スケベ提督と元ブラック鎮守府   作:ルフレオ

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弥生とお化け

 

「後ろを振り返っても、誰もいない。

 安心した男の子は今度こそ自分の部屋に戻ろうと前を向いたら、そこには頭から血を流す全身ずぶ濡れの女が!」

 

 

『キャアアアアアアアアァァァーーーーー!!!』

 

 

「フフフ、怖いか?」

 

「本当に怖いよ!!天龍さんにしては珍しく!!」

 

「なんだとコラ!!」

 

 

 艦娘達の憩いの場 談話室で天龍が吹雪、時雨、夕立、響、弥生の駆逐艦組に自身考案の怖い話を聞かせて随分と楽しそうだ。

 

 

 夏も近いという事で涼しくなるかと思い、天龍が突然始めた怖い話。

 軽巡以上の大人組にはダメージのない粗い作りのお話だったが、まだまだ幼い駆逐組には効果抜群だったようで…。

 

 

「ユユ、ユ、幽霊さんなんて迷信ですよ!!」

「夜中にトイレ一人で行けなくなるっぽいぃ…」

「だ、大丈夫だよ!僕もついていってあげるから!」

 

 

(へへ…!ここまでビビるとは思わなかったが、中々楽しめたな…)

「ハハハ!!ビビらせて悪かったな!

 今のは全部作り話だ。

 心配しなくったって幽霊なんざ出てきやしねーよ!」

 

「で!でもでも!!

 幽霊さんがいないっていう証拠にはならない訳で!!」

 

 吹雪を含めた駆逐艦組はまだ大袈裟なくらいに怖がっている。

 ここまで怖がられるとは思わなかったので天龍はそれがおかしくなり、ちょっとからかってみる。

 

「そうだな〜…。

 夜寝てたら知らない誰かに足首を掴まれたりとかな!」

 

「ぽいぃぃぃーー!!!!(泣)

 シシ!シ!時雨!時雨!今日は一緒のお布団で寝ようっぽいぃ!!」

 

「時雨!私も行ってもいいかい!?今夜一晩だけでいいんだ!!」

 

「う、うん…響も夕立も甘えん坊だなぁ…」

 

「吹雪と弥生はどうするっぽい!」

 

「私は大丈夫です…!おお、お姉ちゃんですから!」

 

「あ…や、弥生もいいです…」

 

 弥生と吹雪は同じく震えながら自室へと戻り、響と夕立は大慌てで自身の枕を片手に時雨の部屋へと逃げ込むように転がり込んだ。

 

 

 

 

 

 

「天龍さん、怖がらせすぎですよ?」

「へへへっ。次回からは気をつける」

 

 反省の色のない天龍に神通が軽くチョップを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 真夜中

 

 現在時刻は不明。

 だが消灯の時間になってから随分と時間が経っている。

 

 少なくとも、今動いているのは金平糖で近海区域の見回りを請け負い、探照灯片手に付近をうろつく妖精さん達と、一人布団の中で震えている弥生位のものだろう。

 

 

(うぅ…ダ、ダメ…!!

 さっきの天龍さんの怖い話が頭から離れない…)

 

 

 

(お化けなんていないお化けなんていないお化けなんていないお化けなんていないお化けなんていないお化けなんていないお化けなんていないお化けなんていない)

 コツン

(ひぃっ!!?)

 

 窓を小さく叩く音が聞こえ、恐る恐る窓を覗いてみる。

 

 そこには一匹のカナブンが窓に張り付いていた。

 こいつが窓にぶつかっただけらしい。

 

(こ、怖かったぁ……)

 

 

 弥生は完全に寝られなくなってしまっていた。

 

 布団を被り、足元だけは布団からはみ出さないように気をつけてただ一人、いるはずもないお化けに怖がりながら一向に訪れる気配のない睡魔をひたすらに待ち続ける。

 

 

(うぅ…。

 やっぱり弥生も時雨さんの部屋にお邪魔させてもらったらよかったな。

 でも弥生はそんなキャラじゃないし…つい断っちゃった)

 

 

 弥生はもう何度目になるかという後悔に頭を悩ませる。

 やがてこのままじゃずっと寝られないと思い立ち、一旦部屋の明かりを点けた。

 

 

 灯りが点いた事で恐怖心は一気に消え去り、代わりに眩しさで眠気がすっかり消え去ってしまった。

 

 時計を見ると時刻はゼロイチマルマル(午前一時)

 マズイ。早朝遠征ではないとはいえ、明日はお昼から遠征に行く予定になっている。

 

 流石にそろそろ寝なくては明日の体調にも響いてくる。

 

 

 

 

(お茶だけでも頂いてこようかな)

 

 少しは寝やすくなるかと思い、食事処へと向かおうと部屋を出た。

 そしてすぐに足が止まった。

 

 

 

 消灯時刻以降は廊下の灯は全て消され、それ以降出歩く場合はそれぞれの部屋に常備された小型の探照灯を頼りにする事になる。

 

 なので、鎮守府の廊下は当然……真っ暗なのだ。

 

 

(こ、怖い……。

 や、やっぱりやめておこうかな…)

 

 弥生は部屋の中へと再び引きこもった。

 

 

 

(ど、どうしよう…。

 電気つけちゃったから、また電気を消すのが怖い…。

 

 で、電気消したら部屋の隅に白い女の人が立ってたりとかしないよね…?

