スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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 提督と神通にスポットを当てた前後編の短編物語です。
 
 前編は提督がどういう男なのかに焦点を当てていきます。


球磨の提督調査記録 前

 

「単装砲の具合はどうですか?」

 

「うん!いい感じだクマ!!夕張も中々いい腕を持ってるクマ!!」

 

 

 工廠にて、球磨は最近調子の悪くなった単装砲を点検してもらっていた。

 長年、前任の資材が勿体無いからドックを使用せずになんとかして装備を直せ、とかいう無茶な要望に振り回されて来ただけはあり、夕張の腕は確かだった。

 

 

 上手く言語化は出来ないが、痒い所に届くような、口に出す程気にならなかった不具合も見極め、最速で修理して球磨の身体によく馴染む作りに設計し直したのだ。

 

 

「最初来た時に案内されてそれっきり来なかったから気付かなかったけど、ここの工廠は新築かクマ?妙にピカピカしてるというか、新品同然のモンばっかクマ」

 

「あ、そうなんですよ! 新しい提督が明石さんと速吸さんを連れてきてくれて、工廠を丸ごと作り替えたんです!」

 

「ほえ〜、案外あの提督は有能なのかもクマな」

 

 

 球磨はすっかり直った単装砲を背負いこむとそのまま工廠の出入口に向かった。

 

 

「ま、なんにせよ助かったクマ。また頼むクマ」

 

 球磨が工廠を出ていくまで、夕張は嬉しそうに手を振っていた。

 

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

(あの提督は掴みどころのない奴クマな…)

 

 すっかり調子の戻った単装砲を仕舞い艦娘寮へと向かう道中、工廠さえも修理したという提督に考えを巡らせる。

 

 

(手当たり次第セクハラを繰り返すクソ野郎かと思えば、軽巡の砲撃(神通主砲)を受けてもへっちゃらだし、たまに料理処で飯作ってるし、料理も普通に美味えーし、なんなら普通に仕事もはえークマ)

 

(かといって有能な男なのかと思えば、女子風呂に監視カメラ仕掛けようとしてまた神通に追いかけられたり、吹雪に『パンツ見せて下さい!』ってガチ土下座してたり、司令室で堂々と真面目な顔でエロ本読んでたりとなんとなくアホな感じが抜けねークマ)

 

 

 

 

「球磨。ちょっとどいてもらっていいかしら」

 

「クママッ!?」

 

 

 不意に背中から話しかけられ、思わず飛び退いた。

 後ろには加賀が立っており、相変わらずの無表情だったが心なしか傷ついてるように見えた。

 

 

「そこまで驚く事ないでしょ?」

 

「い、いきなり話しかけるなクマ!ビックリしたクマ」

 

「あら、それはごめんなさいね」

 

 

 加賀は不器用に微笑むと艦娘寮に向かい、歩き始めた。

 そのとき、なんとなく加賀に提督の話をしてみようと思い、加賀の背中を呼び止めた。

 

 

「加賀。ちょっと聞きてークマが、お前から見て提督ってどんな奴クマ?」

 

「? 質問の意図が読めないのだけど」

 

「単純に聞きてーだけクマ。私はここ(舞鶴鎮守府)に来て日が浅いからあの提督がどんな奴なのか知らないクマ」

 

「私もあまり彼と長く一緒にいる訳ではないのだけど…」

 

 

 加賀は考え込むように片手を腰に当て、もう片方で顎を摘む。

 本当、こういう大人な所作がよく似合う奴クマ…。

 

「私個人の意見でいうならば、出来る人だとは思っているわ。少し人間性に難はあるけれど」

 

 球磨と同じ感じの意見クマ。

 

「クマー…。確かに性欲を抑え込もうとしてない感じクマね」

 

「そうね、私自身着替えを覗かれそうになったみたいよ」

 

「加賀の着替えを覗くとは命知らずクマな」

 

(どういう意味よ…)

「……まぁ、神通さんが事前に阻止してくれたみたい」

 

 

 

 加賀はもう一度考え込み、やがて球磨の方を見た。

 

「より深く彼を知りたいのなら赤城さんを訪ねるといいかもしれないわね。一番付き合いの長い人の一人だから」

 

「そうなのかクマ?

