「へ? 私をシャーレの部長に?」
「”うん、お願い出来ないかな?”」
シャーレのオフィスに出勤早々、朝っぱらからとんでもない爆弾を放り込まれた。
「いや先生……自分で言うのもアレだけど、私って相当な劇物だよ? ていうか連邦生徒会から許可は下りたの?」
本当に自分で言っててアレだが、ブラックマーケットでの私の悪名は相当なモノだという自覚はある。流石に二つ名が付くほどだとは思ってなかったけれど……
まぁあそこは治安が終わってるキヴォトスの中でも無法地帯と言える場所の一つだし、何より私を利用しようと近付いてきた馬鹿な企業や裏の組織に対する見せしめの意味も込めて派手にやったっていうのもあるが。
とはいえブラックマーケットだろうと生徒相手には徹頭徹尾手加減してるし、最近では一部の不良に懐かれてたりしてるから悪名ばかりでもないんだけど。
「”許可はちゃんと下りたよ。確かにブラックマーケットでは暴れ過ぎだけど、逆に自治区での活動では問題行動は一切起こしてないからね。ただ、暫くはお試し期間って感じかな”」
お試し期間、つまりある程度の権限を持たせた上で、私が問題行動を起こさないかどうかの見極めも兼ねている、と。
「つまり私がやらかすとそのまま先生の任命責任になるわけだ、責任重大だねこりゃ」
「”そんなに肩肘張らなくて大丈夫だよ”」
「先生がそう言うなら……ところで、なんでこのタイミングで?」
そう、このタイミング。現在私たちはミレニアムの特異現象捜査部に協力を求められてデカグラマトンについて調べている最中なのだ。
――デカグラマトン、私がキヴォトスに来たその日にアビドス砂漠で撃退したビナー含むその他諸々の『預言者』達の親玉。異常発達して特異現象と化したAI。
先日、特異現象捜査部の旧部室にてデカグラマトンのハッキングによる接触が行われ、直後にアロナのクシャミで追い返された所までは原作通りだった。
ただ、先生どころか私もはっきりと認識されているとは思わなかった。まあ単騎でビナーを撃退したのだから当然と言えば当然か。
で、今日から特異現象捜査部の新部室で活動を再開する事になっていた筈なのだが……
「”ちょっと別件でトリニティに行かなきゃならなくなっちゃってね”」
「トリニティ……っていうと、例の条約絡み?」
例の条約、近々トリニティとゲヘナで結ばれる予定の不可侵条約……『エデン条約』。この時期に先生がトリニティに行かなければならない理由、それはつまり……メインストーリーが進むという事。
「”多分ね、ひょっとすると長く向こうにかかりきりになるかもしれないから”」
「それで、私にある程度の権限を与えて手分けできるようにしよう、と」
「”そういうこと、まあニコラを部長にするって話は前々から検討しててね、タイミング的には丁度良かったんだ”」
「なるほどね、そういう事なら任せて」
「”ありがとう、助かるよ”」
まあ妥当な采配だとは思う。何せ片方はメインストーリー『エデン条約編』で、もう片方は特殊作戦『デカグラマトン編』……どちらも放置は出来ない案件だ。 何より私はシャーレの総力作戦以外でも単騎で一度デカグラマトンの預言者とはやりあって生き延びてる。
「またビナーとやりあう羽目になるのかなぁ、まぁ、なんとかなるかな?」
「”……今更ながら思うけど、よく一人で無事に撃退出来たね?”」
それはそう。搭載されている武装の殺意の高さ、その大きさに加えて頑丈な装甲、砂の中を自在に移動する機動力、どれをとってもアレは本来生徒一人でどうこう出来る存在ではない。原作で総力戦のボスをやっているのは伊達じゃない。
「頭に飛び乗って口の中にミサイルランチャー叩き込んだり、発射直前のミサイルを機関砲で撃ち抜いて内部で誘爆させたりしたらなんとかなったよ。多分似たような事出来る子は他にも居るでしょ」
「”いや、それが出来るのはニコラだけだと思うな……”」
そうかな? そうかも……
「んんっ、まぁ、お互い頑張ろうね、先生」
「”うん、ヒマリ達にはあらかじめ連絡入れておくけどよろしくね”」
さぁ、先生抜きのデカグラマトン編、開幕だ。
というわけで、ニコラのエデン条約編前半の不参加が決定いたしました。
キヴォトスに来て早々ビナーとぶつけた伏線回収です。