ポケットモンスター虹 ~Harmonized Green~   作:裏腹

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01.最強の証明

「ミント、あなたと一緒にカントーを冒険するお友達の、イリスちゃんよ。挨拶なさい」

「わたし、イリス! ラフエルからきたんだ。よろしくね、ミントちゃん!」

 

 ――赤い帽子に、田舎くさい赤ジャージ。いかにもなお下がりのリュック。うるさいくらいにはきはきとした口ぶりと、宝石でも詰めたんじゃないかというくらいに、輝く瞳。あいつの第一印象は、元気の押し売り。

 母の親友の子供だとか、二人で旅をすれば安心だとか――そんなこと、子供だったあたしには何一つ関係なくて。

 最強のトレーナーを目指すには、あまりに平和過ぎて、仲良しごっこで……まあ、端的に言えば、鬱陶しかった。

 

「ねえママ、何こいつ? あたし何も聞いてないし、ってか一人で冒険できるんだけど」

「そう言わないの。あなたもイリスちゃんも初めて同士、一緒に冒険してるんだーって思うと、心強いでしょ?」

「はぁ……あんた、イリス、だっけ。あたしは最強のポケモントレーナーになる、ミント。あたしの足を引っ張るんなら、すぐに置いてくから。何がしたいのかは知らないけれど、せいぜい頑張ることね」

「わぁ……最強のトレーナー! うんうん、いいね、わたしもなりたい!」

「うっさい! 軽々しく言うんじゃないわよ!」

 

 オーキド博士の研究所で、ポケモンをもらった。あたしはイーブイ、あいつはピカチュウ。

 所詮はお遊び気分の、おめでたいのんびり屋。過酷さを前に、どうせすぐに音を上げて手放すことになるだろう、って。

 あの頃の自分は、そう思っていた。

 

「にへへ、初バッジ。ゲットしたよ」

「たった一個で喜ぶな。しかもボロボロじゃん……あんたも、ピカチュウも」

「うん。でも、楽しいね――――冒険って」

 

 大の字で、仰向けになったまま青空を眺めるあいつの、どっちが太陽なんだかわからない、あの表情(ツラ)を見るまでは。

 

「ハロー! 相変わらずもたもたやってんのね。バッジ集めのついでだし、どんなもんか実力を試してあげる」

 

 あたしが、どれだけ大きな一歩を踏んでも。

 

「うわぁー! また負けたー! くう~っ!」

「当たり前。あんたがあたしに勝てる訳ないでしょ。ま、頑張ってる方ではあるけど」

「次は、次こそ負けないから!」

 

 あちこちで、のろのろと沢山の足跡をつけながら、ついてきた。

 

「一度潰してやったというのに……まだレインボーロケット団に歯向かうか。子供は子供のまま、大人しく世に従っておけばいいものを」

「間違ったことに立ち向かうのに、子供も大人もないよ。ポケモンを売り捌くのも、傷付けるのも、絶対に許せないから戦う……そうだよね、ミント」

「勝手に巻き込むな。ただあたしは、あたしを邪魔するヤツをぶちのめす。そんだけ」

「面白い。いいだろう、来い」

 

 それは現実という理不尽が容赦なく襲い掛かってきても、同じだった。

 出会って、別れて、戦って、色んなものを見て、触れて――そうして強くなって。

 

「このあたしが! 世界で、一番! 強いってことなのよ!」

「……!」

 

 いつしかあいつは、あたしの強敵(ライバル)になっていた。

 

 

『カントーリーグ優勝は、イリス選手に決まりましたーーーーーーーーッ!!!!』

 

 

 バッジを集めて、ポケモンを万全に育てて望んだ、カントーポケモンリーグ決勝戦。

 最後の最後で、負けた。

 旅の途中で何度バトルしても負けたことが無かった、あいつに。

 決してなめていたわけじゃない。それでも絶対に勝てると思ってた。そうなるようにポケモンを育てていたから。

 悔し涙の代わりに発する、相棒の咆哮も。全部の思考が吹き飛んで、一瞬で空っぽになった自分の頭の、あの軽さも。

 一度たりとも、忘れたことはない。

 あの日、あの時、あの場所で――――――あいつは。イリスは。

 あたしを追い越していった。

 

