ、ゴリラ……いや重機だな。
そうしてアタシは見事に振りだしに戻された訳だが、そうなりゃもう接近戦は諦めて中距離から躱し辛い弾幕を張って行くしかねぇ、ホームランボールにされちゃたまらねえからな。
そうすりゃ今度はあっちが防御に徹し始めた、だがここでも弟子と師匠の差ってやつを見せつけてきた。
十字架を盾代わりにサブアームのハンドガンで嫌な位置に的確に撃ち込んで来やがる、大して狙いもつけずによくやる。
だが、情報通りならヤツはまだ本気を出しちゃいない、連射可能な機関砲を単発での狙い撃ちしかしていないのだ、あれだけの威力の機関砲でもあの腕力ならブレ無く掃射出来るのにそれをしないのは……アタシに対する手加減ってよりは建物に対して遠慮しているように見える。
あたしはそれが気に入らなかった。周りを気にして戦うのは重要だ、特に集団戦なら色々と気を遣う所が増える、誤射なんざ論外だ。
だが、今はタイマンの真っ只中だ、周りなんか気にせずアタシを、アタシだけを見ろ!!
そう思って叫んだのだ……「加減は要らねぇからマジで来いよ!」と。
――その瞬間だ、背中に氷水をしこたまぶち撒かれたような悪寒が走ったのは。アイツはアタシの言葉を聞いて口元だけでニヤリと笑ったが、嫌な感じがしたのはその表情じゃない、瞬時に変わったアイツの気配にだ。
よく漫画なんかで殺気を受けただけで殺されたと錯覚する、なんて表現があるが、なるほどこういうカンジか。あの瞬間、死んだとは思わなかったが今まで生きてきて一番の命の危機を感じた。
――濃厚な死の気配、目の前のソイツの正体が人の皮を被ったナニカ――死そのものだと直感が告げていた。こんな感覚は初めてだ。
これでもアタシは科学を信奉するミレニアムの生徒、超自然的な感覚というのはそんなに信用してはいない。
確かに戦闘中は経験から来る勘に頼る事はあるがそういうのとは違う、アタシの中の何かが明確にナニカを……死の気配を感じ取っていた。
まぁ、それも本当に一瞬だったんだが……全身の毛穴という毛穴から噴き出た嫌な汗がそれが気のせいではないと告げていた。
アタシが勝負に求めてるのは勝ち負けだけであって、命のやりとりまでは求めちゃいない、そりゃあエージェントをやってるから命がけになるような場面はたまには起きるが、それはそれだ。
キヴォトス人は基本的に引き金が軽い、お互いに簡単に死なないとわかってるからだ、まぁヘイローの無い相手に対しては流石にそれはそうそう適応されないが。
まぁロクデナシ共の中には命のやり取りでも引き金が軽くなっちまってる奴は居るが……少なくともアタシはソッチ側じゃない。
ただ、どうやら目の前のコイツにとってのマジの勝負ってのはテメェの命を、ヘイローが砕ける事も勘定に含んじまってるらしい。
どういう生き方をすればそうなるのか、まぁ、すぐにあの気配が引っ込んだ所を見るに、存外引き金は重たいようだが。
とまぁ、そっから先はもうメチャクチャだった、単射を止めて機関砲を掃射したのだ、あまりの連射速度に回避に集中せざるを得ないから避けながら攻撃なんてマネも出来ない、思考のリソースが攻撃に割けない。
どうにかこうにか避け続けたら校舎はそこら中穴だらけで今居る階層の廊下は倒壊寸前。崩れ始めたのに気付いた時には全員に撤退を言い渡していた。
そして現在――
「で、リーダーどうだった?」
珍しくアスナの奴がいつもの元気なカンジではなく心配げな雰囲気で聞いてきた。あぁ、コイツも何か感じ取ったか。
「どうって……あー、ヤバさは噂以上だったな。負けるとは思いたくねぇが、アイツとは二度とやりたくねぇ」
あぁ、生き物は死に抗う事は出来るが、最終的に死から逃げ切る事は出来ねぇからな。簡単にくたばりたくなきゃ、死神とは仲良くしとくもんだ。
はい、とりあえず前回最後のネルっぽくない発言に対する答えがこれです。
ぶっちゃけどんだけ強い相手でもネルなら次こそはって燃えるタイプですからね。
途中まですごく燃えてたのに冷や水ぶっかけられた感じです。
ではまた。