スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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武蔵と金剛

 

(最近戦場に出ていないな…)

 

 戦艦 武蔵は少し落ち込んだ気持ちを抱えていた。

 

 

 

 新しく着任した提督は優秀な人間だ。長く提督代理を務めていたこの武蔵の目から見ても。

 的確な指揮に迅速な状況判断。おまけに戦場の経験も豊富であり、不測の事態にも慣れたように対応する姿は頼もしいという他ない。

 

 

 

 ……だが、そんな提督にも不満がある。

 ……いや、そんな提督だからこそ、というべきか。

 

 

 

 それはこの武蔵が全く戦場に必要とされない事だ。

 

 

 

 

 

 いや分かっている。

 

 優れた司令塔というものは慎重かつ臆病でなければいけない。

 提督はそれを理解し、前任提督は高頻度で挑んでいた高難度の遠方海域には滅多な事では挑まなくなった。

 

 

 

 前任が戦艦や空母ばかりを出撃させていた関係で練度が低めの駆逐艦を優先して出撃させてるというのも充分理解出来る。

 戦艦は運用する際に要求される資源量が非常に多いので、まだまだ資材の供給が安定しない現鎮守府では運用しづらいのも理解出来る。

 

 

 必然的にこの武蔵の出番が少なくなるのも仕方ない事だ。

 だがそれだけこの鎮守府の事を…、私達艦娘を大切にしてくれてる証拠とも言える。

 

 

 

 が、それはそれとして毎日毎日艤装さえも付けられずに一日を終えるのは戦場を好むこの武蔵にはちと酷ではないか?

 

 

 

 

(ダメ下で、一度提督に相談をしてみようか)

 

 

 

 

 

 

 そう思い、武蔵は司令室へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

(ンンッフフ〜〜…!!

 テートクとのティーータ〜〜イム!!楽しみネ!

 この日の為に高級な茶葉を取り寄せてて正解だったワ!!)

 

 

 

 

 場所は変わって、同じく司令室に向かう戦艦 金剛

 

 

 彼女の手には高級そうなティーカップ二組と茶葉を乗せたトレーが握られていた。

 彼女が今日のお茶会を本当に楽しみにしていたのがそのホクホク顔と軽い足取りから容易に想像出来る。

 

 

 

 

 

 

「む?金剛か」

 

「Oh!!!武蔵!!珍しいデスネー!!

 どうしたデース?武蔵もテートクに用デスカー?」

 

「用というほどでもないのだが、まぁそんなところだ」

 

 

(what?もしや武蔵も提督とティータイムの約束を?)

「イエーース!!私もテートクとお話をしにきたんデス!武蔵もご一緒に紅茶しまセンカー!?」

 

 

(紅茶?まぁ、金剛も私と同じであまり戦場に出ていないものな…積もる話もあるだろうし、話が長くなるやもしれんか)

「あぁ、ではそうするとしよう」

 

 

 

 

 

 微妙に認識に食い違いのある戦艦二名はそれ以上特に疑問に思うこともなく、両手の塞がった金剛に代わって武蔵が司令室の戸を開き、中へと入っていった。

 

 

 

 

 

「お、金剛来たか!!

 およ?一緒に武蔵も呼んだのか?」

 

「Yeーーs!!

 ちょうどそこで一緒になったので誘ってみたんデス!」

 

「すまないな、邪魔するぞ」

 

 

 

 武蔵も参加した事で二組しか無かったティーカップが足りなくなり、提督は和式の湯呑みを自分の前に並べた。

 洋式のティーカップの前では一つだけ浮いてしまっているが、まぁ仕方ない。

 

 武蔵、金剛は部屋の片隅に置かれたソファーに座り、机の上に紅茶と菓子を並べた。

 そして金剛が手早くティーカップに紅茶を入れ、二人の前に早速並べていく。

 

 

 

 

「この日の為に仕入れた高級品ネー!」

 

「む?紅茶など久しぶりだが、確かに上品な味だな…。

 確かにいいお茶だな」

 

「武蔵Noー!!お茶じゃnothing!コ・ウ・チャ!!」

 

「俺はあ、これ美味い!って感想しか出てこないんだが」

 

 

 

 提督と武蔵の両極端な感想を聞いた所で、早速金剛は楽しみにしていた提督との身の上話に切り替える事にした。

 時期を見計らい、武蔵と会話を終えたあたりでテートクに笑顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「テートク?

 テートクはお休みの日はどう過ごしてるんデース?」

 

 

 

「んー…。最近は一日中本を読んでるな」(エロ本)

 

 

 

「Oh!!?読書デスカー!!」

(そういえば球磨が『提督は執務中だと別人クマ』って言ってたネ。

 も…もしや誰もいないとこでは意外とクールガイ!?)

 

 

「フ、流石だな…相棒」

(己に慢心せず、常に知識を蓄え続けてるからこそあれほど的確な指揮が出来るのだな)

 

 

「お、おう?」

(えぇ…。エロ本読んでて感心されるってどういう事?)

 

 

 三人共別々の解釈をし、それぞれが別々の反応をした。

 あと一人でも第三者がいればこのすれ違いも無かったのだろうか…。

 いや無理だな。

 

 

 

 

「参考までに聞きたいのだが、相棒は普段どんな書物を読んでいるのだ?」

 

「ぅえっ!!?そ、そりゃあ、無修正……とか?」

(参考って何!?それ聞いてどうすんの!?コスプレとかしてくれんの!?)

 

 

(無修正?どういう意味だ…   

 !! そ、そうか…!!

 戦争の内容があまりにも悲惨だったが故に修正のかかった書物ではなく、あくまでありのままを伝えている書物を読んでいるというのだな!!)