 天井に知らない人の顔が写って、私の方を睨んでたりとかしないよね…!?

 窓に全身血まみれの人がぶつかったりとか、勝手にドアが開いてお化けが入ってきたりとかしないよね…!!?)

 

 

 脳内で様々な考えが巡るものの、弥生は付けれる電気は全て付けた明るい部屋の中で一人布団を頭から被って震える事しかできなかった。

 

 

 

 

 

 コンコン

「ヒィッ!!!?!?」

 

 突然扉を叩かれ、弥生は思わず驚きの声をあげてしまった。

 

 

「あれ?やっぱりまだ起きてんのか?」

 

 

 扉の向こうから男の人の声が聞こえる。

 よく聞き慣れた声だ。この声って…

 

 

「司、司令官!?」

 

 

 急いで扉を開けるとそこには小型の探照灯を片手に持つ司令官が寝巻きの姿で眠そうにしていました。

 その後ろではご機嫌そうに金平糖を頬張る妖精さん達が数匹、提督の周りを飛び回りながら探照灯を振り回していました。

 

 

 

「……エ、カワイイ」(ボソッ

 

「へ?」

 

「あぁ、ごめん弥生。こっちの話だから。

 しかし…ったく、妖精さんが弥生が眠れなさそうで困ってるって言っていきなり叩き起こしに来たんだからな?」

 

 司令官の後ろでは数匹の妖精さんがしてやったり、と言わんばかりのドヤ顔で腰に手を当てて胸を張っていた。

 もしかして窓の外から見守ってくれてたのかな…?

 

 

「あぅ…。ご、ごめんなさい司令官」

 

「あぁごめんごめん。

 別に弥生に怒ってる訳じゃないから。どちらかと言うと…」

 

 司令官は妖精さんの頭に一発デコピンを打った。打たれた妖精さんは痛そうに額を抑えて空中でのたうち回る。

 カワイイ…。

 

 

「寝起きドッキリにしても、顔面に海水ぶっかけんのはやめてくれ」

 

 

 ………司令官って、割と可哀想な扱いなんですね。

 

 

「…んで、弥生はどうしたんだ?消灯時刻はとっくに過ぎてるぞ」

 

「あ…い、いえちょっと夜更かししてただけですよ」

 

「……ふーん」

 

 

 提督は私の部屋の中を覗き込み、少し観察しています。

 机の上のデスクランプまで灯りのついた狭い室内を見た司令官は何かを察したように笑うと、私の頭を撫でてくれました。

 

「怖くて寝れないのか?」

 

「へっ!!?い、いえ大丈夫…です…!!」

 

「神通に聞いたよ。

 天龍が怖〜い話をしてたんだって?それ聞いてたら夜寝られなくなったんだろ」

 

 バ、バレてる…

 

「恥ずかしがる事はないぞ?

 弥生はまだまだ子供なんだから。

 今のうちに甘えるだけ甘えまくって、大人になってから誰かに甘えてもらえるような優しい人になればいいんだ」

 

「・・・」

 

「赤城を叩き起こしてやるからちょっと待ってな?

 あいつなら受け入れてくれるさ」

 

「……司令官がいい…です」

 

「ん?」

 

 

 弥生は精一杯勇気を振り絞って司令官の裾を掴み、ワガママを言ってみました。

 司令官は驚いていましたが、弥生は今更言う事を変えません!

 

「俺と?それはいいけど、俺で大丈夫なのか?

 俺は…()()だぞ?」

 

「司令官なら……怖くないです」

 

 

 

 司令官の言う意味は分かる。

 きっと、気にしてるのは前任の司令官の事だと思う。

 

 前任と同じ提督という立場の自分が添い寝をしたとして落ち着いて眠れるのだろうか、ということだろう。

 

 

 そこは心配いらない。だって私も司令官がどんな人か見てきたから。

 一体どんな人なのか、

 どんな事が好きなのか、

 どんな事が嫌いなのか、

 

 そうやって考えてこの人を見て来た結果、私は司令官の事を…安心出来る存在だと考えている。

 

 

 

 

 ちょっとだけ、別の意味で心配してる事もあるけど。

 

 

「ただし、服の中に手を入れたりしたら神通さんに報告しますから」

 

「ア、アイアイサー!!」

 

 

 フフ、なんだか弥生も司令官の扱いが分かってしまった。

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 俺だ、提督だ。

 

 

 突然だがヤバイ。

 

 

 この状況はかなりヤバイ。

 

 

 

 気持ちよく寝てたと思ったらいきなり妖精さんに海水ぶっかけられて叩き起こされ、弥生の様子を見に来た所まではいいのだ。

 

 

 

 とはいえ、俺だってただの人間だ。

 真夜中に叩き起こされたんじゃ、多少機嫌も悪くなる。

 少し騒ついた心中で弥生の部屋にまでやってきたが、無意識にキツい口調になってしまわないかどうか、少し心配な所があった。

 

 

 が、出てきた弥生の姿を見てその気は失せた。

 

 

 

 

 何故かって?