 一番先に建造されたのが赤城なのかクマ?」

 

「いえ、提督が以前務めていた別の鎮守府の出身なの。色々あってこの鎮守府に席を置いてくれてる。他は神通さんと夕立もそうね」

 

 あぁー、なんか赤城、夕立、神通の三人は他の奴らに比べて明らかに提督の扱いが雑な気がするのはそういう事クマか。

 

 それになんとなくクマが、提督との間に壁を感じないクマ。

 他の子達はなんとなく、提督という存在に無意識に恐怖していて、少し固い感じクマ。前任提督とかいう奴が相当なトラウマになってるのが球磨の目にも分かるクマ。

 こればっかりは一朝一夕で治せる問題じゃねークマ。

 何日も何日もかけて、恐怖の種を少しずつ捨てていくしかないんだクマ。

 

 そういう時に恐怖の象徴である提督に対して自然体で振舞える存在がいるのはきっと心強いはずクマ。

 

 

「分かったクマ!協力ありがとクマ!」

 

 球磨は加賀に手を振ると、演習場に向かった。お昼前のこの時間だったら赤城は演習場にいると思ったクマ。

 

 

 

 走る球磨の後ろで加賀は静かに手を振り返し、やがて寂しそうに手を下ろした。

 

「……もう少しお話したかったのだけど」

 

 加賀は誰にも聞こえない大きさで、残念そうに溜め息をついた。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

「あぁ、提督の事ですか」

 

「そうだクマ!提督はどんなセクハラ野郎だったんだクマ!?」

 

(ほとんど決めつけてますね…)

「そ、そうですね…。確かにセクハ……ス、スキンシップの多い方ですけれど越えてはいけないラインはちゃんと理解してると思いますよ……多分。ちょっとしたイタズラだと思えば、可愛いものです」

 

 おぉ〜、なんだか余裕を感じる返事クマ。

 加賀よりもあの提督との付き合いが長いというのは本当みたいクマね。

 

 

「それとその〜…なんと言いますか。あの方は、オンオフの差がスゴイというか、公私をキッチリと分けるタイプとでも言いましょうか………あ、そうですそうです。ギャップ萌えという奴です」

 

 

 ギャップ萌え? いやなんの話クマ?

 

 

「提督の事ですよ…っと、いけません。これ以上提督の事を褒めたら神通さんに嫌われてしまいますね」

 

「神通?なんでここで神通が出てくるクマ?」

 

「ウフフ、神通さんと同じ空間にいればすぐに分かりますよ」

 

 赤城は意味深に微笑むと演習場の的へと矢を飛ばす。

 放たれた矢は的のど真ん中に深々と突き刺さり、それを確認した赤城は満足そうに息を吐いた。

 

「そうですね…。実は、久しぶりに神通さんと演習をしてみたいので提督に相談しに行こうと思ってたんです。よければ、球磨さんもきませんか?神通さんも一緒に立ち会ってもらうつもりなので、きっと面白いものが見れると思いますよ。……二つ程」

 

 

 

 イタズラな笑みを浮かべて再び赤城は弓を引く。

 なんだか挑発されてる感じだが、ここまで勿体ぶられた後にこの提案。蹴るハズが無いクマ。

 

 

「もちろん、着いていくクマ」

 

 執務中の提督がどんな顔をするのかも気になるクマ。

 

「フフ、ではまずは神通さんのとこに行きましょうか」

 

 赤城は弓を再び放った。

 放たれた矢は真ん中を僅かに逸れ、的の左上辺りに深々と刺さった。

 いらん事考えながら射ったらそりゃ狙いもブレるが、それでも的には当てる辺り、大したモンクマ。

 

 





 え?肝心の神通がいない?

 まぁ……後編まで待って…。
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