 

「無修正か!!な、なるほど確かに盲点だったな…!!」

 

「いや割と一般的だと思うよ!?」

 

(テートクが普段読んでる書物は()()()()()()ってドーユー意味デース?……ハッ!!

 もしやテートクは普段から無臭製(ムシューセイ)の茶葉や菓子を探してたって事デスカー!?

 も、もしや紅茶のような香りの強いお茶は苦手…!?)

 

「Oh…テートクソーリーネ。

 テートクの(紅茶の)好み位は調べておくべきだったヨ」

 

「調べなくていいだろ!!」

 

 

「相棒。よければお前が読んでいるその書物を私にも教えてもらえないだろうか?

 優秀なお前に習い、まずは同じ書物を読む所から始めようと思う」

 

「テートーク!!私にも教えてほしいネー!!

 まずはテートクの(好みの)お勉強をするとこから始めるワ!!」

 

 

「いやなんの勉強するつもりだテメーら!?」

 

 

 豊かな胸部装甲を揺らしながらそんな事言わないで下さい!いいの!?提督の主砲発射しちゃうよ!いいの!?

 

 

「何のって…(海戦の)夜戦…だろうか?」

 

「モチロン!

 テートクに私のバーニングラブ(意味深)を届ける為の勉強デース!」

 

 

 

 この子達完全に俺の主砲狙ってきてるよ!!

 俺の秘蔵エロ本見てまで夜戦準備(意味深)したいとか意外とエッチなのこの二人!!?

 

 

 

「金剛の言う通り、私達はお前への多大な感謝の気持ちを(戦果で)届けたいのだ。

 今すぐにとは言わない。

 気が向いた時で構わない。私達を使ってくれ(戦場で)

 

 その時まではいつ呼ばれてもいいように、お前の勧める書物を中心にして知識を蓄えておくさ」(エロ本です)

 

「テートクがお呼びとあらば、例えそれが夜戦の時間だったとしても、テートクのお部屋に突撃しマース!!」(ティータイムに呼んでくれるならいつでもOKネ!)

 

 

 気が向いた時に呼んだら二人とも来てくれんの!?

 ふとムラムラした時呼び出しても対応してくれんの!?

 〇〇〇〇(自主規制用語)とかも喜んで相手してくれんの!?

 

 

 

 え?それってつまり夜戦(意味深)してくれる超弩級パイオツ戦艦二名を俺が好きな時に呼び出せるって事?

 

 

 

 ・・・

 

 

 ・・・・・・

 

 

 

 

 

 ・・・ああああああああぁぁぁぁーー!!!!

 いけませんいけません!!エッチ!エッチです!

 イケナイ妄想が次々に湧いてきて止められません!!

 

 

 

 恐るべし、ダブル戦艦の胸部装甲…。

 

 ッヨシ、こういう時こそ冷静に。

 まずは落ち着こうか。

 イケナイ妄想を爆発させるのは一旦やめてまずは落ち着こう…。

 

 

 

 い、いやいや…冷静に考えたらおかしいぞ?

 

 二人がいくら俺の事を好ましく思っていてもここまで都合のいい話を自分からするというのは…ちょっと考えられない。

 特に武蔵なんかはそういう不純な事は許さないタイプではないか。

 

 

 

 

 

 これはそもそも俺の勘違いという可能性が高い。

 

 そうだ、何か言い間違いとか聞き間違いとか。

 単純に言葉足らずだっただけかもしれない。

 

 一度頭を冷静にしてもう一度聞いてみたら全く違う会話になるかもしれないではないか!

 

 

「武蔵、金剛。お前らの気持ちは本当に嬉しい。

 

 ただ、俺への感謝の気持ちというのは夜戦(意味深)以外でお願い出来ないか?

 確かにお前らの夜戦(意味深)は一方的な展開になりそうだし、一度体験してみたい気はする。

 だが、お前達の身体に万が一があってはいけない。

 身体を大事にしてやってくれよ」

 

「提督…。そうだな…ありがとう」

(やはり変わったお人だな…。

 私達戦艦は普通の艦よりも丈夫だ。

 そう簡単に傷付いたりはしないというのに…

 それでも心配してくれるのだな…」

 

(アゥチ…。

 確かに夜戦の時間でもウェルカムとは言ったけど…流石に夜中にティータイムは変よね…)

 

 

 

 武蔵と金剛は提督の気遣いに心暖まり、一口紅茶を飲んだ。

 

 提督本人は売春防止に近い感じのセクハラ問題に発展しそうな発言のつもりで言ったのだが。

 

 

「では、昼間にならどうだろうか?

 私は一度お前に使ってもらえればそれで満足なのだが」

 

「イエース!!私も提督とご一緒したいワ!!

 次回は外の庭で三人でしてみたいネー!!」

 

 

 

 

 いやアウトオオオオォォォーーーー!!!!!

 やっぱこれ間違いじゃねぇ!!!ガチや!

 ガチなんやこの子ら!!

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 〜司令室〜 外

 

 

(三人ともバカじゃねぇのか…)

 

 

 いつの間にか、駆逐艦組と共に遠征から帰還した天龍は司令室の前で頭を抱えていた。

 外に丸聞こえの会話から何となーくどういうすれ違いが起きてるのか察した天龍はとりあえず幼い駆逐艦達を先に艦娘寮へと戻らせた。

 

 話の内容が内容なのでちびっ子達には聞かせられんという判断と、単純に長くなりそうだったので…。

 

 

(……今日は呑んじまうか)

 

 天龍は一人壁にもたれかかると深く溜息を吐いた。

 

 





 後日、しっかりお互いの誤解は解けたようです。

 なお、普段読んでる書物を武蔵に渡した提督はグーパンチを顔面に受けました。
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