       ◇       ◆       ◇       ◆       ◇

 

「ようこそ、ミントさん。ジムリーダーのコスモスと申します」

「ハロー。四天王……じゃなくって、挑戦者のミントよ。よろしくね、お姫様」

 

 ――イリスを追いかけて、気が付けばこんなところ(ラフエル)にまで来ていた。

 本来の使命であるカントー四天王を放ってまで、他地方のリーグに挑もうとする自分の行動力が誇らしいんだか、疎ましいんだか。時折、彼女自身でもわからなくなる。

 だが、ここまで来たからには。七つのジムバッジを集め、三年に一度のラフエル最強を決める大会『ラフエルチャンピオンシップ』の挑戦権に、王手をかけたからには。モチベーションは十分だ。

 

「お名前は伺っております。カントーでも指折りの実力者だと」

「ふーん、ラフエルの最強格に覚えられてるんだ。悪い気はしないわね」

「お互い様です」

 

 見合うのは、ルシエシティジム。深い青がベースで、空、海と合わせたグラデーションが特徴的なスタジアム。多くの客席を埋める観衆に囲まれたコスモスとミントがこれから何をするかは、言わずもがな。

 

「把握しきれてないから、確認なんだけれど、ラフエルチャンピオンシップの参加権は『ジムバッジを八つ集めた、先着三二名以内に入る事』……で、良かったわよね?」

「ええ、正しいです。そして8×4のブロックに別れて、トーナメントを行います」

「四天王とチャンピオンのみ、特別な事情を除き、バッジ収集が免除され、無条件で参加となる。よって権利を得られるのは実質二七名。これも合ってる?」

「はい、間違いありません」

「で、現段階で決まってるのは何人?」

「二六名です」

 

 ひゅー。ミントは小気味よく口笛を鳴らす。

 

「最後の一枠が懸かってるってこと、か。道理でオーディエンスが多い訳ね」

 

 そして不敵な笑みを浮かべながら、賑わう客席をぐるりと一望した。

 米粒のような人だかりの中では目を合わせることも、見つけることも叶わないけれど、彼女は、お目当てがこの中にいることを確信している。

 

 

 

「……心配か、行く末が」

「ん、まさか」

 

 ミントの見立て通り、先に出場を確定させたイリスは、客席で静かにライバルの遠い姿を見つめていた。

 彼女から視線を逸らすことなく、シンジョウの問いかけに言葉だけを返すその横顔は、明確にいつもと違う。微笑んではいても、朗らかさはない。穏やかであっても、軽さはない。多くを語っていても、饒舌さはない――そんな表情。

 

「いんやぁ、終生のライバルとあっちゃあ、イリさんが目ェ離せねぇのも納得だべな」

「や、ヤシオ、食い過ぎだろ。ホットドッグ何個目だよ」

「忠告ありっと、ダっさん。んだけどオレ、胃袋ゴクリンだから、食ったモンがたちどころに消えちまうんだ」

「そりゃもはやお前がゴクリンそのものだろ……あと、俺の名前はダイな」

「固いことは言っちゃダメさ、ダイ。決戦前はしっかり腹ごしらえしなきゃ勝てる相手にも勝てなくんぐもぐんぐんぐ……」

「もーアルバ! 食べるか喋るかのどっちかにしなよ!」

 

 ――向かう到達点を同じくするならば、誰もがここに集うだろう。

 イリス、シンジョウだけではない。ダイ、アルバ、ヤシオ、シイカ――……苛烈な八つの試練を勝ち抜き、トーナメント開幕を待つだけになった猛者たちが、一同に介している。

 

「うーむ……どっちが勝つんだろう。集まってるデータが規格外過ぎて、予想もできないよ……」

「サーシス、占いだとどう出てるんだ?」

「どうだか。これは言わぬ方が楽しめようて」

「違いはないね」

 

 四天王も例外ではない。

 

「ただ、言えるのは――誰もが沸かずにはいられない一戦になるだろう」

 