 

 

 出てきた弥生が白と紫のモコモコパジャマに身を包んでいたのだ!!

 

 

 普段は物静かで不器用でクールな弥生がそんな女子力高い幼女専用装備を身につけてるとかカワイイにも程があるダルゥォ!!!!

 

 

 溢れるカワイイを抑え込み、なんとか普段の1.5倍増しのクソカワイイ弥生相手でも提督の石仮面を被っていられた。

 

 しかし、さりげなく頭を撫でて赤城の部屋に弥生を連れて行ってあげようとした時…

 

 

 

『……司令官がいい…です』

 

 

 なんて、裾を引っ張って上目遣いで言ってくるんだぜ?

 

 ヤバくない?

 

 

 

 だが、それでもまだ俺は自分を保てていたよ。

 提督という立場でありながらそんな憲兵事案な危険な真似出来ないよ、と弥生にやんわり断りを入れたつもりなのだ。

 

 

 

 

 でもね、次の一言でトドメだよね。

 

 

 

 

『司令官なら……怖くないです』

 

 

 

 

 それからの俺は早かった。

 

 そのまま弥生の布団に入り、にやけそうになる表情筋を必死に抑え込みながら弥生の背中を撫で続けてやっていた。

 

 

 

 

「寝れそうか?」

 

「…んぅ……司令官、暖かいです」

 

「…………や、弥生もポカポカしてて気持ちいいぞ」

 

「…ンフフ…弥生は暖かいですか…」

 

 

 ハアァァァンン!!!カワイイよぉ!弥生たん!!

 

 

 

「司令官…頭を撫でて貰えませんか?」

 

「お?甘えるのが上手になってきたな」

 

「…司令官と二人きりの時だけです」

 

 

 あぁなんていじらしい子だろう!?

 世の男共に娘にしたい艦娘ランキングでアンケート取ったらぶっちぎりの一位になるのではないか!?

 

 

【しっかり後書きでアンケート取ってるので投票お願いします!!】

 

 

「司令官は…撫でるのが上手ですよね。

 なんだか、すぐに眠くなってしまいます」

 

「ん?そ、そうか…?

 眠くなったらいつでも寝ていいんだぞ?」

 

「はい、あ、でも…弥生が寝たら、司令官は元の部屋に帰っちゃいますか?」

 

 

 

 弥生は今にも泣き出しそうな表情を浮かべ、服をギュッと掴むと潤んだ瞳をこちらに向けてくる。

 

 …………え?何この子?天使?

 

 

 真面目な顔で提督は思った。

 

 

 

 

「…分かった分かった。

 今日は一晩中居るよ」

 

 

 

 

 

 そう言って頭を撫でてやると弥生は安心したように瞳を閉じ、やがて小さく寝息をたてはじめた。

 

 

 

「……お休み、弥生」

 

 

 起こさないように静かにそう呟くと、明るい部屋の電気を消した。

 俺はもう一度だけ弥生の頭を撫で、ゆっくりと髪を指で摘み、持ち上げて、解いた。

 

 

 月明かりを思わせるような綺麗でサラサラとした薄紫の髪が、窓から覗く月の光に照らされて神々しいとさえ感じる。

 

 その神々しくも美しい弥生が眠る姿は、普段の仏頂面からは想像出来ないほど穏やかなものだった。

 

 

「……普段とギャップエグすぎワロタ…ってな」

 

 

 

 もしこの場に球磨達がいたならば『お前が言うな!』と総ツッコミを受けた所だろうが、提督本人にその自覚はない。

 

 

 やがて提督は優しく微笑むと最後にもう一度だけ優しく撫でてあげ、そのまま眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 〜〜〜

 

 

 

 

 

「さて、提督。

 弥生ちゃんに()()()を仕掛けようとした事について何か言い訳は?」

 

「誤解なんだあああぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 後日

 

 すっかり起床時刻まで爆睡した俺達二人はいつまでたっても起きてこない弥生ちゃんを心配して駆けつけた赤城が仲良く眠る二人を見つけ、事件は明るみに出た。

 

 いや…事件というか、とんだとばっちりというか…。

 

 

 

「とにかく俺はやってないぃぃ!!!」

 

「日頃の行いを悔い改めてから言って下さい」

 

 

 

 

 

 余談だが、吹雪は結局金剛さんの部屋で一晩だけお邪魔させてもらった模様。

 

 

娘にしたい艦娘は?

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