残りの他者視点です、どうぞ。
《モモイ&ミドリの場合》
ニコラ? すっごく強いよね! 葬儀屋の噂は聞いたことがあったから最初は怖い人なのかと思ってたけど、なんかいい人でビックリしちゃったよ!
うーん、でもやっぱり戦闘の時は噂通り容赦無いし……あ、葬儀屋の名の由来って、十字架を背負ってるだけじゃなくてオートマタの身体も武器も丸ごと壊して再起不能にしちゃうかららしいですよ。
後はー……えーと、ネトゲやってるの! キャラメイクは長身で黒髪の男の人で、サングラスかけてて、きっとあれがニコラの好みのタイプなんだよ!
それをからかったお姉ちゃんが思いっきりほっぺたを引っ張られてたから多分間違いないと思います。
うー……あの時は本当にほっぺたちぎれるかと思った……
あれはお姉ちゃんが悪いよ、お姉ちゃんが。
《ユズの場合》
ニコラさん、ですか? えっと……リアルではあんまり交流が無いので……あ、リアルではっていうのは……ニコラさん、私と同じゲームをしてるらしくて……
ほ、本当に最近突然現れたプレイヤーなんですけど……今まで、聞いた事のない名前で……スコアランクも成績も、ストレートに上位に来てる、ので……すごく、強いです……!
あ……ニコラさんのプレイヤーネーム、ですか? 『Wolfwood』……です。最近界隈ですごく話題で……私もまた、遊びたいです。
《ネルの場合》
ニコラか……アイツは色々とヤベェな。パニッシャーっつったか? 正直どうかしてるぜ。ま、当たらなきゃどうってこたぁねぇがな。
ただ本気のアイツは躊躇いがねぇ、無さすぎる……何の躊躇いかって? 人を殺す事に対してだよ。遊びでやってる内は全くそんなそぶりもねぇが、マジになった時のアイツの目、ありゃあ人を殺せる奴の目だ。
アタシもエージェントなんてやってるからな、殺し屋を相手にする事もあるからわかる。プロ中のプロ……ありゃその中でも上澄みレベルのヤツがする目だ。
だがアタシが気にしてるのはそこじゃねえ、あの時アイツが一瞬発した気配、ありゃあなんだ? おおよそ普通の生き物が出しちゃいけねぇ気配を発してやがった。
アイツのアレは、強いとか弱いとかそういう話じゃねぇ……なんつーのか、とてつもなくおぞましいモンの片鱗、まるで死を押し付けられてるような……駄目だな、上手く言葉に出来そうにねぇ。
ま、アンタも気を付けな。
《ウタハの場合》
ニコラかい? 彼女はなんというか『奇妙な存在』かな。
特にパニッシャー、アレはなんなんだろうね? あのアリスでも持ち上げられない重量、銃弾の単発威力に加え連射速度、あとあのサイズであれだけ撃って弾切れの気配が無いのも謎だ。
何よりそれを軽々と片手で扱って、威力に対してそこまで反動を感じているように見えないニコラの体も、何もかもが奇妙と言わざるを得ない。
一言でオーパーツと表現して良いのか、それさえも怪しい。そもそも、あのパニッシャーという武器、
確かに触れた感触もある、実際に触った皮膚は何かに触れたように変形するし圧迫された反応もある、少なくとも集団幻覚や催眠ではないし、カメラにも映像が残っている。けどね、
それがオーパーツ由来の高度なジャミングなのか、それとももっと別の何かなのか、是非とも詳しく調べてみたいね。
《アリスの場合》
ニコラですか? ニコラは不思議な人です。ジョブは多分暗黒騎士か魔剣士です! パニッシャーは魔剣なので!
どうして、ですか? ドクロの紋章は闇属性の証です、何よりアリスが持ち上げられませんでした、だからパニッシャーは魔剣です!
そんな魔剣を軽々と扱えるニコラは闇属性のジョブか種族のはずなので、暗黒騎士か魔剣士です! もし闇の種族だったとしてもニコラはとっても良い人です!
あと、アリスに戦い方を教えてくれたのでニコラは師匠でもあります!
ニコラは言いました『武器はただ撃てるだけじゃ扱えたとは言えない、自分の手足の延長のように扱えて、はじめてそれが扱えたと言える』と。
立ち回り、上手な防御の仕方、近付かれた際の対応の仕方、防御からカウンターへと繋ぐ技術、それ以外にも、戦う上での心構えなんかも教わりました。
ネル先輩と戦ったあの日、アリスはニコラの言っていた事が少しわかった気がします。
『強い力を持つ奴は力の使い方、使い所を見誤ってはいけない』
『相手を打倒するだけが勝利する方法ではない』
『自分も満足に守れない奴は誰も守れない』
……あの日、アリスは間違えました。
アリスはまだまだ未熟な勇者です、でもいつかは師匠であるニコラに認めてもらえる真の勇者になってみせます!
クックック……ご無沙汰しております、『先生』。
本日は彼女、速水ニコラに関する件で忠告に参りました。ククッ、そう怖い顔をしないで下さい。これは本当に、善意による忠告です。
……彼女、速水ニコラには本当にお気を付け下さい。
既にお気付きでしょうか? 彼女もまた、キヴォトスの外から来た存在です。ある日、キヴォトスの上空に突如出現したのを我々は観測しています。
何者がどのような意図でこのキヴォトスに送り込んだのかは我々でも把握する事は叶いませんでしたが、彼女の存在ははっきり言って異常です。
私の求めたモノの遥か先、そこにアレンジを加え、更なる発展をさせたような未知の存在、何故存在しているのか、存在出来ているのか、それさえ我々にもわからないのです。
彼女が研究対象、ですか? クックック……それはあり得ません。
そうですね、彼女がどのような存在か、先ほど申し上げたように我々でも正確に把握は出来ていませんが、わかりやすく例えましょうか。
以前小鳥遊ホシノで行おうとした私の研究の最終目標が二輪駆動のガソリン自動車だったとしましょう。ええ、あくまで例えです。
その場合彼女、速水ニコラの存在は、既に完成した四輪駆動の水素自動車……いえ、あるいはもっと遥か先の未来に
傍から見れば同じジャンルの存在です、素人目に外側だけ見れば同じ存在に見えるかもしれません。もしかすると私の求めるモノと近しい部分もあるかもしれません。しかし、その実態は根本的な構造が違う全くの別物なのです。
外から観測しただけでこれほどの異常が確認出来ました。我々でも手に負えない、というのが正直な感想です。
ここまで言えば、彼女の異質さは理解出来たと思います。
もし彼女がこのキヴォトスに害を成すために何者かが送り込んだ尖兵だとしたら……静観出来る状況ではないでしょう。
……それでもアナタは彼女もまた守るべき生徒の一人だ、と? クックック、なるほど、いえ、これ以上何も言う事はありません。
確かに私は忠告いたしましたよ、先生。
では、私はこれで。
これにてパヴァーヌ1章は本当に終了です。
……黒服のエミュレートむずかしっ