 待ち焦がれた強者同士の死闘が、始まる。

 

 

 

 3vs3、トレーナーを介さない道具使用をありとする。

「とどのつまり、ラフエルリーグ公式戦のガイドラインに準拠する、ということですな」

 いつも通りに審判を務めるコスモスの執事、ブロンソがこなれた具合に説明すれば、準備は完了。

 

「両者、ポケモンを前へ」

「お願いね、“サザンドラ”」

「行きなさい、“サンダース”」

 

 双方のポケモンが相対した時、

 

「ほう、これはこれは」

 

 会場は騒然とした。

 コスモスサイドの一番手は、特徴的な黒の六枚羽根で、ゆらゆらと浮遊するサザンドラ。

 対するミントのポケモン――それが原因であった。

 はじまりの一匹、即ち相棒であるイーブイの進化形。サンダースは弾ける雷のような刺々しい黄の体毛を逆立て、静かに臨戦態勢を取る。

 

「ミントさん、いきなりエースを出すのか!?」

「切り札は、温存するのがセオリーのはずだけど……」

「いんやぁ、別におかしなこってもねぇべ」

「ヤシオ、それどういうこと?」

「どゆことって、そりゃあ――」

 

 ポケモンを出すタイミングは、勝つための手段であり、目的ではない。

 勝てると予測したので、最初に送り出した――ミントにとってはそれだけのことで。

 コスモスもそれを知るからこそ、言葉は紡がない。

 

「お利口なサザンドラじゃない。無闇に吼えない、暴れない……初めて見た、そんな子」

「幼い頃からの付き合いなので。ですが勝負で退屈はさせません」

「そう。じゃ、楽しませてもらおうかしら――“10まんボルト”!」

「“あくのはどう”!」

 

 開幕からフルスロットルだ。轟く爆音が、そう言った。

 立ち込める粉塵は開戦の狼煙となって、空へ昇って捩じれて消えた。

「“10まんボルト”」「“あくのはどう”」

 もう一度、大技をぶつけ合う。サンダースは全身からの発電で、サザンドラは両手と口からの波動で、ばちばちと競り合った。

 震える空気と、継続的な押し合い。漆黒に侵され始める黄色。

 

避けて(ステップ)!」

 

 送電を中断、ミントはすかさず横跳びでの回避を指示し、あくのはどうをやり過ごす。

 

「オーケー、火力は十分そうね」

「言いましたよ、退屈はさせないと」

「見たところパーティーの中でも力押しが得意っぽいかな。技の純度と威力が桁違い」

「ご明察です。たった二度の応酬で、そこまで理解が及ぶ。噂通りというところでしょうか」

「ノンノン。――――噂以上よ!」

 

 バチィン。直後、炸裂音がいの一番に響き渡った。

 コスモスが置き去りの思考を拾い直した時には、既にサザンドラは一撃をもらっていて。

 放つ前段階、つまり発射前の10まんボルトを体に纏わせ、突進したのだ。

「“あくのはどう”!」コスモスの指示より先に、サンダースはその場から消えていた。

 

「“10まんボルト”」

「速い――!」

『グ……!』

 

 サザンドラが呻く。体表の焦げ痕。いつの間に?

 残像も、軌跡もない。

 ただ消えて現れ、現れ消えて、まるで瞬間移動。

 ダメージの後に姿を認知する。反撃はいつでも虚をすり抜ける。その都度炸裂音が四方八方より飛んでくる。

 

「“10まんボルト”」

 

 目障りな稲光り。

 

「“10まんボルト”」

 

 増える雷撃傷。

 

「“10まんボルト”」

 

 募る苛立ち。鬱憤、不満にフラストレーション。

 

『グアアアアアアアアアアアアァァァァァッ!!』

「――“10まんボルト”」

 

 接触、目視共に不可。

 移動の前兆も、過程も、痕跡すらも残さない。ヒットアンドアウェイの究極形――サンダースはあまりにも速かった。

 

「ようやくテンション上げた? そうこなくっちゃ」

 

 やけくそで撒き散らされた“あくのはどう”も、お構いなし。

 サンダースはしゅた、とミントの前に戻ると、静かにサザンドラへ向き直る。

 暴君らしさを取り戻した黒竜の、天を割るような怒号にも身じろぎ一つしないで、ただばちばちと体内電気を唸らせている。

 圧倒された会場は、序盤から凄まじい盛り上がりを見せた。

 

「な、なんて速さだよ……、イリスさんのピカチュウにも負けてねぇ……!」

「だが、同質のものではないな」

「んだな」

「……?」

 

 シンジョウとヤシオは訝る若手たちにはまだ見えないもの――その速度の、使い方の話をしている。

 

「ピカチュウの速度(それ)は、反撃も許さないほどの圧倒的な手数を以て、畳みかけることを意図した使い方をされる」

「確かに、いつも一瞬でとんでもないダメージを叩き出してるイメージがあるな……」

「サンダースは、違うのか?」

「無論だ」

 

 シンジョウは続ける。

 

「彼女のサンダースは、何もデタラメに戦ってるわけじゃない」

「攻撃という一つの行動を回避でいなして、そこで生まれた隙に的確な一発を撃ち込む……その繰り返しっつーことだべ。オレもこってりやられたんで、ようわかるってモンよ」

「なるほど、差し返しに特化したカウンタースタイル! どんなに強いポケモンでも、攻撃中まで守りの意識は保てない。ダメージを稼ぐには効率的だ……!」

「だからサザンドラは、効果が今一つのでんき技でも、こんなに苦しそうなんだ」

 

 攻撃の誘発も、回避タイミングも、切り返しの技も、その着弾点も、総て考え抜かれた上での立ち回り。

 口で言うのは簡単だ。が、攻撃させる以上は避けきれずにくらう懸念もある。

 リターン相応のリスクを求めてくる以上、並のトレーナーとポケモンでは、あまりに再現性のない戦法ではあるが。

 

神速(ライバル)を抜き去るために、純粋なスピードを追求した彼女なら。最速のサンダースを伴う彼女ならば」

 

 ――不可能ではない。

 

「ならば……!」

 

 速いのならば。動き回るのならば。

 コスモスの空への挙手に従って、サザンドラは上昇。放つ技は。

 

「“だいもんじ”!」

「!」

 

 怒り任せの咆哮と共に、両手と頭、三つの口から、フィールドを半分以上覆う巨大な爆炎を落とした。

 その一撃は大爆発と黒煙で、耳と目の情報を奪い去る。

 それも束の間、視界はクリアに。サンダースは瞬時に大の字の隙間を潜って回避、未だ無傷を守っていた。

 

「へえ……そういうことね」

「どれだけ速くても、当たれば一撃なのは、変わりません」

 

 だったらば、攻撃の範囲を大きくすればいいだけのこと。

 

「かわされても構いません、放ち続けなさい。“だいもんじ”」

 

 冗談みたいな範囲と出力の橙の大文字を、悪ふざけのようなペースで連発。

 ほのお技が本分である、ほのおタイプにも迫る大火力が、爆撃よろしく次々に降り注ぐ。

 爆ぜ散る度に鼓膜をいじめる業火はやがて広がって、地面にへばりついて、サンダースの回避ルートをじわじわ制限していく。

 少しずつ逃げ場がなくなり、やがて回避に集中するしかなくなって。

 熱気が肌を蝕む。息切れ知らずのスタミナが、鍛え抜かれた特殊攻撃力が、火の海地獄を形成した。

 そこに佇み、破壊の限りを尽くす漆黒のドラゴンは、さしずめ地獄の王。

 

「では、これは避けられますか」

 

 軒並み安全地帯を潰した上で、コスモスは意地悪く問う。

 厄介なエースがここで出てきてくれたのは、好都合だった。

 真っ先に倒せるから。

 

「チェック――――“りゅうせいぐん”」

 

 倒すために鍛えた一撃が、こんなにも早く放てるから。

 サンダースが仰ぐサザンドラの、その背後の空に、幾つもの光が見えた。

 それは忽ちに大きさを増して、だいもんじとは比にならないほどの轟音を連れ、観測者目掛けて飛来する。

 

「もうなんでもありかよーーっ!?」

 

 大量の隕石。それは破滅を待つだけの存在を嘲る。

 見ている間にも刻一刻と迫り、サンダースとその周囲に巨影を覆い被せた。

 

「サンダース」

 

 向き直る一瞬。時が止まる刹那。

 悲鳴にも似た歓声と、天空の雄叫びにかき消され、もはや口の動きしか認識できなくなっても――相棒だけは、主の声を聞き逃さなかった。

 

 ドゴン、ドゴン。

 

 ダストテイルを引くメテオの群れが、いよいよ獲物がいる場所へと着弾した。

 無数の瓦礫を断続的に撒き散らし、熱風を巻き上げ、悉くを粉砕する。

 滅茶苦茶――そう呼ぶのがお誂え向きだろう。

 まず、一つ。コスモスの独白。

 

 

「――接近(アタック)

「な――……!」

 

 

 一秒先の未来で、また会いましょう。

 ミントの、独白。

 

「あくの」

「“ボルトチェンジ”」

 

 サンダースが次に現れたのは、サザンドラの眼前。鼻先がくっついてしまいそうになるほどに近い、深い、深い、懐の中。

 雷の獣は咄嗟のコスモスの対応を許さず、サザンドラの顔面に稲妻を叩き込んだ。

 そして身を翻し、その勢いのままに後肢で蹴り飛ばす。

『グオアアアアアア!!』痛みで叫ぶ。逆上の“あくのはどう”を返す頃には、もうそこにはいなかった。

 キックの反動で一気にミントの元へと跳び、鮮やかにモンスターボールの中へと退却したのだ。

 

「サンキュー! サンダース」

 

 ボルトチェンジ――電気の一撃を浴びせ撤退、瞬時に控えのポケモンと交代する技。ポケモンチェンジの隙を無くすための、冴えた選択。

 

「自分の周りには、隕石を落とせないでしょう? 危ないもんね?」

「『食わせ者』というのは、きっとあなたの事をいうのでしょうね」

「ねえ、それ、褒めてる?」

「ええ……、私なりに」

 

 自分に、技は当てられない。その思考を衝いて、敢えて肉迫することで回避、ついでと言わんばかりに一発入れて帰ってくる。これを食わせ者と云わずしてなんと云う。

 いくら負けず嫌いの少女でも、流石に認めざるを得なかった。

 

「ゴー、“ピジョット”!」

「気を引き締めましょう、サザンドラ。……これ以上、好きにさせてはなりません」

 

 この圧倒的な、バトルセンスを。

 幾度もの修練と経験によって積み上げられた、他の追随を許さぬ、その強さを。

 

「その大翼で、私を頂点へ導け――メガシンカ」

 

 最強の、証明を。

 交代先となった大型の鳥ポケモン“ピジョット”は、虹の光を帯びて“メガピジョット”にメガシンカを遂げる。

 青、白、茶で彩られた翼をはためかせると、鬨の声を乗せた風が舞い上がった。

 

「さてと、第二ラウンドといきましょうか」

 

 ミントは片手を腰に当て、威風堂々と立ちはだかる。

 

 

 

「……何にも、変わってない」

 

 ――彼女の色は、緑。

 

「自信家なところも。言葉に遠慮しないところも。ちょっぴりお喋りなところも」

 

 手持ちの総てを十全に理解し、個の持ちうる可能性を限界まで引き出すその姿は、完全なるチームへの調和を実現する色。

 

「びっくりするほど強いところも」

 

 そして緑の中でも、静かで落ち着きつつ、でも確かな無二性を持つ緑。見る者の胸を真っ直ぐ貫く、鋭く強い緑。

 

「誰よりも、頑張り屋なところも」

 

 あの頃のまんまだね。

 

「気を付けて――――あの子は強いよ、コスモスちゃん」

 

 幼少の面影を重ねながら、イリスは呟いた。

 ミントグリーンは、パープルを飲み込まんと動き出す――。

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